
(仮訳)
経済上の連携に関する
日本国とインドネシア共和国との間の協定の
署名に当たっての共同声明
(英語版はこちら)
- 我々、安倍晋三日本国内閣総理大臣及びスシロ・バンバン・ユドヨノ・インドネシア共和国(以下、「インドネシア」という。)大統領は、2007年8月20日、ジャカルタにおいて会談を行い、両国の長期にわたる二国間関係をより強化する方法を含む幅広い事項につき意見交換を行った。我々は、また、ユドヨノ大統領が国賓として訪日した際に、2006年11月28日に東京で署名した、「平和で繁栄する未来へ向けての戦略的パートナーシップ」を深化させる方法についても議論した。我々は、2008年に、日本とインドネシアが外交関係設定50周年を迎えることに留意し、親密かつ伝統ある両国の友好関係が、政治、経済、社会、文化等あらゆる面において、また、国民レベルをはじめとするあらゆるレベルにおいて、更なる高みに引き上げられるべきであることを確信する。
- 我々は、自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった両国が共有する価値の重要性を再確認しつつ、二国間、地域及び地球規模のレベルにおいて、これらの価値を促進し、また、新たな挑戦へ立ち向かうために緊密に協働することを決意した。我々は、また、具体的な二国間協力を通じて、グローバリゼーションによってもたらされる新たな経済上及び戦略上の挑戦に立ち向かい、新たな機会を探求することを約束する。このようにして、本日、経済上の連携に関する日本国とインドネシア共和国との間の協定(以下、「JIEPA」という。)に署名することにより、両国のパートナーシップは新たな時代を迎え、「平和で繁栄する未来へ向けての戦略的パートナーシップ」における新たな一章が始まることとなった。
- 我々は、日本とインドネシアとの間のより緊密な経済上の連携が、両国の間の相互に有益な経済的な絆を強化し、様々な方法による能力開発のための重層的な協力の実現に貢献することを確信する。また、我々は、物品、投資、サービス及び自然人の国境を越える移動をより円滑化し、中小企業を含む全ての者の利益を最大化するために協働及び協力することの大きな必要性を共有する。
- 我々は、JIEPAがWTOの多角的貿易体制の目的達成に積極的に貢献することを確信する。また、我々は、WTOドーハ開発アジェンダ(DDA)交渉を早期に終結させることの重要性を再確認する。我々は、農業、非農産品市場アクセス(NAMA)、サービス、貿易円滑化といった分野での交渉、並びに1994年ガット第六条の実施に関する協定(アンチ・ダンピング協定)の下での規律の明確化及び改善を目的とした交渉を含め、WTO・DDA交渉において、両国間の協力を包括的に継続及び強化することの重要性を強調した。
- JIEPAは、両国間の経済上の連携を強化するため、両国の関連産業の参加を得た能力開発のための協力、物品、投資及びサービスの国境を越える移動を増加させることを目的とした貿易及び投資の自由化、促進及び円滑化並びに両国間の自然人の移動の円滑化を含む広範囲の分野を扱う。さらに、JIEPAは、特に両国のエネルギー安全保障の確保を目的とした、エネルギー・鉱物資源分野における貿易及び投資に関する枠組みを規定する。この枠組みは、発電並びに石油・ガス、その他の鉱物資源の探査及び開発を含む、両国のエネルギー・鉱物資源分野における投資の利益及び機会の保護及び拡大に資する。また、この枠組みは、代替エネルギーの開発を含む、エネルギー・鉱物資源分野における協力の促進にも資する。これらの他にも、JIEPAは、政府調達に関する情報交換、知的財産の保護、反競争的行為に対する取組による競争の促進並びにビジネス環境の整備及びビジネスを行う上での信頼の増進に関する枠組みも規定する。この共同声明には、協力及び自然人の移動に関する声明が添付される。
- 我々は、JIEPAが日本の投資の増大及びインドネシアにおける日本の生産拠点の設置を大いに促進する環境を醸成することへの確信を表明する。また、我々は、JIEPAの署名により、日本とインドネシアがそれぞれの経済的競争力を増進し、能力開発のための協力を通じて連携を強化することで、両国国民の繁栄と安定がもたらされ、東アジア共同体形成のための重要な基礎が築かれることを期待する。
- 我々は、日本とインドネシアの政府及び国民を代表して、両国間の関係を新たな次元に高めるJIEPAの署名をここに祝福する。
ジャカルタにおいて、2007年8月20日
安倍 晋三
日本国内閣総理大臣
スシロ・バンバン・ユドヨノ
