平成24年5月7日
5月7日(月曜日),外交・安全保障関係シンクタンクに関する有識者懇談会第2回会合が行われたところ,出席者から提示された論点,議論は以下のとおり。
なお,今次会合では,日本国際問題研究所(野上理事長)及び平和・安全保障研究所(西原理事長)に対するヒアリングが行われ,シンクタンク側から資料に沿って外交・安全保障関係シンクタンクの果たすべき役割と現状,政府への期待などについての説明があり,その後質疑応答が行われた。
予定調和で結論が決められ,複数の有力な選択肢を競わせることが出来ない社会は,局所的には合理的でも,総体的には大きな非合理を産む。シンクタンクは,政府以外の主体からの選択肢の提示,言わば,政策決定過程における健全野党の役割を果たすべきであろう。また,シンクタンクは,世論の形成に大きな役割を果たすべき。
また,外交・安全保障シンクタンクは,現在世界で起きている「War of Ideas」とも言うべき状況の中で日本の存在感を高めるために最低限必要な存在。冷戦終結後の世界で,各国が多様な価値の共存・競争による国際的影響力の展開に努力している中で,時の政権の方針に縛られずに長期的視点から自由な議論を提示できるシンクタンクは,いわば国際社会の将来像を構築する役割の重要な一端を担っている。このような発信ができない国は,他国の発信への反応や後追いを余儀なくされ,国際的な議論の主導権を握る可能性を自ら放棄しているに等しい。また,その様な存在としてのシンクタンクがない国は,国全体としての知的レベルを疑われかねない。
シンクタンクは,政府が気づいていない問題を見つけ出すという,問題先取り機能も有している。
政府として,経済合理性のみならず,シンクタンクを「育てる」という視点を持つ必要があるのではないか。
一方で,外交・安全保障シンクタンクが無いことによる国益の損失とは何かについては更なる明確化が必要。
民間の外交・安全保障関係シンクタンクと政府系の外交・安全保障関係シンクタンクとの役割の違いは何なのか,時代の変遷と共に不断に検討していく必要がある。例えば,かつては,安全保障分野における人材育成は民間シンクタンクが担っていたが,今やこれは大学や政府でも行われており,また,防衛研究所など,政府内部(乃至は独法)のシンクタンクの活動も活発になっている。他方,こうした政府に近いシンクタンクの場合は,霞が関の政策の客観的・批判的評価は困難。ここに民間シンクタンクの役割を見いだすことが可能ではないか。
民間シンクタンクには,政府系シンクタンクであれば可能な,非公開情報などの反対給付を政府に要求することが出来ず,資金集めにも限界があるのは事実。しかし,研究者にも資金集めを義務化する,ビジネス界のニーズを踏まえたサービスを提供するなど,資金集めのための更なる努力も必要であろう。
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