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「太平洋島嶼国支援検討委員会」(第5回太平洋・島サミット)第2回会合・議事要旨
1.日時:
平成20年12月17日(水曜日)15時00分~17時00分
2.場所:
三田共用会議所第一特別会議室
3.出席者
委員(小林座長、草野委員、千野委員、鴇田委員、中野委員、野田委員)
外務省(小原アジア大洋州局参事官他)
オブザーバー(関係省庁・団体)
4.議事次第
(1)開会
(2)外務省からの説明(「沖縄パートナーシップ」実施状況のレビュー)
(3)自由討論
(4)次回会合の日程
(5)閉会
5.議事概要
(1)小林座長の冒頭発言
第1回会合では各委員から貴重な意見を聞かせて頂いた。また、これまでの島サミットの実績等につき外務省に対する各種照会が寄せられた。それら照会に対してはすでに前回会合で外務省から回答があったものもあるが、今回は改めてそれら照会に対する回答も含め、前回島サミットの「沖縄パートナーシップ」の実施状況・成果や今後の課題につき外務省より説明して頂きたい。その上で、各委員による自由討議を行うこととしたい。
(2)外務省からの説明
(イ)小原アジア大洋州局参事官
第4回太平洋・島サミットで発表した「沖縄パートナーシップ」の実施状況を説明。「沖縄パートナーシップ」はPIFが策定したパシフィック・プランに基づく自助努力と、これに対する日本の支援策という2本の柱からなる。支援目標額として打ち出した、「向こう3年間で総額450億円規模のグラントを中心とした支援」については、これまで相当額が積み上がっているものの、さらなる実績の積み上げが必要であり、今後一層実績を増やすべく努力しているところである。また、大洋州地域への二国間ODAが全体ODAに占める割合は、この「沖縄パートナーシップ」による支援策を踏まえて増加している。太平洋島嶼国への支援における「選択と集中」については、沖縄パートナーシップの重点分野の下、各国との間で政策協議、ラウンドテーブル等を実施し、各国のニーズに合った支援を、豪、NZ等の主要ドナーと調整しながら実施してきている。
(ロ)日田国際協力局国別開発協力第一課企画官
「沖縄パートナーシップ」の5つの柱である経済成長、持続可能な成長、良い統治、安全確保、人と人の交流につき、これまでの実績や課題を説明。経済成長については、太平洋諸島センターを通じた貿易投資促進や、インフラ整備支援等の実績を紹介。持続可能な成長については、廃棄物処理対策分野の広域協力、地球温暖化問題への取り組み、フィジーに建設された「新医薬品供給センター」の活用を通じた感染症対策分野の広域協力、水と衛生分野の協力、南太平洋大学(USP)に対する遠隔教育支援につき説明。良い統治については、行政能力強化や制度整備支援といった分野における実績につき説明。安全確保については、気象予報能力の向上等防災分野の協力の実績を主に説明。人と人との交流については、「沖縄パートナーシップ」で打ち出した1,000名の交流の実績が達成される見込みであることを説明し、今後の課題として、短期間になりがちな招聘プログラムにおける招聘期間の中・長期化等の課題を説明。
(3)各委員の自由討議
(イ)「沖縄パートナーシップ」のレビューについての意見・質問
- 内容が多岐に渡り、総花的な感じがする。成功例や問題・課題のある事例などをいくつか特出するなど、メリハリのあるレビューを示して頂ければ、マスコミも取り上げやすい。
- 評価の仕方については、やはり個々の支援の善し悪しは、第3者である有識者などより実際に支援に携わっている人たちの方がよく分かっているので、そういう人による評価が肝要。
- 外務省の説明から、ドナー間の重複がないことや、選択・集中がどのように行われているかが分かった。これまでのサミットで、支援策については出尽くした感がある。これからは、PDCAの「A」に重点を置き、これまでの支援の効果をより向上させるための「アクション」、そしてそうした意識の醸成に焦点をあてることが重要。
(ロ)次回島サミットに向けた意見
- アフリカでは貧困の克服が課題であり、安全な水の供給も足りていない状況。これに対し、太平洋島嶼地域にはそうした問題はないと思われるので、そういう意味でのODAをこの地域で実施することを国内的に説明するのは難しいと考える。したがって、気候変動や観光資源開発などの分野に絞ってODAを活用することで、より広報効果が上がるのでは。その観点から、島サミットにおいても、TICADの「元気なアフリカ」のような標語が必要。
