人権・人道

ハーグ条約の中央当局の在り方に関する懇談会
第5回会合 議事概要

平成23年12月7日

(小早川教授)

それでは,時間になりましたので「ハーグ条約の中央当局の在り方に関する懇談会」第5回会合を開催いたします。

なお,本日は,杉田委員が御欠席です。

初めに,配付されている資料について,事務局からの確認をしていただきます。

(辻阪室長)

おはようございます。

一番初めに,懇談会 第5回会合という1枚紙。
出席者の紙。
座席表。
中間取りまとめに関する意見募集の結果 法務省民事局と書いてある1枚紙。
意見募集の結果について 部会資料9と書いてある分厚いもの。
中央当局の在り方論点まとめ 外務省というもの。
最後に,内閣府男女共同参画局と書いてある1枚紙。

以上でございます。

(小早川教授)

よろしいでしょうか。

続きまして,法務省から,前回の法制審議会での議論についての御報告をいただきたいと存じます。

(法務省(金子官房参事官))

おはようございます。法務省の金子です。

それでは,前回,この懇談会の後,法制審議会が2回開催されておりますので,その概要について若干御説明させていただきます。

前回の懇談会の直後に,中間とりまとめに対する意見募集の結果を公表いたしました。その結果につきましては,大部なものですが,本日配付をお願いしましたので,詳細は後ほどごらんいただければと思います。

このうち,パブリック・コメントの結果も踏まえて法制審議会において2回検討しておりますので,このパブリック・コメントについて,意見が分かれているところと,それに対する法制審議会での検討状況を中心に御説明したいと思います。

この厚い冊子の4ページをめくっていただけますでしょうか。

子の返還のための裁判手続をどの裁判所が行うかということにつきまして,もともと中間とりまとめの段階でも3案を併記しておりまして,これでパブリック・コメントにかけたわけでございます。甲案が東京家裁のみ,乙案が東京家裁と大阪家裁の2庁のみ,丙案が高裁所在地の8庁の家裁に管轄を認めるという案でございまして,これにつきましては,パブリック・コメントの結果も分かれております。パブリック・コメント全体に回答をしていただいた方は少なく,そういう意味で数だけで比較できないところもありますけれども,数としては丙案が多かったということであります。日弁連は丙案プラス沖縄という意見でございました。

他方,裁判所と大阪弁護士会が甲案あるいは乙案という状況でございまして,これを踏まえて,法制審議会の部会の方では検討しておりますけれども,今のところ乙案という方向でまとめをすることができるのではないかという状況でございます。

53ページ,項目34の返還命令が出た後,それをどのように実現するのかという問題につきましては,もともと間接強制は認めるとしつつ,その他の方法の実現可能性についてはオープンの形で意見募集をしたところでございます。これについては,間接強制のみを認めて,直接強制に反対する意見,間接強制のみでは実効性に問題があるとして,より強力な手段を認めるべきだという意見など,さまざまな意見が寄せられました。どれが多数ということは言えない状況でありました。

法制審の部会の方では,意見がさまざまに分かれておるところでございますが,今のところ,子が現在監護状況にある場所から,常居所地に向かう交通手段に乗せるというところまでの手続をどのようにしたら,子の福祉の問題と実効性の問題とをうまくバランスをとりながら実現できるかという観点から検討しているところでございます。

今のところ,講学上は代替執行に近いといいますか,執行官が現場に赴いて,現場で母親から子どもを解放するというところまでは行い,その後は,主として申立人に来ていただいて,しかるべき補助者を付けて空港まで連れて行っていただくということでどうかということで話し合いが進んでいる状況でございます。

返還拒否事由につきましては,65ページです。

これも中間取りまとめの御説明をさせていただいたときに,甲案,乙案の御説明をさせていただきましたが,返還拒否事由につきましては,条約上,幾つか規定がございますが,(4)のところが主として問題になっているところでございます。

(4)のところは,文言上は66ページの乙案の冒頭3行にあるような形が条約上の返還拒否事由として明示されているものでございますけれども,どういうものがこれに当たるのかということがこれだけではなかなかわかりにくく,利用者にとりましても,裁判所にとりましても,もう少し具体的な規定の仕方ができないかということが問題になっておりますので,法制審議会でもこの点を考慮して,甲案,乙案を準備したところでありますが,甲案はdに当たるものを例示的にくくりだしまして,a,b,cに当たればとりもなおさずdに当たるということで,返還拒否事由に当たると考えるものです。乙案は返還拒否事由としては,甲案でいうdの部分と同様のものを乙案の冒頭3行の部分に返還拒否事由としては1つ定めた上で,それを考慮するに当たっては,a,b,cのような事情を考慮するというもので,パブリック・コメントではどちらかといいますと乙案の方が優勢でありました。部会の方でも,文言の基本的な修正はなお検討する必要があるとしつつ,全体としては,乙案の方向で話が進んでいるという状況であります。

以上,簡単ですが,御説明させていただきました。

(小早川教授)

ありがとうございました。

次は,お手元にあります,これまでの懇談会での議論及びパブリック・コメントの結果を踏まえた論点まとめに基づいて議論を進めていきたいと存じます。

本日の議論を踏まえて,この論点まとめを確定させ,それをもって懇談会の成果としたいと考えております。

なお,時間の都合によりまして,4つの部分に分けて議論をしていただきたいと存じます。

では,資料の論点まとめですが,最初は論点資料の1~9ページまででして,項目で申しますと第1及び第2の(1)~(4)ということになります。これは国内における子の所在の確知が中心になるかと思います。

まずは,事務局からの説明をお願いいたします。

(辻阪室長)

ポイントだけ御説明いたします。

まず,4ページ目の第2「4.国内における子の所在の確知」の(1)の部分です。真ん中辺りに「政令で定める公私の団体」がございます。

注1のところで「公私の団体」は,私立学校,民間の保育施設等子が利用している団体や,DVシェルター等子を監護する者が利用する団体,固定電話及び携帯電話の番号を管理する通信会社が想定される,政令で照会先の団体につき明示することとする,とありますが,内閣府より,DVシェルターについては政令に明記すべきではないのではないかという指摘があり,後ほど御説明いただきますが,内閣府からはペーパーが配付されておりますので,この点について御議論をいただければと思います。

次の点は,6ページの(2)の部分です。ここは前回の議論を踏まえまして,修正したところでございます。

前回までは,関係行政機関に対しては情報の提供を求められた場合は,遅滞なくそれを外務大臣に情報提供するとしておりますが,中央当局が得た情報について原則としては外に出さないという整理に変えたということを踏まえて,前回の懇談会では,例えば公立学校と私立学校で差を設ける理由は何なのか,民間団体についても同じような規定を置いてもいいのではないかといった御議論がありました。(2)は(1)に書いてあるところで「情報の提供を求められた者は,遅滞なく,外務大臣にその情報を提供する」としたいと考えておりますが,この点について御議論をいただければと思います。

外務省といたしましては,条約の趣旨から,可能な措置はすべて講ずるということになっていますので,条約の誠実な履行のためには,中央当局としては,公私の別なく入手すべき情報はすべて入手するという整理にしたいと考えております。

次の点は,8ページの(4)のところです。中央当局が得た個人情報をどのような場合に外部に出すことがあるのかということです。

まず,一番先に修正で恐縮ですが,(4)の「注1」が柱書きの部分にありますけれども,これは(1)の後に移動させていただければと思います。

(1)と(2)で,(1)は前回御議論いただきました,申請者が裁判手続きを開始するために必要な相手方氏名を申請者に開示するという場合でございます。

(2)は,前回の書き方だと,弁護士法に基づく照会は可能なのかという御質問もありましたので,ここは限定をしたいと考えております。「法令に基づく場合」と書いてありますが,今,法制局との間で書きぶりについて相談していますのでこのような書き方としていますが,(2)については3つ考えております。これは,この上の(3)のところにある部分ですが,警察に対して行方不明活動を依頼することに際して情報を提供する場合,2番目としては,児童相談所に対して子の安全の確認を求める場合,

返還申立ての事件が継続している裁判所に子の所在に係る情報の提供をする場合,

この3つを法律上規定して,法令に基づく場合として,中央当局が取得した個人情報を提供するということを考えております。

この部分につきましては,以上です。

(小早川教授)

それでは,今,言及がありましたが,内閣府の方から資料が出ていると思います。これについて何かございますか。

(内閣府(原室長))

では,説明させていただきます。

基本的な考え方としまして,今回必要なところから必要な情報を取るということで議論を進めてきたかと思いますけれども,共通の理解としまして,DVシェルターというものが次の居所に移るための一時的な準備のための場所,短期的な利用施設といったものであるということを理解していただきたいと思っております。

すなわち,新しい居所を探したり,住民票の手続ですとか,そういった様々な手続をその場所で行っております。ですので,そこでしか情報を取ることが想定されないということが余り想定されないところについて,あえて対象とする必要はないのではないかと考えています。今回,あえて情報を取る場所というものを絞って明記するわけですが,あえてその中に入れないと情報を取れないということが余り想定されないと我々として考えております。

ここであえて「対象とする」ことで,今回,この担保法を検討するに当たって,DV被害者の不安感の払拭というのは非常に大切だということは皆さん共通理解だと思うのですが,逆にそれをあおるようになるのを我々としては懸念しております。

以上です。

(小早川教授)

ありがとうございました。

それでは,ただいまの御説明と御発言を踏まえて,最初の部分についての議論をいただきたいと思います。

お手が挙がっていますが,今,事務局から3点ありましたので,その一つずつやっていきたいと思います。ほかにもありましたら,それはまたその後でということにさせていただきたいと思います。

最初は,4ページの,ちょうど今,内閣府からも御発言のあったDVシェルターを中心とする問題点ですが,これについてございますか。

では,棚村委員,どうぞ。

(棚村教授)

前回,私も藤原委員に賛成して,民間の機関に対しても必要な範囲で情報提供を求めるべきだという意見を申し上げました。DVシェルターは確かに加害者からの居所を隠さなければいけないということで,所在等も割合と厳格に秘匿をされたり,公表していないとか,情報についても非常に慎重にということは理解をしています。

