
生物多様性条約・遺伝資源へのアクセスと利益配分(ABS)
に関する第9回作業部会再開会合の概要
平成22年7月20日
7月10日~16日、カナダ・モントリオールにおいて、上記作業部会再開会合が開催され、我が国からは荒木COP10担当大使を団長に、農水省、経産省、文科省、環境省が交渉に参加した。
1 概要
- (1)本年3月に共同議長から提示された議定書原案について、多くの論点で、遺伝資源の利用国、提供国の間で合意が形成され、条文の文言が一本化された。
- (2)未だ利用国、提供国間で意見の対立が続く残りの論点については、各国の異なる立場が明確化されるなど、今後の意見収れんに向けて相互理解が促進された。
- (3)本作業部会は、COP10の直前に再開されるまで更に継続され、9月中旬に追加会合が開催されることとなった。
2 議論された内容
- (1)利用国の措置
- (イ)以下の論点につき、合意が形成された。
- 利用国政府が、自国内で利用される遺伝資源について、事前同意の取得などの提供国政府の規則を遵守するよう、適切な措置を実施すること。(第12条)
- 利用国政府が、自国内における遺伝資源の利用を監視するための措置を、適切な場合に実施し、この措置にはチェックポイントの措置も含み得ること。(第13条)
- (ロ)他方で、以下の論点につき、意見の対立が続いている。
- チェック・ポイントの設置、出所開示要求につき、提供国側は、知的財産権の審査機関など特定の方法を明示的に規定するべきと主張しているが、利用国側は、それに反対している。(第13条)
- (2)アクセスの改善
- (イ)以下の論点につき、合意が形成された。
- 提供国政府が、自国内の遺伝資源に対するアクセスについて、事前同意を与える際の明確で透明な手続を確保すること。(第5条)
- (ロ)他方で、以下の論点につき、意見の対立が続いている。
- 非商業目的の研究に遺伝資源を利用する場合に、利用国側は簡素化された手続の適用を求めているが、提供国側は、それに反対している。(第5条)
- (3)利益配分
- (イ)以下の論点につき、合意が形成された。
- 遺伝資源の利用により生じる利益について、利用国政府は、提供国に公正で衡平な配分がなされるよう適切な場合に措置を実施すること(第4条)
- (ロ)他方で、以下の論点につき、意見の対立が続いている。
- 利益配分の対象について、遺伝資源に加えてその派生物を含めるべきであると提供国側は求めているが、利用国側は、それに反対している。
- (4)適用範囲
- (イ)以下の論点につき、合意が形成された。
- 植物遺伝資源などABSに係るより専門的な国際的合意が適用される遺伝資源については、本議定書の規定は適用されないこと。(第3条の2)
- (ロ)他方で、以下の論点につき、意見の対立が続いている。
- 議定書発効以前にアクセスされた遺伝資源について、提供国側は本議定書を遡及して適用することを求めているが、利用国側は、それに反対している。
3 今後の進め方
- (1)今回再開された第9回作業部会は、終了することなく継続され、10月のCOP10の直前の週末(10月16日~17日)に再開することとされた。
- (2)また、本作業部会における議論の進展を評価し、COP10での合意に向けて更なる議論が参加国から求められたことを踏まえ、追加会合を以下のとおり開催することとされた。
- 1)形式:作業部会の下に設置される少人数の会合(地域代表間の会合)。
2)時期:9月の中旬。
3)場所:タイでの開催を求める国もあったが、更に検討。
4)資金:我が国からの資金拠出を表明。