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第2回シリア・フレンズ会合(概要と評価)
平成24年4月2日
4月1日(日曜日),イスタンブール(トルコ)において,第2回シリア・フレンズ会合が開催され,我が国から松富重夫中東アフリカ局長が出席したところ,概要と評価は以下のとおり。
1.会合の概要
- (1) 日時:4月1日(日曜日) 10時30分~17時30分
- (2) 場所:イスタンブール・コンベンション・センター
- (3) 議長:ダーヴトオール・トルコ外相
- (4) 参加者:約80の国・国際機関の代表,シリア反体制派グループの代表など(クリントン米国務長官,ヘーグ英外相,ジュペ仏外相,エルアラビー・アラブ連盟事務総長,サウード・サウジアラビア外相,ハマド・ビン・ジャーシム・カタール首相兼外相,ガリユーン・シリア国民評議会(SNC)議長などが参加)
2.議論の概要
エルドアン・トルコ首相による基調演説により開幕。続いて,アラブ連盟,シリア国民評議会,米英仏などをはじめ,ほぼ全ての参加国代表よりステートメントが行われ,一様にシリア人に対する強い連帯の意及びアナン国連・アラブ連盟共同特使の提案の具体的履行を強く求める意向が示された。また,会合の締めくくりとして,議長総括(文書別添)が発出。次回フレンズ会合はフランスで開催されることで合意(時期は未定)。
3.我が国の対応
我が国は,ステートメントの中で主に以下を強調。また,会合のマージンで,主要国の参加者や反体制派などとそれぞれ意見交換を行った。
- (1) 死者数が増加の一途をたどるシリアに対しては暴力を即時停止するよう,国際社会が一致した圧力をかける必要がある。
- (2) これまでの国際社会の類似の制裁措置にもかかわらず弾圧や暴力の連鎖がやまず,人道状況が更に悪化。こうした政治的な膠着状態の犠牲となっているのは無辜のシリア国民であり,その救済を最優先事項とかかげるアナン国連・アラブ連盟共同特使の努力を強く支持。アナン特使の調停努力に対してはある程度の時間を与えるべきであるが,期限を設ける必要がある。
- (3) 反体制派は小異を捨て大同につき統一すべき。
- (4) シリア政府は,アナン特使の提案を即時無条件に実施すべきであり,時間稼ぎのために利用するべきではない。
- (5) 我が国は,シリアにおける暴力の即時停止及び意味のある民主的プロセスを実現するため,引き続きシリア・フレンズ・グループと緊密に協力し,弾圧に苦しむシリア国民のための人道支援を実施していく所存。
4.議長総括
主なポイントは以下のとおり。
(1) アナン特使調停案の扱い
アナン特使の提案につき,シリア政府は受け入れを表明したにもかかわらず,暴力が続き,多くの死者が発生していることに,フレンズ・グループは深い遺憾の意をあらわし,アナン特使に次の措置までの期限を設定するよう求める。
(2) 反体制派の扱い
シリア国民評議会(SNC)は全てのシリア人の正当な代表(a legitimate representative)であり,シリア反体制諸派の上部組織(the umbrella organization)と認める。また,SNCを反体制派の中の国際社会との代表的な対話相手(the leading interlocutor)と位置づけ。
(3) 反体制派支援
シリア人主導の政治プロセスのために,シリア人のニーズに見合う資金調達や財政支援を含むあらゆる可能な支援を行う。
(4) 小委員会(Working Group)の設置
制裁小委(仏主導),復興小委(独・UAE主導)の設置に合意。
(5) 人道支援
シリアの悪化する人道状況に対する強い懸念が表明。フレンズ・グループはシリアの人道ニーズのために引き続き財政支援を行うことで一致。また,難民の流出などで影響を受けるシリア近隣諸国に対する支援が必要な点についても一致。
5.評価
- (1) チュニジアで開催された第1回会合における参加者数を上回る,80以上の国・国際機関がそれぞれハイレベルで参加(閣僚級の参加は40人以上)するなど,シリア情勢に対する国際社会の強い関心及び弾圧に苦しむシリアの人々に対する連帯の意向が示された(なお,露や中は前回会合に続き不参加)。特に,アナン特使の提案を即時無条件に履行するようシリア政府に求める点で一致したことと,その履行にあたり,(具体的な期限は明記されないまでも,)期限を設けることの重要性が指摘されたことが特筆される。
- (2) シリアに対する人道支援が急務である点につき,主要国によるプレッジを含め,各国から支援強化に対するコミットメントが示された。また,制裁や復興などの具体的項目につき,ワーキンググループを設けて協議していくことが合意され,今後のシリア問題に関する議論の枠組み及び道筋が示された点で有益であった。
- (3) シリア反体制派に対する支援については,SNCが全てのシリア反体制諸派の上部組織(the umbrella organization)と認められつつも,唯一の正当な代表として承認されるには時期尚早であるとの見方が大勢を占め,依然として反体制諸派の統合が課題であることが明らかとなった。