地球環境

「モントリオール議定書第19回締約国会合」結果概要

平成19年9月

1.概要

(1)9月17日(月曜日)から21日(金曜日)までカナダ・モントリオールにおいて、オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書第19回締約国会合が開催された。締約国191か国(含むEC)のうち約150か国(含むEC)から500名以上の参加があった。我が国からは、西田恒夫駐カナダ特命全権大使を団長に、外務省、農林水産省、経済産業省及び環境省の関係者が出席。

(2)今次会合では、とりわけ、CFC(クロロフルオロカーボン:いわゆる特定フロン)の代替物質として使用されている代替フロン(HCFC:ハイドロクロロフルオロカーボン)の削減スケジュールの前倒しに係る議定書の調整(adjustment:締約国による締結行為を必要としない機関決定方式による議定書の規制措置の変更)が焦点となり、コンタクトグループや少人数会合等を含めた長時間にわたる交渉の結果、下記(4)の内容で合意された。モントリオール議定書の規制措置の強化は1999年に北京で開催された第11回締約国会合以来議定書史上6回目のものであるが、開発途上国における既存の規制スケジュールの前倒しが行われるのは今回が初めて。

(3)途上国における規制スケジュールの前倒しについては9か国(ミクロネシア、モーリタニア、モーリシャス、米国、アルゼンチン・ブラジル、アイスランド・ノルウェー・スイス)から6つの提案がなされ、本年6月にナイロビで開催された第27回公開作業部会で議論がスタートした。

(4)今次締約国会合では、各国提案に含まれる内容を様々な要素に分解し、連日の長時間にわたるコンタクトグループでそれぞれの要素ごとに議論した結果、会合最終日21日深夜(日本時間22日昼)に次のとおり合意された。

(ア)開発途上国(注)の削減基準年の前倒し

  • 2009年及び2010年における生産量及び消費量のそれぞれ平均を採用
    (現行基準年:2015年)

(注)議定書第5条1の適用国。具体的には、開発途上国である締約国であって、国民一人あたりのフロン消費量が年間0.3キログラム未満である国

(イ)開発途上国における基準年レベルでの生産・消費の凍結年の前倒し

  • 2013年(現行基準年:2016年)

(ウ)先進国における消費量の段階的削減の前倒し及び生産量の段階的削減の導入

  • 消費量・生産量ともに2010年までに75%削減、2015年までに90%削減、2020年全廃(既存の冷凍空調機器の補充用冷媒を除く)
    (現行は消費量を2010年までに65%削減、2015年までに90%削減、2020年全廃、生産量を1989年レベルで2004年から凍結)

(エ)開発途上国における生産量及び消費量の段階的削減の導入及び全廃前倒し

  • 2015年までに10%削減、2020年までに35%削減、2025年までに67.5%削減、2030年全廃(既存の冷凍空調機器の補充用冷媒を除く)
    (現行は生産量・消費量ともに2015年レベルで2016年から凍結、2040年全廃。)

(オ)先進国から開発途上国に対する支援

  • 開発途上国による議定書の義務の遵守を支援するために設けられている「多数国間基金(Multilateral Fund)」を通じて引き続き支援する。開発途上国が前倒しされた削減スケジュールを遵守できるよう、右基金の今後の資金が安定的かつ十分であるべきことについて合意。

(5)その他、2008年の議定書予算については、2008年の議定書締約国会合がウィーン条約締約国会議と共同開催であることを主要因として、マイナス成長(2007年比121,701ドル減、2.6%減)で合意。また、会合最終日には、議定書のこれまでの達成を評価しつつ各締約国が議定書へのコミットメントを再確認し国際協力の重要性を認めることを内容とする「モントリオール宣言」が全会一致で採択された。

2.評価

(1)今次会合は、今年が議定書採択から20周年ということもあり、カナダ政府が議定書の採択された記念の地モントリオールでホストし、開催時期も例年の開催時期(11月頃)より繰り上げて議定書の採択記念日(9月16日)に合わせるなど、祝賀ムードの中で始まった。

(2)このような雰囲気の中で、翌週に気候変動関係の会議を開催する米国を始め主要各国に目に見える成果を出したいとの強いモメンタムが感じられ、HCFC削減スケジュールの前倒しを提案した各国はもとより、欧州も前向きな姿勢を示し、本年6月の段階では極めて消極的だった中国もかなりの譲歩の姿勢を見せたことで交渉が精力的に継続された。

(3)我が国は、HCFCの削減をモントリオール議定書の現行スケジュールより先んじて順調に達成してきており、前倒し後のスケジュールについても着実に遵守するほか、オゾン層破壊物質の生産・消費規制のみならずオゾン層破壊物質の回収・破壊といった大気中への排出抑制対策に係る先進的な法制度・技術を通じ、また米国に次ぐ多数国間基金への主要ドナーとして、費用対効果の高い国際的なオゾン層保護の実現のため引き続き取り組んでいく方針。

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