
G20開発作業部会報告書
(要約)
平成23年11月
(英語版(PDF)
)
I.前文
- G20は,ピッツバーグの枠組み及びソウル開発合意において,開発と世界経済の課題は別々に取り組むことはできないことを認識している。グローバルな経済ガバナンス及び金融規制の強化のためのG20の行動は,途上国に直接影響を与える。
- 我々は,強固で均衡ある成長の基盤作り及び強じん性の構築という二つの方法に従って,個別及び集団での行動によって,ソウル・サミットで合意した開発に関する複数年行動計画の実施を開始した。
II.成長の基盤作り
1.インフラ投資への支援
- 我々は,途上国,取り分け低所得国で,他を排除しないものの特にサブサハラ・アフリカを重視して,インフラ投資等への障害を乗り越えるための行動を取ることを勧告する。
- 我々は,メンバーシップを開放するとのアフリカ・インフラ・コンソーシアム(ICA)の提案を歓迎する。
- 我々は,国際開発金融機関(MDBs)による行動計画策定の多大な努力を歓迎し,カンヌ・サミットまでに,以下を含むインフラ投資可能な環境を促進するための提言を検討することに同意する。
- プロジェクト準備及び実施のための官民連携の実務者ネットワークの展開及び強化
- プロジェクト準備ファシリティ(PPFs)効率化のための原則の承認と既存 のPPFsの機能の検査の要求
- アフリカ国別インフラ評価(AICD)を拡大した,国際開発金融機関によるグローバル・インフラ・ベンチマーキング・イニシアティブの立ち上げ
- プロジェクトの提案者と融資者を結ぶためのオンラインの地域市場プラットフォームの立ち上げへの支持
- 建設部門透明性イニシアティブ(CoST)の価値を認識し,イニシアティブの拡大を歓迎
- 我々は,国際開発金融機関に対し,カンヌ・サミットまでに,調達ルールの調和化,PPFsの効率化等に関連する作業を終えるよう要請する。
- 我々は,債務持続性枠組み(DSF)がインフラプロジェクトの資金調達に与える不適切な制約の程度に関する進行中の調査を歓迎する。
- 我々は,HLPの成果が,カンヌにおいてG20首脳に提出されることを歓迎する。我々は,HLPにより提案された,環境の持続可能性や食料安全保障等を十分考慮しつつ,模範的なインフラプロジェクトを特定するための一連の基準に留意する。
2.成長加速化のための地域的・国際的な貿易環境の実現
- 強固で包括的な成長には,インフラの改善並びに市場アクセスの拡大,地域市場の統合及び貿易金融へのアクセスを通じた貿易能力の強化が必要である。また,保護主義の拒絶及び多角的な貿易自由化の推進が重要である。第8回WTO閣僚会議は,これらを進展させるための重要な機会である。
- イスタンブール行動計画に基づき,G20は,途上国のための貿易能力の強化及び市場アクセスの改善を図るべきである。
- 我々は,簡潔で透明性のある原産地規則と共に, 無税無枠の市場アクセスが,後発開発途上国(LDCs)の経済成長及び貧困削減を支援する貿易の増加に主要な役割を果たすことを認識する。
- 我々は,アフリカ諸国や他の地域の地域統合の強化へのコミットメントを共有し,能力強化のための技術・資金支援,アフリカ連合地域統合計画,アフリカに対する貿易のための援助,地域貿易回廊の発展等を提言する。
- 我々は,第3回貿易のための援助グローバル・レビュー会合の成果を歓迎する。G20ソウル・サミットで首脳が合意したように,支援の水準を維持すること等に特別な注意が払われるべきである。
- WTOの報告書の提言を基礎として,我々は,既存の貿易金融についてのデータベースを含め,データ改善の最良の方法を検討すること,アフリカ開発銀行(AfDB)に貿易金融ファシリティを設置することを提言する。
3.民間投資,雇用創出及び人材開発の促進
- 我々は,民間投資の経済的付加価値及び雇用創出を計量するための暫定的な指標を歓迎する。我々は,少なくとも6カ国において,これらの指標の実地試験を行う。
- 我々は,G20カンヌ・サミットにおいて,「G20包括的ビジネス・イノベーション」を立ち上げることを提案する。
