経済

(仮訳)
経済上の連携に関する
日本国とタイ王国との間の協定の
署名に当たっての共同声明

(英語版はこちら)

  1. 我々、安倍晋三日本国内閣総理大臣及びスラユット・チュラノン・タイ王国首相は、2007年4月3日、東京において会談を行った。我々は、本年両国が日タイ修好120周年を祝福することに留意し、また、一年を通じて計画される様々な記念行事を歓迎しつつ、両国間の伝統的、親密かつ緊密な友好関係が、経済、政治、社会文化等あらゆる面において、また、国民レベルを含めたあらゆるレベルにおいて、一層強化されると確信する。我々は、また、日本とタイが、東アジア共同体構築を視野に入れつつ、広範囲にわたる地域協力に対して重要な貢献を行ってきたことを再確認する。我々は日本とタイが自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった普遍的価値の重要性を再確認しつつ、日・ASEAN間、更には国際社会全体における戦略的パートナーシップの深化・拡大という文脈の中で、両国及び東アジア地域における安定、安全保障及び繁栄への貢献という両国が共有する責務を果たすため、両国が如何に緊密に協働すべきかについて議論した。
  2. 我々は、グローバリゼーションが多くの新たな経済上及び戦略上の課題及び機会を提示していることを認識しつつ、「共に歩み、共に進む」との考えに立脚し、経済的及び政治的な関係を強化するとの我々の決意を確認する。本日、経済上の連携に関する日本国とタイ王国との間の協定(以下、「協定」という。)に署名することにより、両国間の戦略的パートナーシップは新たな時代を迎えた。
  3. 我々は、日本とタイの間のより緊密な経済上の連携が、健全な経済発展を加速し、両国民の福祉を増進し、両国及び地域における能力の構築に貢献することを確信する。また、我々は、物品、投資、サービス及び人の国境を越える移動に対する不必要な障壁を除去する必要性を認識するとともに、全ての人に対しグローバリゼーションによる利益を最大化するために、我々が協働し、更なる協力を行う必要があることを認識する。
  4. 協定は、物品、投資及びサービスの国境を越える流れを増加させる。また、協定は、自然人の移動を促進する。よって、協定は、両国間の経済上の連携を強化し、それにより、両国それぞれの経済発展を促進する。さらに、協定は、相互承認の円滑化、知的財産の保護、政府調達分野における協力の拡大、公正で自由な競争、及び(i)農業、林業及び漁業、(ii)教育及び人材養成、(iii)ビジネス環境の向上、(iv)金融サービス、(v)情報通信技術、(vi)科学技術、エネルギー及び環境、(vii)中小企業、(viii)観光、及び(ix)貿易及び投資の促進の各分野における協力について規定している。交渉の結果、我々は個別の事項について追加の声明を作成し、それらの声明はこの共同声明に添付される。我々は、それらの声明に記載のある、我々が共有する責務を果たす決意を確認する。
  5. 我々は、協定を通じ、日本とタイがそれぞれの競争力を最大限に活かし、両国の経済発展を促進することで、両国国民に繁栄と安定がもたらされることを期待する。
  6. 協定は、既存の及び新たなビジネスチャンスを醸成し、競争力を強化し、また、中小企業の発展及びネットワーク化や地方レベルでの連携の発展を含む、両国の民間セクター間の緊密な連携を促進することとなり、それは、草の根レベルに利益をもたらす。したがって、我々は、両国の民間セクターが、協定から利益を得る方策を既に模索し始めていることに勇気づけられている。我々は、民間セクターと緊密に協議し、また関係者の利害を考慮に入れつつ、そのような努力を支援するという両国政府の決意を再確認する。
  7. この関連で、我々は協定の下での食品安全と地方レベルでの連携の分野における協力に関する日本国農林水産大臣とタイ農業・協同組合大臣間の共同声明を歓迎する。我々はまた、日本国経済産業大臣とタイ商務大臣間の、以下の7つの協力プロジェクト-即ち、「世界の台所」プロジェクトのための貿易及び投資の促進、日本とタイとの間の「鉄鋼産業協力プロジェクト」、「自動車人材育成機関」プロジェクト、省エネルギー、価値創造経済、官民パートナーシップ、繊維及び繊維製品に関する協力-に関する共同声明も歓迎する。我々は、これらの共同声明の内容が可能な限り早く、効果的かつ有意義に実施されることを期待する。
  8. 我々はさらに、両国それぞれの発展に対するエネルギー安全保障上の挑戦に留意し、及びASEAN+3エネルギー担当大臣会合でも議論された、エネルギー効率、省エネルギー及び代替エネルギー開発分野において環境保護にしかるべき考慮を払いつつ協力を促進することを決意する。我々は、協定の下で如何に協力することができるかについて、両国政府がより詳細な協議を行うことを再確認する。
  9. 我々は、日本とタイの間の強化された包括的な連携により、両国が、日・ASEAN間の包括的経済連携及び発展のための連携を含む地域国家間の連携、及び他の地域的枠組みの発展に、より貢献できるようになるという認識を共有する。
  10. 我々は、日本国及びタイ王国の政府と国民を代表して、両国国民の相互の福利のための我々の連携をより高い次元に引き上げ、また東アジア共同体のために確固とした基礎を築く協定の署名を祝福する。

