平成13年9月1日

1. わが国政府は、シリア・アラブ共和国政府に対し、「アレッポ大学病院医療機材整備計画」および「種子生産能力向上計画（2／2期）」の実施に資することを目的として、総額7億9,700万円を限度とする額の無償資金協力を行うこととし、このための書簡の交換が、9月1日（土）、ダマスカスにおいて、わが方天江喜七郎在シリア大使と先方イサーム・ザイーム企画担当国務大臣（Dr.Issam El-ZAIM, Minister of State for Planning Affairs）との間で行われた。
   
   

   （1）	アレッポ大学病院医療機材整備計画	3億500万円
   	（Project for Improvement of Medical Equipment　of Hospitals at Aleppo University）
   （2）	種子生産能力向上計画（2/2期）	4億9,200万円
   	（Project for Improvement of Seed Multiplication Capacity）

   
   
   
2. （1）アレッポ大学病院医療機材整備計画
   
   　シリアは、子供の健康に関する対策は途上国および中近東地域の中でも比較的良好であるが、一方で人口増加率が2．7％（1990～98年）の高率にあるため、増加する人口に対応した保健・医療分野でのサービスの拡充が望まれている。アレッポは首都ダマスカスに次ぐシリア第二の都市であるとともに、同国北部の経済・社会活動の中心都市である。 この都市にあるアレッポ大学病院は、シリア北部地域（アレッポ、ラッカ、デリゾール、ハサケ）の三次医療施設としての役割を担うとともに、アレッポ大学医学部で就学する医学生の研修病院としての役割を持っている。更に、シリア中部（ハマ、ホムス）および海岸部（ラタキア、タルトゥース）の人口のうち、ダマスカスよりもアレッポに近い地域の住民への高度医療サービスが期待されている。そのため、1998年に扱った外来者数は8万人、内科緊急部門の取り扱い数約14万件、実験分析数90万件、手術件数1．7万件となっており、その取り扱い数は年々増加の一途をたどっている。しかし、同大学病院は1974年の設立以来の機材を未だ数多く使い続けており、進歩する医学技術に対応した診断・治療行為に支障をきたしている。
   　こうした状況の下、シリア政府は、北部の三次医療施設のための「アレッポ大学病院医療機材整備計画」を立案し、この計画のための医療機材の整備に必要な資金につき、わが国政府に対し無償資金協力を要請してきたものである。
   　この計画により、アレッポ大学病院の放射線科、手術室および救急部門、小児科、婦人科、眼科等の医療機材が更新され、数万人に及ぶ多数の利用者に対し、より質の高い医療サービスを提供することが出来るようになることが期待される。
   
   （2）種子生産能力向上計画（2／2期）
   
   　シリアでは、農業は国内総生産（GDP）の約26％を占める主要産業であり、高い人口増加率の問題を抱えるシリア政府にとって、国民への安定的な食料の供給を維持するためにも、農業開発が重点項目とされている。特に、小麦は国民の主食として全耕地面積の約35％を占める主要作物であり、更なる増産が最も期待されている作物である。しかし、既存の小麦用種子処理施設が老朽化により能力が低下しており、小麦の種子の供給に悪影響を与えている。とりわけ、小麦生産の盛んなアレッポおよびイドリブ県では、供給率が40％と全国レベルを大きく下回っており、早急な対策が必要とされている。また、近年生産が拡大しているジャガイモについては、種イモ生産は10年前より研究栽培が開始されたものの、一般農家に配給するための十分な施設が整っていないため、毎年約7,000トンもの種イモを輸入している。そのため、農民への種イモ供給がその供給国の作況に左右される他、政府には貴重な外貨の多大な負担を強いている。
   　このような状況の下、シリア政府は「種子生産能力向上計画」を策定し、この計画の実施のための小麦処理施設とジャガイモ組織培養施設用の機材の購入に必要な資金につき、わが国政府に対し無償資金協力を要請してきたものである。
   　この計画は二期に分け実施されるものであり、今回は、昨年度に実施を決定した小麦処理施設用機材の供与に引き続き、ジャガイモ組織培養施設用機材の供与を行うものである。この計画により、ジャガイモの種イモ2,490トンの全国への安定した供給が可能となり、輸入への依存が減少し、国際収支が改善されることが期待される。