ただ,ハーグ条約での条約上の義務を中央当局が実施をしていく,責任を負っていくというときには,やはり子どもの所在を特定しなければいけない。問題の解決について援助をしていかなければいけない。関係機関等の連携協力をしていかなければいけないということで,民間シェルターの情報も必要がないというお話もあったのですが,例外を設けるべきかどうかについては疑問があります。

というのは,幾つかこの文章にも書いてありますけれども,シェルターと国と地方公共団体とかが信頼関係を維持する必要があるというのは,学校とかも全く同じで,私もDV対策関係のことはやっていますが,たしか民間のシェルターというのは80~100ぐらいだといます。

これに対して,例えば保育所や保育機関というのは2万3,000ぐらいあるわけです。私立の幼稚園でいくと,たしか8,200ぐらいあると思います。小学校,中学校は,この間,除外すべきではないというのは,小中になると公立は多いのですけれども,ただ,私立だけでも学校数は2万近くあるわけです。

私自身は,やはり信頼関係の維持というのは,学校も預かっている機関として,どこかに売るということにならないように気をつけなければいけないと思うのですけれども,1つは信頼関係の維持をするということと,中央当局が必要な情報を得るということ。それから,利用とか提供については,厳格な制限を設けていくということでいいのではないかと思います。

そして,期間については,短期間ということですから,これも原室長に申し上げるのはおかしいですけれども,私が知っている限り,原則2週間,3週間ということになっていますが,先ほど言ったように,生活保護を受けたり,住民登録をしたり,新しいアパートを見つけるには3か月とか半年,長いときは1年ぐらいかかることもしばしばあって,実際には,無料のところというのは短期間でかなり出なければいけないけれども,有料のところもあって,運営は大変なんですけれども,結局,1日3,000円ぐらい取るようなところもあって,そういうところは長期化するわけです。

そうなると,短期間とはいっても,今回のように段階的に出入国の記録とか,旅券の記録とか,戸籍,住民票とか,それもだめなときには就学情報というので,文科省などもそうだと思いますけれども,学校についても例外なくお願いする。児童相談所とかそういうところも,全国に一時保護所というところもあるわけですけれども,そういうところも特に例外を置かないのは,やはり段階的に所在を探しても見つからなかったときに,一番最後のところで協力をお願いせざるを得ない。だから,地方公共団体に行けばそれで済むんだとおっしゃっていましたが,地方公共団体に照会をしても,なおわからないという場合には,ここだけ外すという理由が,数においても,必要性においてもわかりかねます。民間のDVシェルターを慎重に扱うという趣旨は理解できますけれども,それでほかの国を見ても,そこだけ外しているというところは見当たりません。ですから,そういう意味で言うと,段階的に協力が得られやすいところからやり,公共団体とか国の機関とかにお願いをし,そして民間の機関でどうしてもわからないときに,それがわからなければ裁判の手続も何もできないということが起こり得るということになります。これは中央当局としても居所を発見して,保護をして,任意の返還の解決もしなければいけないということですので,一番どうにもならないときの最後の砦としてお願いしてみる。このような中で民間シェルターだけが何か例外の扱いになって,限定的,例外的,慎重にやるという前提があるのであれば,100ぐらいある民間の機関のここだけが,ほかの児童養護施設とか600ぐらいあるところとか,いろいろな民間の施設ですら外すというのはかなり大きな疑問があります。

ですから,慎重に扱うことと段階的な照会をやるということの必要性みたいなものをきちっと踏まえた上でやっていくということは,どこの機関にとっても大事なことです。学校だって,保育園だってそうだと思います。

そういうことなので,最後の手段として,どうしてもそこを確認しなければ居所がわからない。つまり,出国の記録もないし,入国した記録はある。そして,いろんな公的な機関に御協力をお願いしたけれどもわからないというときに,最後はそこだけがわからないということになるといいのかなというのは,ちょっと長くなりましたが,私の意見であります。

(小早川教授)

今の点につきまして,ほかにはいかがでしょうか。

大谷委員,どうぞ。

(大谷弁護士)

今の点に関連して,まず,外務省に確認のためにお伺いしたいのですが,4ページの「4.国内における子の所在の確知」の御提案の内容の確認です。

太字の本文の中に「政令で定めるところにより」が2つあります。2行目の「政令で定めるところにより」は,どのような手続で何を聞くみたいなことを政令で定めるという趣旨かなと読んでいたのですが,3行目の後ろの方の「政令で定める」が公私の団体にかかっています。それプラス注1で「公私の団体」について例を挙げてくださっているのですが,その中身を見ますと,挙がっているものとしては,私立学校,民間の保育施設と,次にDVシェルターが入ってくるのですが,ここで3行目の「政令で定める」,つまり所在確知を求める情報の収集先として特定される政令は,民間の団体についてのみ政令で定めることをお考えなのか,公私,つまり公的な団体についても政令で定める限定列挙をして,そこにのみでないとかけられないということなのか。

その前のところを見ますと,関係行政機関とかが挙がっていますので,理解としては,公的団体には広く,特に政令で定めなくても公的というだけで,ここに挙がっている関係行政機関,関係地方公共団体等すべてが入るけれども,民間については政令で特定するのだという御趣旨かどうかを先に確認させてください。

(小早川教授)

では,お願いします。

(辻阪室長)

基本的には,公的団体においても,関係行政機関ですとか,関係地方公共団体のところで読めないような公的団体についても,この「公私の団体」というところで定めたいと思っていますので,民間団体と公的団体の両方を政令で定めるという方向で考えております。

(小早川教授)

それは,具体的には何ですか。公立学校は地方公共団体ですね。公立保育所も。

(寺尾事務官)

補足させていただきます。

関係省庁さんとも内容の御相談をさせていただいている中ではございますが,ここで前者の部分で「政令で定めるところにより」という書き方で書いてあるのは,どのような手続を踏んで,どの機関,どの団体あるいはどの窓口に照会を行うかということを政令で定めるという趣旨で書いてございます。

例えば住民票に関して言えば,住民基本台帳法に定められております住民票の写しの交付の手続にのっとって住民票を取得し,写しを交付していただくという手続を踏むことを今,検討しておりますので,それにならったような形で,ほかの関係団体に対しても一定の手続を定めた上で,こういう照会先にこういう形でこういう情報を照会いたしますということを明確に定めるという趣旨でございます。

その意味では,公共団体であれ,公私の団体であれ,照会する先の団体に関しては限定するということで考えております。

(小早川教授)

大谷委員,どうぞ。

(大谷弁護士)

まだ十分に明確でないので,もう一度重ねていて恐縮ですが,もう少し聞き方を変えますと,まず,これが法律のレベルで決まり,更に政令で後者の団体については定められるとしますと,これはまず限定列挙という理解でよいのかという質問が1点。

それから,もう少し端的に伺いますと,限定列挙だとして,そこに挙がっていないものについては,そもそも情報を求めることができないという理解で考えた場合,今,議論されている内閣府からのペーパーの配偶者からの暴力の防止,配暴法,DV防止法と言いますが,26条の民間団体ということに限定して今,御意見が出ているように読めるのですが,そうするとDV方の被害者が一時的に避難している公的施設が現在,子の各地の確知の必要な情報の提供先となっているのか,なっていないのか。外務省の御提案としてはどうなっているのかをお聞かせください。

(小早川教授)

いかがでしょうか。

(辻阪室長)

今の御質問の点につきましては,限定列挙を考えています。 DVシェルターに関しては民間のもの,そして公的なものの両方を考えております。

(小早川教授)

限定列挙というのは,固有名詞ですか。それともカテゴリーですか。例えば内閣府ペーパーにあるようなDV防止法第26条の民間の団体ということですか。

(辻阪室長)

カテゴリーで,民間の団体ですと私立の学校法人ですとか,そういうカテゴリーで列挙することを考えております。

(小早川教授)

大谷委員,どうぞ。

(大谷弁護士)

今,明確にしていただいたことへのレスポンスと,中間とりまとめに対するパブリック・コメントについて出した日弁連の意見について,若干説明させていただきたいと思います。

まず,日弁連の意見としては,公的機関について特段,照会先について限定を求めたわけではなくて,民間というと非常に広くなり過ぎるので,民間団体にも情報の提供を義務づけるべき。これは情報収集をするという目的からは義務づけるべきだけれども,こと民間団体に関しては,照会先を可能な限り特定することが必要なのではないかという意見を申し上げました。

公的,民間を合わせて何の情報を求めるのか。それが無限に広がり過ぎないように,あくまで子の所在の確知に必要な,具体的には,端的に言いますと,住所,居所になりますが,そのために必要な情報ということで,はっきりと特定していただくべきではないかというのが日弁連の意見でございました。

現在,別に日弁連の意見を取り入れていただいているかということを関係なしに議論を進めますので,それで勿論結構なんですが,以上のことを前提に今の議論のやりとりの中で明確にしていただいたことについて,次の発言です。

限定列挙で,しかもそれが公的団体も含む限定列挙で,それがカテゴリー別なんだということになりますと,今の太字の御提案だけだと,いわゆるDV防止法で被害者が一時保護を求めて利用する施設が入っているようには読めないと私は読みました。そこがまず入るという御趣旨だとすると,DVシェルターという言葉づかいが,内閣府さんの方では民間シェルターと読んでおられて,そこにそごがあるのではないかということが1点。

それから,内閣府の方の御意見はそうだとすると,民間シェルターは含めるべきではないけれども,公的な保護施設はよいという御意見なのか。最後の質問は内閣府への御質問ですが,その点を整理しないと,議論が錯綜しているように思いました。

(小早川教授)

どうぞ。

(辻阪室長)

外務省のペーパーの書き方が不正確なのかもしれないのですが,注1で外務省として「DVシェルター」と書いた趣旨は,公的なものと私的なもの両方含めてということを意図しております。

(小早川教授)

全体の趣旨としては両方含む,ただ,ここで太字の部分と注の部分で,政令に書くという話が出てきますが,それは文言からすると民間の部分についてということか。先ほど話が出ましたように,公的なものは「地方公共団体」に含まれている,それは政令で限定列挙するわけではない。そのように読めます。

(辻阪室長)

