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日本海呼称問題(ドイツにおける調査)

平成21年2月

1.調査目的

(1)我が国は、日本海という呼称が当該海域に国際的に確立した唯一のものであることを一貫して主張しており、その主要な論拠として以下の3点を挙げている。

(イ)日本海という呼称が、現在、国際的に確立していること。

(ロ)歴史的に見ても、日本海という名称は19世紀初頭からヨーロッパの地図において定着してきたものであること。

(ハ)地理的命名法からも、日本海という名称は妥当であること。

(2)このうち、上記(ロ)の歴史的観点については、国土地理院の研究者2名がヨーロッパで発行された200枚以上の古地図を調査した結果、18世紀末頃まで、この海域には「中国海」、「東洋海」、「朝鮮海」、日本海など多様な名称が使われていたが、19世紀初頭から、ヨーロッパの地図を中心に、日本海の名称が他を圧倒して使われるようになった事実が確認されている(注1)。また、外務省が行った、大英図書館及びケンブリッジ大学所蔵古地図調査、仏国立図書館所蔵地図調査やロシアにおける調査においても同様の事実が確認されている(注2)。ヨーロッパで発行された地図において、19世紀初頭から日本海の名称が使われ始めたのは、18世紀末から19世紀初頭にかけて、フランス、英国、ロシア等の探検家が日本海周辺を探検し、日本海が日本列島によって太平洋から切り離されているという地理的形状が明らかとなったためであると考えられており、この考え方は多くの研究者によって支持されている。また、日本の主張の正当性を更に検証するため、豊富な地図資料を所蔵する米議会図書館において、1300年から1900年に発行された地図の中で日本海の呼称が定着しているかどうかについて調査を行い、同海域に何かしらの呼称を記載している地図1435枚中77.4%に当たる1110枚の地図が日本海の表記を用いていたことが確認され、ヨーロッパのみならず、米国においても前述した英国、フランスの結果と同様の事実が確認されている(注3)

注1外務省作成の「日本海」パンフレット参照

注2:外務省ホームページ「大英図書館及びケンブリッジ大学所蔵の地図に関する調査」及び「仏国立図書館所蔵地図に関する調査」及び「ロシアにおける調査」参照

注3:外務省ホームページ「米議会図書館所蔵の地図に関する調査」参照

(3)外務省は、この主張の正当性を更に検証するため、前述した米、英、仏、露の調査に引き続き、今回ドイツでの調査を行い、特に19世紀に発行された地図の中で日本海の呼称が定着しているかどうかについて改めて確認することとした。

(4)なお、この調査の背景には、韓国による「日本海の名称が支配的になったのは20世紀前半の日本の帝国主義、植民地主義の結果である」及び「19世紀の中期から末期までは東海と日本海の双方の名称が世界地図の中で普通に使われていた」との主張がある。韓国側は、その根拠として独自に行ったドイツでの古地図調査を挙げており、その調査によれば、韓国はベルリン州立図書館及び地図コレクター、ニコラス・シュトルック氏が有している59枚について調査を行ったところ、韓国に関連するものは50.8%にあたる30枚(Sea of Korea(16), East (Oriental) Sea(10), Sea of Korea, East Seaの併記(4))あり、日本に関連するもの(Sea of Japan)は、5.1%にあたる3枚のみであったということであったと主張している。

2.ベルリン州立図書館における調査

(1)調査方法

 本件調査は在ドイツ日本国大使館を通じて実施した。同大使館は、ベルリン州立図書館ウンター・デン・リンデン館とポツダム広場館の両館で調査を実施した。

(2)調査結果

  15世紀以前 16世紀 17世紀 18世紀 19世紀 20世紀以降 合計 割合(%)
日本海 0 1 5 21 454 98 579 61%
日本海、朝鮮海併記 0 0 1 3 3 0 7 1%
日本海、東洋海併記 0 0 0 2 0 0 2 0%
日本海その他併記 0 0 0 1 0 0 1 0%
東海 1 0 0 3 1 0 5 1%
オリエンタル海(東洋海) 0 3 14 55 3 0 75 8%
朝鮮海 0 0 2 153 34 1 190 20%
中国海 0 12 18 8 1 1 40 4%
東海、朝鮮海併記 0 3 0 4 2 0 9 1%
中国海、東海併記 0 0 0 0 0 1 1 0%
オリエンタル、中国海併記 0 0 1 0 0 0 1 0%
オリエンタル、朝鮮海併記 0 0 0 3 0 1 4 0%
オリエンタル、インド洋併記 0 0 1 0 0 0 1 0%
その他 0 5 15 7 1 5 33 3%
記載無し 9 44 80 132 110 9 384 -
合計 10 68 137 392 609 116 1332 1

1)1332点のうち、384点には対象海域の名称が記載されておらず。

2)対象海域に何らかの名称が記載されている地図948枚中、「日本海(Sea of Japan)」と単独表記されている地図は579点で、全体の61%を占める。

3)また、19世紀に作成された地図で、対象海域に何らかの名称が記載されている地図499点のうち、約91%に当たる454点の地図において、日本海と表記されていた。

4)「東海(East Sea)」と記載されているのはわずか5点で、「東洋海(Oriental Sea)」と記載されているのは75点であった。

3.古美術「ニコラス・シュトルック(Antiquariat Nikolaus Struck)」における調査

(1)調査経緯・方法

 古美術「ニコラス・シュトルック」においても、在独日本国大使館により、日本海海域を含む地図計79点の目視による調査を行った。

(2)調査結果

  17世紀 18世紀 19世紀 合計 割合
日本海 0 2 33 35 76%
東海 0 0 0 0 0%
朝鮮海 0 6 3 9 20%
中国海 0 0 0 0 0%
オリエンタル海 0 2 0 2 4%
記載無し 3 20 10 33 -
その他 0 0 0 0 0%
合計 3 30 46 79 1

1)79点のうち、33点には対象海域の名称が記載されていなかった。

2)対象海域に何らかの名称が記載されている地図34枚中、「日本海(Sea of Japan)」と単独表記されている地図は35点で、名称表記の地図全体の76%を占める。

3)また、19世紀に作成された地図で、対象海域に何らかの名称が記載されている地図36点のうち、約92%に当たる33枚の地図において、日本海と表記されていた。

4)「東海(East Sea)」と記載されているものはなく、「東洋海(Oriental Sea)」と記載されているものは2点であった。

4.結論

 今回の調査でも、19世紀初頭以降、他の名称を圧倒して日本海が使用されるにいたったことが確認され、これまでの古地図調査同様、我が国が鎖国下にあって国際的影響力を行使できなかった19世紀初頭から日本海の表記が定着してきたことが、ドイツにおける古地図調査によっても確認された。

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