地球環境

第35回南極条約協議国会議(ATCM35)概要

平成24年6月20日

1.概観

 第35回南極条約協議国会議は,6月11日から20日までオーストラリアのホバートにおいて開催され,南極における科学的調査活動,観光・非政府活動のあり方,環境の保護,気候変動の影響,事務局の運営等について,集中的な議論が行われた。我が国からは,外務省・環境省・文部科学省・水産庁・国立極地研究所からなる代表団が参加した。

2.各論

(1)南極条約コミュニケ 

 南極条約協議国会議での議論の結果を広く一般に知らしめるため,今回から短いコミュニケを出すこととなり,新たに締約国になったマレーシアとパキスタンを歓迎すること,外来生物や気候変動など人間の活動の活発化が関与しているとされる問題について議論を続けていくこと,南極における捜索救難活動について焦点を当てること等をまとめたコミュニケが作成された。http://atcm35.antarctica.gov.au/communique 他のサイトヘ

(2)観光・非政府活動への対応

 近年,年間二万人を超える観光客が南極を訪れており,大型観光船のみならずヨット等小型船舶を使ったもの,南極半島以外の地域への訪問の拡大など,観光活動の形態も多様化している。このような状況に対応するため,南極環境の保護及び安全管理面から議論がなされた。また,次回会議に向けて情報交換のあり方や観光活動の種類などいくつかの事項に的を絞って議論を進めていくことになった。

(3)南極地域の環境保護

 南極地域には,環境上,科学上,歴史上,芸術上若しくは原生地域としての顕著な価値又は科学的調査の保護のため,71の南極特別保護地区(Antarctic Specially Protected Areas; 以下「ASPA」),7の南極特別管理地区(Antarctic Specially Managed Areas; 以下「ASMA」),及び85の南極史跡記念物(Historic Sites and Monuments; 以下「HSM」)が設定されている。これらASPA及びASMAには,それぞれが有する価値を保護するため,地区毎の管理計画が策定されており,これらに基づき,厳正な保護がなされているところである。今次会議では,8地区のASPAの現行管理計画の改正,1地区のASPAの管理計画の新規採択,1地区のASMAの現行管理計画の改正,7カ所のHSMの改正が採択された。

 また,現在の南極地域の環境保護上,大きな懸念となっている非在来生物の対策及び南極地域のクリーンアップについても議論され,非在来生物対策のガイドラインが採択されるとともに,クリーンアップマニュアルが提案され,会期間においてウェブ上で議論を継続することとなった。

(4)会議の効率的な運営 

 会議の効率的な運営のために,今後どのような問題を優先的に扱うかを示す作業計画の作成が提案され,具体的な方策を議論していくことになった。また,各国が提出する会議文書の翻訳経費を可能な限り抑え効率的な会議運営を実現するための方法等について,次回会議までの間にウェブ上で議論を続けていくことになった。

(5)次回会議

 第36回南極条約協議国会議は,2013年5月20から29日まで,ベルギーのブリュッセルで開催される。

(参考)

 南極条約は,1959年に採択され,1961年に発効。2012年6月現在,締約国数は50。そのうち,我が国を含む28カ国が協議国となっている。我が国は,同条約の原署名国であり,1960年に同条約を締結,協議国として,南極地域における平和の維持,科学的調査の自由の保障とそのための国際協力,軍事利用の禁止,領土権主張の凍結,環境保全と海洋生物資源の保存等の面で,積極的役割を果たしてきている。その後,1991年には環境保護に関する南極条約議定書が採択され,環境影響評価(附属書I),南極の動物相及び植物相の保存(附属書 II),廃棄物の処分及び廃棄物の処理(附属書 III),海洋汚染の防止(附属書 IV),南極特別保護地区規定等(附属書 V)と共に1998年に発効,南極の環境及び生態系の包括的保護が進められている。

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