- 我々は,雇用のための技能に係る指標についての,国際的に比較可能なデータベースの構築に向けた協議プロセスを高く評価する。
- 我々は,国際機関が,低所得国の技能開発戦略を支援する取組の一層の調整にコミットしていることを歓迎し,2012年末までに,同取組を他の低・中所得国に展開することを検討するよう提言する。
4.農業開発への投資
- 農業生産及び生産性の改善は将来の食料需要を満たすことに貢献する。政府開発援助,南南協力,官民の投資等の適切な組合せを通じ,農業投資を拡大すべきである。G20農業大臣による「食料価格の変動及び農業に関する行動計画」の観点から,我々は,特に小規模農家に焦点を当て,持続可能な形での農業生産及び生産性の強化を提言する。
- 農業研究及びイノベーションは食料安全保障の課題に対処し,技術移転や知見の共有に取り組む上で不可欠である。我々は,開発のための農業研究会議での議論を発展させ,熱帯農業プラットフォームの発展や南北・南南・三角協力の促進を期待する。我々は,グローバル・フォーサイト・ハブの立ち上げを歓迎する。
- 我々は,途上国における農業研究への投資を促進するため,農業におけるプルメカニズムの実施を支持する。
- 国際開発金融機関が,水,食料及び農業に関する行動を拡大し,今後策定される共同行動計画に基づき一層調整することを支持する。
- 全ての国に対し,「責任ある農業投資のための原則」を支持するよう奨励し,これらの原則の任意の実地試験を支持する。
- 我々は,生産性の改善,収穫後の損失の削減を含む農業の価値連鎖全体にわたる,農業投資のための包括的なアプローチを支持する。
5.国内資金の動員促進
- 開発への投資,貧困の緩和,公共サービスの提供のための資金源として,課税の重要性を確認する。課税は,成長を促進し,長期的には外部からの資金流入(特に開発援助)への依存を緩和するために必要な財政上の責任と持続可能性を提供する。
- 潜在的な成長力を阻害し,国内資金の動員にも影響を及ぼす不正資金の流れへの対処には,先進国及び途上国の協働が必要である。我々は,租税行政システムに関する途上国の能力構築を支援する国際協調を深化させる。
- 透明性と説明責任は,国内資金の動員,援助及び経済ガバナンスの重要な要素である。先進国,途上国及び多国籍企業は,財政政策の内容及び影響に一層の透明性及び相互の説明責任を追求すべきである。我々は,採取産業透明性イニシアティブ(EITI)への自発的な参加を求める。
- 我々は,多国籍企業に対し,透明性の改善及び租税法の完全な遵守を求める。
- 我々は,タックス・ヘイブン及び非協力的な国・地域に効果的に対応するとの我々のコミットメントの重要性を改めて表明する。我々は,全ての関係国・地域に対し,「税の透明性と情報交換についてのグローバル・フォーラム」への参加を奨励する。
- 我々は,多くのG20諸国が,「税務行政執行共助条約」に署名し,又は署名しようとしている事実を歓迎し,その他の国・地域に対し,署名することを考慮するよう奨励する。
III.強じん性の構築と持続可能で共有された成長の促進
1.価格変動への対応とリスク管理による食料安全保障の確保
- 過度の農作物価格の変動から,最も脆弱な人々を一層保護する必要がある。我々は,リスク管理ツール及び手法に関する国際開発金融機関の作業を称賛する。
- 我々は,特に,農業市場情報システム(AMIS)を通じた,農業市場の透明性向上と,農業政策におけるリスク管理の主流化の必要性を認識する。我々は,包括的アフリカ農業開発プログラム(CAADP)の国別及び地域別計画にリスク管理を組み入れるAU/NEPADのロードマップを歓迎する。
- 我々は,多国間,地域別及び国別の開発金融機関や開発機関が関与する,リスク管理助言メカニズムの設置の取組を支持する。
- 我々は,適切な場合には民間部門と連携し,価格変動対応措置及びメカニズム,作物保険,天候インデックス保険,並びに契約農業を促進する保証メカニズムの実施及び拡大を提言する。
