2 日本企業の海外展開支援とインバウンド需要・投資を通じた経済の活性化
(1)日本企業の海外展開の推進
日本経済の発展を支える日本企業の多くが、海外展開に積極的に取り組んでおり、外国に進出している日本企業数は、国内外の経済情勢やそのほかの事情の影響を受けつつも中長期的には増加傾向にある。グローバル・サウス諸国など、海外の経済成長の勢いを日本経済に取り込む観点からも、政府による日本企業支援の重要性は高まっている。
このような状況を踏まえ、外務省では、本省・在外公館が連携して、日本企業の海外展開支援に積極的に取り組んでいる。各在外公館では、「世界一開かれた、相談しやすい公館」をモットーに、大使や総領事が自ら先頭に立ち、日本企業支援担当官や経済広域担当官を始めとする館員と共に、日本企業への各種情報提供や外国政府への働きかけ、さらには第三国市場への進出支援など、各地の事情や企業のニーズに応じた支援を行っている。そのほか、経済的威圧に関する相談対応や、アジア・アフリカ地域などの一部公館では、現地の法令事情に精通した日本人弁護士を活用し、現地の法制度に関するセミナーや法律相談なども実施している。
さらに、在外公館においては、日本企業の商品展示会、試食・試飲会、ビジネス展開を目的としたセミナー、地方自治体の物産展など各種イベントにおいて、日本企業の製品・技術・サービスや日本の農林水産物などの「ジャパンブランド」を広報・宣伝する場として、あるいは現地企業・関係機関との交流・ネットワーキングの場として、大使館や大使公邸などの施設を積極的に活用してきている。
(2)インフラシステムの海外展開の推進
新興国を中心としたインフラ需要を取り込み、日本企業のインフラシステムの海外展開を促進するため、2013年に内閣官房長官を議長とし、関係閣僚を構成員とする「経協インフラ戦略会議」が設置され、2025年12月までに58回の会合が実施された。同会議では2013年に作成された「インフラシステム輸出戦略」を毎年改定し、フォローアップを行ってきたが、2024年12月には、世界のインフラ市場の構造的な変化などインフラシステムの海外展開を取り巻く環境の変化を踏まえ、「インフラシステム海外展開戦略2030」を策定し、従来のインフラの概念を超えた領域も含めた今後の海外展開の方向性や、官民が連携して日本と相手国双方の成長につなげていく方向性が打ち出された。この戦略において、(ア)相手国との共創を通じた日本の「稼ぐ力」の向上と国際競争力強化、(イ)経済安全保障などの新たな社会的要請への迅速な対応と国益の確保、(ウ)GX(グリーン・トランスフォーメーション)・DX(デジタル・トランスフォーメーション)などの社会変革をチャンスとして取り込む機動的対応の3本の柱につき具体的施策が明記され、2030年のインフラシステムの受注額を45兆円とすることが目標として掲げられた。外務省としては、首脳・外相レベルを始めとするトップセールスの推進に加え、在外公館を通じた支援やオファー型協力を始めとする、より効果的、戦略的な政府開発援助(ODA)の活用を通じた取組を進めている。
(3)日本の農林水産物・食品等の輸出促進(東日本大震災後の日本産食品に対する輸入規制の撤廃に向けた働きかけを含む。)
日本の農林水産物・食品の輸出拡大は政府の重要課題の一つであり、5月に改訂された「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略」に基づき、政府一体となって取組を加速させている。外務省としても、関係省庁・機関、日本企業、地方自治体などと連携しつつ、日本の農林水産物・食品等の更なる輸出拡大に向けた取組を実施している。特に63の国・地域の計85の在外公館では日本企業支援担当官(食産業担当)を指名、そのうち一部公館には現地事情に精通する「農林水産物・食品輸出促進アドバイザー」も配置するなどして重点的に取り組んでいる。また、在外公館などのネットワークやSNSも活用しながら、日本の農林水産物・食品の魅力を積極的に発信しているほか、各国・地域の要人を招待するレセプションや文化行事などの様々な機会を捉え、精力的なPR活動を行っている。加えて、一部都市の在外公館では、独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)海外事務所や日本食品海外プロモーションセンター(JFOODO)などと共に「輸出支援プラットフォーム」を構築し、関係機関と連携しつつ更なる輸出促進に取り組んでいる。