公的なシェルターが関係行政機関なのか,関係地方公共団体に当たるのか。その整理がまだ法制局ときちんとしていないというのがありまして,そういう意味で,ここは「公私の団体」という書き方をしていますが,公的なシェルターがどちらの分類に当たるのかということについては,今後詰めていきたいと思います。

(小早川教授)

そこは技術的な話で,範囲としてはもう決まっているつもりであるということですね。

(大谷弁護士)

内閣府への御質問をお願いします。

(小早川教授)

それでは,内閣府さん,どうぞ。

(内閣府(原室長))

私どもが考えていましたのは,今回,カテゴリー別で限定列挙するということでは,要は聞く必要が高いカテゴリーを取り出して,それについて,民間団体全部ではなくて,特にここは聞く必要があるところを抜き出して政令で書き込むということを前提とした意見を受けていると考えまして,その聞く必要が高いところに入るのか,ほとんどそういうことは想定し得ないのではないかということで意見を出させていただきました。

DVシェルターに公私の団体の「公」も「私」も入るのかということに関しては,我々からは「私」の部分について今回意見を出させていただきました。「公」の部分については,勿論関係地方公共団体の一部であって,国から情報提供を求めるときに,関係地方公共団体に対してどういう聞き方をするのか。そういう問題ではないかと思っていましたので,今回は「私」のDVシェルターの部分について,カテゴリーで順位付けしたときに,限定的に,ここにも特に聞くべきだとすべきではないという意見を出しております。

(小早川教授)

今のお話だと「公」の部分については,対象の問題ではなくて,聞き方の問題。政令の問題でいいますと,上の方の「制令の定めるところにより」の政令で何か書くかどうかということのようですね。

大谷委員,どうぞ。

(大谷弁護士)

先ほど,太字だと公的なシェルターというか,保護施設が入っていないように読めると申し上げたのですが,先ほど外務省の方から御説明をいただきましたので,それは入っている理解ということで理解しました。

それを前提に,内閣府の方でも,聞き方の問題はあるけれども,そこから情報を聞くことができるかできないかというレベルで言うと,そこは特に異議をおっしゃっていないと理解しました。それでよければ,私も今の点では賛成です。

次に,民間団体ですけれども,先ほど申し上げましたように,日弁連では,民間団体については照会先を特定してほしいという意見を申し上げましたので,その意見を前提にそこで限定列挙にしてしまうと,今度は,今,内閣府の方でおっしゃったように,特別取り出して聞く必要があるかという点では御懸念をおっしゃるのはわかるんですけれども,逆に書いておかないと取れない。棚村先生がおっしゃったように,全くそこには情報が取れないカテゴリーを逆につくってしまうということになってしまいかねないので,それは棚村先生も先ほど御意見をおっしゃったように,私どもはみんなDVの被害者の保護に強い関心と懸念を持っていまして,このハーグ条約の実施においても,そこが最大のかなめであると思っていますけれども,そのためにこそ,これまで例えば返還拒否事由であるとか,あるいは裁判手続中も,その情報が知らされないようにですとか,いろんな工夫を重ねてきておりまして,この懇談会でも,当初シェルターのことが1回目の懇談会でちょっと出ましたときに実は懸念を持ったのですが,その当時は,取得した情報が申立人に知らされるのかどうかですとか,あるいは裁判手続全体がどうなるかというのがわからない段階でしたので,強い懸念を持っておりましたが,随分議論が進みまして,取られた情報は申立人には基本的には開示されないとか,裁判手続中もそこはしっかりと開示しないようにつくっていただいているということを前提にしますと,何かある種のカテゴリー,しかも,DVの被害の案件がハーグ条約では非常に多いのではないかということが言われている中,逆にそこをカテゴリー的に外す結果となるようなつくりというのは,仕組みとしてどうなのかという懸念を持っております。

(小早川教授)

では,相原委員,どうぞ。

(相原弁護士)

大谷弁護士とほぼ同様の話になるかもしれないのですが,今,法制審の方で記録の閲覧のところが議論されております。その中で日弁連としましては,とにかく相手方の住所,つまり子どもの所在に関して,具体的にどこかということが申立人のところにわからないように,そこだけを非常に強くお願いしてまいっております。

そして,今の段階では,記録の閲覧の可否に関しましては,返還命令が出た後,見せるかどうか,閲覧が可能かどうかという段階まで至っております。

日弁連の中でもとくに,DVの事件を担当している弁護士からは,申立人に所在がわかることによる不安感があるということは非常に強く言われておりまして,内閣府からの御提案に関しては,その心情というのが全くわからないわけではなく,むしろそれについては強い危惧があるということはよくわかります。

ただ一方で,全体像を見たときに,先ほど申し上げました法制審での裁判所のかなりの判断を経た上での,その後での閲覧の可能というところまで進んできておりまして,その全体像からいったときに,中央当局にわからない部分を可能性として残しておくことに関しては否定的にならざるを得ないのかなと思います。非常に難しいところでありますが,そう考えております。

以上です。

(小早川教授)

ほかにございますでしょうか。

では,文部科学省さん,大谷委員。

(文部科学省(池原課長))

前回の会議の中で,私立学校を含む委託団体についての法的義務を課すことについては慎重に考えるべきではないかということを申し上げまして,文部科学省としては,できましたらその点は慎重に考えていただきたいと思っております。

外務省の方,それから,今,棚村先生とか,有識者の方からお話がございましたが,外国にもそれを外している例がないということですとか,条約上,この義務を果たすためには,民間についても例外を認めることはできないという御判断であれば,その辺を明確にしていただいて,私どもも私学の団体等に協力を求めていく上での説明も必要でございますので,その辺を明確にしていただきたいということが1点。

それから,学校の関係で申しますと,私立学校,学校教育法の一条校ですとか,あるいは各種学校については,教育委員会や自治体の方が把握できておりますけれども,例えば無認可のインターナショナルスクールですとか,不登校とか,学習障害児などを預かっているフリースクールなどもございますが,これらについては,自治体の方も情報を十分把握できていないということがございます。

そういう中で,全部例外なく義務を課すということもあろうかと思いますが,どこまでにするのかといったことについては,理由等,必要性等をまたこれから御判断いただく上で,明確にしていただきたいと思います。

また,以前にも申しましたが,ある一定の地域にローラーをして調査をかけていくということになりますと,それについての学校の負担等もございますので,その地域をどこまでローラーをかけて調査をしていくのか。特に先ほど申しましたような各種学校とか,無認可校,フリースクールなどについては,自治体の方でもなかなか把握できておりませんので,それらについては,かなり子の所在が,ここにいるだろうということで,確率が高いようなところに絞って照会をしていただくとか,その辺はこれから後での運用の検討の中での話になろうかと思いますけれども,その辺も十分検討していただきながら,運用の方法についても御検討いただければと思います。

以上です。

(小早川教授)

それでは,この問題については,あとお1人,大谷委員。

(大谷弁護士)

民間団体は,短期的な保護を前提としていて,そこから情報を取る必要がないという御説明と,不安感の払拭が大切とおっしゃった点に関してです。

先ほど,棚村委員も既に御指摘になられましたが,基本的には短期的な一時保護を前提としていると言いながら,現実には保護施設全体で見ますと,やはり6か月未満もかなりある上に,6か月~1年とか,1~3年あるいは更に長いということが見られる中で,民間団体の一時保護利用というのは,ある内閣府の調査だったと思いますが,20%,2割の方が利用されているという中で,そこから全く情報を取る必要がないとはなかなか言えないのではないか。

内閣府のペーパーで御説明を詳しくしていただいているのですが,民間団体から新しい居所に移れば,新たな居所については,地方公共団体に対して情報提供を求めることで必要な情報を得られるというのですが,今,文科省の方から御質問がありましたように,全国すべてに調査をかけるのか。あるいはこの辺りということで情報収集をするのかということで,基本的にはできるだけこの辺りにおられるのではないかということで,特定した地域で情報収集することの方が望ましいと思います。そうだとすると,最初の民間団体のところの情報の端緒がないと,その後どこにおられるかということも全く手探りでわからない。全体にかけなくてはいけないみたいなことに逆になるのではないかという懸念があります。

それと,仮に民間団体におられる期間が,例えば6か月未満だとしましても,この条約というのは,できるだけ早期に,できるだけ迅速に手続を始めて,子どもさんの状況を把握して,手続に乗っけて結論を出すということが好ましい手続だと思っていますので,そういう意味でも,最初の初動が大事というか,端緒の部分がむしろ大事なのではないかと思っております。

ごめんなさい,本当に1点だけ。不安感の払拭については,多分どこの機関もそうだと思われて,その出された情報が簡単に漏れるのではないとか,こういうふうにしか使われないということを徹底的に,この担保法ができて,もし実施されることになりましたら,お伝えしていく必要があるのではないか。そういうところでどこの機関についても必要なのではないかと思っております。

(小早川教授)

その点は,後の論点と関わります。中央当局,外務省としては,しっかりそこはやるんだ,ということで信頼していだたけるかどうかという話にもなるかと思います。

では,この最初の点につきましては,いろいろ御意見をただくことができたと思いますが。

どうぞ。

(内閣府(原室長))

先生方からいただいた御意見は,また持ち帰りまして,内部でも検討したいと思いますが,我々の問題意識としては,要はシェルターに入っている方というのは,基本は地方公共団体の委託なんです。ですから,地方公共団体から情報を聞けばいいのではないかと。

地方公共団体の委託ではない部分について,その人が本当にそこにいるのかという端緒は,そもそも得られることはないと思います。ですから,その必要性の順位づけをするときに,あえてそんな聞く機会がほとんど想定されないところを取り上げて入れることによって,まさにDV被害者の方たちを特定して引っ張り出そうとしているような不安感を与えるのではないか。そちらのデメリット,懸念の方が大きいのではないですかというのが,我々としてお伝えしたかった意見です。

(小早川教授)

その辺は,どういう網かけをして情報収集をするかという,先ほどから出ている点との関わり,あるいはこれも政令で定めるところによるという話になるのかもしれませんが,そういう問題があるだろうということで,この論点は一応締めたいと思います。

その次にまいります。

6ページ,民間団体についての情報提供を義務づけるというのですかね,強制はないのでしょうが法的に義務づけたいという点ですが,これについてはいかがでしょうか。

棚村委員,どうぞ。

(棚村教授)

