人権・人道

ハーグ条約の中央当局の在り方に関する懇談会(面会交流に関する訂正)

平成24年3月9日

 本件懇談会の第4回及び第5回会合において,親の片方が単独で国外に居を移した後に国内に所在する子との面会交流が実現できていないようなケース(子は国境を越えて移動していないが,親の片方が国境を越えて移動した後に面会交流が実現できていないようなケース)については,条約に基づく援助の対象とならないものと整理している旨の説明を行いました(第4回会合及び第5回会合の議事概要,第4回会合の論点ペーパー4.(4)ア並びに同ペーパー末尾の補足説明の例2及び例4参照。)。

 この点につき,各国の対応等を踏まえ改めて検討を行った結果,このようなケースについては,基本的に援助の対象とすることが適当と判断され,下記のように整理し直しましたので,上記説明につき訂正いたします。

1.(1)条約第1条bは,「一の締約国の法令に基づく…接触の権利が他の締約国において効果的に尊重されることを確保すること」が条約の目的である旨規定しています。これは,「接触の権利」の根拠法令を定めた国と当該「接触の権利」が侵害されている国とが異なる事案について,これを国際的な事案として条約に基づく援助の対象とすることを定めたものと解されます。
(2)冒頭のケースのうち,親の片方が単独で日本から外国に居を移した後に日本にいる子と面会交流できていないケースについては,当該親の片方が日本法上の「接触の権利」を有しており,当該外国の国際私法(注:抵触する内外の法令の適用関係を定める法令。我が国では「法の適用に関する通則法」がこれに該当する。)の適用により日本法が準拠法として選択される場合に,当該外国の法令を根拠とする「接触の権利」を有すると認められると考えられます。その場合には,上記(1)の国際的な事案として,当該親の片方が当該外国の中央当局を通じて我が国の中央当局に対し条約に基づく援助を申請することも可能と解されます。なお,親の片方が単独で外国から日本に居を移したケースについても,同様の整理が当てはまるものと考えられます。

2.また,条約第4条は,「この条約は,…接触の権利が侵害される直前にいずれかの締約国に常居所を有していた子について適用する」と規定していますが,「接触の権利」の侵害については,子の連れ去り又は留置が要件となるものではないと解されることから,本条は,接触のための援助について「子の国境を越えた移動」を要件とすることを念頭に置いたものではないと考えられます。

3.実際に,条約締約国の間においては,冒頭のケースのように「子の国境を越えた移動」がない事案についても条約に基づく援助の対象とする運用が行われています。

4.ただし,冒頭のケースのような事案であっても,例えば,親の片方が単独で外国に旅行する等して一時的に日本から移動し,当該外国の中央当局を通じて我が国の中央当局に対する援助を申請するような場合については,このような申請に対してまで援助を行うことが条約上要求されているとは解されず,類似のいわゆる「濫用」と言い得る事案についても同様であると考えられます。

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