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2008年5月30日
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目次
1.本行動計画は、横浜宣言を踏まえ、今後、アフリカ開発国際会議(TICAD)プロセスの下でアフリカの成長と発展を支援するためのロードマップを提供するものである。
2.アフリカは、年率5%を超す高い経済成長と政治的安定の増進を基礎として、アフリカが「希望と機会の大陸」になることに資する広範な成長と発展へと向かっている。
3.TICADプロセスは、アフリカ諸国が明確な開発目標を達成し、実質的な成果を得ることを支援するために、知恵と資金を動員してこの目的を支援することを目指す。TICADは、その創始以来、アフリカ諸国のオーナーシップ、パートナーシップ及び南南協力の拡大の原則を基礎としている。
4.本行動計画は、パートナーシップの拡大の下で、成長の加速化、人間の安全保障の確立(ミレニアム開発目標(MDGs)の達成及び平和の定着・グッドガバナンス等)、環境・気候変動問題への対処という3つのTICADの優先事項を促進するため、今後5年間にTICADプロセスが達成すべき目標と履行すべき具体的措置を提示するものである。この目標の進展状況は、TICADフォローアップ・メカニズムを通じてモニターされる。
5.TICADプロセスの中心に位置する日本政府は、対アフリカ政府開発援助(ODA)を2012年までに倍増することを表明し、日本政府としての強固なコミットメントを示すイニシアティブをとった。これは、上述の優先事項に沿った目標が達成できるような支援の効果的な実施に寄与するものである。日本政府はまた、2008年から2012年にかけて、日本の民間セクターからアフリカへの直接投資を倍増させるためにあらゆる政策手段を積極的に動員するように努力を払う意向である。
TICADプロセスは、インフラ開発、貿易、投資、観光、農業に対する支援を通じて「元気なアフリカ」を促進し、加速化しているアフリカ経済の成長及び多角化を促進する。TICADプロセスは、貧困削減とMDGsの達成に実質的に関連している、持続可能な経済成長の促進を目指し、民間セクターを含めた全ての関係者が、アフリカ諸国が特に人材育成を通じ、成長を拡大し加速化すべく行っている取組を支援するために共に行動することを奨励する。
アフリカの農業・産業振興や貿易・投資の拡大を促進し支援していくためには、インフラ網の整備が不可欠である。G8グレンイーグルズ・サミットに対するアフリカ委員会報告書は、アフリカのインフラ需要を2010年までに充たすために、年間100億ドルの追加支援の必要性を指摘している。アフリカの専門家が現在策定中の中長期的戦略計画は、広域インフラの拡大及びその維持・管理のための能力向上の必要性に言及することとなろう。
TICADプロセスの下で今後5年間に取られる措置
TICADプロセスは以下の事項に焦点を当てる。
1.広域運輸インフラ
2.広域電力インフラ
3.水関連インフラ
4.地域機関の関与拡大
5.インフラ部門における官民連携の促進
アフリカ各国政府は、貿易及び投資が持続可能な経済成長及び貧困削減に果たす重要性を認識し、アジアの経済成長の経験を踏まえて、貿易促進及び外国投資誘致のために努力している。また、アフリカ連合(AU)/アフリカ開発のための新パートナーシップ(NEPAD)やRECsも、アフリカ域内における貿易を活性化し、アフリカが世界経済の一部として組み込まれることを促進するために、法制度や広域インフラの改善を含む地域共通貿易政策を策定している。この関連で、TICADプロセスは、民間セクターと協力しつつ、アフリカ諸国との貿易及び対アフリカ投資の大幅な増加を達成することを目標とする。
TICADプロセスの下で今後5年間に取られる措置
TICADプロセスは以下の事項への取組を強化する。
1. 貿易の促進・拡大
2.外国投資の奨励
3.民間セクター開発支援
4.観光促進
サブサハラ・アフリカの貧困人口の7割にあたる2.3億人が農村地域で生活しており、アフリカにおける食料安全保障、貧困削減及び経済成長には食料増産及び農業生産性の向上が重要である。農業セクターはアフリカ経済の牽引力たり得る一方で、食料、肥料及び燃料価格の継続的な上昇は食料安全保障にとり益々脅威となっている。
アフリカ諸国は、開発のための農業セクターの重要性を認識し、2015年までに年平均成長率6%を達成するために農業生産性の向上を目指すNEPADの包括的アフリカ農業開発プログラム(CAADP)を実施している。CAADPアジェンダの中で、アフリカ諸国は、2003年のAUのマプト宣言に従い、5年以内に国家予算の少なくとも10%を農業及び農村開発に割り当てることにコミットしている。
TICADプロセスの下で行われる農業支援には、農業活動が環境へ及ぼす影響、農業の主要な役割を担う女性の能力強化、及び三角協力を含む南南協力の奨励への考慮が含まれる。
TICADプロセスの下で今後5年間に取られる措置