私と多分藤原委員が前回そのような話をさせていただいたと思うのですが,やはり民間団体というのは,かなりいろいろ多様なものがありますし,それを全部網羅的にカテゴライズして,明示的に挙げられるかどうかというのは,私などは不安ですし,恐らく国とか地方公共団体でもつかみ切れていないようなところもあると思います。ですから,それに対して協力義務みたいな,情報提供を求められたら協力するという形で,是非一般的な義務づけですか。その強制とかというのはなかなか難しいかもしれませんし,その範囲も特定するのは難しいと思います。

例えば厚労省であればおわかりだと思いますけれども,児童福祉法で児童福祉施設といったときに,物すごくたくさんあります。私が知っているだけでも,乳児院とかそういうところから,保育所。先ほどのDVとの関係で言うと,母子生活支援施設とか,児童厚生施設。そこには児童館とか,いろんなものも含まれるわけですね。そういうものを全部網羅的にというのは,法令で根拠があってやるところはできますけれども,民間のところを全部網羅するというのは不可能に近いんだと思います。設置形態とか,運営とか,設立の目的とか,実際の運営がどう行われているかというところまでは無理だと思います。

ですから,これはやはりある程度一般的な情報提供を求められる,それに対して協力するという形でやっておいて,実際のサンクションというのは無理でしょうし,連携の在り方も具体的に定めるというのは,非常に多様だから,それで前回,ガイドラインとか,何らかの指針みたいなもので緩やかに設けて,その担保法みたいなところではきっちりこういう協力をする。それから,全部に対する網かけみたいなものは一応やっておく。ただ,具体的な協力の求め方とか,情報を出していただくやり方というのは,やはり公的なところと民間のところ,それぞれに相当違いが出てくるので,工夫をしていただくという形でやっていただければなという趣旨です。

(小早川教授)

藤原委員,どうぞ。

(藤原教授)

確認ですけれども,6ページは4ページの太字で書いてある(1)により情報の提供を求められた者は,遅滞なく,外務大臣にその情報を提供するものとするということなので,先ほど大谷委員から御議論のあった,後段の政令で書くと。そこにカテゴリカルに挙がったものについては,提供するものという仕組みであるということでよろしいんですね。

(辻阪室長)

法文にはなっていないので,書き方があいまいですが,政令で定められたものも含めて,その情報提供が求められた者は,遅滞なく,外務大臣にその情報提供をするという趣旨です。

(小早川教授)

今「含めて」と言われたけれども,勿論,政令で定めがなくても,事実上,情報提供を求めるということは,違法ではないかもしれませんが,程度はともかくとして,その場合にまで答える義務があるということになるんですか。

(藤原教授)

私の質問も同じような趣旨ですね。義務をかけるということなので。

(辻阪室長)

質問の趣旨がよくわかっていなかったのですが,(1)で書いた関係行政機関,関係地方公共団体,独立行政法人,国立大学法人の長並びに政令で定める公私の団体ということを(2)では,情報提供が求められた者というふうに考えております。それでお答えになっていますか。

(小早川教授)

藤原さん,どうぞ。

(藤原教授)

要するに,明確に義務をかけて,その義務としてここでそれに応じて情報を提供するものとする人たちと,一般的に例えば事実として求めがあれば,個人情報保護法だったら,23条1項4号で協力してくださいという形で求めるという場合と,2つあり得るかと思ったので,その場合に書き分けが要るのか。それとも,多分棚村委員がおっしゃったように,一律に義務をかけたら大変なことになるとおっしゃったと思うので,そこがどうか確認をしたかったという趣旨です。

(小早川教授)

済みません,個人情報保護法によりというのは,どういうことですか。

(藤原教授)

聞かれて,23条1項の列挙で,例えば4号で国,地方公共団体の事務に協力する場合がありますね。別にそれは実質的に協力すれば,例えば国賠のところで違法性が阻却されるかどうかの問題はありますが,必要性と合理性を自ら判断して協力するのは多分構わないということですので,そういう趣旨でした。

(小早川教授)

いかがですか。

(辻阪室長)

御指摘のとおりで結構でございます。

(小早川教授)

これも,まず照会先の網かけが一般的にあるわけですね。個別のケースでは,その中から,恐らくは,日本全国のあらゆるものに対して照会するわけではなくて,ある程度絞ってやるということになると思うのですが,余り狭く絞らないで,どかっと聞くときに,全部に義務がかかるのですかという話ですね。

そうではなくて,この辺は非常に必要でかつ有益な情報がありそうだから聞いているんです,それに対してはまじめに答えてくださいね,という感じになるのか。その辺は聞き方にもよるわけで,先ほどの「政令で定めるところ」にもまたかかってくるのかなという気はいたします。

棚村委員,どうぞ。

(棚村教授)

法律の組み方の問題だと思うんです。政令で定めたところというのが,基本的には一番情報を求めるときに所在確定のために必要なところの順位みたいなものを挙げていただければ,そういう中で網羅できないものが出てくるのではないかと思うんです。そういうところにも情報の提供を求めて,協力を求められるという形で,多分義務という形になったときに,一番必要度が高くて,そういうところはある程度限定をして,確実に情報を出してもらう。しかも,公的機関だったら,かなりはっきりした形で連携ができるようになってくると思います。

ところが,民間のところになると,なかなか連携とかが難しい部分も出てくると思いますので,やはり義務をかける範囲は,ある程度,政令でもってはっきりさせていく。

そして,その次に,それでも網羅できないときというので,先ほどちょっと発言をしたのですけれども,情報提供を求めるけれども,義務とまではしな。ただし,それに対して協力するものとするという二段階でやっていくのが,中央当局としては一番やりやすいのではないかという意見です。私の言い方がちょっと悪かったと思います。

(小早川教授)

この先の細かな制度設計になりますと,この場では決まりませんので,今の御発言を始め,いろいろ有益な御示唆が得られたと思いますので,この点はよろしゅうございましょうか。

次は,これも,その次の話ということになりますが,8ページ,よそへの提供ということです,原則は中央当局止まりで,例外はそこの2つという案ですが,これについての御発言はございますでしょうか。

相原委員,どうぞ。

(相原弁護士)

子の返還援助申請の対象である子の返還を得るための裁判手続を開始するために必要な相手方氏名を申請者に開示するということに関して,前回も議論になったかと記憶しております。特に相手方がTaking Parentである場合は,Taking Parentの名前だけですから,特段住所に関しては秘匿が可能。名前を言うだけですから,それ以上の情報は申請者,申立人の方にはいかないという理解をしております。

ただ,相手方が現に監護をする者ということで,Taking Parentではない人の氏名を申請者に開示するということについて,若干議論があったかと思うのですが,その上で相手方の氏名が具体的に現に監護するものでTaking Parentではなかった場合の対応なのですが,それについて1点確認させていただきたいと思います。

返還援助申請で子どもの所在の確知をした場合に,中央当局が任意の返還等を促すという手続を前提にされると理解しているのですが,そこら辺のところはどういう建付を考えておられるのでしょうか。といいますのは,やはり相手方に対して子のこういう申立てがなされているという情報と,任意の返還を促すという作業と,申請者に相手方氏名を開示するという順番というのがわからないので,お伺いしたいと思っております。教えていただけますでしょうか。

(小早川教授)

どうぞ。

(辻阪室長)

まず,子の所在の確知が行われたときには,中央当局は相手方に対して,今後どういう手続になって進んでいくのかということを説明します。そのときには,任意の解決ということも方法としてはありますということをお伝えしますし,また,それがうまくいかないような場合には,申請者は訴訟という手段に訴えることもあるということで,一番初めに相手方と連絡がついた段階で,今後起こり得ること,そして今後どういう手順になるのかということをまず一度御説明するという機会を持ちたいと思っております。

(相原弁護士)

今のお話の前提で,日弁連のワーキング等でも若干検討したのですが,その場合に,相手方の氏名がTaking Parentの場合は,あなたの住所は言いませんよということを多分説明されると思います。そのときに,監護者がTaking Parentでなかった場合には,やはりこういう申立てがあるので,申立人に対して,あなたのお名前を言わなければいけないということも多分事前にきちんと御説明されるということになるかと思います。

そのときに,更に注1では,申請者より裁判を提起するため,中央当局に対し裁判の相手方につき照会があった場合,相手方にその旨を伝達することが適当かどうか。この場合の手順というのが,氏名を言うのかどうか。申請者に監護者がだれであるかという名前は言わざるを得ないのか。それを言うと,言ったときに,前回の議論であったかと思うのですけれども,それをまた現に監護している相手方に伝えるかどうか。そこの手順をこのガイドラインを定めるということですか。

前,内閣府の方から,そこで私に対しても御質問とかがあったと思うので,確認させていただきたいのですけれども,そこをガイドラインで決めるという御提案なんでしょうか。

(辻阪室長)

ここの部分は,前回の議論を踏まえて書き直した部分ですけれども,ここで言わんとしていることは,私が先ほど申し上げた,一番初めに相手方とコンタクトをして,今後どうなりますという話の後の段階として,実際にその相手方が訴訟を提起したいので,だれを相手方にしたらいいのかということを言われたときに,それを監護している者に対して,名前を開示しましたということを伝達する。その後で,もう一回相手方に対して,そういうアプローチをしてはどうかということを書いたものですが,前回,相原委員から御指摘がありましたように,そういうことを相手方に言ってしまうと,また逃げてしまうという危険があるのではないかという御指摘もありました。この点について,そういう段階で再度相手方にアプローチをして,伝えましたよということがいいのか,それとも,私が先ほど申し上げた,一番初めの段階で,これから今後こういう手続になっていきます,監護している方の名前が相手方に伝わることもあり得ますということをもって終わりにした方がいいのか,この点について御議論をいただければと思います。

(小早川教授)

ピンポイントの重要な点かと思いますけれども,どうでしょうか。

(相原弁護士)

