
G20カンヌ・サミット(概要)
平成23年11月4日
外務省・財務省
1.日程,参加国等
(1)日程,場所
2011年11月3日(木曜日)~4日(金曜日)(於:フランス・カンヌ)
(2)参加国・国際機関
G8(日,米,英,独,仏,伊,加,露,EU),メキシコ,中国,インド,ブラジル,南アフリカ,韓国,豪,インドネシア,サウジアラビア,トルコ,アルゼンチン,スペイン,ア首連(GCC議長国),エチオピア(NEPAD運営委員会議長国),赤道ギニア(AU議長国),シンガポール,国際連合,国際通貨基金(IMF),世界銀行,金融安定理事会(FSB),経済協力開発機構(OECD),世界貿易機関(WTO),国際労働機関(ILO),アフリカ連合委員会(AUC)。
2.主要な成果
議論を踏まえ首脳コミュニケ(骨子),成長と雇用のためのカンヌ・アクションプラン,最終宣言に合意。主要な成果は以下のとおり。
(1)世界経済情勢・成長と雇用のための行動計画・国際通貨システム改革
- 欧州の債務問題につき,多くの首脳が,欧州首脳が政治的意志をもって債務問題の解決に努めるべきとの指摘を行った。首脳は,現下のギリシャ情勢に懸念を示し,10月26日の欧州首脳による決定の実施,及び伊の財政健全化の取組みをIMFが四半期毎に確認することを歓迎。
- 世界経済が「強固で持続可能かつ均衡ある成長」を遂げるためには,短期的に現下の課題に取り組み,中長期的にリバランス(外需から内需,公需から民需)を進めるべきとの認識に基づき,各国が今後採用する政策をまとめた「カンヌ・アクションプラン」を策定。
- 世界経済の現実を反映し,より安定かつ健全な国際通貨システムが必要であり,改革を継続すべき点で首脳の認識が一致。今後,SDR構成通貨要件の明確化,危機抑止のためのIMFの新たな融資制度創設やサーベイランス強化に向けた取り組みを継続することで合意。ユーロ圏が,自らのあらゆるリソースと能力を投入する決定を歓迎。IMFの資金基盤強化について,次回財務大臣会合までに具体的方策について議論。
- 野田総理は,欧州の合意を評価する一方,合意の履行が重要であり,欧州の結束を前提に,必要な協力を行う旨述べた。我が国は,震災からの復旧・復興に全力で取り組んでいるが,歴史的な円高が景気下ぶれのリスクであり,為替レート安定のための協力が重要と述べた。また,財政健全化の決意を示し,消費税の段階的引き上げを含む社会保障と税の一体改革成案を具体化し,これを実現するための所要の法律案を2011年度内に提出することを説明した。同時に,「日本再生のための戦略」をまとめ,経済成長と財政健全化を車の両輪として進めていくことを強調した。新興国については,流動性供給を維持し,危機の波及を防ぐため,IMFの融資制度や地域的枠組みによる対応が必要と述べた。
(2)開発・貿易
- 冒頭,ビル・ゲイツ氏が開発資金について発表。各国首脳は,改めて開発に積極的に取組むことで一致し,アフリカ等の首脳がこれを歓迎。また,G20が食料安全保障,インフラ及び開発資金確保に取り組むことで合意し,ハイレベル・パネルや国際機関の協力を要請。一部の首脳より,革新的資金調達,就中,金融取引税の重要性を指摘。
- 各国首脳は,現下の経済情勢において,成長に向けて貿易が果たす役割が大きい点で一致。また,多くの首脳が保護主義防遏の重要性を指摘。WTOドーハ・ラウンドについては,交渉を少しでも前進させるための工夫が必要との意見がみられ,来る閣僚会合でそのようなアプローチにつき議論するよう,閣僚に指示することで一致。
- この関連で,野田総理より,ASEAN食料安全保障情報システム(AFSIS)への支援を通じた透明性向上への貢献,ASEAN+3での緊急事態のための米の備蓄制度を通じたタイへの5万ドルの緊急支援の実施,ASEANの連結性向上のための協力及び2013年に第5回アフリカ開発会議(TICAD)を日本で開催する予定である点につき述べた。
(3)グローバル・ガバナンス
- 冒頭,仏の依頼を受けたキャメロン英首相が,1)G20の将来と方向性,2)経済機関の政策調整(特に金融及び貿易分野),3)新興国を巻き込んだルール作りの重要性について説明。
- 各国首脳は,キャメロン首相の報告に感謝し,G20は,非公式な首脳の集まりとして,大きな方向性について政治的な合意を形成する場である,また,世界経済に責任を有する国が率直に意見を交わすことが強みであるなどの意見があった。多くの首脳がWTO,FSB機能強化の方向性を支持した。
(4)金融規制
- 冒頭,ドラギFSB議長が,グローバルなシステム上重要な金融機関(G-SIFIs)や,シャドーバンキングへの規制・監視強化をはじめ,金融規制改革を巡る議論の進展及びFSBのあり方に関し報告を行った上で,カーニー新議長,ヒルデブラント新副議長が作業を継続することへの期待を表明。次にグリアOECD事務局長が,非協力的な国・地域における租税回避への取組を説明,多くの首脳から,金融規制改革の重要性に言及しつつ,国際的に整合性のとれた着実な取組を要請する意見を述べた。また,G-SIFIsとして特定された金融機関を発表。
- 野田総理は,改革の進展を歓迎し,資本規制の強化に偏らず,多様な施策を実施すべき旨指摘した。また,店頭デリバティブ取引規制等,過去の合意を着実に実施すべき旨を主張した。また,FSBの強化の重要性を指摘した。
(5)農業・エネルギー・気候変動
- ズマ南アフリカ大統領から,COP17,また,ルセフ伯大統領から,リオ+20の主要課題について説明あり。
- 農産品については,多くの首脳が価格の過度の変動に懸念を示し,対策の必要性を主張。また,食料安全保障の重要性が指摘された。
- エネルギーについては,エネルギー価格の乱高下に対する懸念が示された他,石油市場の安定の重要性を議論。
- この関連で,野田総理より,カンクン合意に基づき,米中を含む全ての主要国が参加する公平で実効的な一つの法的拘束力のある国際枠組みの構築を目指すことが我が国の変わらぬ目標である旨述べた。
(6)社会的側面・腐敗
- 多くの首脳が,G20雇用・労働大臣会合の結果を踏まえた報告を評価。
- 雇用が成長及び信認の回復のための行動及び政策の核心であり,特に若年者の雇用及び雇用創出の重要性について議論。
- 腐敗対策は経済成長と開発を阻害する大きな要因との認識の下,ソウル・サミットで合意した「G20腐敗行動計画」をはじめ,国際的な腐敗対策の進捗を評価し,新たに「監視報告書」を策定。
(7)コミュニケ採択・メキシコ議長国(2012)の優先事項
- 全ての首脳がコミュニケに合意。サルコジ仏大統領より,今次サミットの総括が述べられた他,カルデロン墨大統領が,来年の6月にロスカボスで開催される次回サミットに向けた決意を示した。
3.今後のG20サミット
次回G20は,来年6月にメキシコにて開催。2013年はロシア,2014年はオーストラリア,2015年はトルコで開催。2016年は,中国,インドネシア,日本及び韓国のアジア諸国を含むグループから議長国が選ばれる予定。