地球環境

「アジア森林パートナーシップ(AFP)第5回実施促進会合」の結果概要について

平成17年11月
  1. 日時・場所

    11月13日(日曜日)から15日(火曜日)までの3日間、横浜市・パシフィコ横浜において、日本、インドネシア、国際林業研究センター(CIFOR)及びザ・ネイチャー・コンサーバンシー(TNC)の共催で「アジア森林パートナーシップ(AFP)第5回実施促進会合」が開催された。

  2. 参加者等

    今回の会合には、AFPパートナーを中心とする23ヵ国(日本を含む)の政府、7つの国際機関、内外の多数のNGO(非政府組織)・研究機関・産業界等から、合計約150名の参加があった。日本からは、前田林野庁長官、西村外務省地球環境問題担当大使をはじめ、林野庁、外務省、環境省からの出席があった。

  3. 今回の会合の主な成果

    (1) パートナー・フォーラム(AFPの意思決定を行う場)
    今次会合では、「AFPの強化のための組織事項と意思決定の仕組みに関する発表」(参考1)が採択され、1)組織運営に関して、AFPの設立と発展を主導してきた日本、インドネシア、CIFOR及びTNCから構成されるリーディング・パートナーに代わって、関心を有するパートナー(参考2)と事務局から構成される「運営委員会」が新たに設置され、2)事務局の役割を明確化・強化し、CIFORがその情報共有部門を担当しつつ事務局を引き続きホストすることとなった。併せて各パートナーからの任意の人的・資金的貢献が要請され、3)採択された「AFPの強化のための組織事項と意思決定の仕組みに関する発表」に基づき第1回の運営委員会が開催され、日本とインドネシアが共同議長に選任された。

    (2) パブリック・フォーラム(AFPの活動を一般に普及広報する場)
    事例報告(参考3)では、1)違法伐採対策関連として、合法性と木材の履歴システムに関する必須基準の開発、日本政府の政府調達政策を通じた違法伐採対策、マレーシア木材認証協議会による木材認証スキーム、インドネシアの違法伐採の現状、シベリアの環境破壊的な伐採と違法木材貿易、2)森林法の施行とガバナンス(FLEG)関連として、TNCのパートナーシップ、森林の所有形態・利用権及び関連契約の動向、良いガバナンスと地方分権化、カリマンタンにおけるパートナーシップ、ITTOとFLEG、アジアFLEGの現状、中国におけるFLEG等が行われ、参加者で活発な意見交換と関連する国際的なプロセス等との更なる協調の必要性が確認された。

    (3) 新たなパートナーの参加表明はなかったが、パプアニューギニア(PNG)が正式参加に向け国内最終手続き中であることを表明した。

  4. なお、平成18(2006)年に開催が予定される次回(第6回)の会合については、アジア地域の関連国際会議を活用して開催する方向で、運営委員会にて今後調整されることとなった。

(参考1)

AFPの強化のための組織事項と意思決定の仕組みに関する発表(抜粋)

  1. AFP会合

    (1) パートナーは原則年1回会合する。年次会合は、パートナー・フォーラムとパブリック・フォーラムにより構成される。

    (2) パートナー・フォーラムは、各パートナーの共通の目標と活動の実施及び事務局運営に関する決定を行う。透明性の確保の観点から、パートナー以外の者も出席できる。

    (3) パブリック・フォーラムは、関心を有する全ての者が参加できるよう開かれており、各パートナーの共通の目標と活動を促進させる。

  2. 運営委員会

     従来、日本政府、インドネシア政府、CIFOR、TNCがAFPの活動を牽引してきたが、この役割を運営委員会が引き継ぐ。運営委員会は、関心を有する各パートナーのフォーカルポイント(窓口)及び事務局調整員から構成される。運営委員会の役割は次のとおり。

    (1) 各パートナーの共通利益の特定。
    (2) AFPの運営の際に生じる各種課題の調整支援。
    (3) パートナー相互の十分な情報交換の確保。
    (4) 具体的活動の実施を促進するため、各パートナーのアイデアや関心を引き出す。
    (5) パートナー相互の会合の促進。
    (6) 事務局運営及びAFPの特定の活動を実施するための財源の特定。
    (7) 必要に応じた事務局への助言。

    • 運営委員会のメンバーはパートナー相互及び事務局と頻繁に連絡を取り合う。
    • 運営委員会はパートナー・フォーラムにおける委員長を選出する。
    • 運営委員会は事務局、CIFORとの相談を踏まえ、事務局調整員の任命を承認する。
  3. 事務局