今回御提案があったので,ここについて再度にそれをガイドラインで定めるということに関しては,今,端的な意見はないのですが,先ほど御説明があった子の所在が確知できて,中央当局がハーグに関する説明を監護している相手方にきちんと説明されるときに,その後に任意の返還に応じない場合には,申立て,裁判手続に移行する可能性が高いこと。つまり,そのときには,監護者である相手方の名前をTaking Parentでないのであれば,あなたの固有の名前を言わなければいけないということまできちんと御説明しておけば,そこでそれなりの覚悟といいますか,状況は把握できるのではないかと,このペーパーをいただく前は考えておりました。というか,日弁連のワーキング等でも議論させていただきまして,そういうふうに考えておりました。

相手方の名前を言うこと自体は,裁判手続が進む以上は,Taking Parentでない以上,監護者には,名前を言うことまでは覚悟してもらわなければいけないと思います。

ただ,更にその後,ここまでのことをするかどうかについては,今,再度のことですので,前回法律で定めるかどうかという御提案も一部内閣府からはあったかと思うのですが,ガイドラインで定めるというところになりましたが,その必要性に関しては,そこまでする必要があるのかないのか。若干ほかの委員の御意見も賜りたいと思います。

(小早川教授)

大谷委員,どうぞ。

(大谷弁護士)

この辺りのことになってきますと,具体的な運用とかにも入ってくるかと思いますので,今の段階ではっきりこうだという固まった意見があるわけではないのですけれども,ただ,中央当局の役割として,私どもは多分恐らく,皆さんできるだけ任意の解決ができれば好ましいという共通認識があろうかと思うのですけれども,ただ,そのときに中央当局が言わば任意の解決を促すような具体的な,実質的な役割を担われるのであれば,それがうまくいかなかったときに始めて,申立人の方から裁判を起こすという手続のために,相手方氏名の開示が必要というプロセスになろうかと思うのですが,今のところ,中央当局が具体的な和解あっせんをされるというイメージは,少なくとも私は持っていませんで,早い段階でむしろ相手方の氏名は申立人に開示されて,例えば代理人が付けば,付いた上で,そこで話し合いができるかどうか。裁判外手続も含めて,その調整を裁判の開始等をにらみながら進めていくのかなというイメージを持っておりました。

そうだとすると,今日いただいたものだとすると,何か裁判提起のために照会があって,それで開示しますよというのが少し後の方に来るようなイメージをここから受けるのですが,それでは逆に,任意の話し合いとかも進みにくい。申請人側の代理人に付く立場からしますと,むしろもっと早い段階で裁判だけではない,さまざまな解決を含めて関われる方がいいなというのが今,伺っていて思ったことです。

もう一つは,これから裁判が始まりますよということをまさに言っているようなイメージがありますので,そこで最初の呼出状の送付とか,そういうことについて,また困難が生じる,あるいは監護者が替わるといったようなことが起きないかという懸念はあります。

(小早川教授)

ケースによるのかなという気もしますが,お二方が強調されたように,ここは訴訟になる直前段階のことを言っていて,だからこそTP以外の監護者ということも重要になってくる。それが訴訟の相手方になるのでしょうが,任意の話し合いということですと,またそれはちょっと違うわけで,その前段階の方が基本ですね。その辺がこのペーパーでは必ずしもはっきり書き込まれていないのかなという感じがしました。

藤原委員,どうぞ。

(藤原教授)

今の相原委員と大谷委員のお話を聞いていて感じたのですけれども,最初に相原委員が,中央当局は任意の解決を促すという言い方をされたのですが,私は大谷委員と一緒で,中央当局の役割をどうとらえるかですが,促すというよりは,どういうふうになるかという情報提供を客観的にできるだけ早い段階で開示というより,教えてあげる。見守るというか,後見的というか,何と言うかわかりませんけれども,和解に踏み込む機関ではないという立場で議論してきたと思うのですが,そこだけ確認したいなと思います。

情報は,訴訟が近づいたときというよりは,訴訟が近づいてから,この情報は流れることがありますよと形式的に説明されたら,それは不安をあおるということにもなろうかと思いますので,もっと前の段階で手続の流れとともに情報は説明してあげた方がいいのかなとは思います。

(小早川教授)

いかがでしょうか。

(辻阪室長)

任意の解決を促すと相原委員がおっしゃった点ですけれども,中央当局としては,促すというか,任意の解決を希望されるのであれば,例えばこういうところに相談されたらいいのではないですかということを言ってあげるだけというか,中央当局が間に入って,和解を促進できるというものではないと思っています。

そういう意味では,まさにプロセスとしてどういう機関が利用し得て,手続としてどうなっていきますかということを教えてあげるということをイメージしております。

(小早川教授)

棚村委員,どうぞ。

(棚村教授)

皆さんの意見を聞いて,私自身のイメージというのは,中央当局はやはり最終的に一番しっかりした体制になれば,和解とか任意の解決とか,調停みたいなものにかなりコミットすることはあり得るのだろうと思いますけれども,現段階で私たちが多分想定しているのは,単なる情報提供とか,非常に協力できる範囲が限定されているのではないかと思っています。

そういう限られた状況ですと,前にも言ったかと思いますが,できるだけ相手方について,こういう手続になって,こういう流れになって,こういう可能性があるということについての説明とか,情報をバランスよく与えておく必要があるということで,早めに伝えるべきではないかと考えます。

ただ,今後,任意の返還とか,いろいろなことについて,いろんな機関との連携とかパイプも受け皿もしっかりしてくるということになれば,もう少しそれについても再検討していいのかなと思います。ですから,相原委員がおっしゃっているようなこともありますが。

(相原弁護士)

そういう意味ではないです。

(小早川教授)

相原委員,どうぞ。

(相原弁護士)

私自身は「促す」という言葉を使いましたけれども,そんなに積極的に説得しろという趣旨ではありません。

ただ,中央当局はそれなりの要件を経て,手続に乗っているわけなので,前提として,中央当局の役目として情報提供をするし,特段相手方からのそれなりの後に出てきます手続の主張とかがない限りは,のっとって解決にいくだろうと。その表現として,誤解を生じさせたとしたら申し訳ありません。

ただ,中央当局がそれなりに申立人の方から,それなりの条件を経た上で子の所在を確知して,手続を進めるということをやる以上は,最終的にはどうなるのかという手続をきちんと説明していく。その流れの中で,前回も申し上げましたけれども,非常にいろいろなケースがあると思いますが,それによって最初の段階で,すべてを規律できちんと書いてしまうというのは厳しいのではないかというのは,前回申し上げたとおりです。

あと,これは余談になるかもしれませんけれども,ここで相手方氏名となっているので,これが先ほど申し上げましたように,Taking Parentであるならば,最初の話でありますが,逆に住所が出ないということになりますので,これは法制審との絡みになるかもしれませんが,特定の監護者の名前が出て,Taking Parentが不安になるような形よりも,できるだけ相手方がTaking Parentである方向での進め方がいいのかなとは感じております。

ちょっと余分に話しましたけれども,以上です。

(小早川教授)

こんなところでよろしいですか。

(辻阪室長)

はい。

(小早川教授)

御意見をいろいろ賜りましたので,この論点はこの程度にしたいと思います。

それでは,第1部分については,以上の3点が事務局から特に指摘されたところですけれども,ほかに何かございますか。 大谷委員,どうぞ。

(大谷弁護士)

戻って恐縮なのですが,ちょっとわからなくなったので,大事なところなので確認させていただきたいです。

8ページの(4)の(1)で,除外されている裁判手続を開始するために必要な相手方氏名を申請者に開示するときは,申請者にこれが開示できると。これは裁判手続だけに限定されるんですね。つまり,質問の趣旨は,先ほどもちらっと言いましたが,裁判手続に行く前に,例えば裁判外で調停等を試みたいと。調停と言っているのは,裁判外調停,ADRですけれども,そういうときも,結局相手方氏名はわかっていないというか,端的に言うと,相手方がどこにいて,そもそもADRの利用について同意が得られるかどうかというところをやらないと,可能かどうかさえもわからないんですが,そうしたときというのは,中央当局が間に入って,そういう希望が相手方の方であるかどうかということを聞いていただけるのか。あるいはその段階で何か情報が開示されるのか。

つまり,裁判手続の方は,相手方の住所がわからないままで進められるような手続を今,仕組んでいただいているのですけれども,ADRになるとそういったことはありませんし,弁護士会の仲裁センターがそういう手続ができるわけではないので,今のつくりだと,そうした試みというのが全くできない。裁判手続を一回起こしてしまって,その中で裁判外の手続の可能性も試みることは可能になるかもしれないのですけれども,そこだけ確認をさせてください。

(小早川教授)

いかがでしょうか。

今の点は,これで言うと太字のところで「裁判手続(別途国内担保法にて規定されるもの)」という縛りがかかっているので,その話かなと思います。

(辻阪室長)

御指摘の点につきましては,任意の解決,12ページの真ん中辺りの「五 当該子と同居する者又は申請者からの要請を踏まえ,両者の間の連絡の仲介を行うこと」という,任意の解決の中の中央当局の役割として,名前を言ったり,ADRに対しての必要な支援を行ったりということが想定されると思っております。

(小早川教授)

それも入るんですか。

(辻阪室長)

これは前回御議論いただいた点ですけれども,裁判手続において中央当局が収集した情報を開示するということを8ページの部分では想定しておりますが,今,御指摘いただいた部分というのは,任意の解決としてADRに乗せたいということを両者の間をとりつぐという連絡,仲介というところで整理したいと思っております。

(小早川教授)

よろしいでしょうか。

それでは,大分時間も回りましたので,次へ進みたいと思います。

次は,論点資料の10~14ページ,第2の「5.子に対する更なる害又は利害関係者に対する不利益の防止」と「6.子の任意の返還又は問題の有効的解決」の部分です。これについて議論したいと思います。

まず,事務局からの説明をお願いします。

(辻阪室長)

この部分につきましては,パブリック・コメント,そして前回の議論から変わった点を御説明したいと思います。

13ページの(2)のところで,旅券の任意提出ということを,前回は,子の再連れ去り防止ではなくて,任意解決のところに規定するという方向で法制局と相談していると御説明したところですが,法制局とこの点につき,再度相談しましたところ,旅券を任意に提出させるということは,条約においては義務づけがされていないということ。そして,各国においても任意提出という手段はとられていないということ。各国においては,裁判命令において旅券を提出させるという方法はとられていますが,任意で提出させるという方法がとられているような国は,我が方が知る限りでは承知しておりません。

