大洋州

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「対太平洋島嶼国支援に関するNGOと政府の意見交換会」・議事要旨

1.日時:

 平成20年12月22日(月曜日)15時~16時30分

2.場所:

 外務省内会議室(中央153号室)

3.参加者:

(1)NGO 5団体・9名(別添参照(PDF)PDF

(2)外務省 岩間大洋州課長、日田国別開発協力第一課企画官、保坂大洋州課地域調整官

4.議事次第:

(1)開会

(2)会合趣旨の説明

(3)参加団体による団体概要・活動紹介

(4)外務省プレゼンテーション

1)島サミットの経緯、我が国の対太平洋島嶼国外交

2)太平洋島嶼国に対する支援実施状況

(5)意見交換

(6)閉会

5.議事概要:

(1)会合趣旨の説明

 岩間外務省大洋州課長から、明年5月に開催する第5回日・PIF首脳会議(通称太平洋・島サミット、またはPALM:Pacific Islands Leaders’Meeting)に向けた準備として、我が国の太平洋島嶼国に対する支援の在り方を、市民社会を含むオール・ジャパンの体制で検討したいとの考えから、本日の会合を開催した旨発言。NGOと政府との効率的な連携の方法や、いかにして国内で島サミットへの関心を高めていったらよいか等の点につき、NGOの皆様からの知恵をお借りしたいと思っているので、活発な意見交換をお願いしたい旨発言。

(2)参加団体による団体概要・活動紹介(順不同)

(イ)フレンズオブミクロネシア(FOM)

 ポナペにポナペ農工高校(PATS)という職業訓練校を1965年に創立し、太平洋の平和とミクロネシア独立に向けての人材育成のため活動していたコスティガン神父の没後、交流のあった仲間たちが、PATSを支援するべく1988年に当会を設立。その後、PATSは残念ながら閉鎖されたが、当会は現在では神戸女子大学との協力の下、ミクロネシアの若者の健康管理支援を行っている。NGOは全国に多数存在するが、当会としては神戸地域のNGOとのネットワーク化を図り、支援活動を続けていきたい。

(ロ)大阪南太平洋協会

 1981年に設立。大阪府認可の社団法人。現在はPNG東セピック州のソアムを拠点に太陽光や風力を利用した発電装置の設置支援を中心に活動している。LEDを活用し、250人の村の50戸に電力を供給している。また、ジャングルの木を用いた建築技術の指導及び看護師派遣による地元の女性への軽医療指導なども行っている。

 産業振興という観点からは、マーシャルのマジュロ市と奈良県河合町との姉妹都市関係に基づき、真珠の養殖の専門家を現地に送り込むことが実現できればと考えている。マーシャルではまた、電力を活用した海水淡水化装置の導入を提案しており、先方も関心を示している。

 当協会はまた、人間性をはぐくむためには自然とのふれあい、人と人とのふれあいが重要との観点から、人物交流も手がけており、日本人の若者を電気を利用していない島に滞在させたり、また現地から若者を日本に招聘する際には、有機的な人のつながりのある田舎に連れて行くようにしており、心の通った交流が行われるよう心がけている。

(ハ)太平洋学会

 1978年に設立。太平洋地域の学術・文化交流の促進に寄与することが設立目的。設立当初から学者だけではなく、サラリーマンから学生まで幅広い層の会員が在籍しており、電気通信や海洋資源(波力発電)等をテーマにしたいくつかの部会がある。1980年代後半から90年代半ばにかけては、建設余剰土を盛り土のため環礁国に運ぶことを検討したが、船積み前・受容国での土の集積場所の問題で検討を中止した経緯がある。

 4年に1度、太平洋芸術祭というものが開催されており、今年で10回目である。豪州や米国などからは毎回それぞれ700名前後の来訪者があるが、毎回日本からは30人程度が来訪するのみ(うち約半分は当学会関係者)。このことからも、日本人の太平洋地域への関心の低さが窺える。その関心の低さの背景には、太平洋地域を相手にしていてもあまり儲けにならないという認識があろう。島サミット以前に、この地域への日本人の関心・認知度を高めることが重要。

