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「太平洋島嶼国支援検討委員会」(第5回太平洋・島サミット)第5回会合・議事要旨
1.日時:
平成21年2月18日(水曜日)10時00分-12時00分
2.場所:
三田共用会議所第一特別会議室
3.出席者
委員(小林座長、草野委員、千野委員、鴇田委員、野田委員)
外務省(小原アジア大洋州局参事官、山田国際協力局参事官他)
オブザーバー(関係省庁・団体)
4.議事次第
(1)座長による開会
(2)自由討議
議題:次回島サミットで取り上げるべき事項の絞込みについて
(座長提言案に関する討議)
(3)閉会
5.議事概要
(1)座長による開会-小林座長の冒頭発言
- この有識者会議もあと2回でいよいよ提言取り纏めの段階に入った。本日は島サミットのテーマを絞り込むということで、これまでの4回の意見を提言骨子案という形にまとめてみた。本日はこの骨子案に基づき議論を行いたい。
(2)自由討議
(イ)提言骨子案の書きぶりについての意見
- 提言の目的は、政府への提出とともに、国内の関心の向上にもあるので、そうした視点で作成するのが適当。特に脆弱国という表記には工夫が必要であり、無用な誤解を避けるためにも定義をきちんとすべきである。
- 提言の分量にも意を用いる必要がある。読む側の視点に立てば、簡潔なものが理想的だが、細かい点でも重要と思われる点を盛り込むのであれば、付属書の形式も一案。
- フォローアップの観点からも、行政側の誰が担当者になっても分かるものであるべき。同時に、多くの人に読んでもらうときに分かりやすいよう簡潔性も求められるので、工夫しつつ纏めて頂きたい。
(ロ)提言骨子案の内容についての意見
- ODA以外の協力の必要性の項目については、官民連携の強化という昨今の潮流等を踏まえ、他の具体例とは書き分けた方が適当。また、航空網の整備は、この地域におけるアクセスの不便さが他の途上国とはケタ違いである点からも、別建てで強調すべき。
- 航空網の整備については、実質的に政府主導で行うことは不可能なので、安請け合いすべきではない。政府がやれるとすれば、民間航空会社が路線の設置に踏み切れるような環境を、例えば島嶼国の観光促進への支援等で整えることだと考える。
- 脆弱国を特に対象とするということからすると、一般論としての官民連携をそのままあてはめるには無理があり、アクターとしてはNGOが中心となると思われる。
- 脆弱国とあるが、脆弱性とすべきでは。相当の規模の国であっても脆弱な人々はいる。そうすることで、この地域全体が協力の対象となる。また、地域共通の環境や経済における脆弱性として、気候変動や災害さらに、遠隔性・拡散性、・狭隘性等、世界の他の地域には見られない特性を有しているので、支援の重点項目を絞る際には、それらの特性に配慮していることを提言に盛り込むべき。
- JOCVやNGOなど草の根の活動は「顔の見える支援」として高い評価を受けているので、草の根の支援強化を強調し、民間連携とは別の項目として建てることが望ましい。
- 島サミットプロセスでは、打ち出した政策の実施状況のレビューが制度化されていないとの認識に立ち、島サミットの広報の項目を「広報及び透明性」とし、情報開示等による点検や改善に務めていく必要がある。
- 前回会合で、島サミットの5年毎開催を提案したが、支援策の中間レビュー・評価を制度化し、政策サイクルとして回すことが必要というのがその趣旨だった。そうしたサイクルが確立されるのであれば、開催頻度については3年でも5年でもどちらでも良いと思う。また、そうしたサイクルの確立自体を1つの項目として建てるのも一案。
- 環境難民という言葉が定着しつつあることを踏まえ、次回サミットでは触れるべきではないか。
- この地域には、経済的自立を求める労働移民は存在するが、環境難民は存在しない。
- 環境・気候変動に、防災を入れるとプロジェクトとしてイメージが湧きやすい。早期警戒システムやコミュニティ防災などは分かりやすいプロジェクト。
- 人間の安全保障には「食と職」の確保が重要で、とくに食料はPIFの最優先事項となっている。食料を輸入に頼っている国は、食料の価格変動による影響を被る。そうしたリスクへの対処への支援は重要。ローカルには地方開発を通じた稲作等自給自足経済への支援はそうしたリスクへのセーフティネットとなるので重要。また、地域全体としてはグローバルな食糧価格の変動のリスクを軽減するための共同購入やファンドの創設の検討も重要。
(3)太平洋島嶼地域に対する国家ヴィジョン
(イ)小原外務省アジア大洋州局参事官より説明
提言案では、次回島サミットの大きな柱として環境・気候変動があがっているが、この点については日本国内・島嶼国を含め幅広く認識を共有できるものと思う。また、環境・気候変動問題の具体的な影響の現れ方は国によって異なるもの、何らかの形で影響を受けている点ではこの地域共通の課題である。提言案にある「太平洋共同体のイコール・パートナー」という考え方を環境・気候変動と太平洋共同体というテーマと組み合わせて考えていく、すなわち「太平洋環境共同体」というビジョンを打ち出していくことが1つのアプローチとして考えられる。そうした共同体意識を共有し、環境・気候変動について世界に強いメッセージを発出し、人類共通の財産である美しい海の保全のための努力をアピールしていくという方向で、島サミットに向け議論を重ねて行きたい。「人造り」や「人間の安全保障」についても柱に据えるべく検討していきたい。また、日本とPIFの関係についても、域外国という今の距離感でいいのかといった点も含め関係強化のために何をすべきか多面的に検討して行きたい。
