
アジア | 北米 | 中南米 | 欧州(NIS諸国を含む) | 大洋州 | 中東 | アフリカ
「太平洋島嶼国支援検討委員会」(第5回太平洋・島サミット)第4回会合・議事要旨
1.日時:
平成21年2月10日(火曜日)15時10分~17時15分
2.場所:
三田共用会議所第一特別会議室
3.出席者
委員(小林座長、草野委員、千野委員、鴇田委員、中野委員、野田委員)
外務省(小原アジア大洋州局参事官、山田国際協力局参事官他)
オブザーバー(関係省庁・団体)
4.議事次第
(1)座長による開会
(2)自由討議:「我が国と太平洋島嶼国との今後の長期的関係・ヴィジョンについて」
(3)自由討議:「太平洋・島サミットの今後のあり方について」
(4)自由討議:次回島サミットの標語について
(5)座長による閉会
5.議事概要
(1)座長による開会
今回から後半に入るが、各委員のご見識を発揮していただき、島サミットをどんなものにしていくのかという大きな論点からの議論を進めてご意見を頂きたい。今日の論点の第1点は、島サミットを通じて、我が国は太平洋島嶼諸国とどのような関係を構築していくべきか、という大きな国家ビジョンについてである。過去の島サミットを通じて「我が国は太平洋島嶼国と仲良くしていこう」ということは言ってきたが、それを具体的にどういうふうにしていくかという国家ヴィジョンを作っていく必要があるのではないか。2点目は島サミットの開催地をどのように決めるかという問題。一定の地域に固定化するのがいいのか、それはやはり島サミットのあり方に関連する問題であり、開催地には意味付けが必要。3点目は島サミットを従来型の3年毎に開催するという前提で進めると、中間年のあり方をどのように工夫して次回サミットに結びつけていくのか。この3点はそれぞれ相互連関性を有した問題。
(2)我が国と太平洋島嶼国との今後の長期的関係・ヴィジョンについて
- 中国や台湾と違い、日本はサミットに豪州やNZを入れているので、両国と一緒に島嶼国を抑え込んでグッドガバナンスをやろうとしていると捉えられている傾向がある。豪州やNZとの関係をどうするのか考える必要があるのではないか。
- 過去のサミットはドナー会合的になっている感じが否めない。国際協力は重要な柱であるが、それだけでは不十分。日本がこの地域に関わる大きな理由の1つとして、漁業資源があり、安定的な入漁の確保などは非ODAの話。また将来的には移民なども議論の対象になるかもしれないし、貿易・投資の促進も重要。米国はトラストファンドを設置したり、またこの地域の航空路線を戦略的に整備している。ODAを軸にしつつも、全体的な関わり方を考えるべき。
- 日本のODAにはヴィジョンがあると思う。就中、人間の安全保障は、社会的弱者の救済に焦点を当てたものであり、我が国憲法前文の趣旨を汲んだものとなっており、日本のODAの顔である。また、自給経済はセーフティネットとして重要なので、それをどう支援していくかという視点も重要。
- 次回サミットでは、金融危機に触れざるをえないのではないか。援助国側の金融危機は回りまわって受け手の島嶼国にも影響を及ぼしうる。援助については、日本が単独でやるという線はないだろう。豪州、NZを含めた多国間協調の中でいかに日本の目指す国際協力を実現していくかという視点を持つべき。
- 島サミットの日本国内での認知度・関心は、メディアも含め、他のサミットに比べて低い。日本も同じ島嶼国であるとの認識を踏まえて島サミットを捉え直し、国内世論の醸成に努めていくべき。
- 「島サミットには全くヴィジョンがない」というような言われ方をしているが、4回実施した中で、それなりの青写真があったのではと思う。長期的な展望は大切。ビジョンや戦略に基づかない、単発的な箱物づくりや物資供与は無駄遣いである。オイスカのエコテックセンター(PNG)は、持続可能な生産技術という長期的視点に立った研修を行っており、高く評価されている。
- 日本は、ODAを含め平和国家としての貢献等、顔が見える協力を行ってきているが、ODA自身がある意味で日本の理念を体現した顔であり、ソフトパワーといえる。そういう意味で、日本がこれまでODA立国として開発の分野で取り組んできた基本的考え方を変える必要はない。例えば、TICAD IVでは、「成長の加速化」「人間の安全保障の確立」「環境・気候変動問題」を柱に据えたが、太平洋島嶼地域の状況を考えれば、このうち環境・気候変動は1つの柱となろう。また、内外の関心を高めるという観点から、TICAD IVの「元気なアフリカ」のような標語を早期に選定してPRに努めていきたいと考えている。