 東京において、2007年4月3日

安倍 晋三
日本国内閣総理大臣
スラユット・チュラノン
タイ王国首相

別添

1. 自動車

 両首脳は、両国間の長期的な友好関係を認識し、3,000cc超の完成車に関する更なる関税自由化及び2010年代半ばの関税撤廃の可能性につき真摯に協議することを決定する。協議は2009年に開始される。タイ側は、将来自国が締結する自由貿易協定において、他の主要な自動車製造国に対して、自動車関税に関し日本に対するより有利な待遇を与える意図がないことを表明した。

2. 最恵国待遇

 タイ王国政府は、投資委員会の1985年から2004年の統計により、日本の投資家が外国直接投資の量の観点から最も重要な投資家であることを認識する。

3. 投資

 タイ王国政府は、1999年外国人事業法のリスト1,2及び3に含まれない製造業セクターにおける投資に関し、現行の投資政策を、日本投資家に対してより制限的なものに変更する意図は有さない。

4. 相互承認

 両首脳は、両国間に有益な相互承認メカニズムを構築することの重要性及び相互利益を認識する。彼らはまた、両国間の物品貿易を促進するために、相互承認分野において協力を促進する意図を表明した。この関連で、両国政府は、協定の下で相互承認を効果的に実施するため、それぞれの国の関連検査機関及び適合性評価機関の能力を強化することを目的として、関連情報を交換し、互いに協議し、相互に決定した条件において技術的支援を提供する。

5.アンチダンピング

 両首脳は、ダンピング防止措置に安易に頼る傾向が世界で強まっていることを認識し、こうした措置が貿易を阻害し国内産業を不公正に保護するという保護主義的な目的のためにしばしば濫用されることについて深い懸念を共有する。両国首脳は、こうした措置が、現在、特に世界貿易機関の下で熱心に追求されている貿易自由化に向けた世界的な努力を阻害するような貿易制限的な効果を引き起こすことに重大な懸念を持って留意する。

 したがって、両首脳は、ダンピング防止措置の適用の際の公平性と整合性のみでなくダンピング防止措置の(発動)手続の透明性を確保するための健全で明確なルールを確立することが喫緊の課題であることを確認する。同時に、ダンピング防止措置の濫用の可能性を認識して、両首脳は、協定との関連で、両国政府はそうした措置を保護主義的な目的のために使用してはならず、使用する際は真に必要な程度においてのみ使用すべきである旨決意する。

 両首脳は、特に世界貿易機関の枠組みにおいて、ダンピング防止措置を規律する規則を明確化し、改善し、強化するための両国間の協力を継続し、強化することを決意する。

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