1.我々、APEC経済首脳は、アジア太平洋地域のみならず世界全体において、加速され、バランスがとれ、そして衡平な経済成長の可能性を高めるであろう我々の経済協力の将来の道筋を描くために、本日、インドネシアのボゴールに参集した。
2.我々は、1年前、米国、シアトルのブレーク島において、我々の多様な経済が、より相互依存的になり、アジア太平洋経済の地域社会に向かっていることを認識し、以下を誓ったヴィジョン声明を発出した。
3.我々は、先進経済、新興工業経済及び開発途上経済を含む、経済的に多様な我々の地域の相互依存性が増大しているとの認識に基づき、アジア太平洋経済の地域社会のためのヴィジョンを定める。アジア太平洋の先進工業経済は、開発途上経済に対し、経済成長と開発の水準を一層高める機会を提供する。同時に、開発途上経済は、現在新興工業経済が享受している繁栄の水準を達成することを目標として、高い成長率を維持するために尽力する。そのアプローチは、持続可能な成長、衡平な開発及び国家の安定という3つの柱を含む一貫した包括的なものとなる。アジア太平洋の経済の間の発展段階の格差縮小は、すべてのメンバーに利益をもたらし、アジア太平洋全体としての経済発展の達成を促進する。
4.21世紀を控え、APECは、平等なパートナーシップ、責任の共有、相互の尊敬、共通の関心及び共通の利益に基づき、以下の点につきAPECが主導していくことを目的として、アジア太平洋地域における経済協力を強化する必要がある。
5.我々の市場推進型の経済成長の基盤は、開放的な多角的貿易体制にあり、APECが、多角的貿易交渉のウルグァイ・ラウンドの成果によって生み出されたモメンタムを基礎として、開放的な多角的貿易体制の強化を主導していくのは適切なことである。
我々は、APECがウルグァイ・ラウンドの成功裡の妥結をもたらす上で果たした重要な貢献を喜ばしく思う。我々は、ウルグァイ・ラウンドにおける約束を完全かつ遅滞なく実施することにつき意見の一致を見るとともに、ウルグァイ・ラウンドのすべての参加者に対し、同様の行動をとることを要請する。
開放的な多角的貿易体制を強化するために、我々はウルグァイ・ラウンドにおける約束の実施を促進するとともに、ウルグァイ・ラウンドの成果を深化させ、かつ広げることを目的とする作業に取り組むことを決定した。また、我々は、貿易及び投資の一方的自由化の継続的プロセスにコミットすることにつき意見の一致を見た。開放的な多角的貿易体制へのコミットメントの証として、我々は、更に、スタンドスティルにつき意見の一致を見、保護の水準を高める効果を持ち得る措置をとることを控えるよう努力する。
我々は、世界貿易機構(WTO)の成功裡の発足を呼びかける。すべてのAPEC経済によるWTOへの全面的かつ積極的な参加及び支持は、我々が多角的貿易体制の強化に向けて主導していく能力に係わる鍵である。我々は、WTOの非APECメンバーに対し、更なる多角的自由化に向けてAPECメンバーと協力していくことすべてを要請する。
6.アジア太平洋において貿易及び投資を拡大するとの我々の目的に関し、我々は、アジア太平洋における自由で開かれた貿易及び投資という長期的な目標を採択することに意見の一致を見た。この目標は、貿易及び投資に対する障壁を更に削減し、我々の経済の間における財、サービスおよび資本の自由な流れを促進することによって迅速に追及される。我々は、この目標をGATTに整合的な方法によって達成するとともに、我々の行動は、我々が引き続き完全にコミットしている多角的レベルでの更なる自由化に向けた力強い弾みとなるものと考える。
さらに、我々は、アジア太平洋における自由で開かれた貿易及び投資という目標の達成を遅くとも2020年までに完了するとのコミットメントを発表することに意見の一致を見た。実施の速度については、APEC経済間の経済発展段階の違いを考慮に入れ、先進工業経済は遅くとも2010年までに、また、開発途上経済は遅くとも2020年までに自由で開かれた貿易及び投資という目標を達成する。
我々は、世界的な自由貿易を追求することから逸脱するような内向きの貿易ブロックの創設に対する強い反対を強調したい。我々は、世界全体における貿易及び投資の自由化を奨励かつ強化するような方法で、アジア太平洋における自由で開かれた貿易及び投資を追求していく決意である。かくして、アジア太平洋における貿易及び投資の自由化の成果は、APEC経済間のみならず、APEC経済と非APEC経済との間における障壁をも実際に削減することとなる。この点に関し、我々は、GATT/WTOの諸規定に従い、非APECの開発途上国も我々の貿易及び投資の自由化から裨益することを確保するため、これら諸国との貿易に対し特別の注意を払う。