- 我々は,IFC(国際金融公社)の農業価格リスク管理商品といった,革新的なリスク管理ツールを拡大するための進行中のイニシアティブを支持する。
2.栄養と人道上の食料供給へのアクセス
- アフリカの角では,60年間で最悪の干ばつにより,1,240万人が犠牲となった。エチオピア及びケニア等では,政策の改革や緊急食糧備蓄を含む政府及び国際社会の取組が,食料安全保障を強化し,脆弱性を削減し,干ばつによる最悪の影響の緩和に資した。
- 我々は,直接的な栄養についての介入政策を進めるとともに,すべての関連政策に栄養の観点を統合することで,栄養問題の改善にコミットすることを確認した。
- 我々は,地域別及び国別の緊急食料備蓄が,食料危機の影響緩和のために取り得る対応策の一つであることを認識した。我々は,ECOWAS(西アフリカ諸国経済共同体)が主導する試行プロジェクトの策定を歓迎する。
- 我々は,WFP等の国際食料援助における事前購入等のイニシアティブを支持する。
3.社会保護制度を通じた脆弱な人々のショックからの保護
- 社会保護政策は,貧困との闘い,格差是正,生活水準の改善,社会の一体性と安定性の強化,ミレニアム開発目標の達成のために不可欠である。我々は,南北協力・南南協力・三角協力を通じて,国別の社会的保護の床の実施や拡大を支援することにより,途上国において強じんな成長を促進するための措置を強化することを提言する。
- 我々は,メキシコサミットまでに効果的な知見共有プラットフォームを設置することを提言する。
4.移民の国際送金の促進
- 我々は,2014年までに国際送金の世界的な平均コストを5%まで引き下げるとの目標を提案する。5%の引き下げにより,受け取り手に対する年間150億ドルの追加的資金移転が見込まれる。
5.金融包摂及びGPFIの作業への支持
- 我々は,金融包摂行動計画の実施についての金融包摂グローバル・パートナーシップ(GPFI)の作業に留意し,カンヌ・サミットにおける首脳への所期の成果の報告を期待する。
- 我々は,GPFIに対し,分析,知見の共有及び相互学習の推進を奨励する。また,我々は,非G20諸国のGPFIへのパートナー又は様々な試行的グループのメンバーとしての参加を奨励する。
IV.新たな協力の道:G20メンバーによる開発のためのソウル合意の共有ビジョンを基礎として
- 我々は,G20各国の多様性を尊重し,各国の状況及び特異性に基づく異なるアプローチを奨励する。知見の共有は開発協力のための注目すべきツールである。我々は,社会保護,技能開発及び熱帯農業の分野における知見共有プラットフォーム又はネットワークの設置を歓迎する。
- 我々は,各国のニーズにより効果的に対応するため,三角協力の推進にコミットする。
- 我々は,透明性,相互説明責任,成果の達成等の優先分野についてのコミットメントを通じた援助効果向上の取組を支援する。
- 我々は,ラクイラ食料安全保障イニシアティブ(AFSI)により作成された「食料安全保障に関するG20コミットメントの進捗モニタリング」に留意する。
- 我々は,釜山で開催される第4回援助効果向上に関するハイレベル・フォーラムが,より包括的なパートナーシップに焦点を当てる新たな開発パラダイムの確立及び援助効果向上についての幅広い課題への対処に貢献することを期待する。
- 我々は,民間部門及び市民社会との関与を深め,具体的で持続可能な成果に焦点を当てる,革新的でグローバルな開発パートナーシップの構築に合意する。開発は,すべてのG20諸国共通の関心であり義務である。
V.今後の行程:開発に関する複数年計画の実施のための作業計画
- ソウル・サミットで確率された原則に基づき,G20は途上国の主要課題に取り組むことに引き続きコミットしている。
- 初年の作業から得た教訓を考慮し,少数の優先事項に焦点を当てるべきである。我々は,主要課題を優先付けし,作業計画を提案するとの次期議長国メキシコの意志を歓迎する。
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