
G8森林専門家違法伐採報告書
(概要)
平成20年5月
全文仮訳(PDF)
1. 背景
G8森林専門家は、本報告書において、過去10年間にわたってG8メンバーがとった違法伐採対策に資する幅広い様々な措置の実例を提示し、その成果を考察するとともに、G8メンバーが、公共部門及び民間部門の諸パートナーと連携しつつ、地方レベル、国家レベル及び国際的レベルにおいて今後取り組むべき課題を検討する。
2. これまでの取組とその成果
1998年以降、G8メンバーにより数多くの取組が行われてきており、その多くが、木材生産国と消費国との共同の取組である。
(1)パートナー諸国との協力
(a)森林法の執行及びガバナンスに対する支援/透明性の向上及び情報へのアクセスの改善
- FLEG(森林法の執行とガバナンス)閣僚プロセスへのG8メンバーの積極的参加
- 日本とインドネシアのイニシアティブにより2002年に発足した「アジア森林パートナーシップ(AFP)」を通じた取組
- 違法伐採対策に関する英国 - インドネシア、日本 - インドネシア、米国 - インドネシア間の二国間取決め
- 国際機関を通じた木材生産国における違法伐採対策プロジェクトに対するG8諸国の支援
(b) 技術的知見及び手段の共有
- 日本 - インドネシア間の共同発表及び行動計画に基づく、衛星画像及び二次元バーコードを利用した森林モニタリング技術の開発等
- ブラジルに対する日本の陸域観測技術衛星(ALOS)「だいち」からの画像の提供を通じた違法伐採・森林減少地域の特定
(2) 貿易関連措置
(a) 違法伐採木材の輸入及び市場取引の停止
- G8各国によるワシントン条約の規定に基づく絶滅危惧樹種に対する貿易管理の強化
(b) 貿易に関する二国間及び地域的な取決めを通じた措置
- 日本と木材輸出国とのFTA/EPAに関連したフォーラムにおける違法伐採問題への対処
(c) 木材公共調達政策の促進
- 日本を含むいくつかのG8及びEU諸国による合法性・持続可能性が証明された木材・木材製品を優先して使用する政府調達制度の導入、その影響の民間部門及び市場への波及
(3) 公衆への働きかけ(民間部門との協力、消費者への周知)
- 日本による政府調達制度の導入に際しての木材・木材製品の合法性・持続可能性の証明方法を示すガイドラインの発行、それによる民間の取組の促進
(4) その他の取組
- 国連森林フォーラム(UNFF)におけるすべてのタイプの森林に関する法的拘束力を伴わない文書の採択へのG8メンバーの参加
- 違法伐採問題に関する主要な木材生産国・消費国、国際機関、研究機関及び市民社会の間の対話を促進するための違法伐採国際専門家会議の日本による主催
3.今後の課題と前進への途
G8森林専門家は、G8メンバーが、関心を有する国々、機関、公共部門及び民間部門の諸パートナーと密接に協力しつつ、各メンバーが最も効果的に貢献できるよう、引き続き幅のある様々な措置をとるべきであるとの見解で一致し、さらなる前進を図るために次の方策を特定した。
- インセンティブの付与及び木材輸出国・輸入国間の連携を通じ、市場の透明性を向上させ、合法かつ持続可能な形で生産された木材・木材製品の取引を促進
- 木材加工国を関与させつつ、木材輸出国・輸入国間の二国間・多国間の枠組み及び対話の拡大と発展を促進
- 民間部門に対し影響を与えることができる合法木材を優先して使用する木材調達制度を奨励、適用、改善又は拡大し、その経験を共有
- 消費者及び地域住民の意識啓発に際し、NGO等を含む市民社会との協力を促進
- 自主的な行動規範の採択と実施、ビジネス慣行及び市場の透明性の改善を含む木材輸出国・輸入国双方の民間部門による自主的なイニシアティブを奨励・支援
- 全ての利害関係者の間での持続可能な森林経営に関する知識の向上及び普及、利害関係者との協議を通じて持続可能な森林経営計画の策定を奨励
- 森林法の執行とガバナンス(FLEG)に関する各地域の閣僚プロセスを通じて特定された活動を支持、国際熱帯木材機関(ITTO)等関連する多国間フォーラムの関心の積極的喚起
- G8メンバーが実施する木材生産国支援の取組の間の協調を促進
- ワシントン条約上の義務の遵守のための取組を支援、違法伐採を停止するための木材生産国・輸出国の能力構築を図るべく、林産業界、NGO、国際機関、パートナー諸国等との協力を継続
- 木材生産国に対する支援を通じ、森林に関する情報への公衆のアクセスを改善、違法伐採が環境、社会及び財政に与える影響についての木材生産国を含め公衆の意識向上を促進
- パートナー諸国とともに木材の原産地及びその流通を追跡するためのシステムの開発及び利用を探求
- 森林における違法活動を検知、報告、防止又は訴追すべく、木材生産国との協力及びその能力構築を通じて人工衛星から得られる情報を活用
- 現行のイニシアティブ及び森林モニタリング・評価プロセスを基礎として、森林減少・劣化及び違法伐採を監視するためのグローバル・ネットワークの発展を探求
- 森林減少・劣化に由来する排出削減(REDD)に関する議論に違法伐採対策に関する議論及び教訓を適切に反映、農業政策及びバイオ燃料政策を含む土地利用政策等の関連政策との連携を強化
- 木材生産国・消費国の税関・法執行当局間の協力強化のための方策を特定
- 違法伐採及び関連取引への対処、マネーロンダリング対策の推進、林業部門の企業会計の透明性向上に資する民間部門の投資に対し適切な配慮が払われるよう奨励する可能な措置を検討
4.フォローアップ
G8森林専門家は、世界規模での森林減少及び森林の劣化が憂慮すべき速度で進行しており、違法伐採がその大きな要因であり続けていることを指摘。違法伐採及び関連取引を食い止めるため、更なる課題に取り組み、前進のための途を追求することを約束。国際社会がこの問題に対処する上での政治的なモメンタムを引き続き必要としていると認識。
この問題の国家レベル、地域レベル、あるいは世界規模での解決策を見いだすべく努力を続ける中で、約束の達成状況のレビューを行うとともに、その教訓を共有し、他の関連する諸パートナーを関与させつつ、違法伐採及び関連取引に対処する協調的な措置の選択肢を引き続き探求するため、相互に緊密に連絡を取り合い、機会ある毎に、そして、2010年に会合を行う。
別添1:2005年の「G8環境・開発閣僚声明」(PDF)
別添2:「グレンイーグルズ行動計画:気候変動、クリーンエネルギー、持続可能な開発」(PDF)
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