
「サブサハラ・アフリカと鉱物資源
(日本外交と資源安定供給の確保)」セミナーの開催について
(概要と評価)
平成20年3月27日
3月25日(火曜日)、外務省及び経済産業省共催による「サブサハラ・アフリカと鉱物資源(日本外交と資源安定供給の確保)」セミナーを、駐日アフリカ大使館、企業関係者、プレス、政府関係機関等より多数の参加を得て開催したところ(於:三田共用会議所)、概要以下のとおり。
1.開催の趣旨
- サブサハラ・アフリカ地域に多くの資源権益を保有する資源メジャー幹部を招き、我が国企業及び関連機関関係者、在京大使館関係者等の参加を得て、天然資源の探鉱・開発投資促進及び資源安定供給の確保の必要性と外交の果たす役割について認識を共有する。
- サブサハラ・アフリカ諸国と我が国との間で資源開発投資に関する相互理解の促進を図る。
- TICAD IV(第4回アフリカ開発会議)に向けた我が国の対アフリカ外交政策について広くアピールを行う。
2.概要
(1)セッション1 サブサハラ・アフリカ経済と日本への期待
開会挨拶:
田辺靖雄 外務省経済局審議官
基調講演:
ボールドウィン・シポ・ングバネ 駐日南アフリカ大使
- 冒頭、田辺審議官より、最近の鉱物資源を取り巻く情勢、日=サブサハラ・アフリカ関係、アフリカ(サブサハラ・アフリカ)の重要性についてスピーチを行い、日本とサブサハラ・アフリカとの関係という大きな枠組の中で、鉱物資源安定確保の重要性及びその探鉱・開発促進の課題や解決策について、議論していきたい旨発言。
- 次に、ングバネ駐日南アフリカ大使より、アフリカは日本の産業の競争力に不可欠な鉱物資源を保有していること、アフリカはこれら鉱物資源の日本への安定供給の義務を果たしていく必要がある旨言及。アフリカはエネルギー・鉱物資源及び農産品といった一次産品の優位性を活かし、さらに日本政府と協調して、鉱業及び農業開発を通してアフリカの工業化の出発点としたい旨述べた。
(2)セッション2 日本のサブサハラ・アフリカ外交
講演者:
木寺昌人 外務省中東アフリカ局アフリカ審議官
前田匡史 国際協力銀行(JBIC)資源金融部長
- 木寺アフリカ審議官より、日本にとって極めて重要な資源安定供給の確保に向けた外交的取組という観点から、日本の対アフリカ外交について説明した。具体的には、5月に横浜で開催されるTICAD IVの具体的内容(成長の加速化、MDGsの達成、平和の定着・グッドガバナンス、環境・気候変動問題への対処)を中心に、アフリカの開発と発展に向けて、アフリカ諸国と共に取り組み、信頼を培っていく日本のアプローチについて述べた。
- 前田JBIC資源金融部長より、アフリカの現状と日本の取り組み、JBICのアフリカ向け取り組み実績(モザンビーク、マダガスカル、南アフリカ)について説明。JBICの総合的支援を通じた、日本とサブサハラ・アフリカ諸国との互恵関係の構築について訴えた。
(3)セッション3 サブサハラ・アフリカの鉱物資源と日本
講演者:
北川慎介 経済産業省資源エネルギー庁資源・燃料部長、
平野克己 日本貿易振興機構アジア経済研究所地域研究センター専任調査役(前日本貿易振興機構ヨハネスブルクセンター所長)
- 北川経済産業省資源・燃料部長より、サブサハラ地域は、レアメタル、石油、天然ガス等の世界有数の資源国・生産国であり、また、十分な探査が行われていない地域が多いことから、これら資源を有する国々と、高度な資源・エネルギー利用技術や幅広い産業の競争力を持つ我が国とが、アフリカ諸国の経済発展に寄与し、戦略的互恵関係を築いていくことが重要である旨述べた。
- 平野日本貿易振興機構専任調査役より、資源価格の高騰がサブサハラ・アフリカの経済成長率を押し上げ、2003~2006年の平均で19.4%に達していること、日本からアフリカへの投資が急激に増加している旨説明。また、ビジネスにはスピードとリスク・テーキングが必要であり、特にアフリカにおいて日本企業が資源開発を行うには、厳しい社会経済環境との戦いを強いられることとなり、官民連携が重要であることを強調した。
(4)セッション4 サブサハラ・アフリカの資源ビジネス
講演者:
トニー・ハーディング Rio Tinto Iron Ore社グローバル・デベロップメント部長
加藤文彦 日本貿易保険(NEXI)理事
森脇久光 石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)理事
