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中国の「中等職業教育機材整備計画」ほか2件に対する無償資金協力について

平成13年4月13日

 わが国政府は、中華人民共和国政府に対し、「中等職業教育機材整備計画」、「陜西省人民医院医療機材整備計画」および「貧困地域結核抑制計画」の実施に資することを目的として、合計26億2,400万円を限度とする額の無償資金協力を行うこととし、このための書簡の交換が、4月13日(金)、北京において、わが方阿南惟茂在中国大使と先方龍永図対外貿易経済合作部首席交渉代表(Long Yongtu, Chief Representative for Trade Negotiation, Ministry of Foreign Trade and Economic Cooperation)との間で行われた。

「中等職業教育機材整備計画」
(the project for Improvement of the Equipment for the Secondary Vocational Education)
 供与限度額 9億1,700万円

「陜西省人民医院医療機材整備計画」
(the project for Improvement of Medical Equipment of Shaanxi Province People's Hospital)
 供与限度額 13億8,600万円

「貧困地域結核抑制計画」
(the project for Tuberculosis Control in Poor Areas)
 供与限度額  3億2,100万円

(参考資料)

1.「中等職業教育機材整備計画」

 中国では、経済社会の発展に伴い、高学歴な技術者等に加え、中等学校卒業者等を優秀な技術者として養成することが、中国経済・人的資源の底上げにつながるとの認識から、中堅技術者の養成が重要な課題となっている。1985年には「教育制度改革決定」が発布され、職業技術教育を発展させることが提唱され、また、1993年には職業教育の位置付け、体系などが盛り込まれた職業教育法が公布された。現在、中国全体で中等職業教育学校の学生数は1千万人を越えるなど、中等職業教育は順調に発展してきている。
 また、近年における中国の国営企業の改革の中で、多くの下崗と呼ばれる潜在的な失業者(在職はしているものの仕事を与えられず、最低限支給される生活費でのみ生活を強いられている者)が問題になってきており、これら失業者の再就職のための技術習得の場として職業教育学校は益々重要となっている。
 しかしながら、多くの職業教育学校が資金不足のため教育機材が不足しており、また、需要に対応した学校の規模の拡大、コースの増設および設備整備などが十分に進んでいない状況にある。
 このため中国政府は、各省レベルでモデル的な中等職業教育学校を選定し、模範的な中等職業教育を実施するため、施設の充実を図ることを目的とした「中等職業教育機材整備計画」を策定し、この計画のため教育機材(視聴覚機材、コンピュータ等)の購入に必要な資金につき、わが国政府に対し無償資金協力を要請してきたものである。

2.「陜西省人民医院医療機材整備計画」

 陜西省は、中国西北内陸部の中心の省であり、中国政府が推進している西部地区大開発計画において、四川省、重慶市と並んで中心的地域となっている一方、貧困人口が相対的に集中し一人当たりのGDP(国民総生産)では、全国平均の約65%となっているなど、沿岸地域と比べ経済発展の遅れが著しくなっている。
 陜西省の省都西安市に所在する陜西省人民医院は、1931年に設立され、陜西省の中核となる総合病院として、診療、疾病予防、保健サービスを全省の一般市民に提供するほかに、医療従事者への教育、農村地域への医療指導、西北地区の他省からの患者、観光地西安を訪れる外国人に対する診療等の任務を担っており、陜西省および周辺の甘粛、四川、 山西等の内陸の省の中心的な病院の一つとして重要な役割を果たしている。
 他方、今後の安定した内陸部の発展のためには、患者の病状に十分に対応し医療サービスを向上させるとともに、同地域において治療の出来ない患者の北京、上海等への転院に伴う、患者の家族等の経済的負担の軽減を図るため、本医院を拡充することが重要な課題となっており、また、これによって内陸部の貧困からの脱却を容易ならしめ、さらなる農村の発展が期待されている。このため、中国政府は、陜西省人民病院の敷地内に新たに救急外来、医療技術部門および病床を含む新棟を建設したところであるが、予算的な制約から老朽化した設備・機材の更新ができずにいる。
 こうした状況のもと、中国政府は、「陜西省人民医院医療機材整備計画」を策定し、この計画のための老朽化した機材(手術台、産婦人科用機器等)の更新並びに新病棟での医療活動に必要な医療機材(ICU、画像診断治療機材等)の購入に必要な資金につき、わが国政府に対し無償資金協力を要請してきたものである。

3.「貧困地域結核抑制計画」

 WHO(世界保健機関)によれば、世界中で毎年800万人の結核患者が発生し、200万人が死亡するなど、結核は未だ世界の脅威でありつづけている。中でも総人口12億人の中国では、500万人が結核に感染しているといわれ、新規患者は毎年140万人とインドについで世界第二位の発病国となっており、また、結核病による死亡者は年間約25万人に達している。
 このような状況からの脱却を図るため、中国政府は1991年から世銀融資により、WHOが推奨するDOTS(対面指導により毎回の服薬を確認しながら数カ月に渡り薬剤投与を施すことにより完治率を高めるというWHOが推奨する治療手法)を用いて中国国内13省における結核病の抑制に努めてきており、結果として約150万人/年の結核患者が治癒されてきている。また、今後、中国政府としては2005年までにDOTSの対象地域を人口の90%までに拡大するとともに、また、2010年までに結核患者を2000年の水準から半減させるなど、更なる結核病抑制に向けて積極的に取り組む目標を掲げている。
 しかしながら、世銀融資対象外の貧困地域(省)においては、資金不足により予算措置が十分には行えず、その結果、結核病の流行が抑制できず、このため、貧困の格差にさらに拍車をかけることも懸念されている。
 このため、中国政府はWHOとの連携の下、中国貧困地域(9省、2自治区)における結核病の抑制を目的として「貧困地域結核抑制計画」を策定し、この計画の実施のための医療機材(顕微鏡)および抗結核薬の購入に必要な資金につきわが国政府に対し無償資金協力を要請してきたものである。
 対象省の人口の35%の居住地域においてDOTSが開始され、今次抗結核薬で約4万5千人の結核患者の治療が可能となる。

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