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平成17年9月1日
小泉純一郎日本国総理大臣とタクシン・シナワット・タイ王国首相は、2005年9月1日、東京において会談を行い、2005年7月31日から8月1日にバンコクにて開催された閣僚会合を含む、2004年2月からの一連の交渉を基礎に、日タイ経済連携協定の主要点について大筋合意に達したことを確認した。
日本及びタイは、2004年には両国間の貿易総額が350億米ドル近くを記録するほど活力のある経済関係を築いてきた。また、タイは、2004年の直接投資額において、日本の東南アジアにおける最大の投資先である。同時に、日本は、同年の直接投資額において、タイにとって最大の投資母国である。この文脈において、この協定は、両国間の協力、貿易・投資の自由化及び円滑化を通じ、より緊密な経済関係を構築し、より良好な投資環境を整備し、ビジネスチャンスを一層拡大することにより、既に緊密で良好な友好関係と互恵的な協力をさらに拡大し深化させるものである。また、この協定は、日本とタイの戦略的パートナーシップの新たな時代を切り開き、東アジア共同体に向けた強固な基礎を提供することとなる。
この協定は、ビジネス環境整備、知的財産、農林水産業、貿易投資促進、教育・人材養成、情報通信技術、科学技術・エネルギー・環境、中小企業、観光、金融サービス、省エネルギー、「価値創造経済」及び「官民パートナーシップ」に関する二国間協力を含む広範囲にわたる経済活動も包含することとなる。
貿易投資促進の協力は、鉄鋼業におけるプロジェクト、自動車産業における協力プロジェクトを通じたタイの「アジアのデトロイト」政策への支援、及びタイの「世界の台所」プロジェクトへの支援を含むこととなる。
両首脳は、可能な限り早期にこの協定を発効させ、市場アクセス促進という目標を達成するため、両国政府の担当者に対し、残された技術的な問題、特に原産地規則に関する作業を加速させ、協定の条文を早期に確定させるよう指示した。両首脳は、この協定が2006年の早い段階で署名されることを期待し、また、その後速やかに協定を発効させるためにそれぞれの国内手続きを完了すべく最大限の努力を行うよう、政府の担当者に指示する。
この協定の大筋合意の主要点は以下のとおり。
両国は、鉱工業品の関税を包括的に撤廃又は削減する。鉱工業品分野における両国の主要な約束は、別添1に記載される。鉄鋼及び自動車分野に関し、タイの自動車・自動車部品産業の競争力向上及びタイの鉄鋼産業の発展のための協力が行われる。
両国は、農林水産品の関税を包括的に撤廃又は削減する。両国はまた、農林水産業の分野における食品安全性及び地域間協力に関して協力を行う。 農林水産分野における両国の主要な約束は、別添2に記載される。
両国は、税関手続の簡素化及び調和を通じた貿易の円滑化、並びに効果的な取締りを図る観点から、両国間の情報交換及び協力を推進する。
両国は、両国間のペーパーレス貿易を実現し促進するために協力し、両国の民間団体間の協力を奨励する。
両国は、サービス貿易の自由化のための枠組みを確認し、サービス貿易の自由化提案を行った。枠組み及び双方の主要な約束は、別添3に記載される。
両国は、非サービス分野における投資の自由化及び投資の保護の枠組みについて確認した。枠組み及び双方の主要な約束は、別添4に記載される。
両国は、二国間の経済連携を強化するために、二国間の協力を促進する。この協定に基づく協力の詳細は、別添5に記載される。
両国は、政府調達に関する情報を交換し、双方にとって利益となる協力を促進するための課題及び方途について協議するためのメカニズムを設置する。
両国は、自国の法令に従って、自国において反競争的行為を規制することにより公正かつ自由な競争を促進し、また、競争の分野において協力する。
両国は、知的財産の十分かつ効果的な保護を確保し、侵害、不正使用及び違法な複製に対する知的財産権の実現のための措置を定め、知的財産保護制度の効率的かつ透明性のある運用を促進する。また、中小企業による知的財産権の取得を支援する。さらに、両国の更なる討議及び協議のためのメカニズムを設置する。
両国は、電気製品分野における相互承認の枠組みを確認し、同枠組みに関する規定につき交渉を継続する。
両国は、協力メカニズム、すなわち、それぞれの国に設置されるビジネス環境小委員会を通じて、相手方のビジネス活動にとって良好なビジネス環境を整備する。ビジネス環境小委員会は、政府関係者、民間セクター及び関係機関の代表から構成される。
人の移動に係る両国の主要な約束は、別添6に記載される。