- ハーディング部長より、資源メジャーであるリオ・ティント社のサブサハラ・アフリカにおける資源開発の実例を紹介すると共に、ギニア(鉄鉱石)及びマダガスカル(イルメナイト(チタン鉄鉱))の新規開発プロジェクトの状況について述べた。また、政府と地域社会の協調関係及び環境・社会管理の重要性、持続可能な開発の原則について言及した。
- 加藤NEXI理事より、NEXIの貿易保険事業について紹介があり、アフリカ諸国に対する貿易保険の引受をこの2~3年で大きく緩和していることを述べた。また、2007年4月に創設された、資源エネルギー総合保険の優位性について言及した。
- 森脇JOGMEC理事より、従来より主に環太平洋地域のベースメタル資源(銅、鉛、亜鉛)について初期段階の基礎的な調査を実施することにより、民間企業のリスクを軽減しながら日本企業の資源権益の確保を支援する活動をしてきたことを紹介し、これらに加え近年、自動車、IT製品等の製造に不可欠な素材であるレアメタルの確保のため、アフリカにも目を向けその活動を展開している旨述べた。
(5)セッション5 日=サブサハラ・アフリカ関係と資源安定供給の確保
パネリスト:
岡田誠司 外務省中東アフリカ局アフリカ第二課長
矢島敬雅 経済産業省資源エネルギー庁資源・燃料部鉱物資源課長
佐々木聡 国際協力銀行資源金融部第三班課長
林歳彦 石油天然ガス・金属鉱物資源機構 資源探査部長
オスカー・モツワハエ 駐日ボツワナ共和国大使
トニー・ハーディング (前述)
司会:
竹内一之 外務省経済局経済安全保障課長
- 各パネリストより、今回のセミナーが5月のTICAD IVの前に開催され、時宜を得ていること、レアメタル確保と衛星画像解析技術の移転により、互恵的関係を築いていきたいこと、巨額なプロジェクトのリスク分担には、政府のサポートが必要であること、日本はアフリカの資源開発において後発組であり、ネットワークを広げ、共同で調査する必要があること、サブサハラ・アフリカは鉱物資源が豊富であり、日本からの投資を呼び込みたいこと、単に採掘するのみならず、処理・加工といった付加価値を付けるような施設をアフリカに設置してほしいこと、CSRは今や企業にとって当然なされるべきことであり、それに慣れていくことが必要であるとの指摘がなされた。
- 現在のアフリカにおいて改善すべき点としては、道路、鉄道、港湾、電力、水道といった広域的インフラ整備、HIV/エイズ対策、雇用の確保、人材育成・能力開発、企業の利益の確保及び地域社会への貢献等が挙げられた。
- 資源開発においては、地域社会との協調が重要であり、一般的な公式はなく対話を積み重ねていくことが最も重要であるとの意見が出された。地域社会に利益が還元されるシステム作りが必要であるとの考えが出されたが、他方で、資源は国民全体の利益であり、地域住民が自分たちのものであるという認識はすべきでないとの意見もあった。
- 持続可能な開発に向けて、巨大資本による資源開発だけでなく、中小規模企業による資源開発についても維持されるべきであるとの意見が出された。
3.評価
(1)駐日アフリカ大使館、企業関係者、プレス、政府関係機関等より約100名の参加があり、最近のエネルギー・鉱物資源の安定供給確保に対する関心の高さが伺われた。ングバネ駐日南アフリカ大使の基調講演をはじめとする講演、及びこれを踏まえた意見交換等を通じ、サブサハラ・アフリカ諸国と我が国との間の理解を深めることができた。特に在京アフリカ諸国大使に活発に議論に参加いただいたことは、本セミナーの趣旨にまさに合致するものであった。
(2)サブサハラ・アフリカの資源開発、投資の拡大、CSR等について活発な意見交換が行われたことにより、今後のアフリカでの資源開発において留意すべき事項が多数得られたと同時に、今後、サブサハラ・アフリカ諸国関係者がエネルギー・鉱物資源政策を検討する上で参考となる考え方が随所に表明された。
(3)レアメタルをはじめとする鉱物資源の確保と衛星画像解析技術の移転により、サブサハラ・アフリカ諸国と我が国が互恵的関係を築いていく考えをアピールし、多くの駐日アフリカ大使館より賛同が得られた。
(4)TICAD IVに向けて、我が国の対アフリカ外交政策を広くアピールすることができた。また、多くの参加者より5月に開催されるTICAD IVに向けた準備の一環として、今回のセミナーが開催されたことを高く評価する旨発言がなされた。