重点政策・分野別政策 分野別開発政策

開発に関する国際シンポジウム
~開発:人間の安全保障の観点から~

平成11年6月


6月24日、外務省と国連大学の共催により、国連大学にて「開発:人間の安全保障の観点から」のテーマのもと、廣野成蹊大学名誉教授を議長に、多数の国際機関、ドナー、途上国、NGO等関係者の参加を得て、国際シンポジウムを開催した。冒頭挨拶の中では、高村大臣より、コソヴォにおける難民問題にも触れつつ、今次シンポジウム開催に到った国際的背景、問題意識について説明があり、更にアナン事務総長のメッセージ等の後、武見政務次官が基調講演を行った。その後、保健医療、貧困の撲滅、アフリカ開発の3つの具体的分野について、3分野の相互連関性も踏まえつつ、議論を行い、会場からのコメント、質問への応答が行われた。

1.武見政務次官基調講演

 本件シンポジウムの目的は「人間の安全保障」の考え方を21世紀の日本外交の政策理念として各国の理解も得つつ深めていくとともに、右に基づいて開発の各分野において新たな政策的アプローチを見出すことにある旨述べた上で、各テーマについて問題提起を行った。特にグローバリゼーション、地域紛争により顕在化する諸問題への対応にあたり、国家中心の安全保障政策及び経済政策に加え、人間個人に着目するという視点(人間の安全保障)が重要である旨指摘した上で、自立した個人(特に女性)、NGOの重要性に言及しつつ、ドナー、途上国、国際機関、NGOのパートナーシップの重要性及び国連の国際的調整役としての役割・体制強化の必要性について強調した。

2.保健医療

 「人間の安全保障」の観点からは、全ての人への基本的な保健医療サービスへのアクセスの保証というプライマリー・ヘルス・ケア(PHC)が重要であり、その実現のために、貧困対策、基礎保健を含めた広義の教育から財政、地方分権や行政組織にまで踏み込んだ保健医療制度の包括的改革、費用負担を含めた当事者参加の重視等の有効性が指摘された。この他、我が国ODAにおけるPHC重視の取り組み、途上国の伝統的な知恵の再評価の必要性が実例とともに紹介された。更に、保健衛生を含め「人間の安全保障」に関する包括的な知的ネットワークの構築につき提言があった。

3.貧困撲滅

 「人間の安全保障」の観点から、貧困を捉えるには、所得水準のみならず、教育、健康等人間開発の視点が不可欠であることが確認され、このような考え方に基づく我が国の貧困対策について紹介された。また、貧困対策にあたっては、金融を含めたグローバル化をよりよくマネージメントすること、NGOの知見とネットワークの活用、人々の主体的な参加、民主主義等「良き統治」、更には援助の成果の客観的評価が重要であることが指摘された。また、貧困対策は紛争予防の観点からも必要との指摘があった。

4.アフリカ開発

 貧困、失業、インフラや基礎的社会サービスの欠如、地域紛争等多くの課題を抱えるアフリカを、グローバル・コミュニティーでのイコール・パートナーとするため、経済産業開発、重債務問題への対応等に加え、「人間の安全保障」の観点から、個人の自立を念頭においた支援(人的資源の開発、農業開発、中小企業振興、マイクロ・ファイナンシング等)が重要との指摘があった。この基本になるのは、経済成長や和平面でのアフリカの現実を正しく認識した上でのアフリカの未来への確信(アフロオプティミズム)である。これを基に、アフリカとのパートナーシップを強化し、アフリカの潜在力を開花させることが重要であることが指摘された。

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