TICADプロセスは、以下の事項の実施のためにCAADPアジェンダとの連携を図る。
1.食料増産及び農業生産性向上のための能力向上
2.市場アクセス及び農業競争力の改善
3.持続可能な水資源の管理及び土地利用の支援
2008年は2015年までのMDGs達成に向けた中間年である。各種統計が示すように、多くのサブサハラ・アフリカ諸国において諸目標の達成に遅れが目立ち、妊産婦死亡率の高さやHIV/エイズの蔓延は依然深刻である。このため、アフリカにおける進展の加速化が極めて重要である。貧困削減のためには経済発展が必要であるが、経済成長の果実が、最も弱い立場にある者を含めて社会の全ての構成員に均霑され、一部の特権的な者に独占されないことも不可欠である。
アフリカにおけるMDGs達成を促進するため、TICADプロセスは「人間の安全保障」の理念、即ち人間の生命、生活及び尊厳に対する様々な脅威から人々を守り、自身の持つ可能性を充分に実現できるように能力強化が図られる社会を構築することを目指す考え方に焦点を当てる。「人間の安全保障」の強化に際しては、中央政府、地方政府、国際機関、市民社会等の協力を奨励する、ボトム・アップの取組、包括的・マルチセクトラルな対応、全員参加型のアプローチを重視していく。MDGsの各目標間の相互関連性に十分な注意を払いながら、TICADプロセスは、MDGs達成に向けて遅れが最も顕著な保健と教育の分野に積極的に焦点を当てるとともに、コミュニティ開発、ジェンダー平等及び市民社会の積極的な参加を奨励する。
コミュニティ開発及び能力強化は、地方及び都市のいずれにおいても、人間の安全保障の強化に不可欠な要素である。コミュニティ開発においては女性が重要な役割を占めているため、ジェンダーの視点が不可欠である。また、持続可能なコミュニティ開発を確実にするためには文化的考慮も重要である。さらに、コミュニティを基礎とする取組は、移行期における平和の定着にとっても不可欠である。
アフリカにおける雇用及び貧困削減に関する宣言において、AU加盟国は、社会開発、貧困削減及び雇用創出に一貫して取り組むことの重要性を認識し、特に地方コミュニティ及び都市のインフォーマル経済における貧困者及び弱者、また、失業者及び不完全雇用者の能力強化にコミットした。
TICADプロセスの下で今後5年間に取られる措置
TICADプロセスは以下の分野の支援に焦点を当てる。
1.包括的な「グローカル」(グローバルかつローカル)コミュニティの開発
2.機能的ハブを活用したコミュニティに根ざしたアプローチ
EFA(万人のための教育)及びMDGs達成のため、アフリカ諸国には全体的な教育セクター計画、その実施のための十分な国家予算の割当て及び関連する能力の向上などが求められている。TICADプロセスはこうした取組のみならず、成長及び持続的な社会経済開発につながる教育及び人材育成も支援する。その中で、教育における男女平等及び保健、水、衛生等関連する他のセクターとの相乗効果を獲得する取組を追求する必要がある。
アフリカ連合が2007年11月に採択した「第2次アフリカ教育開発の10年」(2006年~2015年)では、ジェンダーと文化、教育マネジメント情報システム、教員の能力向上、教育と訓練、高等教育、技術教育・職業訓練、カリキュラム、教材、教育の質管理を教育セクターの優先分野として特定した。この枠組において、アフリカ諸国は国家教育運営情報システム(EMIS)の機能を発展し、初等・中等教育における完全な男女平等の達成及び高等教育における理数科教育・科学技術教育への参加における男女格差を克服することを目指している。
TICADプロセスの下で今後5年間に取られる措置
アフリカ諸国によってなされたコミットメント及び行動に関連して、TICADプロセスはアフリカ側の取組に対し、以下のとおり焦点を当てる。
1.基礎教育-アクセスと質の改善
2.ポスト基礎教育及び高等教育/研究
3.マルチセクトラルなアプローチ
4.教育マネジメント
アフリカ、特にサブサハラ・アフリカは、HIV/エイズ、結核、マラリア及びポリオ等の感染症の蔓延、高い乳幼児死亡率及び妊産婦死亡率といった深刻な課題に直面している。加えて、気候変動及び世界的な食料危機という新たな脅威によって、感染症の抑制から栄養改善まで様々な保健分野の目標達成に対する新たな課題が生じつつある。これらの課題は、社会経済開発を深刻に阻害しており、とりわけ安全な水、衛生、栄養、基礎教育及びジェンダー平等を含む包括的かつマルチセクトラルなアプローチが求められている。
このような状況に対し、2007年4月に開催されたAU保健大臣会合では、「アフリカ保健戦略」が採択され、アフリカにおける保健システム全体の強化を促進することが合意された。AUは、アフリカ諸国が国家予算の15%を保健分野に充てることを目標にした「エイズ・結核・マラリア等感染症に係るアブジャ宣言及び行動計画」、「アフリカ地域栄養戦略」、「リプロダクティブヘルス・母子保健に係るマプト行動計画」、「アフリカの子どもの生存に係るMDG達成のための戦略的枠組」を含む、主要な疾病及び保健問題に関する地域戦略を策定し、これらに応じて様々な取組がなされている。
