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ライス米国務長官の来日

平成18年10月19日

 ライス米国務長官は10月18日(水曜日)~19日(木曜日)の日程で来日し、18日(水曜日)に日米外相会談、塩崎官房長官表敬、翌19日(木曜日)に安倍総理表敬を行ったところ、概要以下のとおり。

1.日米外相会談(18日(水曜日)16時15分より約60分間)

(1)北朝鮮

(イ)麻生大臣より、北朝鮮の核実験直後というタイミングでライス国務長官が訪日され、更に韓国にて日米韓三者会談が行われることとなった、長官のイニシアティブに感謝していると述べた。さらに、日米同盟強化は安倍新政権の外交の柱であるとした上で、現在の北朝鮮の情勢下、日本及びこの地域の平和と安定確保のための基本は日米安保体制であり、同体制をより効果的なものとするため、種々の努力を米国と共に行っていく旨述べた。加えて、麻生大臣より、北朝鮮が更なる核実験を準備中との情報があるが、その可能性も念頭に置く必要がある旨述べた。

(ロ)これに対し、ライス国務長官より、安倍総理とブッシュ大統領は既に面識があり、両首脳が素晴らしい信頼関係を築くことを確信している、総理が訪中、訪韓されたことは素晴らしかった、また、まさに日中関係、日韓関係の改善がなされている最中に北朝鮮が核実験を行ったのは驚きである、日米韓中露及び豪州といった国々との連携が重要である旨述べた。また、日米同盟に関し、ライス国務長官より、日米安保条約を含むすべての安保体制上のコミットメントを含め、日本の防衛に対する米国の確固たるコミットメントを確認する、米国は抑止と安全保障についての日本へのコミットメントをあらゆる形で履行する旨述べた。

(ハ)更に、麻生大臣より、貨物検査を含め、まずは安保理決議1718号の着実な実施が重要である、北朝鮮に最大の影響力を有しているのは、やはり中国であり、中国とよく話し合う必要がある、しかし安保理決議の目的は北朝鮮に制裁を加えることではなく、北朝鮮に核を廃棄せしめることである、対話の窓を開けておくべきであり、北朝鮮に六者会合への無条件復帰を求めたい、日米韓3か国の連携が重要であり、豪も積極的な役割を果たしている旨述べた。麻生大臣は、更に、我が国は安保理決議1718号の実施とは別途、1)北朝鮮船籍の全面入港禁止、2)北朝鮮からの輸入全面禁止、3)北朝鮮人の原則入国禁止を実施済みである旨述べた。

(二)これに対し、船舶の貨物検査に関し、ライス国務長官より、色々な手段があり得る、今後事務レベルでよく相談していきたい旨述べ、事務レベルでの協議を行うことに合意した。

(ホ)また、麻生大臣より、北朝鮮には拉致問題も残っており、先般の安保理決議でも北朝鮮が人道上の懸念に応えるべき旨述べられていることからも、引き続き米国の協力をお願いしたい旨述べ、ライス長官はもちろん全面的に協力していくと応じた。

(2)日米関係

(イ)総論

 麻生大臣より、APEC外相会合の際に日米外相会談を行いたい、また、日米豪の戦略対話で実質的協力が進展しつつあることは喜ばしいことであり、今後とも重視していきたい旨述べた。

(ロ)日米経済関係

 麻生大臣より、日米経済関係を更に強化していきたい、また、二国間のみならずアジア太平洋地域において知財、エネルギー安保等の分野で協力していきたい旨述べたのに対し、ライス国務長官は、同感である、特にエネルギー安保について協力していきたい旨応じた。麻生大臣より、中国の経済成長によりエネルギー需要も急増しているが、同国のエネルギー効率を上げ、環境問題に対処するためにも日米間で大きな協力の余地がある旨述べたのに対し、ライス国務長官より、同意する、APP(クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ)といった場で協力していくのも一案である旨述べた。

(3)イラン

(イ)ライス国務長官より、北朝鮮と同様、イランの問題についても対処する必要があり、両者は相互に関係がある旨述べた。また、近く安保理も動き出す予定であり、安保理における制裁の議論が始まる。一方、それとは別に民間の金融機関への働きかけも別途米国は行っている、イランではダミー会社や偽名口座等が多く使われており、民間銀行自身が慎重に対処する必要がある旨財務長官から話をしている旨述べた。

(ロ)これに対し、麻生大臣より、イランの核問題に対する懸念を我が国も共有しており、引き続きよく話し合って対処していきたい旨応じた。

2.塩崎官房長官表敬(18日(水曜日)18時10分より約30分間)

(1)北朝鮮

(イ)冒頭、塩崎官房長官より、安倍新政権発足直後かつ現在の北朝鮮の情勢下におけるライス長官の訪日を歓迎した上で、北朝鮮による7月のミサイル発射の際も、今回の核実験実施の声明発出の際も、安保理決議採択に向けた日米協力がうまく機能した旨述べた。
 これに対し、ライス国務長官より、現在の日米ほど強固な同盟関係はない、米国は日米安保体制下での抑止力及び地域の安全保障についてあらゆるコミットメントを果たしていく旨述べた。また、米側として、安倍総理の中国、韓国に対する外交努力は誠に成功であると受け止めている旨述べた。