- 先般、キリバスを訪問した際フライトを調べたところ、この地域へのアクセスが如何に容易でないかが分かった。航空会社は損してまで路線を就航させる企業意思は持ち合わせていない。広域の航空路線の拡充といった分野でも各国間の協力・協調が必要な時代では。
- 太平洋島嶼地域には発展度合いや規模の違う国が混在しており、この地域全体をマクロに評価するのは難しい。これらの国々の発展はODAだけで実現できるものではなく、何がODAでなしうるかを考える必要がある。さらに、ODAの中でも第5位のドナーである日本のODAが成果を上げられるところもあるしそうでないところもある。今後の支援を考える際、「C」(チェック=評価)と「A」(アクション)の観点から、以下a~dの4項目を提案したい。
- 全体としていえることは、この地域においてオーストラリアやニュージーランドと金額だけで競うのはあまり意味がない。本年度、日本の対太平洋島嶼国ODAを担当して実感したことだが、日本の支援が高く評価される良さは相手をよく理解し、相手の目線にたった、きめ細やかな眼にみえる確実に役に立つ支援である点であり、「選択と集中」を進める中で、今後もこういったよさを十分に展開していくべきである。具体的には次の通りである。
a. この地域の国々は多様であり、共通の課題はあるものの、こうした日本のよさを活かしていくためには、地域を全体として見る援助アプローチだけでは限界がある。そこで、太平洋島嶼国を「自立的な発展の可能な国」、「自立的発展に向けて当面支援が必要な国」、「脆弱で継続的な支援が必要な国」といった発展段階別に分類し、その段階に応じた支援アプローチをとる必要がある。
b. 日本は太平洋地域全般の援助戦略はあるが、大洋州の国々の多様性を鑑みた場合に、国別の援助戦略を地域全般の戦略と併せて持つ必要がある。国別の分析を行い、相手国にもビジブルに日本の戦略を示した上で、ニーズの高いと思われる地域やセクターに特化した支援をすることで、支援の額は少なくともそれ以上にインパクトのある支援が実施できる。また、それらを積み上げスケールアップをはかることで波及効果も高まると考える。同時に、援助にかかわる行政コストの削減にもつながる。この点はADBの取り組みが参考になる。
c. 「量より質の援助」という点では、すでに日本はいくつかのグッドプラクティスがある。一例として、ソロモンにおけるNGOとの連携による農業開発がある。この地域は、マクロ指標では現れにくい自給自足経済が占める割合が大きい地域であり、これを強化することは食糧の安全保障の意味でも重要である。もうひとつの事例としては国際機関と連携した広域案件の予防接種プロジェクト(J=PIPS)があり、投入額以上に地域全体へのインパクトが大きい。こうしたグッドプラクティスを積み重ね定量的だけでなく定性的に日本の支援の有効性を評価し、その理解や活動を広げていく必要がある。こうした「量より質の援助」というのは、太平洋にとどまらず他地域にも大いに参考になる。
d. 次回サミットにむけて世論を喚起し市民の幅広い理解と支援を得るために、太平洋地域の課題だけでなくその良さ・利点や日本との関係をPRしながら、「なぜ日本にとってこの地域が重要なのか」を訴え、それを強化する支援を考えていくことが重要である。できれば、TICADの例に倣いわかりやすい標語を設定するのが良い。一般の市民にわかりやすい例として、太平洋島嶼国は海洋国家であり広大なEEZと豊かな海洋資源を抱えていることから、日本のマグロ消費量の8割をこの地域に依存している事実があり、こうしたわかりやすい形で太平洋地域への関りを示し支援の強化を行っていくことが重要ではないか。
- 太平洋島嶼地域には、酋長を中心とした伝統的社会、土地への愛着・執着、平面だけでなく空間や資源や祖先にまで拡がる独特の世界観、伝統様式がある。そうした伝統様式を無視して近代化を押しつけるのではなく、PNGにおける稲作のようにむしろそれらを尊重した支援を実施することが、その土地に暮らす草の根の人々に真に喜ばれるものとなる。日本のODAはその意味で現地の人々に大変喜ばれてきていると考える。