TICADプロセスの下で今後5年間に取られる措置
TICADプロセスは、アフリカ諸国によってなされたコミットメント及び行動に関し、以下の事項に取り組む。
1.保健システムの強化
2.母子保健の向上
3.感染症対策
近年、アフリカは、アフリカ平和安全保障アーキテクチャー(APSA)の構築やアフリカ・ピア・レビュー・メカニズム(APRM)の促進についての努力を含み、紛争の終結及び復興の促進において大きな進展を遂げた。これはアフリカが平和を定着させガバナンスを強化するまたとない機会となっている。紛争は人間の安全保障及び開発に対する非常に重大な障害である。
平和の定着は、紛争予防、当事者間の調停及び和平交渉、治安及び秩序の回復と維持、人道支援の提供、復興支援、経済・社会開発の促進、民主的ガバナンスの改善等、異なる段階と様々な行動を包含している。これらのプロセスは、プロセスが不可逆的なものとするために継ぎ目のなく、継続的な支援を必要としている。
多くの国が国境を接しているアフリカでは紛争が容易に拡大するため、平和の定着において、地域的側面が考慮に入れられるべきである。また、紛争が発生した際に被害を最小化するリスク管理に加え、紛争予防の努力も不可欠である。地元住民の能力向上を重視した、コミュニティに根ざした参加型のアプローチは、アフリカ諸国のオーナーシップ促進に資する。女性、子供、高齢者、障害者といった社会の最も脆弱なグループも特別の保護及び支援を必要としている。同時に、平和構築活動に従事する内外の主体間の調整強化、情報とグッド・プラクティスの共有の重要性が強調されるべきである。
TICADプロセスの下で今後5年間に取られる措置
TICADプロセスは特に以下の点に焦点を当てる。
1.紛争予防
2.人道・復興支援
3.治安の回復と維持
4. グッドガバナンスの促進
アフリカは、干ばつや洪水の頻発、激化等、気候変動がもたらす負の影響に脆弱であり、気候変動への対処は喫緊の課題である。「地球規模での持続可能な社会」の実現のため、アフリカ諸国を含む全ての国々が協力して2013年以降の気候変動に関する実効的な枠組みを構築し、地球規模で温室効果ガスの排出を削減するという目標に向けて行動する必要がある。
TICADプロセスは、気候変動分野での政策対話を促進するとともに、新たな実効的な枠組み構築を支援し、温室効果ガスの排出抑制と経済成長を両立させようと努力するアフリカ諸国に対し、政策立案、緩和、クリーン・エネルギーへのアクセス及び気候変動への適応の分野での支援を強化していく。適応に関して、TICADプロセスは、水資源の有効な管理とともに、保健、農業、食料安全保障等の関連分野における取組を促進する。
この文脈から、中央政府、国際機関、地方政府及びコミュニティ、民間セクター、市民社会等幅広いステークホルダーを巻き込んだ全員参加型アプローチを促進していくことが重要である。更に、日本のアフリカとの「クールアース・パートナーシップ」等の様々なイニシアティブの下における協調した取組が求められる。既にアフリカでは、国家レベルでの取組に加えて、国連、AU/NEPAD及びRECs等の国際的、地域的枠組みの中で取組が進められている。
TICADプロセスの下で今後5年間に取られる措置
TICADプロセスは以下の分野における取組を強化する。
1. 緩和
(1)緩和策の促進
(2)クリーン・エネルギーの利用促進及びエネルギー・アクセスの改善
2.適応
(1)自然災害への対応策
(2)砂漠化対処措置
2. 水と衛生
(1)有効な水資源管理
(2)安全な水及び衛生施設へのアクセス
3. 持続的な開発のための教育(ESD)
TICADプロセスは一貫して、「オーナーシップ」と「パートナーシップ」というコンセプトを推進してきており、アフリカとの「パートナーシップ」の範囲は着実に拡大している。
アジア・アフリカ協力は、二つの地域間で、互いに学び、ベスト・プラクティスや技術を共有することにより進歩していくTICADプロセスの重要な要素の一つである。アフリカ諸国は統合プロセスの中にあり、アブジャ宣言で示された枠組みの中で、アフリカ域内のパートナーシップの深化に向けて歩みを進めている。アフリカ諸国はまた、NEPADの行動計画により具体化されているように、顕著な成果を上げている。またAUは、大陸統合の柱としてのRECsとの協力の下、その歩みを進めている。広範囲なパートナーシップ及び民間企業、NGO、学術界を巻き込んだ全員参加型アプローチは非常に重要であり、アフリカ諸国は、開発のプロセスにできるだけ多くの主体を関与させるよう努力している。アフリカのオーナーシップの下でのこれらのパートナー間のよりよい協調関係はまた、これらの取組が現場で最大の成果と効果を得るために死活的に重要なものである。
TICADプロセスの下で今後5年間に取られる措置
TICADプロセスは以下の分野における取組を強化する。
1.南南協力、特にアジア・アフリカ協力の促進
2.地域統合の深化
3.パートナーシップの拡大
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