7.この実質的な自由化プロセスを補完し、支援するために、我々は、APECにおける貿易及び投資円滑化プログラムを拡充し、促進することを決定する。これにより、貿易及び投資に対する行政上・その他の障害が除去され、APEC経済間の財、サービス及び資本の流れが更に促進されることとなろう。
貿易自由化努力だけでは、貿易の拡大を生み出すには不十分であることから、我々は、貿易円滑化の重要性を強調する。貿易の利益が企業と消費者双方によって真に享受されるためには、貿易円滑化のための努力が重要である。貿易円滑化は、世界的に最大限の自由化を達成するとの我々の目標を進める上でも適切な役割を有する。
特に、我々は、閣僚及び事務当局に対し、税関、基準、投資原則及び市場アクセスに対する行政上の障壁に関するAPECの措置につき提案を行うよう要請する。
域内における投資の流れを円滑化し、経済政策課題に関するAPECの対話を強化するため、我々は、経済成長戦略、域内における資本の流れ、及び他のマクロ経済上の諸問題に関する有益な協議を継続することに意見の一致を見た。
8.アジア太平洋経済の地域社会の開発協力を強化するという我々の目的は、APEC経済の持続可能な成長と衡平な発展を達成し、APEC経済間の経済格差を減少させ、また、我々の市民の経済的・社会的福祉を改善するために、我々がアジア太平洋地域の人的・天然資源をより効果的に開発することを可能とする。このような努力は、また、アジア太平洋地域の貿易及び投資の成長を円滑化する。
この分野の協力プログラムは、人材養成の拡充(教育・訓練、特に経営管理及び技能の改善等)、APEC研究センターの発展、科学技術協力(技術移転を含む)、中小企業の振興を目指した措置、並びにエネルギー、運輸、情報、電気通信及び観光等の経済インフラを改善するための措置を含む。持続可能な開発に貢献するとの観点から、環境問題についても効果的な協力が進められる。
アジア太平洋地域の経済成長と開発は主として市場により推進されてきており、アジア太平洋の経済協力を支える域内のビジネス部門間の増大する相互の結びつきに基づく。経済開発におけるビジネス部門の役割を認識し、我々は、我々のプログラム中にビジネス部門を組み入れ、そのための継続的なメカニズムを創設することにつき意見の一致を見た。
9.我々の協力を円滑化し促進するために、我々は、用意が出来ているAPEC経済が協力のための措置を開始し、実施していくとともに、未だ用意のできていない経済が後日右に参加することに意見の一致を見た。
APEC経済間の貿易その他の経済紛争は、意見の一致を見た協力措置の実施や協力の精神に対し否定的な影響を及ぼす。かかる紛争の解決を助け、その再発を防ぐために、我々は、引き続き紛争解決のための一義的な方法であるべき世界貿易機関(WTO)の紛争解決メカニズムを補完するため、自発的な協議による紛争調停サービスの可能性を検討することに意見の一致を見た。
10.我々の目標は野心的なものである。しかし、我々は、世界的な貿易及び投資のより一層の自由化を推進するために、APECのリーダーシップを示す決意である。我々の目標は、何年もの努力を要する。我々は、この宣言の日より、協調的な自由化のプロセスを開始する。
我々は、閣僚及び事務当局に対し、我々の現在の決定を実施するための詳細な提案を行う準備を直ちに開始するよう指示する。その提案は、APEC経済首脳に対し、検討及びそれに続く決定のために早急に提示されなければならない。そのような提案は、また、我々の目標を達成するに当たってのすべての障害に言及もしなければならない。我々は、閣僚及び事務当局に対し、賢人会議及び太平洋ビジネス・フォーラムの報告に含まれている重要な提言を検討するに当たり、真剣な考慮を払うよう要請する。
11.我々は、賢人会議及び太平洋ビジネス・フォーラムの報告に含まれている重要で示唆に富んだ提言に対し謝意を表明する。この報告は、アジア太平洋経済の地域社会の協力の枠組みの中で政策を立案する際に貴重な参考資料として用いられるであろう。我々は、二つのグループが、その活動を継続し、APECの進展の評価及び我々の協力を強化するための更なる提言をAPEC経済首脳に対し提供するよう要請することにつき意見の一致を見た。
我々は、また、賢人会議及び太平洋ビジネス・フォーラムに対し、APECと既存のサブ・リージョナルな取極(AFTA,ANZERTA及びNAFTA)との相互関係を点検し、相互にとっての障害を防ぎ、整合性のとれた関係を促進するための方途を検討するよう要請する。
APEC経済首脳
ボゴール、インドネシア
1994年11月15日