- TICAD IVは参考にはなるが、太平洋島嶼地域は予算が縮小している点で、アフリカ地域とは異なる。かかる状況の中、「小さいけれどきらりと光る」イニシアティブを出す必要がある。環境・気候変動は、そうしたイニシアティブを考えていく中での中心的なテーマである。
- この地域へのビジョンを考える上でのキーワードは「自立」。ドナー会合にならないように、太平洋島嶼国の「自立」のために、島嶼国側としてはどういうことをやり、日本はどういうことをやる、という考え方が重要。また、そのための産業として「観光」も重要。我が国国民にあまり知られていない(無形文化財といった)観光資源・魅力を発掘することは観光促進につながるとともに、島嶼国の民族としての誇りを喚起することにつながる。また、ラグビー等スポーツの交流も面白い。
- 太平洋島嶼国の経済自立を議論する際、右を経済成長と同視するのは危険。太平洋島嶼諸国は発展の度合いや国情が違う国々の集まりであることに配慮すべき。
- 国造りは「人造り」。効果的な人造りのためには、学校の教室で教えるだけでなく、同じ釜の飯を食べ、全人格的に(島嶼国の人々と)付き合うことが大切。相手のことを思って「叱る」ことが大切な時もある。
- 島嶼国側の島サミットへの期待は、簡単に言えば「どれだけ自分たちの国に対する援助がもらえるか」ということと、豪州とNZの干渉から逃れたいという側面があるように思われる。この地域を援助競争の場にすべきではなく、援助協調の場にすべき。中国とは敵対するのではなく協調してもいいのではないか。また、昨今の日豪関係の進展に鑑み、豪州とはやはり良好な関係を保つべきで、その意味でもこの地域への協力において豪州とは協調すべき。また日本外交全体にとっての対太平洋島嶼地域外交の重要度は残念ながら相対的に低く、かつODAの財源も限られているので、「小さくてもきらりと光る」ような協力の選択と集中が重要。さらに、脆弱国家への支援に焦点を当てることは、我が国国民の理解を得やすいだろう。重点分野を環境・気候変動問題と「人造り」に絞ることで、島嶼国に対してよりクリアなメッセージが伝わるのではないか。
(3)太平洋・島サミットの今後のあり方について
- 東京では国際会議が頻繁に行われていることから、地方で開催することで地方プログラムの実施等を通じた相当の広報効果が得られると思い、島サミット当初から自分は地方開催を提案してきた。他方、開催地を開催の半年程度前に決めるのは、当該地方における予算手続きの観点からも、遅すぎる。また、開催地の選定に際しては、当該地方で開催することに何らかの意味づけが必要であり、開催経費や警備の問題のみに縛られるべきではないし、毎回異なる場所で開催するよりも、たとえば九州・沖縄地区での開催に絞る等、一定の縛りをかけることで、自治体側の予見性を高めることができるのではないか。また、中間年における関連プログラムを検討する必要もあろう。また、開催地選定に際しては、16カ国の首脳レベルを受け入れるにはそれなりの施設がなければならないという現実的な問題もある。
- 地方開催に賛成。ODAは地方の意見も汲み取って実施すべき。PRという点でも、地方紙のシェアは地方では60%から70%となっており、広報効果もある。中間年には、国民にも分かりやすい「観光」等の分野で付加価値を付けて、何らかの交流につなげるとかできるのではないか。またこの地域は日本と歴史的な繋がりが深い地域なので、中間年にはそうした歴史的蓄積を整理するのもいいのではないか。
- 地方開催に賛成。ある地域を選択し、その地域の観光・農林・水産資源を1つのパッケージにして、会議だけでなく、視察などをプログラムに取り入れるのもいいと思う。中間年にはPDCAサイクルを意識して、支援・協力を進める必要があるのではないかと思う。
- 地方開催に賛成。「島」サミットということもあり、日本の島での開催もあり得るのではなかろうか。中間年は、サミットのフォローアップの一環として、たとえば内閣府が実施している「青年の船」の太平洋地域版の実施なども一案。また、立命館アジア太平洋大学など、この地域に関心がある大学が中心となって、学術的な観点からもこの地域への関心を高めて行くということがあってもいい。
