平成20年6月19日
(1)本計画の内容
パレスチナ自治政府保健庁とユニセフが協力して実施する「パレスチナ人児童の感染症対策計画」に必要な新生児及び乳幼児に対する予防接種の実施(ポリオワクチン、四種混合ワクチン、BCG等の他、注射器、コールド・チェーン等の関連機材)及び母子健康手帳を配布するための資金を、ユニセフに対して供与する。
(2)本計画の必要性
パレスチナ自治区では、イスラエル民生当局により感染症の予防接種が実施されてきたが、この政策は1993年のオスロ合意で発足したパレスチナ暫定自治政府にも引き継がれた。この間、我が国をはじめとする国際社会の協力等もあり、1960年代には約60%であった児童の予防接種率は、1997年度に95%にまで改善するとともに、妊産婦の予防接種率も30%に上昇した。しかしながら、2006年3月、イスラエルの生存権を認めないハマス主導のパレスチナ自治政府内閣が発足したことを受け、イスラエル政府が、自治政府の代わりに徴収していた関税等の自治政府への還付を凍結したことにより、自治政府は財政難に陥り、公的医療機関による必要な医療サービス等が提供されない状況が長期に亘り継続した。
その後も、パレスチナ自治区における移動制限は厳しく、特にガザ地区は封鎖により住民が国際機関による人道支援に依存せざるを得ない状況となっている。
このような状況の中、十分なワクチンの投与の実施が困難になっており、とりわけポリオについては、1990年代半ばまでに一度撲滅されたとされていたが、ガザ地区周辺の土壌で発見されており、人口密度の高いガザ地区において一度ポリオが発生すれば、急激に蔓延することが予想されることから、予防接種を常に維持する必要がある。
ユニセフ及びパレスチナ暫定自治政府は「パレスチナ人児童の感染症対策計画」を策定し、その実施に必要なワクチン(ポリオ、四種混合、BCG)及び基礎医療器具(注射器、コールドチェーン等)の調達のための資金につき、我が国に無償資金協力を要請してきたものである。
(3)本計画の効果
我が国は、中東和平実現を目指す上でパレスチナ支援は不可欠であるとの認識の下、その支援の一環としてこれまで人道状況の改善に貢献してきたが、本計画の実施により、西岸地区、ガザ地区双方の約11.7万人の新生児及び乳幼児に対し、ポリオワクチン、四種混合ワクチン、BCG等の予防接種の実施が可能となり、ポリオの蔓延を防ぐことができるとともに、パレスチナにおける人道状況の改善が期待される。
また、ユニセフ事務所の協力及びJICAが実施している技術協力プロジェクト「母子保健に焦点をあてたリプロダクティブヘルス向上」との連携により、新生児に対し母子健康手帳13万冊を配布・普及することを通じ、子供の発育を継続的にモニタリングすることが可能となる。
(参考)
パレスチナ自治区は、ヨルダンに接する西岸地区及びエジプトに接するガザ地区からなる。1967年の第三次中東戦争の結果、イスラエルにより占領されていたが、1993年のオスロ合意によりパレスチナ人による暫定自治が認められている。両地区を合わせた人口は約408万人(2007年)、1人当たりの国民所得は802ドル(2006年)である。