
インフラ投資に関するハイレベル・パネル報告書
(要約)
平成23年11月
(英語版(PDF)
)
- 開発アジェンダは,世界経済アジェンダの不可欠な部分として,G20の優先事項の中核にある。
- インフラ投資に関するハイレベル・パネル(HLP)は,民間部門の関与がインフラ整備の強化に不可欠であるとの理解に基づき,公的部門及び民間部門の双方からインフラプロジェクトにおける多様な能力及び国際的な経験を有する17人のリーダーで構成。
- ソウル・サミットの付託により,HLPは,インフラ需要のための資金調達を拡大及び多様化するとともに,具体的な地域イニシアティブのリストを特定するため,カンヌG20サミットへの提言を準備した。
- HLPは,国際開発金融機関が策定した行動計画を歓迎するが,国際開発金融機関が更なる行動を検討する必要があると信じる。それは,インフラ投資支援のための資本活用をてこ入れするための革新的な資金調達アプローチの検討を含む。
- 途上国において,成長及び開発のモメンタムを維持するため,国家及び国際レベルでの公的資金調達の継続が重要。
融資可能なプロジェクトの強固な供給の確保
- インフラ投資発展の鍵となる条件は,資金供給というよりは,融資可能なプロジェクトの強固な形成ルートの存在である。
- 強固な形成ルートの開発を支援するには,インフラプロジェクトの準備,立上げ及び管理を後押しする現地資源が利用可能であることが不可欠。したがって,HLPは,官民連携の開発支援の中核的な主体として,現地での官民連携ユニットの設立を奨励。
- 低所得国の官民連携ユニット,監督能力及び民間部門の専門知識の強化を支援するため,HLPは,低所得国,特にアフリカが関与するG20研修プログラムの創設を提唱。各G20参加国は,インフラ,プロジェクトへの資金提供,資本市場開発,建設又はインフラ運営の活動に関与する民間企業を特定し,プログラムへの参加を求めることに責任を持つ。
- インフラプロジェクトの準備の成功は,プロジェクト関係者の質に依拠。HLPは,途上国及び特に低所得国の専門的な人材の能力強化のため,G20諸国が支援イニシアティブを検討することを奨励。特に,G20諸国に対し,パイロット・インフラプロジェクトのための最低2週間の無償の助言活動に従事するよう民間企業を説得することを提言。
- HLPは,現地の能力構築の強化のため,国際開発金融機関行動計画により提唱された,各国政府,二国間援助機関及び国際開発金融機関による地域的な実務者のネットワークの発展及び拡大を支持。
- 途上国及び特に低所得国において,官民連携開発モデルを使用する複雑なインフラプロジェクトを実施する能力,技能及び専門的知見を備えた官民連携ユニットを開発することは,相当な費用を伴う長期的な目標であると認識。したがって,HLPは,国際開発金融機関に対し,途上国及び特に低所得国において官民連携ユニットによるプロジェクトの形成及び管理への支援を継続するよう提言。
- 途上国及び特に低所得国で使用するため,経験に基づいた,官民連携に係る政策,手続及び文書作成の模範的な基準を策定することが必要。
- 官民連携の成果は,適切に形成されたプロジェクトにより一層高められるが,プロジェクト形成への資金供給が主要な制約であることが強調されてきた。官民連携プロジェクトは,伝統的な公的部門のプロジェクト以上に複雑であり,予想される官民連携プロジェクトの拡大に応じてプロジェクト形成ファシリティ(PDFs)を拡大することが必要。
- HLPは,国際開発金融機関及び二国間援助機関が共同し,既存のプロジェクト開発資金ファシリティについて,追加資金の提供を含めて持続可能な形に再構築するため,地域レベルで見直しを行うことを提言。国際開発金融機関が,その行動計画において,アフリカ・インフラ・コンソーシアム(ICA)及び官民インフラ助言ファシリティ(PPIAF)によるそのような見直しの実施を提言したことを歓迎。
- 情報の非対称性は,インフラにおける民間部門投資の妨げとなっていることを認識。関連情報の質の向上により,インフラプロジェクトへの資金提供を改善する取組を支援。そのような取組には,インフラプロジェクト情報共有のためのオンライン市場プラットフォーム及びインフラ開発ベンチマーキング・イニシアティブを含む。
投資に資する環境構築への貢献
- プロジェクトを規律する法律については,長期的な確実性が不可欠。これら法令及び規制の枠組みは,インフラプロジェクトの長期的な性質及び一連の法令に適合する必要性を踏まえれば重要。長期的な目標に向けた進ちょくを明らかにするため,短期的には,具体的な対応策が必要。国際開発金融機関は,低所得国の要請に応じて,法令及び規制の枠組み等の強化のため,的を絞った持続的かつ現地にあわせた支援を提供すべき。
- 国際開発金融機関の資金を活用する官民連携開発においては,複雑で幾段階にもわたる官民連携の調達に必要な柔軟さを欠く調達ルールの特質が繰り返し課題となる。国際開発金融機関により資金供給された調達は,透明性の観点から,一般に受け入れられている国際競争手続の枠内で実施されるべきだが,官民連携プロジェクトの競争性が低いレベルであることは難しい課題。官民連携を促進するため,国際開発金融機関による調達ルールをより柔軟にするための作業を歓迎。
