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平成21年1月13日(火曜日)9時30分~11時40分
三田共用会議所第一特別会議室
委員(小林座長、草野委員、千野委員、鴇田委員、中野委員、野田委員)
外務省(山田国際協力局参事官、岩間アジア大洋州局大洋州課長他)
オブザーバー(関係省庁・団体)
(1)開会
(2)SPREP事務局長 アステリオ・タケシ氏からの説明
(3)外務省からの説明
(4)自由討論
(5)次回会合までの段取り
(6)閉会
(1)小林座長の冒頭発言
会合も3回目となったので、提言に向けての方向性を定めていきたい。今回はSPREP事務局長のアステリオ・タケシ氏より情報提供をいただき、そのうえで自由討論を行う。
(2)SPREP事務局長 アステリオ・タケシ氏からの説明
(イ)概要(太平洋における気候変動の概要と環境問題に関する取り組みについて)
太平洋島嶼国は経済開発上の問題として狭隘・隔絶・極小性があり、非常に脆弱である。近年サイクロンによる被害も増大し、海岸浸食、家屋破壊、生物多様性の崩壊なども深刻な問題となっている。また地球温暖化により珊瑚礁や漁業への影響も大きい。気候変動は環境汚染とともに太平洋に悪影響を及ぼし持続可能性にも関連するが、島嶼国が直接コントロールできるものではない。
そのため島嶼諸国の指導者は、1990年以降気候変動に懸念を示してきている。2005年にはPIFACC(気候変動に関する対策の枠組み)が採択され、太平洋気候変動ラウンドテーブルを設け、SPREPがドナーや関係組織と調整してきている。2008年にニウエで開催したPIF総会でも気候変動を取り上げ、京都議定書以降のCO2の排出削減に重点を置いた。世界の全ての国が二酸化炭素排出量を削減すべきだと思うので、太平洋地域でも2015年までに33%の排出削減を目標として立てた。
また、「太平洋地域における気候変動に対する適応」(PACC)として「地球環境ファシリティ」(GEF)より1300万ドルの資金提供を受け、独自プログラムをもつキリバスを除いた全ての太平洋島嶼諸国が参加した取り組みをしている。このPACCでは食糧生産と安全、水資源、沿岸保全管理という最も脆弱な問題をテーマとしている。地域に焦点を置くことが大変重要で、コミュニティエンパワメントを通した取り組みをしている。
SPC(太平洋共同体)、SOPAC(太平洋地球科学委員会)、そしてUSP(南太平洋大学)なども気候変動に取り組んでいる。持続可能性には、経済、社会、そして環境の3分野が重要だと改めて認識した。
SPREPの運用資金はほとんどGEFだが、オーストラリア、ニュージーランドも各100万ドルずつ拠出している。新たに1億ドルの資金提供がGEFより予定されているが、GEFも官僚的なところがあり、手続きなど資金入手に時間がかかるなど問題は残っている。現在交渉中のEUの基金は9600万ドルで、5年間環境や気候変動のプログラムに使える。日本によるクールアース・イニシアティブで、資金を提供してもらった太平洋島嶼国はいまのところないと認識している。
太平洋ラウンドテーブルには、オーストラリア、ニュージーランド、アメリカ、フランス、EUも参加している。一般市民の気候変動に関する認識向上を計る取り組みが期待されている。
気候変動に適応するためのPACCに加え、温暖化ガスを削減し現状を緩和するための再生可能エネルギープロジェクト(PIGGAREP)もある。環境悪化を防ぐため、国際社会の各国に支援を要請・交渉している。COPポズナン会議でも話したように、佐賀大学と海洋温度差発電(OTEC)のパイロットプロジェクトを行っていて、この成功を大変楽しみにしている。
廃棄物管理問題は、島嶼諸国にとって大問題である。今後もずっと続いていく大変難しい問題で、資金調達や法規制などの措置をとっている。2005年には太平洋地域として固形廃棄物管理戦略というものを作り実施している。まだ廃棄物管理改善をコミットしていない国もあり、全面的にうまくいっているとは言えない。
以上のことから、次回のPALMでは環境を真剣に考えて欲しい。
(ロ)日本に対する要望
(ハ)アステリオ・タケシ氏への意見・質問
(ニ)上記(ハ)の質問等に対するアステリオ・タケシ氏の答え
【コーヒーブレイク。タケシSPREP事務局長退席】
(3)外務省からの説明
山田国際協力局参事官より、太平洋地域における日本の気候変動対策支援の取り組みについて説明。気候変動対策は大きく「緩和」と「適応」の2つに分けて考えている。大洋州諸国には日本は特に適応面で積極的な支援を行っていきたい。これまでの支援例として、ツバルにおける草の根無償での海水淡水化装置の供与や、気象予報能力強化及びネットワークづくりのための第三国研修などを行っている。また無償資金協力では気象観測予報設備整備計画を行っている。感染症ではマラリア対策の強化プロジェクト、生物多様性保全として、パラオに作った国際珊瑚センターで技術協力プロジェクトを行っている。海岸保全については持続可能な国土保全支援をし、ツバルにおいて海面上昇に関する生態工学的維持という国際科学技術協力プロジェクトを採択した。緩和の面では、再生可能なエネルギーの協力として、太陽光発電や水力発電所の改善計画を実施している。
気候変動にとどまらず大洋州への援助問題に、案件の持続可能性があり、ハードを作ってもどれだけ島嶼諸国側で維持・運営していけるかが問題である。またODAの予算自体が減っているので、大洋州諸国への予算配分も課題である。これまで(特に20世紀中は)太平洋島嶼諸国側において、環境・気候変動問題の優先順位が高くなかったため、日本の支援も同様であった。しかし、この地域は気候変動に非常に脆弱であり、今後日本の支援も気候変動や廃棄物対策のような環境問題を重視すると思われる。
(4)自由討論
(5)上記に対する座長の意見と今後の討議事項
(イ)上記に対する座長の意見
環境難民という言葉は、国際場裡で部外者によってしばしば使われるが、島嶼諸国域内ではそうした存在の認識も議論もない。よって、この言葉はなるべく使わない方がよいと思う。
(ロ)今後の討議事項
最終的な提言に向けて準備を進めたいが、次回は島サミットという大きな機会を日本としてどうしていくかという観点から議論したい。そしてそれを踏まえ、人づくり、教育、環境等、第5回島サミットで取り上げるべき項目の絞込みを行いたい。本日議長としての案を皆さんにお渡しし、次回までにご検討いただき、質問等あれば対応し、今後の議論につなげていきたいと思う。(各委員ご了承)