輸出拡大の大きな障壁の一つとして、東日本大震災・東京電力福島第一原子力発電所事故後に諸外国・地域が導入した日本産農林水産物・食品に対する輸入規制措置がある。この規制の撤廃及び風評被害対策は政府の最重要課題の一つである。外務省も、関係省庁と連携しながら、1日も早くこうした規制が完全に撤廃されるように取り組んでいる。こうした取組の結果、2025年11月に全ての規制撤廃を発表した台湾を含め、累計で50の国・地域が規制を撤廃した。
一方、同年末時点も5の国・地域が規制を維持している(韓国、中国、香港(ほんこん)、マカオ、ロシア)。特に中国、香港、マカオ及びロシアは、2023年8月のALPS処理水(5)の海洋放出の開始を受けて新たに規制を強化した。
このうち中国との間では、2024年9月に、ALPS処理水の海洋放出と日本産水産物の輸入規制について日中両政府で「日中間の共有された認識」を発表し、中国側は、国際原子力機関(IAEA)の枠組みの下での追加的モニタリングを実施後、日本産水産物の輸入規制措置の調整に着手し、日本産水産物の輸入を着実に回復させることとなった。同年10月以降、中国を含む第三国専門家も参加して追加的モニタリングが累次実施され、これらの公表済みの結果報告書では、ALPS処理水の海洋放出の安全性が確認されている。中国政府からも、これまで分析が完了したものについて、結果が正常であったと発表されている。2025年6月末には、中国政府から、日本の一部地域の水産物の輸入を回復させる公告が発出された。日本産水産物の輸入再開については、2024年9月に発表された「日中間の共有された認識」をしっかり実施していくことが何より重要であり、政府としては、引き続き中国側に対して、日本側輸出関連施設の速やかな再登録を含め、輸出の円滑化について働きかけるとともに、残された10都県産の水産物の輸入規制の撤廃等を強く求めていく。
また、日本はWTOの関連委員会において、中国を含む各国・地域の規制につき早期の規制撤廃を一貫して強く働きかけ、日本の立場を説明したほか、衛生植物検疫措置の適用に関する協定(SPS協定)に基づき中国などに討議要請を行った。さらに、日中両国が締約国となっている地域的な包括的経済連携(RCEP)協定(6)の規定に基づき、中国政府に対して討議・技術的協議の要請を行い、中国が協定の義務に従い要請に応じるよう求めている。このように、引き続き、関係省庁、地方自治体、関係する国際機関等と緊密に連携しながら、科学的根拠に基づく規制の早期撤廃及び風評被害の払拭に向け、あらゆる機会を捉え、粘り強く説明及び働きかけを行っていく。
(4)対日直接投資
対日直接投資(FDI)の推進については、2014年から対日直接投資案件の発掘・誘致活動の司令塔機能を担う対日直接投資推進会議で、外国企業経営者の意見を吸い上げ、日本の投資環境の改善に資する規制制度改革や支援措置などを策定している。2025年6月の同会議(第13回)では、新たに抽出した課題を5本柱で整理した「対日直接投資促進プログラム2025」を策定し、省庁横断で解消に向けて取り組んでいる。なお、経済財政諮問会議での答申を経て閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2025(骨太の方針2025)」においても、2030年までに対日直接投資残高120兆円、2030年代前半のできるだけ早期に150兆円を達成することが目標として掲げられた。
外務省では、対日直接投資推進会議で策定された施策に基づき、在外公館を通じて各種取組を戦略的に実施している。2024年度には、126の在外公館に設置した「対日直接投資推進担当窓口」を通じ、日本の規制・制度の改善要望調査、在外公館のネットワークを活用した対日直接投資の呼びかけ、対日直接投資関連イベントの開催など、活動実績は850件以上となった。また、海外における人材・投資誘致体制を抜本強化するため、在外公館長・JETRO海外事務所長レベルでの連携による「FDIタスクフォース」を2023年6月に5拠点(ニューヨーク、ロンドン、パリ、デュッセルドルフ、シドニー)に設置したが、2025年1月には更に6拠点(ロサンゼルス、トロント、アムステルダム、シンガポール、ニューデリー、ドバイ)を加え、計11拠点に拡大し、対日直接投資誘致活動を強化している。
日本国内では、3月に外務省主催でグローバル・ビジネス・セミナーを開催し、海外から見た日本及び地方へ投資する魅力を広く発信するため、政府・地方自治体・企業関係者が講演し、国内外企業関係者、駐日外国公館、商工会議所、政府・地方自治体関係者など100人以上が参加し、活発な議論が行われた。
(5)2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)、2027年国際園芸博覧会(GREEN×EXPO 2027)
