平成19年10月26日
京都大学・桂キャンパス
1.平成19年10月25日、26日、日本外務省と京都大学は、アジア太平洋の持続可能な成長に関する国際会議を開催した。この会議は、アジア太平洋地域の政府関係者、学術界の関係者、ビジネス界の関係者及び地域・国際機関関係者約40人が参加した。今回は、昨年に続き第二回目の会議となる。
2.参加者は、サプライ・チェーンや貿易・投資の構造変化、今後の成長制約要因・リスクとそのマネジメント、グローバリゼーションによる情報のギャップ、持続可能な成長に関連する指標、地域経済の持続的成長性を評価把握するための情報共有メカニズム(EiSMAP)などアジア太平洋地域の広範囲に及ぶ問題を討議した。
3.議論の主要点は次のとおりである。
(1)アジア太平洋地域は活発な貿易・投資と生産活動によって、急速な経済成長を遂げている。国境を越える貿易・投資は、量的な拡大とともに、質的にも急速に変化し、各国の政府、産業、地域社会に大きな影響を及ぼしつつある。企業や製造業は、地域内で比較優位に基づき原材料及び中間財を相互に供給し合い、最終財を域内外に輸出する複雑なプロダクション・シェアリングやサプライ・チェーンを発展させている。またかつての投資受入国が、いまや投資国として台頭しつつある。
(2)その一方で、今後の成長の前途に潜むリスクも少なくない。そのようなリスクには、基盤インフラ(ハード及び人材)や規制制度面の弱さ、不十分な技術移転、過剰流動性、気候変動などの環境問題、自然災害が含まれる。急速な工業化は経済や生活水準向上に役立つ一方で、環境に悪影響を及ぼしうる。相互依存関係の進展は成長を促進するが、一国で生じた危機がこれまで以上に速やかに他国へ伝搬するという問題も生んだ。
(3)これらのリスクに対処するためには、各国政府の政策、地域的・国際的協力が重要である。良い統治を確保する健全な経済・社会政策・措置は地域企業の成長を促すためにも重要である。地域的・国際的協力には、その土台として、リスクを的確に特定・評価し、原因を分析し、効果的な対応策を提示する、情報共有メカニズムが必要である。
4.参加者は、そのようなニーズに応える、アジア太平洋経済研究メカニズム(EiSMAP)の構想について、デザイン、望ましいあり方、及びその便益を議論し、以下を呼びかけた。
(イ)アジア太平洋の地域協力は、継続的な生活の質の向上を伴う「持続可能な成長」を基本的な目的としている。
(ロ)EiSMAPは、アジア太平洋地域における持続可能な成長を評価し、潜在的なリスクを予測し、回避するための、プラットフォームとして提案された。EiSMAPは、この地域の政策協議に対して、持続可能な成長に関する課題の研究・分析の成果を提供し得る。
(ハ)EiSMAPは、情報ポータル、フォーラム、年次全体会合、専門家による課題別会合から構成され得る。
(ニ)EiSMAPのメンバーは、EiSMAPへの協力の意思と能力を持つ(i)アジア太平洋諸国・地域の当局、(ii)組織または個人、(iii)国際機関、地域機関などから構成され得る。また、EiSMAPは、ビジネス界との連携・協力の可能性を追求する可能性がある。
(ホ)EiSMAP情報ポータルには、以下のデータ、情報、指標が含まれ得る。
(i)アジア太平洋諸国・地域の経済成長、貿易、投資、人口、雇用、健康、医療、社会福祉、教育、環境、エネルギー、食糧、治安などの分野に関する統計データやその他のメンバーが適切と考えるデータ。
(ii)アジア太平洋諸国・地域の上記(i)の分野に関する政策目標(統計的情報に限らない)。
(iii)クロスボーダーの問題に着目した経済面及び持続可能性に関する「EiSMAP指標」。
(へ)このポータルには、メンバーが指定するデータソースから収集された情報が掲載され得る。この情報ポータルは、登録した会員であれば、自由に利用できる。
(ト)EiSMAPフォーラムは、EiSMAPに関する情報、その利用方法、持続可能な成長に関する研究・分析の成果などが掲載され得る。このフォーラムは、登録した会員であれば、アクセスでき、会員の見解やEiSMAPに対する要望などを発表することができる。
(チ)EiSMAPメンバーは会合を開催し、それまでのEiSMAPの進展を評価し、今後の作業計画を議論し得る。また、持続可能な成長に関する最新の研究・分析などについて議論し得る。
5.参加者は、EiSMAPが地域の政策担当者にとって有益なツールとなりうること、また、適切な地域・国際機関等のアジア太平洋の持続可能な成長の利害関係者により、更なる検討がなされた上で、実施に移されていくべきであることで一致した。
6.参加者は、日本外務省及び京都大学といった共催者による今回会議の準備等に謝意を表した。