
第2回違法伐採国際専門家会議
(概要と評価)
平成20年3月5日
議長サマリー(英語)(PDF)
1.会議の概要
3月3日及び4日、我が国(小町外務省地球環境問題担当大使)とインドネシア(サルマン外務省開発・経済・環境局長)の共同議長の下、第2回違法伐採国際専門家会議が東京において開催された。
本件会議には、主要木材生産国及び消費国政府(計18カ国)、欧州委員会、国際機関等より違法伐採対策の専門家計51名が出席したほか、違法伐採問題に関心を有するNPO及び業界団体の代表者(計11団体)がオブザーバーとして参加し、昨年3月の第1回会議での議論をもとに国際的な違法伐採対策の今後の課題と方向性につき議論を行った。
2.議論の概要
本件会議においては、昨年3月の第1回会議に引き続き、木材消費国による公共調達制度、合法性・持続可能性の証明制度の改善と拡充、森林経営の透明性向上、違法伐採及び関連取引の排除のための方策等について概要以下の議論が行われた。
(1)総論
- 木材・木材製品に対する需要の増加等、森林に対する継続的な圧力が見られる中、違法伐採へのインセンティブは依然として高いとの指摘がなされた。
- 違法伐採対策においては政府が第一義的なプレーヤーであるが、消費者・民間セクター・市民社会も独自の役割を果たし得るとの指摘がなされた。
- 違法伐採対策が効を奏するためには、良いガバナンス、効率的な証明制度、適切な法制度・法執行体制及びコミュニティの参加が鍵となるとの意見が表明され、そのためには、持続可能な森林経営を総合的に進めていくアプローチが必要との指摘がなされた。
(2)木材消費国による公共調達制度
- 木材消費国による公共調達制度は、公共部門が取り扱う木材・木材製品の量、民間の自主的取組の喚起、既存の証明制度の改善、違法伐採問題の啓蒙等の観点から重要な役割を果たしているとの指摘がなされた。
- 木材消費国による公共調達制度の新規導入や拡大を図っていく上で、合法性・持続可能性についての最低限の基準の設定、世界規模の証明制度の形成に向けた協調が重要との意見が表明された。
- 公共調達制度を導入していない国々に違法木材が流入するリスクを軽減するためには、費用対効果の高い制度を導入し、木材消費国間の協調を進める必要があるとの指摘がなされた。
(3)合法性・持続可能性の証明制度
- 合法性証明に係る民間の自主的取組に関し、合法性証明の実効性と低コストが必須の条件であり、制度の信頼性確保には透明性が不可欠との指摘がなされた。
- 合法性証明に係る世界規模の制度を構築することが現時点では現実的ではなく、引き続き議論を深めていくことが必要な中で、主要な木材生産国・消費国双方で合法性証明制度の相互承認を行うなど、木材生産国・消費国双方の協調を進めることが実際的かつ重要との意見が表明された。
- 森林認証制度は温帯林を中心に普及しているが、熱帯林諸国においては、その地域に配慮した証明制度が必要との指摘がなされた。
(4)森林経営の透明性向上
- 違法伐採対策を進めていく上で市民社会、木材生産国等による情報アクセスの改善、透明性の向上が重要との意見が表明された。
- 森林に関する多様な利害関係者が参加するプロセスは多大な時間を要し、困難を伴うが、合法性証明のあり方につき幅広い賛同を得る上で有益との意見が表明された。
- 貿易統計の不一致は、それ自体が信頼し得る違法性の指標とはなり得ず、更なる精査を要するが、そのフォローアップには木材生産国政府の能力構築が必要であるとの意見が表明された。
- 衛星を活用した森林監視の取組の有用性が指摘され、この分野の協力拡大の可能性につき期待が表明された。
(5)違法伐採及び関連取引の排除のための方策
- EUが進める木材生産国との自主的二国間協定(VPA:Voluntary Partnership Agreement)の締結交渉は、木材生産国の国内改革を後押しする互恵的なプロセスであるとの評価がなされた一方、VPAを悪用したロンダリング取引防止のための措置や市場インセンティブを考慮する必要性が指摘された。
- 多くの国々において合法・持続可能な木材の市場が形成されておらず、合法性・持続可能性が証明された木材の取引を促進する何らかの市場インセンティブの検討が必要との意見が表明された。
- 違法木材の取引に対処する上で税関当局が果たし得る役割が議論され、違法伐採問題について税関当局との連携及び税関当局の啓蒙が必要との意見が表明された。
- 国内法を活用した違法伐採対策として、米国議会において審議中のレイシー法(Lacey Act)の改正は重要なステップになり得るとの意見が表明された。また、持続可能な森林経営の促進のための国際的な法的枠組を策定する必要があるとの意見も表明された。
(6)違法伐採問題と他の問題との関連
- 経済的動機のみならず、貧困が違法伐採の要因となっているとの指摘がなされ、その要因に応じて異なるアプローチが必要との意見が表明された。
- 途上国の意見として、木材消費国における規制の強化よりも、持続可能な森林経営、地域経済の発展、再植林、木材製品の効率的管理、行政機関の能力構築等の木材生産国の取組に対する支援が必要との指摘がなされた。また、開発援助は違法伐採対策の取組に報いるものとすべきとの意見が表明された。
- 途上国における森林減少・劣化に由来する排出削減(REDD:Reducing Deforestation and Forest Degradation in Developing Countries)に国際的な焦点が当たる中で、森林のガバナンスという共通の課題に対する関心が高まり、REDDに関する議論に違法伐採に関する議論が反映されることへの期待が表明された。
3.評価及び今後の取組
木材生産国・消費国政府、国際機関、NPO及び業界団体の参加を得て開催された本件会議は、違法伐採問題に関する多様な利害関係者による国際的な対話プロセスとして非常に有益であるとの評価がなされた。
我が国としては、本件会議の議論(上記2.)を踏まえ、G8森林専門家の間で更に議論を深めるとともに、本年5月のG8環境大臣会合、7月の北海道洞爺湖サミットを見据えつつ、違法伐採問題に関する国際的な対話プロセスを引き続き積極的に主導していく考え。
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