
各国の経験を参考にした資本フロー管理のためのG20の一貫した結論
(G20財務大臣・中央銀行総裁会議によって採択)
2011年10月15日
(英語版(PDF)
)
資本フローは,国際通貨システムの主要な特徴である。全世界の,特にG20諸国の政策立案者が直面する主要な課題は,国家レベル及び国際レベルで金融の安定と持続可能な成長を損なわせ得るリスクを予防及び管理しつつ,どのように金融のグローバル化から利益を享受するかである。大規模で変動する資本フローがもたらす課題への対処に資するため,G20メンバー国は,各国の経験を参考にしながら,以下の結論に達した。この結論は,資本フロー管理措置についての各国の意思決定プロセスへの非拘束的な貢献と見なされるべきであり,また各国の政策選択を制限するものとみなされるべきでない。
- 異なる政策措置の精密な分類を行うことは,いくつかの場合において,困難である。特に,資本フロー管理措置とマクロ健全性政策の間には重複がある。これ本結論の文脈では,資本フロー管理措置とは,資本フローに影響を与えるように策定され,しばしば資本規制と称される,居住地に基づく資本フロー管理措置,及び居住地に基づいて区別しないものの,フローに影響を与えるように策定される他の資本フロー管理措置である。後者のカテゴリーには,(a)健全性措置の一部を含む,通貨に基づき取引を区別する措置と,(b)典型的には非金融セクターに適用される,その他の措置(例えば一定の投資に対する課税)が含まれる。
- 資本フロー管理措置は,ショックから経済を守るための広範なアプローチの一部を構成し得る。高水準で,変動する資本フロー状況においては,資本フロー管理措置は,適切な金融,為替レート,外貨準備管理及び健全性政策に代替するものではなく,むしろこれらを補完し,並行して用いられることができる。
- 資本フロー管理措置を使用するかどうか及びどのように使用するかの決定は,異なる政策ツールの調整のとれた活用が効果的で一貫したアプローチのための鍵であることを考慮して,実際的な経済・金融リスク管理の観点からアプローチすべきである。健全なマクロ経済政策は,総合的な経済の健全性のための一義的な責任を有しており,効果的な金融規制・監督を含む,適切な構造的環境は,金融の安定のために重要である。
- 資本フロー管理措置は,経済における必要な調整を回避するか,もしくは不当に遅らせるために使用されるべきではない。特に,我々は,より市場で決定される為替レートシステムに移行し,根底にある経済のファンダメンタルズを反映するよう,為替レートの柔軟性を向上させるとともに,通貨の競争的な切下げを回避する。
- 資本フロー管理措置の使用のための全てに当てはまる単一のアプローチや条件の厳密な定義はない。国ごとの状況は,資本フローに対処するための総合的な政策アプローチを選ぶ際に考慮されなければならない。
- 現地の金融セクターの規模,深さ及び発展の水準は,その国の制度及び規制の強さと同様に,異なる政策措置の適切さと相対的な長所と欠点を評価する上で重要な役割を果たす。
- 突然の急停止や逆流は金融の安定性を低下させかねないことを認識し,資本フロー管理措置は,個別のグローバルな及び国内のマクロ経済及び金融の安定状況に応じて,景気循環に抑制的な形式で運営すべきである。資本フローの管理措置は,透明で,適切に説明され,特定のリスクに的を絞るべきである。特定のリスクに適切に対応するため,資本フロー管理措置は,必要に応じて,各国及び地域当局によって定期的にレビューされるべきである。特に,資本規制は,不安定化させる圧力が減ずるのに応じて,調整され,又は解除されるべきである。資本フロー管理枠組みは,それを出し抜こうとする努力の防止に役立つためのものを含め,異なる状況や課題の下で効果的であるため,十分な柔軟性を維持する必要がある。
- 国内の金融セクターのさらなる強化が重要である。現地通貨建て資本及び債券市場の発展と深化により,資本フローを吸収し,変動に対処することを助け,資本フローを実体セクターにおける生産性のある活動に向け,地域経済の成長と発展を促進し,国際金融の混乱の際には資金基盤を維持することができる。より洗練された金融市場は,資本フローを引きつける傾向があり,それ故突然の流出を生じさせ得るため,適切な規制と健全な慣行が,金融セクターの発展に応じて策定され,実体セクター経済との健全なバランスが維持されていることが重要である。適切なマクロ健全性の枠組みもまた,検討される必要がある。
- 国際流動性の状況,長期的な成長見通し及びグローバルなリスク認識といったプッシュ要因とプル要因の双方が,資本フローの規模と構成を決定する役割を果たす。自国内の政策決定(この特定の文脈においては,為替レート管理政策,準備通貨発行国・地域における金融政策,規制・監督政策,資本フローの管理に関する措置を含む)を通じて他国に影響を与える潜在性のあるいかなる国も,自国のマクロ経済の枠組みと整合的な様々な政策の選択肢を比較検討する際に,このような波及効果の潜在的な影響を考慮すべきである。これらの政策は,個々の影響及び全体の波及効果の両方を評価するため,定期的で信頼に足る公平な多国間のサーベイランスの対象であるべきである。
- 準備通貨発行国のマクロ経済政策は,国際流動性,ひいては資本フローに中心的な影響を与え得る。これらの国々は,過度の不均衡と政策の急激な転換を回避する観点から,健全で持続可能なマクロ経済政策を維持する特別な責任を有する。
- IMFの法的枠組みの下では,資本勘定の自由化の義務は存在しない。しかしながら,特に,強固な規制・監督枠組みを含む,資本勘定の開放が成功するための重要な前提条件が十分に満たされている場合,資本フローは,世界経済と同様,当該国にとっても重要な恩恵をもたらし得る合意は存在する。G20諸国の重要な長期的目標は,金融の安定と持続可能な成長を損なう可能性のあるリスクを予防・管理し,金融の保護主義を回避しつつ,各国が自由な資本移動の恩恵を享受することができる条件を,国内及び国際的に,強化された協力を通じて,実施することであるべきである。
(注) 1 この定義に基づくと,ある措置が資本フローに影響を与えるように策定されていない場合,資本フロー管理の区分に該当しないこととなる。これらの資本フロー管理措置でないものは,居住地の別や,通貨の別では区別しない。関連する例には,金融機関の強じん性を確保するための健全性措置がある。
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