第6節 ロシア・ベラルーシと中央アジア・コーカサス
1 概観
ロシアによるウクライナ侵略という暴挙に対し、国際社会は即座に対応した。
侵略直後から、世界各地で抗議デモが行われ、3月2日に行われた国連総会緊急特別会合ではロシア軍の即時・完全・無条件の撤退などを要求する決議案が141か国の賛成多数で採択された。G7・EU諸国を中心に、矢継ぎ早に厳しい対露制裁が実施され、ウクライナに対する支援も段階的に強化された。さらに、これまでロシア産エネルギー資源を多く輸入していた欧州は、ロシア依存からの脱却を進めるなど、ロシアとの経済関係を急速に収縮させている。また、ロシアに進出していた諸外国の企業は、相次いで事業停止や撤退を発表した。G7・EU諸国を中心とした国々とロシアとの直行便は停止され、ロシアとの人的往来が減少した。このように、ロシアによるウクライナへの侵略を受け、G7・EU諸国とロシアとの関係は大きな転換点を迎えている。
こうした状況を受け、ロシアは、G7・EU諸国を始めとする制裁を課した国々に対する対決姿勢を示す一方、友好的な関係にある中国、インド、トルコ、中央アジア・コーカサス諸国(ウクライナ支持を表明しているジョージアを除く。)などを始め、対露制裁措置を講じていない国々との関係維持・強化に比重を移している。
ベラルーシについては、ロシアによるウクライナ侵略において、自国領域の使用を通じてロシアの侵略行為を支援したことから、G7・EU諸国を中心に、国際社会はベラルーシを強く非難し、ルカシェンコ大統領を始めとする個人、団体への制裁措置や輸出管理措置などのベラルーシに対する制裁を導入した。また、ベラルーシ上空を飛行していた民間航空機の強制着陸に関し、国際民間航空機関(ICAO)総会においてベラルーシ政府の行為を非難する決議が採択された。
中央アジア・コーカサス諸国については、地政学的及び経済的にロシアと密接な関係にある中で、ロシアによるウクライナ侵略に対し、中立的な立場を維持する姿勢を示している(ジョージアを除く。)。また、エネルギーを始めとする貿易品目の輸送路やロシアへの出稼ぎ労働者からの送金などへの影響が生じており対応に苦慮している。
こうした状況を受け、中央アジア・コーカサス諸国に対する国際社会の注目が集まっており、11月のG7ミュンスター外相会合でも中央アジアが議題となったほか、日本、米国、EU、韓国などが中央アジア5か国との間の首脳級・閣僚級会合を開催した。また、中国の習近平(しゅうきんぺい)国家主席は約2年ぶりの外遊先として中央アジアを訪問した。ロシアは10月に初の中央アジア・ロシア首脳会合を開催するなど、求心力の維持に向けて活発な外交を展開している。