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平成20年2月28日
ライス国務長官が、2月27日、外務省賓客として来日し、福田総理表敬、町村官房長官表敬、日米外相会談(高村外相主催夕食会を含む。)及び石破防衛大臣との会談を行ったところ、総理表敬及び外相会談の概要以下のとおり。
今回のライス長官訪日の主な成果は、1)我が国を含む東アジアの平和と安定にとって不可欠の基盤である日米同盟の強化、2)日米同盟に立脚したアジア情勢への対処、3)G8北海道洞爺湖サミットの成功に向けた日米協力、特にグローバルな課題に対する日米協力、で一致したことである。
(1)冒頭、福田総理より、ライス国務長官の訪日を歓迎する旨述べるとともに、先の福田総理の訪米後も日米関係は着実に進展しており、日米同盟強化に向け引き続き取り組んでいきたいと述べた。これに対しライス国務長官より、日米同盟は極めて重要である、またミサイル防衛における協力を進めていきたいと述べた。
(2)ライス国務長官より、先般沖縄で起きた事件は極めて遺憾であり申し訳なく、深刻に受け止めている、被害者の方とご家族のことを心配している、再発防止に向けて最大限努力したい旨述べた。これに対し福田総理より、今般の事件は深刻に受け止めなければならない問題である、ライス国務長官のご発言を日本国民に伝えたいと思う、再発防止のため、日米で協力していきたいと述べた。
(3)テロとの闘いについては、福田総理より、先月、補給支援特措法が成立し、2月21日に、補給支援活動を再開したことを説明したのに対し、ライス国務長官より、困難な状況を乗り越え、日本が補給支援活動を再開されたことを歓迎する、日本の活動はインド洋で各国が行う海上阻止活動にとって不可欠であるし、またこの海上阻止活動は国際社会全体の安全の確保のために極めて重要であると述べた。
(4)東アジア情勢について双方は、拉致問題や核問題を含む北朝鮮をめぐる諸懸案の解決に向け、日米で引き続き協力していくことで一致した。また福田総理より、アジアにおける米国のプレゼンスは極めて重要であり、その観点から、今般の貴長官の韓国、中国、日本への訪問を歓迎したい、また日米韓での連携なども重要であると述べた。
(5)グローバルな課題について、総理より、気候変動については地球温暖化は待ったなしの課題である、北海道洞爺湖サミットも念頭に日米で連携して取り組んでいきたい旨述べたのに対し、ライス国務長官より、気候変動問題への対処においては、経済成長とのバランスが重要である、また日米の連携は極めて重要であり緊密に連絡をとっていきたいと述べた。またライス国務長官より、G8においてアフリカを取り上げられることを喜ばしく思う旨述べた。双方は、TICADIVやG8をも念頭に、アフリカ開発についても協力していくことで一致した。
(イ)日米関係全般
高村大臣より、昨年9月の日米外相会談後、11月の福田総理訪米を経て、1)昨年末のハワイでのBMD迎撃実験の成功、2)HNSの次期特別協定の署名、3)インド洋における補給支援の再開といった安保協力の面での前向きの動きがあり、日米同盟は確実に強化している、かかる日米同盟の基盤を一層強化するため、日米知的交流も推進する旨述べた。
(ロ)沖縄における事件
ライス長官より、先般沖縄で起きた事件は極めて遺憾であり、深刻に受け止めている、被害者の方とそのご家族のことを心配している、再発防止に向けて最大限努力したい旨述べた。
これに対し、高村大臣より、今般の一連の事件は甚だ遺憾と言わざるを得ない、米側の再発防止に向けた最大限の努力が必要である、今回の事件が日米同盟に与える影響を最小のものとするよう、効果的、包括的、継続的な再発防止策を目指して日米で協力していきたい旨述べた。
(ハ)日米安保
高村大臣より、米軍の前方展開が、我が国を含む北東アジア地域の平和と安定にとって重要な役割を果たしているとの認識に変更はない、また、日米安保協力は前向きな方向に進展しており、今後とも、在日米軍再編、BMD協力等を着実に進めるとともに、8月の空母交替を円滑に進め、日米安保協力の一層の深化に努めたい旨述べた。ライス長官より、日米同盟はアジア太平洋地域のみならず、米国の安全保障にとっても重要な基礎である、米軍再編をしっかり実施していきたい、BMD協力も進めていきたい旨述べた。
