人権・人道

ハーグ条約の中央当局の在り方に関する懇談会第5回会合

平成23年12月7日

 7日,外務省において開催されたハーグ条約の中央当局の在り方に関する懇談会第5回会合の概要は以下のとおり。

1.出席者

座長:
小早川光郎・成蹊大学法科大学院教授
出席者:
棚村政行・早稲田大学法科大学院教授
藤原靜雄・中央大学法科大学院教授
大谷美紀子弁護士(日弁連)
相原佳子弁護士(日弁連)
関係府省庁(法務省,内閣府,厚生労働省,総務省,
文部科学省,警察庁)等

2.議事要旨(議事録は,別途掲載予定)

(1)国内における子の所在の確知

(ア)民間の団体に対する情報提供の依頼
  • 民間団体に対し情報提供を求めるべきではあるが,一律に義務を課すべきではない。情報提供を義務づける民間の団体は,政令で団体のカテゴリー名を列記する形として限定することが適当。
  • 条約上中央当局は子の所在の確知のために可能な限りの措置を講じなければならないとされていることから,中央当局は民間団体との間で必要な情報(子の所在の確知や子の社会的背景の情報交換に係る情報等)の提供が受けられるよう連携体制を構築すべきである。
(イ)民間のDVシェルター及び私立学校に情報提供を求めることの適否

 (内閣府から,別添の資料を配布しつつ,民間のシェルターでの滞在期間は,短期間であるため,民間のシェルターに照会しても既に転出している可能性が高い,そうした状況においてなお民間のシェルターに情報提供を求めることはDV被害者の不安を煽ることになり,得策とは思われない旨説明。)

  • 滞在の延長が可能な民間のDVシェルターでは所在情報を持っている可能性があること,また,民間のDVシェルターの数が民間の児童相談所や保育園に比べ極端に多いわけではないこと等の理由から, DVシェルターから情報提供を受ける必要がないとは言えない。情報提供に対する不安感はどの団体でも同じであり,中央当局からその先に漏洩されないことが重要で,そうした制度設計になっている。なお,問題としているのは民間のDVシェルターであって行政が設けるシェルターから情報を得ることは問題ないとの理解でよいか。(内閣府から,行政が設けるシェルターについては情報提供依頼の方式の問題にとどまる,民間DVシェルターが問題である旨発言。)
  • 条約上の義務を果たすため,私立学校に対し情報提供義務を課すことは必要であることは承知。他方,「各種学校」に当たらない無認可の学校やフリースクールといった地方自治体が把握していないようなものにまで情報提供を求めることは,その理由と必要性を慎重に判断する必要がある。また,実務上の問題として地域を特定せず全国一律に照会をかけることは非効率であり,照会の対象地域を限定した形とする必要がある。
(ウ)裁判手続のための相手方の氏名の開示
  • 申請者より訴訟を提起するために裁判の相手方氏名につき中央当局に照会があった場合,中央当局は相手方氏名を申請者に伝達した旨を相手方に伝えるという点に関し,申請者から申請書を受け取り,相手方と中央当局が接触する際に,今後の段取りについて説明する中で,申請者が訴訟を提起する際には相手方氏名を開示する旨を伝えれば十分であり,開示した旨を相手方に伝達する必要はないのではないか。

(2)子の任意の返還又は問題の友好的解決

 (外務省から,内閣法制局と種々調整を進めている中で,中央当局が旅券の任意提出を促し及び保管することにつき規定を置くことは,法制上問題があるとの指摘を受けているとして,第2 6.(2)は削除することとしたい,他方,裁判所が旅券提出命令を出せないか法務省とも検討している旨説明。)

  • 内閣法制局との関係で外務省が困難な立場におかれていることは理解できる。他方,裁判所による出国禁止命令の発出もできないと子の再連れ去り防止のために実効的な措置を講ずることができず,問題がある。弁護士による旅券の保管も事実上難しいと考えられるところ,他の方策につき再度検討願いたい。

(3)子との接触に関する援助 

  • 前回の懇談会で議論したとおり,子が国境を越えないケースについては,子との接触に関する援助の対象とはならないことを踏まえ,論点まとめの書き振りはより精査すべき。

(4)不服申立ての在り方

  • 返還援助申請又は接触申請の却下についてのみ不服申立てを行えるようにするとの立案する側としての考えについては異論はなし。他方,不服申立ての対象となる行政行為と不服申立てを行うことができる者については,説明振りはより詳細な検討が必要と思われる。

(5)その他

  • 懇談会という場はなくとも,今後の政令,省令,ガイドライン等の作成作業についても,アドバイスをしていきたい。

3.配布資料

  1. (1)論点まとめ(PDF)PDF
  2. (2)参考資料

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