     事務局の役割は次のとおり。

    (1) AFPへの参加を希望する者の参加手続に関する支援・助言。

    (2) 郵便、ウェブサイト、Eメール等を通じた各パートナーへの情報共有活動の促進。情報に優先順位を付与し、パートナー相互の活動を連携させ、AFPの目的を促進。

    (3) 会合の日程等を各パートナーに通知することでAFPの活動に関する提案をパートナーから引き出す。同時にワークプランのフォーマットを提供。

    (4) 提案されるワークプランを潜在的なドナーが検討出来るよう、必要に応じ支援。

    (5) ワークプランの提案を、各パートナーの共通の目標、AFPの目的に合致させるように留意。

    (6) AFP会合及び関連行事の開催支援。

    (7) AFP会合に関する資料の準備。

    (8) AFPの中心テーマに関連するイニシアティブや組織との連携強化。

    (9) AFPの目的を支援するために実施されている活動内容の報告を各パートナーに促すとともに、年次会合での検討用に報告概要を確認。

    • 上記(1)~(3)、(9)については、現在の事務局活動及び予算の範囲内。
    • 上記(4)~(8)については、追加的な人員、予算が確保された場合に実施される。
    • CIFORは、引き続き事務局をホストし、従来通り、任意拠出により技術的・資金的な支援を受ける。

(参考2)

AFPの参加パートナー(平成17年11月15日現在)

  1. 政府・・・17ヵ国
    オーストラリア、カンボジア、中国、フィンランド、フランス、インドネシア、日本、大韓民国、マレーシア、オランダ、フィリピン、スイス、タイ、英国、米国、ベトナム、欧州委員会(EC)
  2. 国際機関・・・8機関
    アジア生産性機構(APO)、アジア開発銀行(ADB)、国際林業研究センター(CIFOR)、国連食糧農業機関(FAO)、国際熱帯木材機関(ITTO)、国連森林フォーラム(UNFF)事務局、国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)、国連大学(UNU)
  3. 市民社会・・・9組織
    ザ・ネイチャー・コンサーバンシー(TNC)、世界資源研究所(WRI)、WWFインドネシア、トロペンボス・インドネシア、マレーシア木材認証協議会(MTCC)、トロップバイオ・フォレスト、地球環境戦略研究機関(IGES)、地球・人間環境フォーラム(GEF)、PNGエコフォレストリー・フォーラム

(参考3)

