10月1日(月曜日)から5日(金曜日),ハイデラバード(インド)において「生物の多様性に関する条約のバイオセーフティに関するカルタヘナ議定書」(以下「議定書」とする。)の第6回締約国会合が開催され,各締約国の代表団のほか,非締約国,産業界,教育機関,NGO,国際機関等の関係者がオブザーバー参加した。我が国からは,外務省,財務省,文部科学省,農林水産省,経済産業省,環境省の職員等による政府代表団が出席した。
1.概要
- (1)遺伝子組み換え生物等(LMO)の輸入に係る決定に先立ち実施することが求められているリスク評価(議定書第15条)に関して技術専門家グループにより策定されたガイダンス文書について,実際のリスク評価における試用を通じてその実用性及び有用性を評価することを締約国等に奨励することが決定された。また,(1)技術専門家グループを再編すること,(2)右の評価結果の分析に関して条約事務局に助言を与えるとともに新たなガイダンスの開発の進め方について次回会合に勧告することを技術専門家グループに委任すること,(3)資金の利用可能性に従い,技術専門家グループの会合を次回締約国会合までに開催すること等が決定された。
- (2)LMOの輸入について決定するに当たり,生物の多様性の保全及び持続可能な利用に及ぼす影響に関する社会経済上の配慮を自国の国際的な義務に即して考慮することができるとする議定書第26条に関し,条約事務局が収集・整理した各国の見解,関連情報及び経験を分析し,概念上の明確性(conceptual clarity)を高めるための技術専門家グループを資金の利用可能性に従って設置することが決定された。
- (3)能力開発(議定書第22条)に関する現行の行動計画に代わるものとして,各締約国等が能力開発に関する取組を行う際の目的,指針,主要分野及び戦略,並びに締約国が全体として行うべき行動の優先順位,個別目標及び指標から構成される「議定書の効果的な実施のための能力開発のための枠組み及び行動計画」が新たに採択された。
- (4)このほか,依然として多くの締約国が議定書の義務を履行するために必要な立法上及び行政上の措置を実施していない状況に鑑み,前回会合において採択された2011年~2020年の戦略計画に従って右の措置を早急に実施するよう締約国に要請する決定等が採択された。
2.評価
- (1)様々な種類のLMOの開発・利用が進展するに従って重要性が増すと考えられる「リスク評価」,「リスク管理」,及び「社会経済上の配慮」の各分野において,更に議論を深めるための専門家グループを設置し,科学的知見の収集や経験の蓄積を進めつつ,経済社会の状況を踏まえながら現実的に対応していくことに合意できたことは今次会合の大きな成果である。我が国は本件に関する議論を主導し,合意形成に大きく貢献した。
- (2)今次会合においては,多くの開発途上国等において議定書の義務を履行するための国内措置が依然として実施されていないことが国別報告書の内容や遵守委員会の取組により明らかとなったことから,議定書の確実な実施をいかに確保するかに関する議論に多くの時間が割かれた。我が国は,第5回締約国会合から今次会合冒頭までの2年間,議長国として開発途上国等の能力開発のための取組を積極的に行ったため,会合期間中に多くの締約国から謝意が述べられ,本分野における我が国の存在感を大いに示すことができた。