- 開催時期は、各国の開発計画がおおよそ5年計画になっているので、右に合わせて5年に1度の開催にするのも一案。また、日本も太平洋島嶼国に対する国別援助計画を策定した方が良いと考えており、その場合、3年というタームでは若干短いと考えられるので、その意味でも5年の方がいい。中間年の3年目にハイレベルの中間レビュー会合の実施を提案する。開催地については、地方開催に賛成。屋久島は世界自然遺産に登録されていることもあり、環境をテーマにしたサミットの開催地として適当ではないか。奥尻島では防災がテーマとなろう。広報効果の観点からは、例えば10月4日を「島嶼国の日」と定め、その日にすでに述べたハイレベルの中間レビュー会合や関連イベントを実施してはどうか。また、愛知万博の例にならい、一市町村1国運動を島サミットで実施するのも一案。NGOフォーラムを島サミットに関連づけて実施するのも、市民側の意識向上につながり、広報効果が期待できる。人造りの観点からは、たとえば「日・太平洋リーダーシップファンド」を設置し、太平洋に関心のある大学が例えば「Japan Pacific Center」を立ち上げてそこを同ファンドの受け皿とし、太平洋島嶼地域との研究拠点、さらにはコンソーシアムへと発展させて行くのも一案。
- 5年に1度の開催という提案については、そのことだけが政府に採用されるのは問題がある。5年毎開催を検討する場合には、3年目のレビューの実施等をパッケージとして考えなくてはならない。開催地の選定については、政府として困難かもしれないが、たとえばオリンピックのように、次回開催地を前広に発表することが広報効果の観点からも、開催自治体等の関連行事準備の観点からも望ましい。
- 開催地については、島サミットは九州・沖縄地区、TICADは別の地区、という風に、他の大規模国際会議との関係を総合的に勘案して棲み分けを行うという視点も重要。
- 日本国内における広報の観点からは、開催地を九州・沖縄に限定というのはいかがなものか。より多くの国民の関心を惹起するためには、色々な場所で開催するのが適当と考える。
- 次回サミットの広報については、事前広報番組やパンフレットの製作、親善大使の任命、写真展の開催等を検討しており、メッセージを固めて速やかに国民やメディアに働きかけて行きたい。
(4)次回島サミットの標語について
- 「ふるさとづくり」という感覚を踏まえて標語を考えていくのが良いのではないか。ODA関係者の間においてもこの地域に対する関心・認知度が低いのが現状なので、早期に標語を決定し、広報に努めるべき。
- 「エコで豊かな同じ島国」という標語はどうか。エコというのは、次回島サミットの主要議題として気候変動が取り上げられるとの想定によるもの。豊かなという言葉には、太平洋という海が豊かであり、その海をこの地域の国々と日本が共有しているという意味合いが含まれる。
- 「I (We) love islands」という標語、それに「私たちの青い海を守ろう」という趣旨の副題を提案したい。ステッカー、ポスター、ワッペンのような広報グッズを作成し、それらにこの標語を印字するのはどうか。
- 開催地、場所については次回サミットではすでに決まっているので、本日各委員から出たアイデアについては、第6回島サミットの開催の際に活用すべく、第5回サミット直後から検討して頂きたい。
- ビジョンや標語等、有益なご意見を頂いた。本日の議論を踏まえ、ビジョンや標語を早期に選定し、広報活動を含め準備をしっかりと進めて行きたい。ビジョンとしては、(1)環境・気候変動、(2)教育を含む人造り、保健、水供給などの人間の安全保障を2本柱として、次回の有識者会合でこの点につき更に議論して頂きたい。標語は、「We Love Islands」(「エコで豊かな太平洋」)が1つの候補として考えられるのではないかと思う。
(5)座長による閉会
- 次回会合では、これまでの議論を踏まえ、次の島サミットで取り上げるのが望ましいと考えられるテーマの絞り込みを行い、提言の取り纏めにかかりたい。また、最終会合には、次回島サミットで(我が国総理と)共同議長を務めることになる予定のタランギ・PIF議長(ニウエ首相)が参加する予定である。最終会合では次回会合でまとめる提言の最終調整ができればと考えている。