平成18年11月
10月30日~11月3日の5日間にわたり、ニューデリー(インド)において、「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書第18回締約国会合」が開催された。
会合では、オゾン層破壊物質の不可欠用途に関する適用除外や5条国(開発途上国のことを指す。議定書第5条に規定する「開発途上国の特別な事情」に該当する締約国)における削減スケジュールの遵守等の様々な課題に関する議論が行われ、オゾン層破壊物質への適切な対応をさらに推進するための措置について合意された。
また、2007年はモントリオール議定書の採択20周年に当たること、5条国における主要なオゾン層破壊物質の全廃期限(2010年)が近づいていることなどを踏まえ、「モントリオール議定書が直面する主要な将来課題に関する対話」会合を2007年6月にナイロビ(ケニア)で開催することが決定された。
閣僚級を含む各国の代表団長から、各国でのオゾン層破壊物質対策に関する取組のほか、オゾン層保護のためにモントリオール議定書が果たしてきた成果と今後の課題等について演説が行われた。特に、規制の例外である不可欠用途適用除外の使用量の削減や違法貿易の防止、5条国におけるオゾン層破壊物質の撤廃に向けた技術的・財政的支援の必要性が多くの国から言及された。
我が国は、オゾンホールの回復予測の遅れや今年のオゾンホールの大規模な発達に懸念を表明するとともに、今後の課題として、5条国に対するさらなる支援・協力と、既に市中に存在している大量のフロンを回収し、再利用又は破壊することで大気中への放出を防ぐ取組の必要性を指摘し、フロン回収・破壊法の改正(2007年10月施行)など、我が国の取組を紹介した。
2007年はモントリオール議定書の採択20周年に当たること、また、5条国における主要なオゾン層破壊物質の全廃期限(2010年)が近づいていることを踏まえ、カナダから、モントリオール議定書がこれまでに達成した成果と、今後新たに直面することになる課題について議論を行うことが提案された。我が国を含め、多く締約国はこの提案を歓迎し、実質的な議論を行うための会合を2007年6月にナイロビ(ケニア)で開催することを決定した。
なお、我が国からは、議論すべき課題として、現在5条国において生産・消費が急増しているハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)への対応の必要性、及び既に市中に存在しているフロン類の回収など、大気中への放出を抑制する対策の必要性を指摘した。
非5条国においては、臭化メチル(おもに土壌のくん蒸や植物検疫等のための農薬として使用されるオゾン層破壊物質)の生産・消費は2005年以降全廃された。しかし、技術的・経済的に適切な代替手段がなく、かつ、臭化メチルを使用できなくなることにより著しい損害がある場合は、各国の申請に基づき、議定書の技術・経済評価パネル(TEAP)の評価を踏まえ、締約国会合での承認を経て、不可欠用途として使用できることとされている。
今次会合においては、各国からの2007年の追加申請と2008年の新規申請に関し、TEAPから勧告された数量を元に、不可欠用途として承認する数量が決議された。なお、本会合直前に米国が公表した多量の貯蔵中の臭化メチルの取扱と、TEAPの勧告量に対する見直し要請が大きな論点となり、議論は長時間に及んだ。最終的に、日本の2008年分はTEAPの勧告どおり約443トン、米国の2008年分はTEAPの勧告より多い約5,355トンの使用が承認された。
非5条国においては、CFCの生産・消費は1996年以降全廃されたものの、MDI等への使用については引き続き例外的な使用が認められている。今回、現在もMDIにCFCを使用している一部の非5条国について、2007年と2008年のMDI用途CFCの不可欠用途適用除外が承認された。
なお、我が国は代替品技術の開発・普及により既にMDI用途CFCの生産・消費を全廃しており、不可欠用途の申請は行っていない。
オゾン層破壊物質であるCFCやHCFC、及びその代替物質としてのハイドロフルオロカーボン(HFC)やパーフルオロカーボン(PFC)への対策がオゾン層破壊と気候変動にもたらす効果について、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)及びTEAPが共同で行った調査結果を踏まえ、本年7月に、とりうる政策選択肢を整理するための専門家会合が開催された。
今次締約国会合においては、右専門家会合の報告書が提出され、整理された政策選択肢のうち、HCFCに焦点を当ててTEAPがさらに検討を進めることが決定された。
5条国において、冷凍空調機器を市中から収集した後、それらの機器に含有されているCFCの適正処理を行うことが課題となっている。前回締約国会合において、これらのCFCの回収・破壊等を行うための政策選択肢等について事例調査を行うこととされ、調査内容を今次会合においてさらに検討することとなっていた。一方、5条国の議定書遵守を支援するために設けられている多数国間基金の執行委員会においては、5条国におけるオゾン層破壊物質の回収・破壊等の必要性、政策選択肢及び費用対効果等に関する調査が計画されていたことから、作業の重複を避けるため、多数国間基金執行委員会においてこれらの調査を包括的に実施することが決定された。
オゾン層破壊物質が輸出入の許可等を受けずに違法に取引される問題について、国際的な防止策の必要性が多くの5条国から指摘されており、対策としてどのようなものがあり得るかの調査が行われていた。今次会合では、右調査を踏まえて違法貿易対策の選択肢を整理した報告書が提出された。議論の結果、各締約国に対し、オゾン層破壊物質の輸出入許可制度の適切な運用や、他の多国間環境条約の下で構築されているシステムの活用等が促されるとともに、その他の対策についてさらに検討を進めることが決定された。
次回のモントリオール議定書第19回締約国会合は2007年9月にモントリオール(カナダ)にて開催される。また2007年6月に「モントリオール議定書が直面する主要な将来課題に関する対話」会合がナイロビ(ケニア)にて開催される。
我が国では、今般の締約国会合の結果を受け、引き続きオゾン層破壊物質の排出抑制のための対策に取り組むとともに、5条国の支援を行っていくことしている。また、2007年6月に開催される会合を始めとして、モントリオール議定書が直面する主要な将来課題についての議論に積極的に参画していく。