このような理由から,法律において任意提出という規定を設けること自体に無理があるのではないかという指摘を受けました。それを踏まえまして,13ページの(2)の部分は削除したいと思っています。

その任意提出に代わる方法として何かあるのではないかということを現在,法務省を始め,関係者と相談をしていますが,例えば裁判所に旅券の提出命令を出してもらう,外国旅券も含めて提出命令を出してもらうということが可能かどうかということについては,今後更に相談をしていきたいと思いますが,任意の提出が無理だということですので,この点を削除したいということだけ御説明したいと思います。

(小早川教授)

ということですが,今の点を含めて,この部分について御意見がございましたらお願いします。

大谷委員,どうぞ。

(大谷弁護士)

外務省の方も多分御苦労されているところ,外務省に質問するのは大変恐縮なんですが,任意の提出が無理だというのがまだ十分納得できていませんで,条約上の義務ではないから必要ないということであれば,これまでの議論でも,条約上の義務では必ずしもないところをできるだけ日本での条約自身の在り方として超えるかもしれないけれどもということで議論していた点も,ほかにもあるのではないかと思うのが1点。

それから,他国に例がないというのは,他国は出国禁止命令とか,いろんなことをむしろもっと強力なことをやっているのが,日本ではなかなか難しいということで,苦肉の策で,当事者たちが裁判手続内で同意しているような場合に,それをだれが預かるかでよくもめるという,現実の経験から御提案しているところですので,ほかの国に例がないというだけでは,日本でそれをやってはいけないというのが余りよくわかりません。

それから,それに代わる方法も今,御検討いただいているということですので,それは大変感謝申し上げますが,ただし,法制審の方での議論では,他国の旅券も含めて提出命令をかけるのは難しいのではないかということが先に議論をされていまして,これから残すところの機関や,これまでの議論を踏まえますと,それは現実的にほぼ難しい。つまり,どちらも両にらみで何もなくなってしまうのではないかということを大変懸念しておりますが,この点,法務省の方も今日はいらしているので,その議論の状況を教えていただければ幸いです。

(小早川教授)

何かございますか。

(法務省(金子官房参事官))

任意に提出された旅券の保管が難しいというところは,外務省からお答えをお願いしたいと思います。

いろいろ法制審の中でも議論をして,いろんなアプローチを検討していたのですが,選択肢がいろいろ消えていって,絞られてきた感があります。

なお今,検討しているのは,子の返還手続に目的を特化せずに,言わばこの条約実施として,条約を実施するために出国禁止という方策が取れないのか。あるいは子どもを出国させてはならないという命令を出せないのかという問題を検討しているところです。

返還命令の保全ということから,最初検討を開始したのですが,その場合は,どうしても本案が子の返還ということになり,そうしますと,保全をするにしても,名宛人が子を監護している者ということになります。

しかし,LBPの方が自力救済的に子を連れ出してしまうということの懸念がむしろ大きいというお話が,この懇談会でのヒアリングにおいても指摘があったと思うのですが,それには今のようなやり方では対応ができないということになりまして,そうしますと,返還命令なりの手続がかかっているという時間的な制約を付した上で,その間だけでも,条約の実施のために何らかの出国を,制限するという方策が取れないかという方向へ検討の対象がシフトしてきまして,そうしますと,一般の保全というよりは,もう少し広い観点から,出国させてはならないという命令を出すという方策について,これを司法手続で担保するという方策が取れないかというのが,まず1段目の話かと思います。

仮にそれが出たとして,これを今度出国管理手続の方で止められるかということになると,出国管理上の問題は当省の問題ですが,ここにまた大きなハードルがございまして,そこは今の出入国管理の行政から考えますと,その枠組みからはなかなかはみ出すことが難しいという話になり,次に,何らかの形で旅券とのリンクということが検討の対象になおもう一回戻ってきまして,そうしますと,旅券の提出命令ということができないのかという問題になります。

ここでむしろクリティカルな問題は,旅券と言っても,外国旅券の方なのではないかということで,というのは,日本旅券の方は,日本人の監護者の方が持っていることが恐らく多くて,LBPの方の連れ去り防止のためには,むしろLBP国発行の外国旅券の方をきちんと手当しないと難しいのではないかという話になり,今度は外国政府発行の旅券というものを日本の手続で提出命令をかけていいのかという問題になって,これは今度,いろんな別の配慮が必要になるのではないかという辺りを今,検討の対象としているところでありまして,そこは外務省あるいは裁判所等も関係しますので,なお検討を進めたいと思っております。そういう現状にあります。

(小早川教授)

ということで,なかなか大変な問題がそちらにはあるということを横目で見ながら,こちらの方はどうでしょうか。

(寺尾事務官)

補足的に御説明させていただきます。

旅券を任意に提出してもらって,それを外務省で保管することについて非常に難しいのではないかという指摘を法制局から受けているところでございますが,理由は大きく分けて2点あると指摘されております。

1点目が,前例との比較。ほかの法令に基づいて,行政当局が任意で何らかのものを提出してもらい,それを保管する,あるいは領置する権限を与えられているというのは,主に捜査関係の機関ですとか,徴税吏ですとか,何らかの強制力を背景に持った機関が,言わば捜査の一環で,捜査協力の範囲内で提出を受けたものに関して保管することができるということしか前例として見つからないというのが1点ある。

それとの関係で,外務省にそういう権限というか,そもそもそういう公権力の行使に該当するような権限があるわけではない以上,そのような背景を持たない任意の提出というのは,随分文脈が違うのではないかということが1点。

もう一点は,実は任意の提出を受けた場合というのは,あくまでも保管するだけの権限があるだけで,返さない権限があるわけではございません。ですので,当事者の一方が仮に任意で預けた旅券であるが,話し合いがうまくいかないので返してくれと言ってきた場合に,それに応じざるを得ない。そうしますと,返してほしくないと言っているもう一方側の意向には反することになりますし,それで本当に再連れ去り防止のための有効な措置を取れているのかという観点もございます。これはまさに行政の中立性という観点からも,そのようなあいまいな保管権限というのは厳しいのではないかという指摘も受けております。

現場の実務をやっておられる方からの御要望があるというのは重々承知しておりまして,それも含めて相談してきたところではあるのですが,あくまでも任意で保管するということで,保管したものをいずれか一方の意向があったときに返さざるを得ないということを踏まえますと,要は任意の保管の権限というものに対する信用性というのも,実は今は現場で御苦労されている弁護士さん等が直面されている部分と多少似ている部分もあるのかなと。

結局,条約上ここで定められておりますのは,任意の解決に向けた話し合いというのも勿論そうではあるのですが,それ以上に再連れ去り防止というところの,まさに移動に制限をかけるという意味合いでの旅券の提出ということになりますので,その観点を重視して考えていったときに,果たして中央当局たる外務省が任意で旅券を提出してもらうことにどれほどの意味があるのかということの実質的な意味も踏まえて,このような指摘を受けているところでございます。

(小早川教授)

棚村委員,どうぞ。

(棚村教授)

前回,任意の提出については限界があるのではないかということを申し上げて,その後,法制審で保全措置とか,保全処分のところでお話をしたら,先ほど言ったように,金子参事官を含めて,出国禁止の中の措置というのは,本案との関係でなかなか難しいけれども,少し実効的な方法を検討してみるという状況にあります。子を海外に出さないというか,そういう限定的な範囲で検討をお願いしています。

ただ,外国旅券がやはり問題になってくるので,今は御説明を受けた前例がない。任意だったら非常に限定的で,要求があればすぐ返さなければいけない。それでも,私も大谷委員などと同じで,外務省の方でも預かっていただけるということについて,特に外国旅券を任意で提出していただいて預かっていただくという制度化みたいなものがあれば,法務省が今,検討している返還手続の保全措置として,再連れ去りの防止とか,いろんな観点から御検討くださっているので,その両方を合わせると,かなり実効性の高い仕組みができるのではないかということで,是非外務省の方も,任意の提出を受けたものを保管するという方向で,特に外国旅券になるかと思いますが,そういう制度は是非置いていただけるとありがたいなと思います。

(小早川教授)

それは強力な,あるいは権力的にどこまで貫徹できるかということはあるけれども,任意の話し合いを促進するための中央当局の役割としてあった方がいいのではないかということですね。

(棚村教授)

はい。

返還手続も,それを実効的にするための措置として御検討いただいていますので,外務省の方も,多分法制局の方はそういう理由を挙げたのだろうと思いますけれども,問題の解決を友好的に図るという点からも,任意に預けていただいて,そして争いになれば,そういう意味では,返還手続の中で本当に白黒つけなければならない範囲でつけざるを得ないという状況になると思うんです。そのときには,もう預かっているものを返せという話にもなるでしょうし,話し合いも困難ですけれども,そのきっかけをつくるような意味で,是非そのような制度があると,お互い安心感を持って,それぞれ話し合いもできるし,代理人同士も安心して交渉できるのではないかというので,法制局にもう一度そういう御意見があったということで協議していただければありがたいと思います。

(小早川教授)

相原委員,どうぞ。

(相原弁護士)

本当に同じことの繰り返しになってしまうのだと思いますけれども,今,法制局との間で,本当に間に入られて,非常に御苦労されているというのはよくわかります。ただ,今,両委員も言われましたが,必要性がヒアリングの場でも強く言われましたし,LBPとの関係において,日本に来て,面会交流などをした場合の不安感というのがTaking Parentからすると強いというのが実際の必要性の非常に大きなところかというのは,ここでも再三申し上げさせていただいたところです。

今日が最後ということですので,一言だけ。

今のままだと,保全がほとんど期待できないのかなという印象を非常に強く持っておりまして,現段階では,そういうお答えになるのかもしれませんけれども,何らかの方法について,是非探っていただきたい。本当に大きなことでは無理かもしれませんけれども,何か可能性を探っていただきたいなというのが率直な意見でございます。

(小早川教授)

大谷委員,どうぞ。

(大谷弁護士)

