平成19年9月4日
- 我が国政府は、ボスニア・ヘルツェゴビナ政府に対し、「道路維持管理用機材整備計画(the project for Improvement of the Equipment for Road Maintenance)」の実施に資することを目的として、8億4,400万円を限度とする一般プロジェクト無償資金協力を行うこととし、このための書簡の交換が、9月4日(火曜日)(現地時間、同日)、同国の首都サラエボにおいて、我が方罍二夫(もたい・ふたお)駐ボスニア・ヘルツェゴビナ臨時代理大使と先方アルカライ外務大臣(H. E. Mr. Sven Alkalaj, Minister of Foreign Affairs)との間で行われた。
- 本計画の概要は次のとおりである。
(1)本計画の内容
- ボスニア・ヘルツェゴビナ・モスタル道路維持管理公社が、紛争により破壊され、また老朽化が進んでいる道路網の維持管理に必要な機材を整備するための資金を供与するもの。
- 供与機材(モータグレーダ、路面掘削機、多目的作業車等17種)は、クロアチア人居住地域5県(ポサビナ県、中央ボスニア県、ヘルツェゴビナネレトバ県、西ヘルツェゴビナ県、及びヘルツェグボスナ県)を管轄するモスタル道路維持管理公社が、主要道路15路線、地域道路30路線の計1,617キロメートルの道路の維持管理を行うために使用する。
(2)本計画の必要性
- ボスニア・ヘルツェゴビナの海岸線には港がないため、運輸交通は道路交通が中心である。このため、92年から95年まで続いた紛争により破壊・寸断された道路網の復旧は緊急課題とされ、各ドナーの支援を受けて道路整備事業が行われた(我が国も98年度一般無償案件として「道路建設機材整備計画」を実施)が、予算的な制約から、既存道路の維持管理は後回しにされたため、道路の劣化が進行した。
- このような状況から、今般ボスニア・ヘルツェゴビナ政府は、(イ)紛争中に破壊された道路網復旧のための緊急的な道路建設・補修が一段落し、道路維持管理の重要性が高まっていること、(ロ)道路維持管理用機材の絶対数が不足しており、また機材の多くが老朽化のため十分な作業ができず、がけ崩れや道路損傷を原因とする通行障害が発生していること、(ハ)ボスニアは多民族国家であり主要3民族(イスラム教徒、セルビア人、クロアチア人)が平等に裨益するようにバランスを考慮する必要があること、(ニ)我が国が実施した98年度の案件は、セルビア人とイスラム教徒の居住地域を対象として実施したものであることに鑑み、我が国に対し、クロアチア人居住地域を対象とした道路維持管理用機材の整備に関する無償資金協力を要請した。
(3)本計画の効果
本件機材供与により、以下の効果が期待される。
- 機材不足により十分行えなかった道路維持管理業務を確実に実施することが可能になる。(切削オーバーレイ施工量が現状の2,540トンから約6,000~7,000トンに増加、路面滑り止め加工作業が現状の1.3万平方キロメートルから22.7万平方キロメートルに増加、法面整形(落石防止)作業が0.3万平方キロメートルから52万平方キロメートルに増加。いずれも年間作業量)・ポットホール等の路面損傷を早期に補修することにより、その進行を食い止め、道路の性能を長期間維持できる。
- 対象道路の性能を保持し、道路損壊(通常走行ができない状況)を抑止することにより、安定かつ安全な道路交通が確保される。
- 主要道路と地域道路の性能を保持することにより、国内の円滑な物流ネットワークを維持できる。
(参考)
- ボスニア・ヘルツェゴビナは、旧ユーゴ連邦を構成した共和国の一つで、面積5.1万平方キロメートル、人口約438万人(91年調査)。主要構成民族は、回教徒系、セルビア系、クロアチア系の3つ。ボスニアの独立を巡る92年から95年の民族間紛争は、死者20万、難民・避難民200万と言われる戦後欧州で最悪の紛争となった。95年12月、デイトン和平合意の成立により戦闘は終息。ボスニア・ヘルツェゴビナは、回教徒系及びクロアチア系住民が中心の「BH連邦」及びセルビア系住民が中心の「スルプスカ共和国」という2つの主体から構成される一つの国家となったが、それぞれの主体が独自の警察や軍を有するなど、高度に分権化されている。人口1人当たりのGNIは約2,970米ドル(2006年世銀統計)である。
- 計画実施地域地図(添付1)(PDF)

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