「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマとして、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)が4月13日から10月13日まで、大阪・夢洲(しま)で開催された。日本で開催された国際博覧会としては最多の165の公式参加者(各国・地域・国際機関)が参加し、184日の期間中、世界中から2,900万人以上が来訪し、成功裏に終了した。万博は、多くの国民が世界と交流を深め、日本の魅力を国際社会に広く発信する貴重な機会となった。
期間中は、公式参加国・地域及び国際機関のナショナルデー及びスペシャルデーが連日開催され、日本政府の招待による「博覧会賓客」として各国の王族、元首・首脳、閣僚等が多数会場を訪れた。博覧会賓客の各国要人は、万博会場内での公式式典・文化行事等に出席したほか、自国のパビリオンや日本館等を訪問し、独自の文化を披露・共有するなどして、日本との交流を深めた。また、多くの要人は訪日の機会に、石破総理大臣、岩屋外務大臣、その他閣僚、国会議員、経済界要人などと会談した。万博期間中における各国要人の訪日は、二国間関係の強化に貢献するとともに、ビジネス関連の日程を通じて海外の活力を日本に取り込む契機ともなり、また、地方創生のための機会も提供した。
2027年には、横浜市で「幸せを創る明日の風景」をテーマに2027年国際園芸博覧会(GREEN×EXPO 2027)が開催予定である。この博覧会は、花や緑を始めとする自然との共生に加え、持続可能な農業、気候変動、脱炭素化などの地球規模課題に対する「自然を活用した解決策(Nature-based Solutions)」の提示を目指すものであり、外務省としても、公益社団法人2027年国際園芸博覧会協会及び関係省庁と連携しながら、外交機会を最大限に活用して各国・国際機関に対する参加招請活動を精力的に行うとともに、参加予定国・国際機関による出展準備を支援している。
各在外公館は、「世界一開かれた、相談しやすい公館」を目指し、日本企業からの相談・支援要請に積極的に対応しています。その相談内容や支援の在り方は、地域の特性、政治・経済状況、日本企業進出状況など、現地の事情によって異なりますが、「日本企業の海外における活動支援のためのガイドライン」を統一的な指針としながら、幅広いネットワークや政府開発援助(ODA)等の各省庁の支援スキームを含めた各種ツールも活用しています。例えば、「日本企業支援窓口」では以下の支援を行っています。
・現地情報(政情・治安、法令・規制、市場動向等)の提供
・公館施設を活用した日本産品のプロモーション活動
・制度改善等に向けた外国政府当局への働きかけ
・日本人弁護士の協力による法律相談サービスの提供
・インフラ関連情報の収集及び提供
・経済的威圧への対応
こうした在外公館によるサポート事例は、「日本企業支援グッドプラクティス」として、外務省ホームページに掲載しています。例えば、インドでは、現地の最高裁判所の判決をきっかけとして、日本企業等外資系企業に対して大規模な税務調査が行われ、関係企業が延滞税や罰金を含む多額の税負担を求められる事案がありました。これに対し、在インド日本国大使館は、独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)ニューデリー事務所及びインド日本商工会と連携し、日本企業に対する影響を把握・集約の上、インド政府に対して累次に及ぶ働きかけを実施しました。その結果、現地財務省が課税当局に対し、当該最高裁判所の判決に依拠した課税を安易に行うことなく、事実関係を精査することを求める通達を発出する流れとなり、さらには、その後法改正が行われたことにより、日本企業の実質的な税負担が軽減されることになりました。
外務省は今後も、外務本省と在外公館が緊密に連携し、関係省庁・機関とも協力しながら、様々な機会やツールを活用して日本企業の国際競争力向上の後押しや海外のビジネス環境の整備に努めるとともに、個々の日本企業の活動支援も行っていきます。

(3月4日、在英国日本国大使館 ロンドン)
(5) ALPS処理水とは、東京電力福島第一原子力発電所の建屋内にある放射性物質を含む水について、多核種除去設備(Advanced Liquid Processing System:ALPS)を含む複数の浄化設備により、トリチウム以外の放射性物質の濃度が安全に関する規制基準値を確実に下回るように浄化した水である。海洋放出に当たっては、トリチウムについても安全に関する規制基準値を十分に満たすよう、海水で大幅に希釈する。
(6) RCEP:Regional Comprehensive Economic Partnership