鉱工業品分野においては、日タイ双方がほぼ全ての品目について、協定発効日から10年以内に関税を撤廃。
(a)タイによる市場アクセスの改善は以下のものを含む。
(i)自動車本体
(ii)自動車部品
(iii)鉄鋼・鉄鋼製品
(b)日本による市場アクセスの改善は以下のものを含む。
(i)繊維及び衣服
(ii)身辺用細貨類
(iii)石油及び石油化学製品
大部分の農林水産品について、協定発効日から10年以内に関税を撤廃。
(a)農産品
(b)水産品
(c)林産品
(d)除外又は再協議品目は以下のものを含む。
米、麦、生鮮・冷凍・冷蔵の牛肉及び豚肉、粗糖(甘しゃ糖及びてん菜糖)、精製糖、でん粉、パインアップル缶詰、合板、水産IQ品目、かつお・まぐろ、牛・豚肉調製品の大部分、指定乳製品
日本及びタイは密接に協力することとし、衛生植物検疫措置の適用から生じうる特定の問題を、相互に受け入れ可能な解決を得ることを目的として、特定し対処するための科学に立脚した協議の実施、品質管理、検査及び認証制度の強化並びにリスク分析の適用強化を含む分野における協力を促進するため、関係する政府機関の参加を得て、食品安全協力に関する特別小委員会を設置する。
また、両国の関連する協同組合間の協力の分野及び形態を特定し、協力活動、例えば一村一品運動の振興を含む販売及び購買活動の推進を実施するため、地域間協力に関する特別小委員会を設置する。
日本は138のサブセクターについて現状維持約束を行う。
次のセクターにおいて、GATSの約束を含め、包括的な範囲で約束。
GATSの約束に加え、次のサブセクターを含む範囲。
オファーの範囲は例外となる特定の分野を除くすべての非サービス分野を含む。例外は以下の産業を含む:宇宙産業、武器・火薬産業、エネルギー産業、石油産業、農林水産業および鉱業。
日本の投資家による自動車製造業への投資について、その持分が50%未満の場合は、規定された条件に従う限り当局の許可を要しない。
(a)農林水産業
(b)教育・人材養成
(c)ビジネス環境整備
(d)金融サービス
(e)情報通信技術
(f)科学技術・エネルギー・環境
(g)中小企業
(h)観光
(i)貿易投資促進
新時代の日タイパートナーシップのための下記の協力プログラムは、両国の国民が、(i)経済連携協定を更に発展させ、その先を展望するとともに、(ii)世界的な競争の下で豊かで強靱な経済を実現するための基本的な哲学、実用的な能力及びノウハウを共に追求し、分かち合うことを目的として、構想・発表されるものであり、両国は、当初の期間は、これらの協力プログラムに集中して取り組む。
(a)「世界の台所」プロジェクトのための貿易投資促進
日本貿易振興機構(JETRO)及びタイ国立食品機構(NFI)間のパートナーシップを通じ、このプロジェクトは、タイの食品のマーケティング、高付加価値食品の製造及び日本におけるタイによる食品関連投資の促進を含む。
(b)日タイ「鉄鋼産業協力プログラム」
両国政府は、日本の鉄鋼業界、タイの鉄鋼業界及びその他の関連する団体の協力を得て、タイの鉄鋼産業の技術的基盤及び環境技術の強化、タイの製鉄所の現場技術者の技能育成、タイの鉄鋼技術者の教育支援と技能育成のため、協力を行う。
(c)「自動車人材育成機関」プロジェクト
両国政府は、タイ自動車工業会及び他の関連する機関とともに、タイを自動車セクターにおける世界水準の安定した生産基地とし、人材育成を通じて熟練労働者不足の問題を解決し、世界市場におけるタイの自動車産業の競争力を改善するため、このプロジェクトの下で協力を行う。
(d)省エネルギー
タイにおける日系製造企業は省エネルギーに関する自主行動計画を策定し、ノウハウをタイの関連企業に移転する。日本政府は、省エネルギー専門家を派遣し、タイ・エネルギー省と連携して中小企業を含むタイの製造事業者のノウハウが改善するよう、適切な措置をとる。
(e)価値創造経済
両国政府は、経済産業省とタイの知識管理・開発事務局間の協調により、「一村一品」運動及びタイ創造デザインセンターの成果を更に発展させ、世界的な競争の下で経済の強靱性を高めるような新たな経済モデルを追求する。
(f)官民パートナーシップ
両国政府は、インフラ・サービス分野の官民パートナーシップの強化のため、民間からの参加を得た二国間対話を通じて、協力を行う。
対象範囲は以下の分野・事項を含む
(1) スパ・サービスにおけるスパ経営・管理者及びスパ指導員の受入れの可能性の検討
(2) スパ・セラピスト
対象範囲は以下の事項を含む
両国は、特定の約束の見直しを含む、自然人の移動に係る事項を議論するための協議メカニズム、及び教育、免許、資格の相互承認について議論するための協議メカニズムを設置することを確認した。