
OECDオブザーバー紙への麻生大臣寄稿
(骨子)
平成19年5月
導入部
- 今日、外交政策を語る上で、エネルギー安全保障は不可欠な要素。
- 必要なエネルギー資源の確保は持続可能な経済成長を達成するための必要条件。
- アジアにおけるエネルギー需要の急増にいかに対処するかが大きな課題。
- エネルギー安全保障の協力に関する我が国の考え方をにつき、供給面の安全保障、エネルギーと環境、緊急時対応におけるIEA(国際エネルギー機関)の重要性の3つの観点から以下言及する。
1.供給面における安全保障
- 需要面の安全保障が生産国にとって重要であるのと同様に、供給面の安全保障が消費国にとって重要である。
- 我々が直面している、需要・供給面の安全保障に関する課題は次の3点。
- 第1の課題は、中東及びその他のエネルギー生産地域における地政学的な不安定性。「わたしの考える中東政策」(本年2月)で述べたように、我が国は中東地域の安定確保のために関連諸国との密接な対話を継続してきた。
- 第2の課題は、油価の高騰を背景に再び台頭しつつある資源ナショナリズム。生産国における資源ナショナリズムは上流分野における投資を遅らせ、ひいては供給面の安全保障を脅かす恐れがある。産消国間の対話と協力を通じて自由でオープンな市場を築くことが資源ナショナリズム問題に対する解となりうる。
- 第3の課題は、エネルギー輸送路の安全確保と多様化。マラッカ海峡とホルムズ海峡がとりわけ重要。IEAは、関連データ・情報の共有において重要な役割を果たすことが可能。
2.エネルギーと環境
- エネルギー安全保障と環境保護は両立しなければならない。
- エネルギー効率の改善と温暖化ガスの排出量削減をリンクさせることが喫緊の課題。
- エネルギー効率の改善が温暖化ガスの排出量削減に与える影響を数量化することが重要であり、IEAによるさらなるスタディを期待。
- エネルギー効率の改善に向けた、中国とインドの取り組みを支援すべき。我が国は同様の考えをもった先進国とともに、財政的、技術的支援を行ってきた。その最たるものが、本年1月の東アジアサミットにおいて安倍総理が発表した「エネルギー協力イニシアティブ」。
3.IEAの重要性
(1)緊急時対応
- 石油市場における不安定要素が増大する中、エネルギー安全保障の確保においてIEAが果たす役割は一層重要かつ大きなものとなっている。
- IEAは、予期せぬ供給途絶の際に、加盟27ヵ国が協調して戦略備蓄の放出を行う緊急時対応メカニズムを有している。ハリケーン・カトリーナにおける対応がその成功例。
- 中国、インドといったIEA非加盟国の新興経済国における戦略備蓄制度の強化に向けて、当該非加盟国ともに取り組むことが今後の課題。
(2)G8プロセスとの協調
- 2005年のグレンイーグルズG8サミット以降、G8首脳はエネルギー安全保障に関する真剣な議論を行ってきた。
- 昨年のサンクトペテルブルクG8サミットにおいて、主催国であるロシアのプーチン大統領はエネルギー安全保障を主要な議題の1つに選択し、「世界のエネルギー安全保障と行動計画」が採択された。
- IEAは、グレンイーグルズ・サミットやサンクトペテルブルク・サミットにおいて合意された事項の着実な実施に向けて補完的な役割を果たすことが可能。
- グレンイーグルズ・サミットでは、G8首脳はIEAに対し、気候変動とエネルギー効率に関するスタディを行い、2008年に日本で開催されるサミットの場で報告するよう要請。