私も,今日が最後ということなので,発言させていただいて申し訳ないのですが,これは先ほども申し上げたのですが,手続のイメージが大分法制審の方とこちらとで議論が進んできまして,現段階で私が持っているイメージというのは,最初から申立人が相手方の住所や居場所もわかっている場合は別として,それを中央当局の方で相手方,子どもの所在の確知していただくような場合など特にそうなんですけれども,なかなか裁判手続の開始前に有効的な話し合いが進むという事態は,残念ながら,私自身は余り想定していなくて,裁判手続を開始せざるを得ないのではないか。その中で,裁判の中での和解調停なのか,裁判外なのかは別として,任意の解決をできるだけ弁護士同士,あるいはほかの機関等も活用して進めていくというイメージを私自身は持っております。

そのこととの関係で,任意という言葉づかいなのですが,出国禁止命令の話とパスポートの話と2つあるものですから,若干相互に関連はしているのですが,もともと考えていたのは,裁判手続の中で双方が子の手続中,例えば申立人が面会のために,あるいは手続のために日本に来るというようなときに連れ去りが起きないようにということで,出国禁止命令を裁判所がかけられないとしても,当事者間が合意をして,その間,話し合いを試みるとか,面会もできるようにするといったことができないのかみたいな問題関心が非常に強くありました。

そうだとすると,そこで合意しているものが担保できないのは困るので,さすがにそのような場合には,出国のところで止められないかとか,いろんなことを申し上げたのですが,パスポートについても同じで,裁判手続とは別の全く外の場面で任意の合意をして,中央当局に預かっていただくというのは,さすがに私自身は難しいのかなと思っていまして,任意といっても,裁判手続の中でそういう話し合い促進のため,合意ですから,連れ去り防止といっても,本当に危険が迫っていて連れ去られるということというよりは,多分申請者,申立人が来て,日本の中で話し合いをする,あるいは面会をするというような場面を想定しておりました。そのために,裁判所で少なくともその間,子どもを連れ出すことはしないと。それを担保する意味で,その間,パスポートを提出するという合意ができた場合には,裁判所の中で中間合意的にその部分だけでも調書にするとか,そのことも含めて中央当局でその間預かっていただくということはできないのだろうかということを考えていたものです。

そうだとすると,そこで一方が返してくださいと言っても,中央当局は返さないだろうと思います。裁判所で少なくとも中間的にでも合意したものがありますので,それで返してくれという場合には,そこは裁判の中で何かお互いに返してもらうということではっきりさせない限り,一方が中央当局に返してくださいと言っても返さないと。そのような手続をつくっていただけないだろうかという趣旨であったことをクラリファイさせていただきたい。

任意であれば,当事者の一方が返してくれと言えば,返さなくてはいけない。これはまさに弁護士に預けるということをよく皆さん御提案されるのですけれども,それができないまさに理由なんです。弁護士は,一方の依頼者から依頼を受けていますので,その依頼者から返してくれと言われれば聞いてしまうだろうというところで信頼が得られないという中で,中央当局が預かっていただけないかという問題関心が出てきていますので,その辺り,法制局にまた御説明いただけると大変ありがたいです。

(小早川教授)

藤原委員,どうぞ。

(藤原教授)

今のお話を伺っていると,14ページの任意の提出とはいえ,法的根拠はないという指摘と,外務大臣の権限で一時保管するというのですけれども,手続法の行政指導のときの任意性の話と,法制局は似たような感覚で考えているのかなという気もするのです。大谷委員のおっしゃったのとは,少し任意性の意味が違うのかなと思うので,裁判所で調書を取ってという話ですね。そうであれば,大変御苦労をしておられるのだけれども,そちらの方向で聞いてみるということもあるのかなと思いました。

(小早川教授)

今のお話の中でも,複数の制度設計のアイデアが出ているのかなとは思いますが,ただ,全体として,委員皆さんの方向性としては強いものがあるという感じがいたします。

何かございますか。

(辻阪室長)

本日,ここを削除せざるを得ないということを申し上げるために,再三,再四,この点につきましては法制局と相談をしてきた結果でございます。

外務省には,そういう旅券を預かるという権限がないものですから,たとえ任意であっても,何らかの法律の規定がなければ,そのようなことができないということで,さまざまな前例も洗い,現場のニーズも法制局に伝えながらやった結果として,ここはどうしようもないというのが現時点での結論でございます。

ただ,今,御指摘がございました裁判所の中間合意でとか,裁判所の調書を取ってという形が可能なのか,その辺りはまだちゃんと検討したことはございませんので,いずれにしましても,今,書いてある形での任意の旅券の提出はだめであるとしても,何らかの形の措置が取れないのかということにつきましては,引き続き考えていきたいと思っております。

(小早川教授)

今の御答弁でそろそろ締めたいと思いますけれども。

大谷委員,どうぞ。
(大谷弁護士)

御苦労されているのはわかりますので,しつこくて恐縮ですが,14ページの上の方の御説明で,法的根拠はないということとか,外務大臣の権限でとお書きになっているところはやはり気になりまして,法制局の方が外務省としての権限と思っていらっしゃるのだとすれば,今回,外務省が中央当局として指定されるというだけで,私の理解では,新しい中央当局という1つの機関設置のようなイメージで考えていたものですから,それがどういう権限を持つことができるかというのは別問題であって,担保法で規定することによって,そういう権限を創設することも十分可能なのではないかと。素人で大変恐縮ですが,法制局の方相手に議論されている御苦労を知らずに勝手なことを申し上げますが,それだけ意見を述べさせていただきたいと思います。

(小早川教授)

そこはそうなんでしょうね。外務省設置法の任務,権限に今までとは異質なものを1つ加えるということにはなるんだろうと思います。それは多分踏まえた上でいろいろ議論をしておられるのだろうとは思いますけれども,この懇談会の意向としては,非常に強いものがあるということはおわかりいただけるかと思います。

ほかに,今のこの辺りの部分についてはいかがでしょうか。よろしいですか。

では,本当に時間もなくなってきましたけれども,次へまいりたいと思います。

資料の14~17ページ,第2の「7.子の社会的背景に関する情報の交換」から「10.子の安全な返還確保」という辺りで議論をしたいと思います。

事務局から説明をお願いします。

(辻阪室長)

この部分は,前回そしてパブリック・コメントから大きく修正しました点は1点のみでございます。

14ページの「7.子の社会的背景に関する情報の交換」の(1)の部分で,日本の中央当局が外国の中央当局に対して,子の社会的背景に関する情報の提供を求めるのはどういう場合か。裁判所から中央当局が依頼された場合なのか。当事者から依頼された場合も含むのかという点で,前回御議論をいただいた点でございます。

この点につきましては,今回の資料では,裁判所からということに限定したいということで「当事者」の部分を落としています。これは前回も御説明したとおり,中央当局の業務量ということと,(2)でありますように,他国から求められる場合は裁判所からの要求しか取りつがないということのバランスを考えて「裁判所から」というふうにしたいと考えております。

この部分につきましては,以上です。

(小早川教授)

いかがでしょうか。よろしいですか。

では,特段の御意見はないということで,次へ進みたいと思います。

最後は,資料の18~25ページまで。「第3 子との接触に関する援助」と「第4 不服申立ての在り方」です。

事務局から説明をお願いします。

(辻阪室長)

「子との接触に関する援助」の部分につきましては,前回の懇談会で御説明をした部分を書いたというだけですので,方針としては,前回の御説明のとおりです。

23ページ「不服申立ての在り方」ですが,パブリック・コメントにおきましてもなお検討ということで,詳細は書いておりませんでしたが,今回,不服申立ての在り方について,一定の方向性を書いております。

黒字のところにありますとおり,返還援助申請又は接触援助申請の却下について申請者のみが不服申立てをできるものとするという整理としたいと思っております。

補足説明の(1)ですが,アで,返還援助申請又は接触援助申請をした場合において,申請が却下されれば,中央当局として,当該申請者に対する援助を実施しないということは確定する。このため,中央当局による申請の却下は,申請者の中央当局による援助を受けるという手続上の地位を否定する効果を生じさせる行為であるということができるので,不服申立てを認めることが適当だと思われます。

これに対しまして,24ページのウのところにありますとおり,子の所在の確知ですとか,さらなる害の防止ですとか,中央当局が取る措置のそれぞれにつきましては,行政庁の一方的意思決定に基づき,特定の行政目的のために国民の身体・財産等の実力加えて,行政上必要な状態を実現させようとする権力的行為とは言えないということで,不服申立ての対象とすべき内容は含まれていないのではないかと考えて,この部分ではなくて,申請の却下の部分だけを対象としたいというのが(1)の部分でございます。

その次が(2)不服申立てをすることができる者です。

援助申請と接触援助申請の申請者を考えておりますが,この申請者以外の者にも不服申立てをすることができるのかどうかということが1つ論点として考えられます。具体的には,相手方,Taking Parentが不服申立てをすることができるのかということですが,この点につきましては,24ページのイのところです。当該処分によって誰が不服申立てをし得るかという点については,当該処分によって自己の権利もしくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害される恐れがある者ということ。

それから,24ページ下のエの部分ですが,条約の趣旨に照らして,LBPからの申請があれば,中央当局が援助を行うことが前提となっていること。そして,その却下は例外的なものととらえられ,基本的には中央当局が申請を受け付けるということ。

子の返還の是非を裁判所で争う前の段階において,中央当局が条約の義務に基づいて実施する援助について,争訟の対象とすることは迅速処理の原則にも必ずしも沿う結果とはならないということから,Taking Parent,相手方による不服申立てを認めるということは,一般的には消極的に判断していいのではないかと考えております。

以上です。

(小早川教授)

いかがでしょうか。

大谷委員,どうぞ。

(大谷弁護士)

前回の懇談会を欠席しましたので,議論についていっていないのであれば大変申し訳ないのですけれども,接触援助申請を求めることができる申請者の範囲について確認をさせてください。

18ページの第3の1.の(2)のウによれば,申請者がいずれかの条約締約国の法令に基づき,当該子との面会または子の交流を求める根拠を有していることと,それが妨げられていることが援助を求めるための要件になっていると思われるのですが,前に御質問させていただきました日本に居住していて,面会交流していたのだけれども,申請者自身が帰ってしまって,その後,面会が実施されていないと。帰ってしまった後に,面会をさせてもらえなくなったという場合は入らないと思ったのですが,これは入らないという理解でよろしいのでしょうか。

(小早川教授)