- 広範な民間参加のための環境構築の観点から,G20諸国にメンバーシップを開放するアフリカ・インフラ・コンソーシアム(ICA)の提案を歓迎。
- 国際開発金融機関及び二国間援助機関は,取組の重複を調整することが必要。インフラプロジェクトを効率的に前進させるため,「主幹事銀行」のコンセプトを提言。この点に関し,ADB-IsDB試行共同調達イニシアティブを歓迎。国際開発金融機関の調達ルールの更なる調和化と途上国のシステムの活用に向けた作業を行うことを提言。
- 国際開発金融機関の職員に対し,地域的プロジェクト及び官民連携への投資を増加するインセンティブを与えることを提言。
- 官民連携契約の完全な情報公開は,建設部門における透明性イニシアティブ(CoST)の拡大を提案する国際開発金融機関行動計画と整合的。
- 債務持続性枠組み(DSF)の包括的な見直しを歓迎し,DSF及びインフラプロジェクト向け非譲許的借入に関する政策の強化を主要な優先課題と認識。
適切な条件下での資金供給を可能に
- 長期的なインフラプロジェクトへの資金供給プロセスを効果的に立ち上げるために,公的支援は引き続き鍵となる。
- 外国為替リスクの軽減及び国内貯蓄の動員のため,途上国の現地通貨建て債券市場を通じ,インフラへの資金供給を目指す長期的なアプローチを支持。短期的には技術支援を提供。
- 過去のプロジェクトの成功例及び利用可能な機会に関する情報の共有及び普及を促進すべき。現地のリスクをより正確に把握する国内金融仲介機関は,重要な役割を果たす。インフラプロジェクトに投入される国内及び国際資本の効果的な「ゲートウェイ」となるよう,適切な現地の金融会社,開発銀行及び商業銀行の能力強化及び手順の改善を支持。多くの小規模な国・地域では,かかる機関は,国際開発金融機関からのインフラのための資金供給を補完及び促進する重要な役割を果たす。
- IFCアセット・マネージメント社(AMC)の経験に基づいた新しい資金供給アプローチを試すためのパイロット・プロジェクトの実施を奨励。民間の資金源からインフラ投資のために第三者株式資本を動員しようとする国際金融公社(IFC)及びアジア開発銀行(ADB)の取組を奨励。
- 長期的な民間債務資本の誘引は,国際開発金融機関が直接貸付よりもリスク緩和商品に対し,実質的により大きな資源配分を行うことによっても達成可能。国際開発金融機関の保証への需要は,特に中所得国での金融市場の発展とともに,低所得国において,特にクリーンエネルギーや大型インフラプロジェクト向けに高まると予想。国際開発金融機関は,保証に関する施策を開発すべき。
- 国際開発金融機関の間での一層の調整は,それぞれの保証及び信用補完プログラムのレバレッジ効果を増強する。国際開発金融機関が運用基準,手順及び必要書類の合理化及び調和を図ることが重要。
- HLPは,国際開発金融機関に対し,現在提供されているリスク緩和商品を再検討することを要請。
- 伝統的な資本提供者の財政的な制約にかんがみ,世界中の政府系投資ファンド(SWFs)からの資金を引きつけ,低・中所得国の国内貯蓄を積極的に動員する方法を模索することが重要。
- アジア開発銀行とASEANインフラ基金により提案されたパイロット・イニシアティブは,官民連携を通じたインフラ開発への民間部門の関与を強化する方法についての強力な例示を提供するものであり,HLPはこれを歓迎。G20に対し,類似の手段を活用する更なる地域的・国際的な基金の設置を検討するよう奨励。
国際開発金融機関と協働し,模範となるプロジェクトを特定
- 地域的なインフラプロジェクトは,経済統合から恩恵を受けるにあたってますます重要であると考えられてきた。HLPは,この地域的な開発アプローチを承認し,国際開発金融機関に対し,模範となる地域的なプロジェクトを特定するよう求めた。
- HLPと国際開発金融機関の見解に基づき,共通して合意された以下の6つの基準は,低・中所得国における将来のインフラ投資のための選択及び優先付けのプロセスに資する。
- 地域統合をもたらすプロジェクトか
- 政治的な支持を得ているプロジェクトか
- 地域の成長に変革的な影響をもたらすプロジェクトか
- プロジェクトの準備の進ちょく状況を考慮し,プロジェクトの成熟度は高いか
- 実施機関の技術的能力を考慮し,十分な組織的能力を有しているか
- 資金供与や信用度の点において,民間部門にとって潜在的な魅力があるか
- 国際開発金融機関により,低・中所得国において選定基準に合致する11の模範となるプロジェクトを特定(アジア地域はASEANインフラ基金,TAPI天然ガスパイプライン・プロジェクト,大メコン圏におけるバイオマスエネルギーのための地域プログラムの3件,アフリカ地域は東アフリカの送電網,南部アフリカの輸送回廊など5件,中東・北アフリカ2件,ラテンアメリカ1件)。HLPは,国際開発金融機関が実施した11の模範となるプロジェクトを特定するプロセスを歓迎。
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