
外交・安全保障関係シンクタンクのあり方に関する有識者懇談会
第1回会合 概要
平成24年4月20日
4月20日(金曜日),外交・安全保障関係シンクタンクに関する有識者懇談会第1回会合が行われたところ,出席者から提示された論点,議論は以下のとおり。
なお,今次会合では,ドイツの外交・安全保障シンクタンクであるドイツ国際安全保障研究所(SWP)の研究者より,同シンクタンクの成り立ちや現状,ドイツのシンクタンク界の現状,政府・政治との関係についての説明,質疑応答も行われた。
1.総論
日本としても,世界に対しソフト面で貢献すべきであり,そのために客観的な分析に基づき政策決定者へ複数の選択肢の提示を行うなど,外交・安全保障シンクタンク(以下シンクタンク)が果たすべき重要な役割がある。
ただし,現状では,日本の歴史や地理的状況,国民性,社会のあり方などが,活発な外交安保シンクタンクの活動を困難にしている面もある。
2.日本のシンクタンクの現状
- (1)日本の歴史や地理的状況,国民性,社会のあり方などが,外交安保シンクタンクの活発な活動を困難にしている面がある。シンクタンクの存在を知らない人が多い。そうしたことから,政府の支援・協力なしに純粋民間のみでシンクタンクを有効に機能させるのは難しいのではないか。シンクタンクの活動をどう国民に理解してもらうかが重要。
- (2)日本の外交安保シンクタンク及びシンクタンク研究者の発言は社会的注目度が低い。これは官を重んじる日本の傾向にも一因がある。
- (3)シンクタンクの強化のためには資金,人材の強化が必要であるが,日本においては組織に所属する意識がまだ強く,シンクタンクに所属しても将来のキャリアの展望が開けない。米国では,シンクタンクが政府への人材供給源となっているが(いわゆる「リボルビング・ドア」),日本はそういうシステムではない。
- (4)日本のシンクタンクは財政面で苦労していると側聞している。日本においては,米国等と異なり,寄付文化が根付いていないのも一因。
3.日本のシンクタンクが果たすべき役割と課題
- (1)シンクタンクの機能は客観的な分析に基づく政策決定者への複数の選択肢の提示。「霞が関」(政府)がシンクタンクとしての機能を果たしてきた日本においてはそのような仕組みが構築されていない。これについて,第三者を介在させずに政府内において予定調和的に政策が決定されていくことは,効率性の観点からは合理的な側面もあるが,多様化する国際社会において,想定されない事態に備えることを困難にするという非合理性も持つ。
- (2)シンクタンクの果たすべき役割については,調査・研究機能に加え,シンポジウムやセミナーなどを通じて有意義な人脈形成や知的交流の場を作る機能も重要。
- (3)シンクタンクの大学,コンサルタント,NGO等と比較しての付加価値は何か考えるべき。自由な研究と日本外交に役立つこととを両立させるための戦略が必要。また,高い質を維持する一方で,いかに存在価値を上げるかが課題。さらには,世界における存在感の問題があるが,これは日本全体の現状とも連動している。
- (4)注目を集めるために「スター」となる研究員の存在が重要。
- (5)シンクタンクの存在は,ビジネス界から見てどんなメリットがあるかも考えるべき。また,シンクタンクと政府との関係についても整理が必要。
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