どうぞ。

(辻阪室長)

御指摘の場合は,恐らく日本の裁判所において認められた面会交流の権利が,父親なり,母親なりの一方当事者が違う国に行ってしまったがために実現できなくなってしまったということだと思いますので,そのような場合は,中央当局の援助の対象ではなくて,日本の裁判所において,面会交流が実現できるように求めるのが筋だろうということですので,御指摘のとおり入らないと理解しております。

(小早川教授)

大谷委員,どうそ。

(大谷弁護士)

入らないとしますと,今の御提案の書き方だと,入らないということがわからなくて,逆に入っているように読めてしまうのですけれども,そこはどのような切り分けをされるということでしょうか。

(小早川教授)

どうなんでしょう。条約21条の規定に基づく申請,そもそもその要件に欠けているということではないんですか。

大谷委員,どうぞ。

(大谷弁護士)

今,読んでいて気がついたんですけれども,22ページの(4)で切っていらっしゃるということなんですね。19ページの3.に入って,私はずっと1.を見ていたんですが,1.はあくまでも書面記載事項というだけであって,申請を求めることのできる資格というか,要件は,むしろ22ページの3.の(4)の方で絞っておられるということでよろしいんですね。済みません。

(小早川教授)

よろしいですか。

(辻阪室長)

はい。

(小早川教授)

それでいいということのようであります。

ほかに,不服申立ての方はいかがでしょうか。これは,訴訟の可否は,しょせんここでは決められない。ここでの理由の書き方は,原則こうだろうという実質的な解釈論の書き方になっていて,そうなると裁判所もこの考え方でいけという雰囲気でもありますけれども,そこまでは言わないで,不服申立てについてはその範囲は限定するということの御説明であるということですね。

藤原委員,どうぞ。

(藤原教授)

今の確認ですけれども,要するに不服申立ての在り方ということなので,不服申立ての対象は,ここに書いてある考え方でやるということですね。特に処分といわゆる権力的事実行為なのですけれども,それは24ページで検討して,個別の措置に分解して見ていけば,これはそれぞれ不服申立ての対象には当たらないんだという整理であると全体としてとらえて,申請を受けたことの処分性の問題等については,ここの考え方で立法者の意思は,裁判所としても,近時の判例の傾向はともかく,ある意味で汲み取ってくれという整理であるということでよろしいんですかね。

(小早川教授)

ここに書かれているような理由だと,今の最高裁の判例の姿勢からすると,処分性は認めてしまうのではないかという気がしたものですから,そこはどうかなということなんです。

もう一つは,処分性(1)のところで,申請拒否の場合だけを考えると言っていることと,(2)でTaking Parentの方の話は,申立権者の範囲の問題として書いておられるのですが,それは,申請を認めた場合ですね,だから,前後の平仄が合っていないような気もしたんです。もともと処分性を認めないということが前半の書き方のようです。

(村上課長補佐)

補足的に御説明します。

本文の方で今後事務的な調整を進めると,あるのですけれども,この却下のところと,座長御指摘のとおり「諾」のところで,言わばワンクッション置くべきかどうかというのを法制的に詰めていかなければいけないのかなと考えています。例えば情報公開法でございますと,全部開示か一部開示は,その旨を決定して通知する。非開示であれば,非開示で決定をしてとございますが,その例もならいつつ,援助を行うことを決めるというワンクッションを置くという手もあるのではないか。その点等は詳細を更に詰めていきたいと思っております。

(小早川教授)

ここのところは,余り懇談会でも詰めた議論をしていません。ここにあるのも一応の考え方。結論ははっきりしていると思いますが,その説明の部分は,必ずしも詰まっていないところがあるとは思います。

それでは,いかがでしょうか。全体を通して,なおございましたらどうぞ。

大谷委員,どうぞ。

(大谷弁護士)

先ほどの質問に戻って恐縮ですが,やはり接触援助申請の範囲がまだよくわかっていないのです。

22ページで,更に法制上の問題を含めて検討されるということなので,これが確定版ではないのだと思うのですけれども,先ほど御質問をしたときに,私は国内事案がもともと省かれるというのは当然だと思っていまして,ただ,21条の範囲についてどこまで含まれるのかというのは,日弁連の中でも懸念されている方もおられ,私どももはっきりさせておきたいので質問をしているのですけれども,前に懇談会で御質問したのは,例えば日本に外国人親と日本人親の夫婦とその子どもが居住をして,外国人親が外国へ帰ったと。その後,面会ができなくなったと。

つまり,子どもが外国から帰ってきたという移動がないわけです。21条の接触援助申請に当たって,不法性の要件は特にかけていないという前提で話が進んでいって,そのように私も理解しているのですけれども,イメージとしては,やはり不法かどうかはともかくとして,子どもが外国から日本に帰ってきたために,外国にいる親が日本で面会が実現していないことに対して,双方の国の中央当局の協力を得たいというのが条約の仕組みだと思っていたものですから,もともとの生活地が日本にあって,外国人親が外国へ行ってしまって,その後,面会ができなくなっているという場合は,条約の枠組みを超えていて,単純に日本の手続を利用していただくしかないのだと思っていたのですね。

そうだとして読むと,22ページのア~オだと,その場合は除外されていないようにやはり読めるのですけれども,読み方が違うのか。そこをもう一度確認させていただけますでしょうか。

(小早川教授)

棚村委員,どうぞ。

(棚村教授)

私自身は,子ども自身の移動がなくて,親がただ移動したことによって渉外的になったものは,条約の対象にならないのではないかと思います。だから,子どもが常居所を移してしまったときに面会交流ができないとか,連れ去りが起こったということだったら,締約国間で,当然中央当局とか,返還や面会交流についての手続ができるけれども,そうでないケースについては,この条約は想定していないのだと思います。親が移動してしまって,そしてたまたま会えなくなった状態が生じただけでは,この条約上の対象になるケースではないんだろうと思います。

この間,鶴岡局長が説明されませんでしたか。

(相原弁護士)

4例ぐらい説明された中にきちっと入っていたと理解しています。

(棚村教授)

入っていたものが,まさに私もそれだと思いました。今日大谷委員が聞いているのは,そのことかなという感じです。

(小早川教授)

そもそもその条約がそういうものであるということの理解が。

(棚村教授)

前回,条約が対象にしているところでないだということをおっしゃっていたので,その例ですかね。

(小早川教授)

ですから,その条約の国内担保法としての議論をしているわけです。今日のペーパーで,国内法に書かれるべき文面として何か不足しているかもしれませんけれども。

(大谷弁護士)

反映がなされていないような気がします。

(棚村教授)

我々の理解は共通だと思います。

(小早川教授)

どうぞ。

(法務省(金子官房参事官))

結論においては,子が国境をまたがないケースは対象としないということは,前回コンセンサスが得られてと思います。前回,4例説明されていて,対象になるもの2つ,対象にならなかったもの2つかと思うのですが,その対象にならなかったものは,結論においては,子の国境の移動がないケースなんですね。

あとは,それをどう表現するかということで,オで表現し切れていないと言われれば,今,事前にやっているときは気がつかなったのですが,確かにそういう御懸念もわからなくないところで,ここは認識は恐らく共通しているので,表現ぶりをもう一回御工夫いただくということになるのではないかと思います。

(小早川教授)

それでよろしいですね。

(辻阪室長)

はい。

(小早川教授)

それでは,よろしいでしょうか。

本日は,最後に残ったといいますか,詰めるべき論点について詳しく議論をしていただきました。今後,法律案を作成し,更にいろいろな準備を進めていくことになると思いますが,その際の,中央当局の在り方の制度設計について,非常に有益な御意見をたくさんいただいたと思います。

本日の議論を踏まえて,外務省には,必要に応じて,この論点まとめの修正をしていただくということかと思います。その修正された論点まとめをもって,懇談会の最終成果として,法律,政省令,ガイドライン作成の際の指針にしていただくということになるかと思います。

大谷委員,何かございますか。

(大谷委員)

済みません,最後に全体的なことで一言発言をお許しいただきまして,ありがとうございます。

今回の最後の論点まとめでも,まだなお政令で定めるとなっているところですとか,ガイドラインやマニュアル等,下に落とされる,あるいは運用で詰めていかなくてはいけないところがまだ残っているように思われます。そうしたところについて,今回のような大きな懇談会までなさるのは難しいかと思っていますけれども,私ども実務に関わるものといたしまして,是非政令,ガイドライン,マニュアル等の作成のときにも,十分意見を申し上げる機会をいただければと考えております。

以上です。

(小早川教授)

では,最後に,鶴岡局長お願いします。

(鶴岡総合外交政策局長)

今回で最後になりましたので,一言,外務省を代表いたしまして,委員の皆様方,また関係省庁から懇談会に参加をいただきました皆様方に,心より御礼を申し上げたいと思います。

本日もそうでありましたけれども,非常に冷静かつ論理的にこの条約の中で外務省が中央当局を担うに際しまして,直面する課題,立法上の問題点など,大変深めた議論をいただきました。お陰様で,先生方の御意見を今後いただきながら,実際の法文作業に入ることが可能になると思います。

ただいま大谷委員の方から,この法文化の作業を超えて,具体的な運用に関わるところにつきましても,私どもから申し上げれば,大変ありがたい御支援の申し出をいただいたと思っておりますので,今回,作業を御一緒にいただきました皆様方には,今後ともこの条約の実施に至る過程,実施自体につきましても,御関心を維持していただき,中央当局になります外務省に対する続けての御指導を賜れれば大変ありがたいと思います。

どうも長い間,本当にありがとうございました。

また,小早川座長におかれましては,御多忙の中,この作業の事前の準備段階から深く私どもの作業に関与して,また御指導をいただきましたことを心より御礼申し上げたいと思います。

(小早川教授)

私からも皆様に御礼を申し上げたいと思います。そして,私自身は,皆様と比べるとずっと素人で,いろいろ理解が遅かったり,また,進行が不手際だったり,いろいろ御迷惑をおかけしたかと存じますが,御協力いただきまして,最終的に成果が上がったと考えております。どうもありがとうございました。

では,これをもちまして「ハーグ条約の中央当局の在り方に関する懇談会」第5回の会合を閉会いたします。どうもありがとうございました。

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