そうした問題意識を持ってこの地域の国々やPIF事務局との意思疎通を緊密に行うことで島嶼国側の意見も聴取し、そうした意見にも配慮しつつ、次回島サミットの青写真をとりまとめて行きたい。
(ロ)山田外務省国際協力局参事官より説明
環境・気候変動及び人造りが支援の重点分野として提案されている点については、同感である。防災については、環境・気候変動の一環と整理してきた。また、実際の支援の現場からはインフラや水産分野での支援に対するニーズがよく聞こえてくる。あれもこれもということになると総花的になってしまうので、ある程度の柱は立てる必要がある。提言案の冒頭部分にパシフィック・プランに対する包括的な対応は引き続き継続しつつと書いてあるので、全体としては、小さな山が2つぐらいと、大きく聳え立つ山が2つ、といった印象。従って、柱の立て方はこの提言案のとおりで良いと思うが、島嶼国側からは場合によってはインフラも忘れないで、という声が出てくる可能性も高い点を念頭に置く必要がある。
また、モニタリング、フォローアップのためのメカニズムの構築は大切。TICADではそうしたしっかりしたメカニズムがすでに確立されている。島サミットについても、(TICADと同様のメカニズムは負担が大きすぎるが)身の丈にあったフォローアップメカニズムを恒常化すべきである。
(4)上記(3)を受けた自由討議
- インフラについては高い評価を受けているしニーズもある。とはいえ、何でもやるのではなく、あくまで環境や人間の安全保障という柱を軸に焦点を当てて「選択と集中」を行ったうえで実施するのがよい。緒方JICA理事長は、人間の安全保障とインフラに関連し、「人間の安全保障に配慮した橋の架け方もある」と発言したことがある。小規模な給水施設や、自然災害が発生した際に小さな島の住民がより大きな島に避難できるために橋をかける場合などはその一例。
- 昨今の道路特定財源の一般財源化の話にならないように注意しなければならない。人間の安全保障でほとんどのインフラが説明できてしまい、結局何も変わっていない、という状況は避けるべき。原資は減る一方なので、この島サミットでは援助の在り方が変わった、という点をきちんとアピールすべきである。看板の掛け替えだけでは内外の印象を悪くするだけである。
- 日本の援助が変わっていくためには、JICA等関係者の意識変革も必要。現場で現地住民・関係者と協働する中で情も移り、なるべく要望を聞いてあげたい、いい顔をしたいという感情が出てくるのは人間として当然。イコール・パートナーの観点からも、島側そして日本側の関係者が意識を改善していき、そうした変革が実際のプロジェクト形成にも反映されて行くことが望ましい。
- 外務省から説明のあった環境に関するアプローチについては、良いアイデア。他方、いきなり憲章のようなものを作るのではなく、きっちりとその内実を議論し、実績を重ね、結果として共同体のような枠組みができる、という方が理想的。また、今後議論を重ねていく中で、日本主導の第二のPIFのような話が出てきてもいいと思う。
- 外務省が検討しているアプローチに賛成。単なる協議の場だけではなく、より実効性のあるものとするために、例えばその中で「日本太平洋環境基金」(仮)といった、環境・気候変動関連の特別基金を作るのはどうか。セクターワイドアプローチ(SWAp)としてこの地域で環境・気候変動分野に特化した基金はないので、日本のプレゼンスを示すことができ、外交的メッセージとしての意義も大きい。既存のファンドへの支援では日本のプレゼンスを示すのは困難だろう。基金への支援は比較的速やかに行える点でも良い。
- ASEANには我が国が設立した基金があり、パートナーシップを強化するプロジェクトを実施しており、関係強化のみならずASEAN側のオーナーシップの向上にもつながっているとして評価も高い。
- 日本の支援はプロジェクト型であるのに対し、豪州などはセクター支援(SWAp)にも積極的。ただ、支援にさいして、非常に高圧的に口も出すということで、必ずしも島嶼国側に好意的に受け入れられているとは言えないといったことがある。環境・気候変動関連基金を作る場合には、豪州型とは違った目的・やり方となるよう留意する必要がある。
- 意を用いなければ行けないのは、むしろ口の出し方ではないだろうか。環境・気候変動に関する基金を作ることは日本が主導権を握るチャンスと捉えるべき。
- この地域での財政支援といった場合、注意しなければならないのは、豪州等の財政支援は、旧宗主国として、独立を支援するといった色彩の財政支援であり、そうした財政支援と、本日議論している環境・気候変動関連基金のようなファンドを同一視してはいけない。
- インフラを作ることばかりに目がいき、そのフォローアップにも意を払わないと、作りっ放しという状況が発生し、有効活用されないケースが発生する。現にそうした事例が散見される。また、インフラ(ハード)を作ると同時に、関連ソフトの支援を組み合わせる等の工夫も必要。
(5)閉会
色々な角度からの良い意見を頂いた。項目の組み換えや意見も含め、提言案への加筆・修正を文書の形で出して頂くとありがたい。そうして頂いたものを踏まえ、提言案を改訂し、最終会合に先立ち各位にお見せする予定。最終会合では改訂版提言案につき議論を行うこととしたい。(各位了承)