保健・医療

新型インフルエンザに関する我が国の国際協力(平成17年末以降)

平成22年4月


 我が国政府の鳥・新型インフルエンザに関する国際協力は、平成17(2005)年末以降、約4.16億ドルに上りま(平成22年度予算計上分まで)。これは、米国に続く世界第2位の規模です。

 新型インフルエンザは、国境を越えて世界中に影響を及ぼす地球規模課題であり、我が国の安全にも直結する国の危機管理の問題でもあり、また、動物と人の保健に共通する課題でもあります。また、新型インフルエンザ、SARS等の新興感染症や人獣共通感染症への対処には、分野を超えた取組強化が国際的に求められています。

 我が国は、こうした課題に対するアジア地域を中心とする国際社会の努力に積極的に協力するため、関係省庁・機関間で連携して、オールジャパンで取り組んでいます。


1.アジア地域における150万人分の抗ウイルス薬の備蓄

(1) 日・ASEAN統合基金により、50万人分のASEAN用の抗ウイルス薬をシンガポールに備蓄し、また、50万人の抗ウイルス薬をASEAN各国に配布。また、70万人分の防護用品も備蓄(うち35万人分は各国に配布)。

(2) ASEM協力案件として、アジア欧州財団(ASEF)に対する拠出を通じ、50万人分の抗ウイルス薬及び50万人分の防護用品をシンガポールに備蓄。

 上記(1)、(2)ともに、世界保健機関(WHO)の指導の下、アジア地域において強毒性の新型インフルエンザが発生した際の初期対応に使用することを想定しており、本事業に関連する机上訓練やセミナーも実施しています。


2.世界保健機関(WHO)を通じた協力

(1) H1N1新型インフルエンザ対策支援
 平成21年9月、WHOによる途上国での新型インフルエンザワクチン接種支援のため、約11億円(1,080万ドル)の緊急無償資金協力を決定。

(2) アジアのハイリスク国における対策強化
 平成18年度、WHO西太平洋地域事務局に約1,800万ドルを拠出し、アジア8か国(モンゴル、中国、ベトナム、ラオス、カンボジア、インドネシア、フィリピン、パプアニューギニア)における新型インフルエンザへの事前の備えを強化。また、WHOへの任意拠出金を通じて国際的対応の強化を支援。

(3) 「新型インフルエンザ早期対応に関する東京会議」の開催
 平成18年1月、我が国政府とWHOとの共催で開催。アジア諸国、主要ドナー、国際機関の専門家が一同に会し新型インフルエンザの早期封じ込めの重要性を確認。


3.国際獣疫事務局(OIE)及び国連食糧農業機関(FAO)を通じた協力

 OIEへの拠出を通じた「アジアにおける鳥インフルエンザ防疫体制強化プログラム」、「重要動物伝染病国際貢献事業」により、アジア地域における伝播ルートの解明のためのサーベイランス・検査体制の強化、獣医行政の能力向上、重要動物伝染病の診断技術貢献等に協力しています。また、OIE及びFAOへの拠出を通じて「アジアにおける食品安全・動植物検疫関連総合支援事業」を実施し、アジア・太平洋地域の越境性疾病の防疫にかかる取組に協力しています。


4.国連児童基金(UNICEF)等の人道機関を通じた予防・啓発活動支援

(1) UNICEFに総額6,210万ドルを拠出し(平成17年度及び18年度)、アジア、アフリカ、東欧等の37か国での鳥インフルエンザの予防のための住民啓発、17か国での予防接種体制整備等を実施。この支援によるコミュニティレベルにおける啓発活動は、鳥インフルエンザ発生国での鳥から人への感染予防に大きな効果をもたらし、国際的に高く評価されています。

(2) その他の機関への拠出


5.「感染症研究国際ネットワーク推進プログラム」による調査研究

 平成17年度より5年間、文部科学省「新興・再興感染症拠点形成プログラム」として、アジア・アフリカの8か国(中国、ベトナム、タイ、フィリピン、インドネシア、インド、ザンビア、ガーナ)において、日本の大学・研究機関が相手国のカウンターパート機関と協力して、インフルエンザをはじめとする感染症研究の海外拠点を形成する事業を実施してきました。平成22年度からは、「感染症研究国際ネットワーク推進プログラム」として実施しています。


6.二国間協力、JICAを通じた技術協力

(1) ベトナム国立衛生疫学研究所(NIHE)に対する協力
 平成18年度無償資金協力「国立衛生疫学研究所高度安全性実験室整備計画」(供与限度額8.91億円)により、鳥インフルエンザを扱うことのできるバイオセーフティレベル3の実験室を整備。また、JICAによる技術協力プロジェクトにより、専門家派遣等を通じた技術協力を実施しています。「感染症国際ネットワーク推進プログラム」による共同研究拠点(上記5.)も設置されています。

(2) インドネシア国立家畜疾病診断センター(DIC)への協力
 平成19年度無償資金協力「鳥インフルエンザ等重要家畜疾病診断施設整備計画」(供与限度額17.81億円)により、インドネシア国立家畜疾病診断センターの3か所の拠点における鳥インフルエンザ検査能力の向上を支援。

(3) 研修員受け入れ
 JICAを通じ、毎年約100人の関連分野における訪日研修員を受け入れ、「アジア地域鳥インフルエンザ防除」、「アジア地域新興感染症バイオハザード対策」等の関連分野での研修を実施。

(4) インドネシアにおける鳥インフルエンザ・サーベイランスシステム強化プロジェクト
 南スラウェシ州における鳥インフルエンザのヒト感染サーベイランス能力向上のための技術協力。

(5) H1N1新型インフルエンザ発生に伴う対メキシコ緊急援助
 平成21年5月、メキシコに対し、2,100万円相当の緊急援助物資の供与及び7,650万円の緊急無償資金協力(サーモカメラ25台の供与)を実施。


7.世界銀行等の開発金融機関を通じた支援

(1) 平成17年末から18年にかけ、世界銀行に設置している日本開発政策・人材育成基金(PHRD)を通じて1,950万ドルを支援。インドネシア、カンボジア、ラオス、グルジア、アルメニア、アルバニア、モルドバ、キルギス、ベトナムにおいて、多分野にわたり鳥インフルエンザ対策関連の各種事業を実施。

(2) また、平成18年、アジア開発銀行(ADB)日本特別基金を通じて1,000万ドルを支援し、WHOやFAOと協力しつつ、アジア地域における能力強化を支援。

(3) 平成21年にはH1N1新型インフルエンザ対策として、米州開発銀行(IDB)日本信託基金を通じて200万ドルを支援。WHO米州地域事務局(PAHO)と協力して中南米地域のH1N1対策強化を支援。平成22年3月、JICAとIDBの共催により、同年1月のアジア中南米協力フォーラム(FEALAC)第4回外相会合に関連して、新興感染症パンデミック対策の経験を共有するセミナーを東京で実施。

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