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ターボ・ムベキ南アフリカ共和国大統領、第38回OAU首脳会議議長
アマラ・エシー・アフリカ統一機構(OAU)事務局長
OAU加盟国元首・代表団長
第38回OAU首脳会議の開催にあたり、心よりお祝い申し上げます。また、南アフリカで開催されるこの重要な会議に、日本政府の代表を御招待頂いたことに対して感謝申し上げます。
本年の首脳会議においては、アフリカのより高度な政治的・経済的統合を目指して、OAUのアフリカ連合(AU)への移行が決定されると承知しております。OAUは、1963年の創設以来、紛争予防や経済統合等の様々な分野で力強いイニシアティヴを発揮し、アフリカの発展と連帯の強化のために貢献してきました。私は、OAUがこうした積極的な役割を果たされ、かつ大きな成果を上げてこられたことに心より敬意を表します。また、AUへの移行が成功裡になされ、AUが、21世紀の輝けるアフリカを実現するための原動力となることを確信しております。
私は、アフリカ開発のための新パートナーシップ(NEPAD)を、アフリカ諸国のオーナーシップのあらわれとして高く評価しております。つい先日のG8カナナスキス・サミットにおいては、G8首脳とアフリカ諸国を代表する首脳とが、アフリカ開発を巡り有意義な意見交換を行うことができたと考えています。また、今回のサミットで採択された「アフリカ行動計画」は、こうしたアフリカ諸国のオーナーシップに対し、パートナーシップの観点から協力して行こうというG8としての対応です。
我が国は、多くの国が援助疲れと称してアフリカへの関心を薄れさせた1990年代を通じ、一貫してアフリカ開発会議(TICAD)プロセスを推進し、アフリカ諸国とアジア諸国の具体的協力を実現して参りました。私はこの度、以下の三本の柱からなる「日本のアフリカとの連帯-具体的行動-」を発表しました。第一に、国造りは人造りからとの信念に基づき、アフリカ諸国を含む低所得国に対し教育分野で今後5年間で2500億円(約20億ドル)以上の支援を実施するとともに、基礎教育分野では「成長のための基礎教育イニシアティヴ(BEGIN)」に基づき支援を強化していくこと、アフリカ米とアジア米を交配した新しいタイプの稲である「NERICA米」の開発・普及への支援を通じ、アフリカに真の「緑の革命」をもたらすことなど、「人間中心の開発」を行います。第二に、援助だけでなく、国内資金、貿易、投資など幅広い資金を動員するため、全ての後発開発途上国産品に対する無税・無枠の市場アクセスの供与という目標に向け努力する所存であり、このような観点から、明年度の関税改正に向けて無税品目の追加について具体的な措置内容を早急に検討して参ります。第三に、紛争の解決、平和への努力を後戻りさせることのないよう、アフリカ諸国の努力への支援を行います。
今後は、2003年後半に開催予定のTICAD IIIに向け、この「具体的行動」を着実に実施することで、アフリカの人々とともにアフリカ開発の実現に貢献して参ります。TICADとNEPADは、オーナーシップとパートナーシップという基本精神を同じくしています。TICAD IIIに向けて、TICADとNEPADの連携を強化していきたいと考えていますので、皆様のご支援を賜れば幸いです。
最近のアフリカのいくつかの国・地域における情勢を見ると、NEPADにおいても強調されているように、開発の基盤として政治的安定がいかに重要であるかを改めて認識させられます。こうした観点から、我が国を含む国際社会は、AU発足後のアフリカ諸国によるイニシアティヴの積極的発揮に注目しています。我が国はこれまでもアフリカにおける政治的安定の確保のため、OAU平和基金への拠出を通じて、OAUの紛争予防・解決活動を支援して参りました。今後も、アフリカの紛争解決のため、このような努力を続けていく所存です。
本年8月から9月にかけて、ヨハネスブルグにおいて開催される「持続可能な開発に関する世界首脳会議」は、本年行われる最も重要なサミットの一つです。リオ会議以降の進捗を評価するために世界の首脳が、開発に挑戦しているアフリカ大陸に集まるのは非常に意義深いことです。我が国自身の国造りの過程での環境面での苦い経験を途上国が繰り返すことなく成長を実現していくために、また会議が行動志向型となるように、議長国を積極的に応援するとともに、我が国としても全力を尽くします。
AU発足、NEPAD策定に見られるアフリカ諸国の取り組みにより、21世紀の輝けるアフリカが実現されるよう、我が国はアフリカの友人として、アフリカ諸国との対話と協力を積み重ねつつ、引き続き惜しみない努力を続けていきたいと思います。AU発足が決定される歴史的な首脳会議に、これまで10ヶ国以上のアフリカ諸国を訪問した経験を有し、アフリカへの熱い思いを抱いている杉浦正健外務副大臣を派遣したのも、我が国のこのような姿勢の一環です。
最後になりましたが、我が国とアフリカ諸国との関係が一層緊密化することを祈念するとともに、今次首脳会議の成功とAUの発展、皆様の益々の御健勝をお祈り申し上げます。
平成14年7月4日
日本国内閣総理大臣
小泉 純一郎