平成19年8月7日
(1)本計画の内容
ユニセフの支援のもと、パレスチナ暫定自治政府保健庁が西岸地区、ガザ地区双方の約11万人の新生児及び乳幼児に対する予防接種(ポリオワクチン約89万ドース、BCG約23万ドース等)を実施するための資金を供与する。
(2)本計画の必要性
パレスチナ自治区では、従来よりイスラエル民生当局により感染症の予防接種が実施されてきたが、この政策は1993年のオスロ合意で発足したパレスチナ暫定自治政府にも引き継がれた。この間、我が国をはじめとする国際社会の協力等もあり、1960年代には約60%であった児童の予防接種率は、1997年度に95%にまで改善するとともに、妊産婦の予防接種率も30%に上昇した。しかしながら、2006年3月、イスラエルの生存権を認めないハマス主導のパレスチナ自治政府内閣が発足したことを受け、イスラエル政府は、自治政府の代わりに徴収していた関税等の自治政府への還付を凍結したことにより、自治政府は財政難に陥り、公的医療機関による必要な医療サービス等が提供されない状況が長期に亘り継続した。
このような状況の中、十分なワクチンの投与の実施が困難になっており、とりわけポリオについては、1990年代半ばまでに一度撲滅されたとされているが、ガザ地区周辺の土壌で発見されており、人口密度の高いガザ地区において一度ポリオが発生すれば、急激に蔓延することが予想されることから、予防接種を常に維持する必要がある。
ユニセフ及びパレスチナ暫定自治政府は「パレスチナ人児童の感染症対策改善計画」を策定し、その実施に必要なワクチン(ポリオ、BCG)及び関連機材(注射器等)の調達のための資金につき、我が国に無償資金協力を要請してきたものである。
(3)本計画の効果
我が国は、中東和平をめざす上でパレスチナ支援は不可欠であるとして、これまで人道状況の改善に貢献してきたが、本計画の実施により、西岸地区、ガザ地区双方の約11万人の新生児及び乳幼児に対する予防接種の実施が可能となり、ポリオの蔓延を防ぐことができるとともに、パレスチナにおける人道状況の改善が期待される。
(参考)
パレスチナ自治区は、ヨルダンに接する西岸地区及びエジプトに接するガザ地区からなる。第三次中東戦争の結果、1967年以降イスラエルにより占領されていたが、1993年のオスロ合意によりパレスチナ人による暫定自治が認められている。両地区を合わせた人口は約383万人(2005年)、1人当たりの国民所得は802ドル(2006年)である。