(ロ)その上で、北朝鮮に関する以下の諸点について一致した。

(i)弾道ミサイル防衛協力の加速を含め日米同盟関係を強化していく。

(ii)貨物検査を含む安保理決議1718号の着実な実施に向け、日米が事務レベルで協議していく。また、中国、韓国ともよく相談しつつ協力していく。

(iii)北朝鮮に対して、早期・無条件に六者会合に復帰するよう呼びかける。

(iv)北朝鮮が核実験を再度行うことは決して許されず、そのような場合には、日米を含む国際社会が厳しい対応をとらなければならない。

(v)北朝鮮に関する問題は核やミサイルだけでなく、拉致問題を含む人道上の懸念にも対処していく必要がある。

(2)イラン

 ライス長官より、核不拡散の観点からイランの核問題について短時間取り上げた。この中で、イランによる将来の核実験の可能性を防ぐためにも、安保理決議の採択を含め、今行動しなければならないと述べるとともに、イランは国際金融システムを不正に利用し民間金融機関が巻き込まれているケースがあるので民間の金融機関に対しても注意喚起を促す必要があるとの説明がなされた。

3.安倍総理表敬(19日(木曜日)10時より約40分間)

(1)北朝鮮

(イ)冒頭簡単な挨拶があり、ライス国務長官からは総理に対し就任のお祝いが述べられた。続いてライス国務長官より、このような形で同盟国として協力していくことは重要である、と述べた。

(ロ)総理からは、良いタイミングで訪日された、北朝鮮のミサイル及び核について国民は大変不安に思っている、ライス長官の訪日は日米同盟に基づき力を尽くすとの米国のコミットメントを示すものであり、大変心強い、貴長官の訪問により、国民の日米同盟の意義に対する理解も深まったと思う、自分は総理就任時に「日本とアジアのための日米同盟」ということを述べたが、世界とアジアの安定のために協力していきたい、ミサイル防衛及び米軍再編も進めていきたい、と述べた。

(ハ)これに対してライス長官は、アジア歴訪の最初の国を日本としたことは、日米同盟がどのような状況下でも揺るぎなく重要であることを示すためである、米国が安保体制上のコミットメントを守るのは、日米が共通の価値を有するからであるのみならず、日本の安全は米国の安全でもあるからである、北朝鮮は日本の安全保障環境を変えられると思うべきではなく、北朝鮮のミサイルや核の実験という挑戦に対し、日米同盟は十分に対応する能力がある、ミサイル防衛や情報協力に加え、安保理決議1718の履行が重要であり、決議の履行については事務的に協議していきたい、力強い二国間協力をさらに近代化・強化させることが今の事態への対応の基盤となると考える、また総理の対中韓外交の成功をお祝いする、御訪問のタイミングも大変良かったと考える、と述べた。

(ニ)これに対して総理よりお礼を述べると共に、韓国を訪問する直前に北朝鮮が核実験を行ったのは驚きであった、日中首脳会議では日本の戦後60年の歩みに対する評価を共同プレス発表に書き込むことができたことは成果であり、また共通の戦略的利益に基づく互恵的関係についても確認することできた、韓国とも首脳間の対話を行っていくことで合意ができている、日本と中国、韓国の国民の間での感情のこれ以上の悪化を防ぐことができたと考えている、と述べた。

(ホ)さらに総理より、日米韓外相会談について、このような連携は大事である、と述べたところ、ライス長官より、同意する、とても重要である、と述べた。これに対して総理より、中国も現状を受けて強い立場で事態に対応している、と述べた。これに対してライス長官より、安保理決議採択の前に唐家セン国務委員とワシントンで会ったが、その際唐国務委員は、北朝鮮の非核化につき早期の進展が必要である、と述べていた、と述べた。

(へ)これに対して総理より、北朝鮮は、国際社会の懸念に応えなければ事態が悪化することを理解しなければならない、安保理決議1718についてはこれを実効あるものたらしめるために日米間で連携していきたい、これまでの米からの情報共有に感謝すると共に、これからも情報共有をより緊密にしていくことが同盟強化のために重要である、と述べた。

(ト)ライス長官より、拉致問題に対する日本の立場を支持する、安保理決議1718には人道問題への言及が入っているが、これは拉致問題のことを指していると理解している、と述べた。

(チ)これに対して総理より、長官から拉致問題に言及頂いたことは心強い、ブッシュ大統領も記者会見の場で横田めぐみさんとそのお母様につき言及されたが、日本国民はこれに感動している、日本は既に北朝鮮に対し個別の厳しい措置をとっており、船舶の出入港を止めると共に、北朝鮮からの輸入を禁止し、北朝鮮国籍を有する者の入国を制限している、と述べた。

(2)イラン

(イ)ライス長官より、イランにつきこれから安保理で制裁につき議論をするが、日本にはこれを支持して頂けるものと考えている、さらに、国際的な金融取引を制限していくことが大事であり、イランが北朝鮮のようになるのを避けなければならない、と述べた。

(ロ)これに対して総理より、日本はイランとは石油も含め一定の関係があるが、このことは国際社会の核開発への対処に影響することはない、本件についても貴国と協議していきたい、と述べた。

(3)日米関係

 ライス国務長官より、大変な時期ではあるが、日米間には対応していくツールがある、と述べたのに対し総理より、このように内容のある会談を行うことができてよかった、日米間の絆はこのようなときにこそ見せなければならない、同席のシーファー大使にはミサイル発射の際にも核実験の際にもすぐに駆けつけていただいており、信頼関係がある、と述べた。これに対しライス長官より、日本からも米国に加藤大使という素晴らしい大使をお送り頂いている、と述べ、安倍総理は、ブッシュ大統領とAPEC首脳会合の際に会談するのを楽しみにしている、と述べた。

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