米軍再編については、高村大臣より、普天間移転や在沖海兵隊のグアム移転など、日本政府として、ロードマップに基づき、米軍再編を着実に実施する考えである旨述べた。
(ニ)日米経済
ライス長官より、米国産牛肉問題に関し、改めて、OIE基準に則した輸入条件の見直しの要望があり、本件については、引き続き、担当閣僚で協議を行っていくことで一致した。
高村大臣より、先月成立した補給支援特措法に基づき補給艦等がインド洋で補給支援活動を再開し「テロとの闘い」に復帰した、「平和協力国家」として国際社会において責任ある役割を果たしていくとの立場から、一般法の整備に向けた検討を進めていく旨述べた。
これに対し、ライス長官より、容易ならざる環境において補給支援特措法を成立させ、インド洋での補給活動を再開したことを評価する旨述べた。
(イ)北朝鮮
ライス長官より、北朝鮮の核問題については、「完全かつ正確な申告」が重要である、拉致問題の重要性についてはよく理解している旨述べた。
これに対し、高村大臣より、北朝鮮については、「申告」をめぐり六者会合は膠着しており、「完全かつ正確な申告」は極めて重要であり、また、検証も重要である旨述べた。日米、日米韓で緊密に連携し粘り強く対応することで一致した。
また、高村大臣より、日朝関係については未だ進展はないが、非核化と拉致問題を含む日朝関係が共に前進するよう我が国としても最大限努力するつもりであり、米国の変わらぬ協力を期待する旨述べた。両外相は、テロ支援国家指定解除問題を含め、引き続き連携していくことで一致した。
(ロ)韓国
高村大臣より、2月25日の日韓首脳会談は「シャトル首脳外交」の再開に合意するなど、日韓関係が新たな段階に入ったことを感じさせる良いものとなった、李明博(イ・ミョンバク)新大統領は、米国や日本との関係を重視していることも看取された旨述べた。両外相は、北朝鮮問題を始め日米韓三か国の共通課題についてハイレベルでも緊密に連携していくことで一致した。
(ハ)日米豪等
両外相は、引き続き日米豪戦略対話を重視する点で一致した。ライス長官より、NATOとのパートナーシップの重要性につき言及があり、高村大臣より事務レベルで引き続き協力していきたい旨述べた。
(ニ)ミャンマー
ライス長官より、民主化進展プロセスへの懸念の表明があり、高村大臣より、民主化のタイム・フレームを初めて示したことは一定の評価をしているが、すべての関係者が参加する形で真の対話が行われること、ガンバリ特別顧問のプロセスが重要である旨述べた。
高村大臣より、本年のG8北海道洞爺湖サミットの主要テーマは、環境・気候変動、開発・アフリカ、世界経済及び不拡散等の政治問題を想定しており、その成功のためには米国の協力が必要である旨述べた。
また、高村大臣より、6月のG8外相会合では、アフガニスタン、パキスタン、イラン、北朝鮮などの国際情勢について議論を行い、G8として力強いメッセージを発出したい旨述べた。
(イ)気候変動
高村大臣より、国別総量目標の策定に関し、公平さが重要であり、セクター別にボトムアップで削減可能量を積み上げる方式でやるべき、G8や主要経済国会合での日米協力が重要である旨述べた。両外相は、1)全ての主要排出国が参加すること、2)環境と経済成長を両立させること、が重要である点で一致した。
(ロ)TICAD
高村大臣より、1993年以降TICADを開催しており、日本としてはアジアへの開発援助を通じた発展体験をアフリカ開発にも活用していきたいと考えており、その哲学であるオーナーシップとパートナーシップは国際的に定着している旨述べた。両外相は、アフリカにおける開発協調について、日米は経済成長を通じた貧困削減、途上国のオーナーシップ重視など考え方が近い点で一致した。
(ハ)グローバル・ヘルス
高村大臣より、北海道洞爺湖サミットでは、国際社会共有の行動指針の構築を目指したい、我が国は人間の安全保障という観点から、三大感染症のみならず、顧みられない熱帯疾病(NTD)対策を重視している旨述べた。これに対し、ライス長官は、北海道洞爺湖サミットやTICADIVの機会をとらえアフリカ問題に取り組むことの重要性を強調した。
(ニ)イラン
ライス長官より、イランの濃縮関連活動への懸念が表明され、国際社会の努力が重要である旨述べた。
高村大臣より、イランの核問題をめぐる現状を深刻に懸念しており、国際社会が一致して粘り強く働きかけていくことが必要である旨述べた。