地球環境

第33回南極条約協議国会議(ATCM33)概要

平成22年5月14日
日本代表団

1.概観

 第33回南極条約協議国会議は、5月3日から14日までウルグアイのプンタ・デルエステにおいて開催され、南極における科学的調査活動、観光・非政府活動のあり方、環境の保護、気候変動の影響等について、集中的な議論が行われた。我が国からは、外務省・環境省・水産庁・文部科学省(国立極地研究所)が参加した。

2.各論

(1)観光・非政府活動への対応

 南極における観光活動の活発化を受けて昨年12月にウェリントンで観光船舶に関する南極条約専門家会合が開催されたところ、今回そこでの議論をベースに南極の環境保護及び安全管理面から、協議がなされた。その結果、南極地域に於ける海上捜索活動の調整の強化や、IMOでの議論との連携の強化等の決議が採択された。現在IMOで作成中の極海を航行する船舶に関する強制コードに関しても議論された。
 また、南極で行われるスポーツ行事(マラソン)のあり方や、ヨット等小型船舶の南極環境に与える影響等について、次回会合までの期間に、協議国等の間で議論を続けていくことになった。

(2)南極地域の環境保護

 南極地域には、環境上、科学上、歴史上、芸術上若しくは原生地域としての顕著な価値又は科学的調査の保護のため、71の南極特別保護地区(Antarctic Specially Protected Areas; 以下「ASPA」)及び84の南極史跡記念物(Historic Sites and Monuments; 以下「HSM」)が設定されている。これらASPAには、それぞれが有する価値を保護するため、ASPA毎の管理計画が策定されており、これらに基づき、厳正な保護がなされているところである。今次会合では、既存の13地区のASPAの現行管理計画の改正、及び1件のHSMの新規指定が採択された。

(3)南極における気候変動の影響

 昨年11月にSCAR(南極研究科学委員会)により南極における気候変動の影響に関する報告書が作成されたこと、また本年4月に気候変動に関する南極条約専門家会合が開催されたことを受けて、南極条約下での気候変動に対する取り組みについて議論された。南極条約の枠組みでは気候変動の科学的側面及び基地でのエネルギー消費の効率化に主な焦点を当てるべきとの議論がなされ、気候変動をその重要性に鑑み独立の議題として今後も議論を継続していくことになった。我が国からは来シーズンに予定されている昭和基地の大型大気レーダーによる観測計画につき紹介を行った。

(4)南極における生物探査(バイオプロスペクティング)

 2000年頃より、南極に生息する動植物の遺伝資源を活用して新薬等の製品を開発する行為について、議論が行われている。協議国の間ではATCMでこの議題が扱われるべきということではコンセンサスがある。一方、今次会合でも、南極における生物探査活動を積極的に規制・管理する制度を作ろうとする意見が一部の国より提出されたが、このような活動について協議国間で共有された定義が存在しないこと等より、本問題はさらに慎重な検討が必要との意見が大勢であった。

(5)事務局の運営

 南極条約事務局の設立を定めた2003年の措置1が昨年10月に発効したことより、南極条約事務局が正式に発足し、ホスト国(アルゼンチン)と事務局との間で本部協定への署名式が行われた。また、会議の開催期間を現在の2週間から短縮する提案が一部の国より提出され、次回会合までの間に各国より意見を提出、具体策を検討していくことになった。

(6)次回会合

 第34回南極条約協議国会議は、2011年6月20日から7月1日まで、アルゼンチンのブエノスアイレスで開催される。

(参考)
南極条約は、1959年に採択され、1961年に発効。2010年5月現在、締約国数は48。そのうち、我が国を含む28カ国が協議国となっている。我が国は、同条約の原署名国であり、1960年に同条約を締結、協議国として、南極地域における平和の維持、科学的調査の自由の保障とそのための国際協力、軍事利用の禁止、領土権主張の凍結、環境保全と海洋生物資源の保存等の面で、積極的役割を果たしてきている。その後、1991年には環境保護に関する南極条約議定書が採択され、環境影響評価(附属書I)、南極の動物相及び植物相の保存(附属書 II)、廃棄物の処分及び廃棄物の処理(附属書 III)、海洋汚染の防止(附属書 IV)、南極特別保護地区規定等(附属書 V)と共に1998年に発効、南極の環境及び生態系の包括的保護が進められている。

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