人権・人道

「ハーグ条約の中央当局の在り方に関する懇談会」第4回会合

平成23年11月22日

 22日,外務省において開催されたハーグ条約の中央当局の在り方に関する懇談会第4回会合の概要は以下のとおり。

1.出席者

座長:
小早川光郎・成蹊大学法科大学院教授
出席者:
棚村政行・早稲田大学法科大学院教授
藤原靜雄・中央大学法科大学院教授
相原佳子弁護士(日弁連)
杉田明子弁護士(日弁連)
関係府省庁(法務省,内閣府,厚生労働省,総務省,
文部科学省,警察庁)等

2.議事要旨(議事録は,別途掲載予定)

(1)パブリックコメントのとりまとめ結果の報告

 事務局から,外務省として9月30日から1か月間実施した,ハーグ条約を実施するための中央当局の在り方に関するパブリックコメント(意見募集)の結果に関し,計168件の意見が寄せられ,中央当局の権限や中央当局としてとるべき措置等につき様々な立場からの意見が寄せられた旨報告を行った。(詳細については,3.(1)パブリックコメントのとりまとめ結果及び概要を参照)

(2)子の所在の確知のための情報提供義務

  • 中央当局が得た情報がLBP側に渡らないことが明確であれば,たとえば民間の団体たる私立学校と公立学校の間で情報提供義務に差をつける必要はなく,また差が出ることによる問題が生ずるのではないか。その一方で,情報提供義務を負う機関が広がることとのバランスで慎重な検討も必要。いずれにせよ,民間機関への情報の提供を求める場合,その範囲,方法については,政省令やガイドライン等で明確に定めることが必要。
  • 関係機関が中央当局に対して情報提供する際にDV被害のおそれがあるか否かについても併せて中央当局に通知することに関し,現場が何をどこまでやらねばならないのか,どう責任を取るのかが不明確なままでは,現場が委縮するので,そうならないように情報の流れが確保される具体的な通知の在り方について,今後関係機関内での実務的な検討が必要。他方,この点は,相手方の同意があった場合に情報を外部に提供するとの前提であったので中央当局としてDVのおそれの有無の情報が必要であったが,その必要がなくなったのであればそもそも中央当局にその情報を通知しなくても差支えないのではないか。
  • 情報提供を行う機関等が,「現に子を監護すると思われる者」か否かを判断することは難しく,外観上判断しやすい文言がより適当ではないか。なお,法制審で議論されている相手方適格の要件とは必ずしも同じ用語である必要はない。実態上,関係機関が,子を監護している者であるかどうかの判断を行うことは非常に困難であることからも,「監護する者」を「同居している者」としてはどうか。
  • 相手方となるべき「子を現に監護する者」の氏名(祖父母も含む)を申請者に開示後,相手方にその旨を知らせるべきか否かについては,さらに子が隠避されるといった事態を惹起するおそれもある一方で,DV被害者の居所の判明につながりかねないため,通知が必要とも考えられる。この点については,法律に明記せずとも対応できるのではないか。
  • 中央当局が集めた情報につき,行政機関個人情報保護法第8条第1項の「法令に基づく場合」により目的外提供できるとすることでは,弁護士法に基づく照会も該当することにならないか。その範囲が広くなりすぎるおそれもある。目的外提供の範囲につき絞ることも検討すべきではないか。

(3)子の任意の返還その他の問題の友好的な解決の促進

  • 条約に定める友好的な解決の促進のために,外務省として仲裁等の任意解決を外部団体に委託したいと考えるが,そのような団体の発掘・育成が検討課題。
  • 友好的な解決のために双方の合意があった場合に,返還手続の前後に関わらず中央当局が旅券を保管することは問題ない。ただし,返還に係る裁判手続が始まったら,合意がなくなったものとして保管を中止して,当事者に返付するケースもあるだろう。いずれにせよ,当事者の合意に基づく措置に過ぎず,合意の撤回があれば返付するということかと思われる。
  • 返還手続における保全的な処分との関連で,出国を差し止めるためにいかなる手段が可能かは今後の法制審にて引き続き検討。

(4)子の社会的背景に関する情報の提供

  • 当事者が自らの裁判に必要と判断する情報を提供されるべきとの観点から,我が国中央当局から他の条約締約国の中央当局に,子の社会的背景に関する情報の提供を求める際は,裁判所からの求めだけでなく,申立人及び相手方からの依頼による場合も認めるべきではないか。
  • 他方,上記については,我が国中央当局及び他の締約国中央当局の事務的負担との関係から困難がある他,我が国と他の締約国との間で片務的な関係とならざるを得ないこと,相手国中央当局がどこまで社会的背景に関する情報収集に協力するか不明であること,相手国中央当局の情報収集結果を待っていれば迅速な裁判を確保できないおそれがあること等,現実的な問題として限界があることも事実。

(5)接触の権利に関する中央当局の措置

  • 中央当局による援助の対象となる事案の範囲,及び中央当局がとるべき措置の範囲については,論点ペーパーの整理とすることで特段の意見なし。特に,援助の対象となる事案の範囲としては,他の締約国で認められた接触の権利を我が国において尊重されることを支援する(その逆も然り)と整理。
  • ただ,接触の権利についての支援は,当事者の協力が前提となることから,接触の権利の実施体制の確立(中央当局から当事者に紹介する実施団体の発掘及び育成含む)は大きな課題。
  • 他の条約締約国は条約締結後20~30年の年月をかけ,接触の権利の実施体制を整えてきた経緯がある。我が国も締結後,直ちに十分な体制を確立するのは難しくとも,関係行政機関が連携しつつ,面会交流を支援する団体等の育成に努めて欲しい。

(6)事務局からの謝辞

 鶴岡総合外交政策局長から,今回のパブリックコメントに意見を寄せていただいた方々に対する謝辞を述べた。

3.配布資料

  1. (1)パブリックコメントのとりまとめ結果及び概要パブリックコメントで寄せられた意見(PDF)PDF
  2. (2)論点ペーパー(PDF)PDF
  3. (3)参考資料

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