2019年は、日本で国際会議、大型行事が連続する「外交イヤー」でした。G20大阪サミットやTICAD7といった大型国際会議、また即位礼正殿の儀は、「令和」の新しい時代を迎えた日本について各国の理解・関心を一層深めていただくとともに、世界の平和と繁栄に向け、諸課題の解決に向けて取り組んでいく日本の姿勢を国際社会と共有する良い機会になりました。
私自身、各国のカウンターパートと話をするたび、複雑化し不確実性の高まる国際社会の中で、一貫性のある安定した外交を展開する日本への期待や、日本の存在感が高まっていることを強く実感しています。この日本の存在感を、国際社会における調整力へと転換して、様々な問題解決を主導していく。そして、事に臨んでは毅然とした対応を取っていく。これこそが、外務大臣として私が就任以来述べてきた「包容力と力強さを兼ね備えた外交」の目指すところです。
特に6つの分野、(1)我が国外交の基軸である日米同盟を更に強化しつつ、(2)北朝鮮をめぐる諸懸案への対応、(3)中国・韓国・ロシアといった近隣諸国外交、(4)緊迫する中東情勢への対応、(5)新たな共通ルール作りを日本が主導する経済外交、(6)地球規模課題への対応に焦点を当て、更に歩を進めていきます。
令和2年版外交青書(外交青書2020)は、これらの重点分野を含む、日本外交の一年間の取組を記録したものです。第1章では2019年の国際情勢と日本外交の展開を振り返り、第2章では地域ごとに見た外交、第3章では分野ごとに見た外交について、2019年の重要な出来事を記述しました。また、第4章では、世界とのつながりを深める日本社会や日本人とそれを支援する外務省の取組などについて説明しています。さらに、昨今の新型コロナウイルス感染症をめぐる状況についても、出版の時間の許す範囲で追記しています。
外交青書は、知的好奇心にあふれた3つの読者層をターゲットに作成しています。第一に、国際関係に携わる有識者、研究者、メディアの方々。こうした方々向けに、日本の取組を図式化したものや、日本と各国要人の往来をまとめた年表などのファクトを充実させました。第二に、国際問題に関心のあるビジネスマンや学生の方々。短い時間でも気軽に手にとって読んでいただけるよう、第1章では2019年の国際情勢と日本外交をコンパクトにまとめました。第三に、普段、あまり外交について考えたことのない、外務省はどんな仕事をしているのだろうかと、思っている多くの方々。外交をより身近に感じていただけるよう、巻頭特集では写真を多く使い、G20大阪サミット、TICAD7などの外交行事や「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた取組を分かりやすく記載し、また、ラグビーワールドカップを始めとする親しみやすいテーマのコラム記事も盛り込みました。
この外交青書が、国際社会の中でリーダーシップを発揮し、世界の平和と安定にこれまで以上に寄与していく日本の姿を、内外に広く発信する一助となることを心から期待しています。

