平成13年1月30日
案件名 | 供与限度額 |
(1)「一次医療施設医療機材整備計画」 | 9億200万円 |
(2)「道路維持管理機材整備計画」 | 8億700万円 |
(3)食糧増産援助 | 2億7,000万円 |
(4)ノンプロジェクト無償 | 3億円 |
(参考)
1.「一次医療施設医療機材整備計画(Project for Improvement of Medical Equipment for Primary Health Care Services)」
マケドニアでは、1960年から90年にかけて、保健衛生状況が大幅に改善されてきたが、独立後の混乱によりその進展は停滞しており、例えば、乳幼児死亡率は中・東欧諸国平均の約2倍、西欧諸国の約3倍となっている。
また、同国の経済情勢も、一人当りのGNP(国民総生産)が990ドル(98年推定)と、同地域の中ではアルバニアに次いで低いレベルにあり、更に、医療制度面でも、保健分野における公費の支出が1990年と比較して実質35%減少し、一次医療サービスの質などを低下させてきた。そして、この状況は、本来一次医療施設レベルで対応すべき患者についても、必ずしも適当な医療サービスが提供できず、こうした患者を2次、3次医療施設で受け入れざるを得ないという問題を引き起こしている。
こうした状況の下、マケドニア政府は、「一次医療施設医療機材整備計画」を策定し、この計画のための一次医療施設における老朽化した医療機材の更新、不足している医療機材の購入のための資金につき、わが国政府に対し無償資金協力を要請してきたものである。
この計画の実施により、マケドニアにおける一次医療の充実に寄与することとなり、同国の抱える高い乳幼児死亡率、慢性疾患等の削減という保健医療分野の問題解決に資することが期待される。
2.「道路維持管理機材整備計画(Project for Improvement of Road Maintenance Equipment)」
マケドニアは、北を新ユーゴ、東をブルガリア、南をギリシャ、西をアルバニアに囲まれた内陸国であるため、輸出入はこれら周辺国からの陸上輸送に頼らざるを得ない。また、周辺国にとって近隣諸国への移動はマケドニアを経由して行うことが簡便な場合が多い。
同国では、運輸・通信省の監督下で、道路維持管理公社が全国の道路を管理しているが、同公社で保有している道路整備のための車両・機材の多くは老朽化しており、そのための維持管理経費が同公社の予算自体を圧迫している。特に、99年のコソボ危機では、国連軍、NATO(北大西洋条約機構)軍等の使用する装甲車などの重量車両やコソボ向け物資輸送車が多く走行したことから、主要幹線道路の路面陥没、橋梁損傷等の損害を受けたのみならず、それら車両の有料道路通行に対する料金徴収ができないため、道路維持管理公社の業務の増大、財政難が顕著になった。更にそのような状況により、道路維持管理の作業がはかどらず、同国住民および周辺諸国の社会・経済活動が阻害される結果となった。
こうした状況の下、マケドニア政府は、「道路維持管理機材整備計画」を策定し、この計画の実施のための道路改修・維持・管理を目的として使用される機材の購入に必要な資金につき、わが国政府に対し無償資金協力を要請してきたものである。
この計画の実施により、同国の道路の維持管理・改修が促進され、交通上の安全が保たれるとともに、社会経済活動が改善されることが期待される。
3.食糧増産援助
マケドニアは、かつては旧ユーゴの中の穀倉地帯であり、農産物供給の中心的役割を担っていたが、旧ユーゴの崩壊、その後の独立に伴う混乱等により、同国の経済状態は低迷を続けている。農業分野も農機の老朽化、農民の資金力の脆弱化、土地の細分化等の理由から生産性が大きく低下し、そのような状況が依然続いている。同国の主食は小麦、次いでトウモロコシであるが、両品目においては生産量、単位面積当りの収穫量ともに横ばい状態が続き伸び悩んでおり、小麦は国内消費量の約25%を輸入に依存する状況にある。
こうした状況の下、マケドニア政府は、農業機材の投入により、主要穀物である小麦、トウモロコシ、ライ麦の農業生産性を向上させるため、昨年度に引き続いて、農業機械を購入するために必要な資金につき、わが国政府に対し無償資金協力を要請してきたものである。
この計画の実施により、多数のコソボ難民への食糧供給の必要性に迫られているマケドニア経済の負担の緩和につながることが期待される。
4.ノンプロジェクト無償
マケドニアは元来、経済的にユーゴへの依存度が高く、93年の旧ユーゴ解体後の国連による対新ユーゴ経済制裁により、同国の経済は急激に悪化した。
同国政府は93年度末に国際通貨基金(IMF)と構造調整計画に合意し、以降マクロ経済安定化政策(賃金抑制、為替レートの安定化等)、赤字国営企業の整理、民営化を積極的に進めているが、その過程において民営化失敗や倒産が多発しており、失業率は35%を越えている。また、外国からの投資はわずかであり、主要産業の金属加工業や農業の輸出が伸びず、大幅な貿易赤字等の問題を抱え、労働者や公務員を中心に長期未払いも起こっている。
また、99年のNATOによる新ユーゴの対する空爆開始により、コソボ自治州のアルバニア系住民が難民・避難民としてマケドニアに大量流入している。苦しい経済運営を強いられている同国にとって、こうした大量の難民受け入れは経済を逼迫する原因の一つともなっている。
今回のノンプロジェクト無償資金協力は、同国の構造調整計画の実施を支援するもので、マケドニア政府が経済構造改善努力推進に必要な商品を輸入する代金の支払いのために使用される。