(ニ)APSD

 2000年を前後して勃発したソロモン諸島での民族紛争の復興支援を目的に、2001年に元JOVC有志により創設された。当初は治安改善等から活動を開始し、治安の回復に伴い紛争の元凶とも言える都市部への開発集中や貧困放置など近年特に顕著となった諸問題に取り組んでいる。国民の約80パーセントに及ぶ人々が時給自足の生活を営むことから、環境に配慮した循環型農業を柱とした農業訓練校を運営している。人材育成は国の自立のために重要であるが、殖産興業の視点を取り込んだ開発手法の実践はソロモンだけでは難しいこともあり、今後は隣国のパートナーとしてソロモンの人材を産業研修生として日本に招聘するなど、具体的な人的交流を活発化させ、双方のリソースや知見を活用・提供して国造りに貢献して行きたいと考えている。

(ホ)ジョイセフ(JOICFP、家族計画国際協力財団)

 1968年に設立され、今年で40周年を迎える。主な活動領域は妊産婦保健、リプロダクティブ・ヘルス(RH)。主な活動地域としてはアジア、アフリカ、中南米があるが、太平洋島嶼国での活動実績もある。当団体はAPA(アジア・パシフィック・アライアンス)に所属しており、現在議長を務めている。APAは7カ国(日、韓、タイ、米、加、豪、NZ)のRHや環境、開発、人口問題分野で活動する国際機関、ドナー機関とNGOから成るネットワークであり、島サミットの関係ではこうしたネットワークを通じた何らかの協力を行うことも可能。また、当団体は国際家族計画連盟(IPPF)と事業協力関係にあり、その東京連絡事務所を務めている。IPPFオセアニア地域事務所はクアラルンプールにあるが、サモアにも事務所があり、そこから太平洋島嶼地域への技術協力が可能である。また当団体は、同地域からのJICA研修生の受け入れを行っている。

(3)外務省プレゼンテーション

(イ)島サミットの経緯、我が国の対太平洋島嶼国外交

 岩間大洋州課長より我が国の太平洋島嶼国政策の概要、太平洋・島サミットの経緯、太平洋島嶼国を取り巻く状況等について説明。また、我が国が今後この地域に対してどのような協力を行っていくべきかについては、この地域の我が国にとっての外交上の重要性や「パシフィック・プラン」に代表される島嶼国側のニーズ等を踏まえた上で、気候変動や持続可能な開発といった分野、そして分野横断的な人と人の交流・人造りといった面での協力を指摘。

(ロ)太平洋島嶼国に対する支援実施状況

 日田国別開発協力第一課企画官より、「沖縄パートナーシップ」の5つの柱である経済成長、持続可能な開発、良い統治、安全確保、人と人の交流につき、これまでの実績や課題を説明。経済成長については、太平洋諸島センターを通じた貿易投資促進や、インフラ整備支援等の実績を紹介。持続可能な開発については、廃棄物処理対策分野の広域協力、地球温暖化問題への取り組み、WHOやUNICEFと協力して行っている大洋州予防接種事業強化プロジェクト等感染症対策分野の広域協力、南太平洋大学(USP)に対する遠隔教育支援等につき説明。良い統治については、行政能力強化や制度整備支援といった分野における実績につき説明。安全確保については、気象予報能力の向上等防災分野の協力の実績を主に説明。人と人との交流については、「沖縄パートナーシップ」で打ち出した1,000名の交流の実績が達成される見込みであることを説明し、今後は、短期間になりがちな招聘プログラムにおける招聘期間の中・長期化、文化の相互理解促進等が課題であることを説明。