インドネシア共和国大統領
別添
1.協力
(1)両首脳は、日本のインドネシアに対する経済・財政協力に係る政策及びインドネシアの国家中期開発計画を考慮しつつ、日本とインドネシアがJIEPAの関連する条文に従い、製造業、農林水産業、貿易及び投資の促進、人材養成、観光、情報通信技術、金融サービス、政府調達、環境、エネルギー・鉱物資源、並びに両国が合意する他の分野において協力を促進することを確認する。
(2)特に、長期の枠組みである「製造業開発センター・イニシアティブ」において、両国政府は、様々な分野、すなわち、金属加工、金型技術、溶接技術、省エネルギー、中小企業振興の支援、輸出・投資支援、自動車・自動車部品、電気・電子機器、鉄鋼・鉄鋼製品、繊維、石油化学、油脂化学、非鉄金属及び食品・飲料分野におけるインドネシアの製造業の競争力向上のために協働する。協力案件の実施のために、それぞれの分野における必要性と実現可能性に関する両国政府間で共有された理解に基づき、基礎調査、専門家派遣、機材供与、研修、セミナー・ワークショップ、日本企業訪問を含む、様々な協力スキームが考慮される。
(3)両国政府は、「卸売市場の発展を通じた流通メカニズムの改善(ポストハーベスト処理及び市場流通施設の改善)」計画のために協働する。
(4)協力プロジェクト及びプログラム
(a)付表に明示されるプロジェクト及びプログラムは、早期実施プロジェクトとして実施される。
(b)プロジェクト及びプログラムは、関連する小委員会で定期的に議論及び見直しが行われる。
(c)(2) 及び (3) にいう分野に関係する、将来の追加的なプロジェクト及びプログラムを含む、プロジェクト及びプログラムの実施から生ずるいかなる事項についても、関連する小委員会で議論される。
(5)研修及び実習に係る制度の範囲を観光分野に拡大するための適切な努力を行うとのインドネシアから日本に対する要望に対し、日本は、この要望を前向きに検討する意思を表明する。
2.自然人の移動
日本及びインドネシアは、ビジネス活動に関わる自然人の移動が促進されるべきとの理解を共有する。これまでの二国間の協議に基づき、インドネシアは、関連するインドネシアの法令に従い、インドネシアにおける日本のビジネス活動に関する手続を円滑化及び簡素化するとのコミットメントを再確認する。
付表
1.製造業
製造業に関する協力は、「製造業開発センター・イニシアティブ」の下で様々な分野で実施される。JIEPA発効後すみやかに双方が集中する活動の代表例は以下のとおり。
(a)基礎調査(主要分野:金属加工、金型技術、溶接技術、自動車・自動車部品、鉄鋼・鉄鋼製品、繊維、石油化学、油脂化学、非鉄金属)
(b)専門家派遣(主要分野:金型技術、省エネルギー、自動車・自動車部品)
(c)研修(主要分野:金型技術、自動車・自動車部品、電気・電子機器、繊維)
(d)セミナー・ワークショップ(主要分野:金型技術、省エネルギー、鉄鋼・鉄鋼製品、繊維)
2.農林水産業
(a)卸売市場の発展を通じた流通メカニズムの改善(ポストハーベスト処理及び市場流通施設の改善)
(b)インドネシアの園芸作物の標準化及び品質管理(マンゴーにおけるミバエ類検疫技術向上計画)
(c)インドネシアの水産加工(魚及びえび)中小企業技術支援
(d)水産物の持続的競争力強化プロジェクト
(e)地方マングローブ保全現場プロセス支援プロジェクト
(f)小径木加工業育成支援プロジェクト
3.貿易及び投資の促進
貿易及び投資の促進に関する協力は、「製造業開発センター・イニシアティブ」の下で実施される。JIEPA発効後すみやかに双方が集中する活動の代表例は以下のとおり。
(a)専門家派遣
(b)研修(輸出振興機関の機能強化調査(輸出競争力強化)に係る研修に含まれる)
(c)セミナー
4.人材養成
公共インフラ工事にかかる管理能力向上プロジェクト
5.観光
観光資産開発プロジェクト
6.金融サービス
(a)経済・財政・金融政策アドバイザー
(b)金融システムに関する研修
7.政府調達
電子調達基盤整備支援のための専門家派遣
8.エネルギー・鉱物資源
(a)インドネシア共和国における地熱エネルギー開発
(b)発電施設環境モニタリング研修の促進協力プロジェクト
(c)省エネルギー普及促進調査
(d)石炭鉱業技術向上プロジェクト(フォローアップ)
(e)インドネシアにおける坑内掘炭鉱の一覧及び評価
(f)エネルギー管理に関する教育・研修計画
(g)インドネシアにおける石炭液化開発
(h)インドネシアにおける低品位炭改質実証プラント開発
(i)インドネシアにおける炭層メタン