今回の会合で提案・紹介された具体的な取組の例

  1. 合法性と木材の履歴システムに関する必須基準の開発
    • 合法性の基準として、英国-インドネシア間の合意の7原則14基準49指標をベースに、森林経営と木材加工の合法性を判定するマトリックスを構築。
    • このマトリックスを半島マレーシア、サバ及びサラワクにて現地適用。合わせて、既存の認証システム(FSC、MTCC等)にも適用。
    • 今後は地域での定義の調整と共通の基準・指標の作成、必須基準の段階的な開発を提唱。
  2. 森林の所有形態・利用権及び関連契約の動向
    • 森林の利用権が持続可能な森林経営(SFM)を阻害しているか否かは明らかではない。
    • 多くの利用者・管理者は依然として役割、責任及び権利に関して曖昧なまま。
    • アジア地域において権利が委譲された森林の面積は限定的。
    • 利用権の保証はSFMにとって必要条件であるが十分条件ではない。
  3. カリマンタンにおけるパートナーシップ
    • 主要な利害関係グループ間の対話促進。
    • 天然資源の衡平な配分を確保する政策とメカニズムの促進。
    • 持続的な開発に即した森林と土地利用とのモザイクの設定に関する技術支援。
    • 地域住民の生活向上に資する森林関連経済活動を含むSFMの展開促進。
    • 対象として、1)保護地域での活動、2)荒廃地(インドネシア全体で30百万ヘクタール)での活動に分けて、3)地方分権化の中での有効なメカニズム-トップダウンとボトムアップアプローチの併用と4)長期的と短期的な便益のバランス調整。
  4. TTOと森林法の施行とガバナンス(FLEG)
    • 第31回理事会決議6に基づき、11カ国(ボリビア、ブラジル、中国、コンゴ共和国、インドネシア、日本、マレーシア、PNG、タイ、英国、米国)にて輸出・輸入量の乖離調査を実施。
    • 第37回理事会での分析報告にて1)計測単位の錯誤・相違(換算係数)、2)税関分類の錯誤、3)違法行為を指摘。
    • 違法伐採と違法貿易に関する事例調査-ペルー、ホンデュラス、マレーシアにて実施中、ブラジル、エクアドルは準備中。予算にはまだ余裕あり。
    • ITTOとしては、これまでに違法伐採対策とFLEG向上のためのプロジェクトに7百万ドル以上を支出- 1)木材履歴システムと関連統計情報の改善、2)違法行為の抑制のための地域共同体の参画の強化。
    • 直近の第39回理事会にて承認された、FLEG関連のプロジェクトの総額は5百万ドル強。
  5. マレーシア木材認証協議会(MTTC)による木材認証スキーム
    • マレーシアの木材産業は、1)GDPの4.3%(2004年)、2)輸出額は33億ユーロ(2004年)、3)労働力の3.5%(2003年)。
    • MTTCは1999年1月に発足。MTTCスキームは2001年10月より段階的アプローチで開始。
    • 2005年よりは、FSCの基準・指標をひな形として導入。
    • 現状- 1)認証森林面積は4.73百万ヘクタール、2)加工流通(CoC)認証は66企業・工場、3)輸出実績40千立方メートル(2005年9月末)
    • 汎アセアン木材認証イニシアティブも開始された。
  6. インドネシアの違法伐採の現状
    • 現状- 1)世界最大の森林減少-年間3.8百万ヘクタール(2003年)、2)過剰な木材加工産業、3)はびこる密輸業者、4)官吏の汚職と無法状態の蔓延
    • 国際的な需要増- 1)世界の木材産業の生産額-160億ドル(1998年)から299億ドル(2020年)へ、2)EUは1999年に10百万立方メートルの熱帯材を輸入したが、半分1.5億ドル相当は違法材。
    • 中国は1997年から2002年にかけて木材輸入量が倍増-54百万立方メートルから122百万立方メートルへ。内、丸太は5倍増。中国は世界最大の家具製造、合板でも世界有数。
    • 4大違法木材貿易ルート- 1)イリアン・ジャヤから中国、2)カリマンタンからベトナム、3)スマトラから半島マレーシア、4)カリマンタンからサラワク。
    • イリアン・ジャヤから中国ルートでの役割- 1)インドネシア(ブローカーと安全担当)、2)マレーシア(伐採作業とロジスティック)、3)シンガポール(貿易業者、船荷主)、4)中国・インド(輸出先)
    • インドネシアの合法性証明スキーム- 1)合法性の証明はSFMへのステップ、2)第三者合法認証の重要性、3)消費国・企業が違法や素性の分からない木材を市場から排除し、それらの輸入を処罰する。
  7. シベリアの環境破壊的な伐採と違法木材貿易
    • 現状- 1)管理体制の欠如の結果としての環境破壊的な伐採の問題は、違法伐採問題へ、2)森林破壊による環境的・社会的損失は、歳入の減少へ、3)汚職の結果としての違法伐採問題が法律の施行という観点からの課題、4)中央集権の強化は地方での官吏の権力の低下をもたらし、汚職の蔓延を引き起こしている。
    • 何が足りないのか- 1)科学的な森林資源調査の方法・技術、2)地域住民をベースとした林業を支援する政策、3)特用林産物や観光を支援する政策
    • 違法伐採の種類- 1)完全なる違法性(偽装された文書、または文書なし)、2)半分程度の違法性(積載量が文書通りではない)、3)伝統的な違法性(正式な文書を違法で入手)。
    • 違法貿易の種類- 1)完全なる密輸(極めて限定的)、2)税関への不正申告(樹材種)、3)税関への不正申告(実際の積載量)、4)賄賂によってニセの文書を発行させる。
    • 違法伐採のサイズ- 1)大規模(伐採権付与業者の違法行為)、2)中・小規模(伐採権付与業者や住民の違法行為)。
    • 政府としてのスタンス- 1)市場価値の高い樹種の輸出税の増税措置と将来の丸太輸出禁止、2)小規模の木材産業や観光産業への投資促進を含む森林・林業政策の再生、3)衛星情報等を活用した先進的な森林資源調査手法の確立、4)地域社会と木材加工産業の振興、5)主要な樹種の伐採許容量と輸出数量の整合性の確保、6)伐採権付与やモニタリングへの地域社会の参画の導入、7)税関での加工流通(CoC)認証の導入の検討。
このページのトップへ戻る
目次へ戻る