(4)意見交換

(イ)日本の支援の在り方についての意見

  • 被援助国の実情・希望に合った支援を行うことが重要。海底光ケーブルの設置等、長年に渡り希望しているが援助が実現していない例があると聞いている。また、効率的な援助のためには、他の国際機関等、ドナー間で被援助国の実情・希望についての理解を一致させておくことも必要である。
  • 現在、太平洋地域では、太平洋共同体、太平洋諸島フォーラム、南太平洋応用地球科学委員会(SOPAC)、南太平洋地域環境計画(SPREP)、南太平洋大学(USP)等国際機関のプログラムやプロジェクトが多岐に渡り、一部で重複が見られることから、その効率化を図るため、各機関同士で機関そのもの、あるいは個々のプログラムの吸収・統合が話し合われている。このような動きに対応した支援を検討すべきである。
  • 総花的な支援よりも、分野を絞って援助を行うべきと考える。事後の評価を効率的に行うという観点からも、そちらの方が望ましいのではないか。
  • ドナー間での連携が重要。例えばNGOがオペレーションのために日本から人を送ろうと思っても、費用が高くて難しいので、他国のNGOとの連合体を活用し、活動地域に近いところから人を送るということをやっている。太平洋島嶼国であれば、豪州・NZという大きなドナーが近くにいることから、それらの国と連携することで、効率的な援助ができるのではないか。
  • 支援の方針が見えにくい。またMDGsなど国際的な流れからの乖離が大きい。たとえば、PNGではHIV/エイズの感染率が上がっているが、これはRHとの統合なくしては解決できない。国際的な支援の潮流に方針をあわせることが必要ではないか。
  • 援助の対象を柔軟にすべきと感じる点がある。例えば、経済的な事情で一般の高校に進学できない優秀な若者が、専門学校で一定の知識・技能を習得した後、さらに高度な知識を身につけようとJICAの研修に応募しても、学歴で対象外とされてしまうケースがある。学歴が高い人や行政職の人ばかりでなく、コミュニティの中で今後リーダーとなっていく人も援助の対象としていただきたい。

(ロ)島サミットを盛り上げていく方途についての意見

  • ホームページを利用した速やかな情報の公開が重要。TICADやG8サミットの実施プロセスでは、会合の結果や成果文書等が非常に早いタイミングでホームページにアップロードされており、NGOの間でも評価が高かった。ぜひ今回もそういった取組を行ってほしい。市民社会を入れたサミットが重要。
  • 2002年のワールドカップの時は、各国のチームが国内の様々な地域を訪問したことから、各地域での交流も盛んに行われ、全国的な盛り上がりがあった。島サミットにおいても、首脳会議会場である北海道のみならず、それ以外の地域も訪れる機会を作ることができれば、広い範囲での盛り上がりが期待できる。

(ハ)官民の連携についての意見

  • せっかくNGOが色々な活動をしても、その報告をする場がなかなか持てない。ぜひ、NGOの活動報告の機会を作っていただきたい。活動の励みにもなるし、更なるネットワークの広がりも期待できる。
  • ODAを現地でうまく活用していくにはNGOの力が必要であると自負している。今回のような意見交換の機会をもつことは官民両方にとって有益と思う。今後とも官民の連携を進めていただきたい。

(ニ)外務省への照会事項

  • 沖縄パートナーシップに基づくこれまでの日本の援助について、評価はどのように行っているのか。

(5)上記意見・質問を受けての外務省からのコメント

  • 日本の支援策は、PIFが定めた地域戦略であるパシフィック・プランに沿って実施している。また、ODAは先方政府からの要請に基づいて実施している。
  • ドナー間の援助協調について、島サミットまでの間に事務レベルでの会合を開き、そうした場を活用して援助協調につき議論を行うことを検討している。
  • NGOの活動報告の場について、島サミットの機会等何らかの形でアレンジできないか、今後検討していきたい。いずれにせよ、各地域を巻きこんでこの島サミットを盛り上げる方途について、プレイベント等も含め、何ができるか今後検討していきたい。
  • ODAの評価体制として、現地には大使館及びJICAの現地事務所を主要メンバーにしたODAタスクフォース、外務本省にはODA評価有識者会議を置き、評価を行っている。

(6)閉会

 岩間大洋州課長より、本日頂いたご指摘やご意見を踏まえ、次回島サミットで取り上げるべき政策をまとめていきたい、今後とも随時ご意見等頂ければ幸いである旨、また明年初めの然るべき段階で再びこのような場を設けたい旨発言し、閉会。

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