- 日本の支援の実施プロセスには大変時間がかかるという声を聞くことがある。これは、民主的国家においては致し方ないことであると思うので、改善は必要だがこういう声で自信を失うことなく今後も支援を実施して頂きたい。
- あらゆる支援の基礎をなすのは人材育成。これを抜きにしてしまうと、お金だけのODAになってしまう。JOCVに並んでシニアボランティア制度があるが、これはとても良いもの。現地では年配者を尊重する風習があるのに加えて、シニアの方は日本の伝統文化・精神が身に付いておりそれを人材育成に活かすことができる。
- 人材育成・交流は、短期のものも良いが、同じ釜の飯を現地の人と分かち合う長期のものが効果が高く、特に若い世代の人たちはそれにより目覚める部分(国家という意識等)が多々あると思う。
(ハ)外務省に対する照会事項
- 個々のODA案件の評価を、特に島サミットとの関係で具体的にどのように実施しているのか。
- 日本からフィジーへの直行便が廃止される見込みであるとの説明があったが、この地域の交通インフラの不十分さは認識している。先般、PNG関係者から、日本―PNGの定期便の増便のための交渉が中々開始されず不満を抱いているとの話があった。かかる航空路線の拡充に関する政府の立場・スタンス如何。
- 研修員受け入れ、専門家派遣、ボランティア派遣実績として示して頂いた数字につき、そのブレイクダウン(国や分野別)が知りたい。途上国でよくあるのは、国の規模が小さいため、同じ人が別々の研修に参加するなど、重複が生まれる可能性が高い。研修員、専門家、ボランティアそれぞれの制度の相乗効果を高める余地があるのか考えたい。
- 太平洋島嶼地域における(内外の航空会社による)航空便の就航状況について全体像を教えて頂きたい。国や地域の発展には多くの輸送・交通ルートがあることが大切。アフリカではエミレーツがそれに一役買った経緯がある。
- 次回の島サミットに向けた、準備会合・プロセス如何。この会合の提言はどのように活用されるのか。
(ニ)上記(ハ)の照会等に対する外務省の説明
- ODAの評価については外部の有識者による評価の制度があり、これまで積極的に実施してきている。(また他の委員からも、先般ODAの国別評価に参加し、太平洋島嶼地域への支援の全体像を把握すべくフィジーとソロモンを訪問したが、同評価は次回島サミットを念頭に置いたものだった旨回答。)
- 航空路線の拡充については、政府だけでは如何ともし難い部分がある。やはり民間航空会社の判断が大きな要素。鶏と卵ではないが、観光資源の開発やその効果的な広報を通じてまず利用客の需要の増大を見込み、採算がとれるという認識が企業側に生まれないと、増便や新規路線の設置には結びつかないと考えるが、逆に増便や新規路線の設置により需要が拡大するとの議論もある。その意味では、先方政府や航空会社、旅行会社、ホテルなどと意見交換しながら、航空路線の実現に結びつけるよう議論することが重要と考える。(また、小林座長からも航空路線について数年前に研究したものがあるので、後日お送りするが、変則的な運航をしている地域なので現時点のものについては別途調査する必要がある旨回答。)
- 次回島サミットに向けたプロセスとしては、明年4月初旬または3月末に高級実務者協議が開催される。島嶼国の実務者を交えて、本有識者会合で頂く提言等を参考にしながら討議を行う予定。また、太平洋島嶼国のみならず豪州やニュージーランド、あるいは国際機関などのドナーとも情報・意見交換し、援助協調という視点も入れて準備プロセスを進めていく予定。
- 研修員受け入れ、専門家派遣、ボランティア派遣実績として示した数字の国別・分野別内訳及び最新の航空便就航状況については次回会合までに各委員に資料の形でお配りする。
- 「沖縄パートナーシップ」のレビューについては、具体的な成果と課題を2,3取り上げてメリハリをつけたコンパクトなものを次回会合までにお示しする。
(ホ)今後の討議事項(小林座長)
次回(第3回)については、南太平洋環境計画(SPREP)事務局長の訪日のタイミングを捉え、明年1月13日に気候変動をテーマに開催し、同事務局長にも議論に参加してもらいたいと考えている。第4回以降の討議事項については、前回、今回の会合での各委員の意見等を踏まえ、事務当局とも相談しつつ自分(小林座長)が一案作成し、明年早々(第3回会合前)に自分から各委員に対して諮ることとしたいが、右にて差し支えないか。(各委員ご了承)