3月8日未明(ニューヨーク時間7日午前),安保理公式会合が開催され(3月の議長国:露),北朝鮮による核実験を安保理決議違反と認定し,非難するとともに,制裁の追加・強化を含む強い内容が含まれる決議第2094号が全会一致で採択されたところ,概要以下のとおり。本決議の共同提案国は,米及び我が国の他,英,仏,韓,豪,加等。
1.前文
- 人道上の懸念(過去の核実験後の決議と同様)。
- 憲章第7章第41条に基づく措置(同上)。
- 外交特権の濫用への懸念。
- 資産凍結に関するFATF(金融活動作業部会)勧告の実施の奨励。
2.主文
(1)一般規定
- 核実験を決議違反として非難。更なる挑発行為の禁止。
- ウラン濃縮を含む核関連活動の非難。核計画の完全放棄等の義務の確認。
- 警告(更なる発射・核実験の場合に安保理が更なる重要な措置をとる決意の表明)。
(2)カネ
- 資産凍結対象3個人・2団体の追加指定(以下3.参照)
(注)これまで安保理は計9個人・17団体を指定。 - 金融サービス提供禁止措置の強化
(注)対象を核ミサイル関連から禁制品取引等の決議禁止行為・制裁回避行為に拡大し,これまでの「要請」を義務化。大量の現金移転規制を含む。 - 銀行口座・支店の開設,コルレス契約の禁止要請
(注)決議禁止行為に関連する疑いがある場合,加盟国における北朝鮮の銀行口座・支店の開設,合弁事業,コルレス契約,北朝鮮における加盟国の銀行の支店等の開設等の禁止を要請。 - 決議禁止行為に寄与する公的金融支援(輸出信用,保証又は保険)の禁止。
(注)対象を核ミサイル関連から禁制品取引等の決議禁止行為・制裁回避行為に拡大し,これまでの「要請」を義務化。
(3)ヒト
- 入国禁止3個人の追加指定 (注)これまで安保理は9個人を指定。
- 入国禁止対象の拡大・強化
(注)指定対象者以外であっても,各国が決議禁止行為に関与した者等と見なす者も入国禁止。北朝鮮人の場合,人道上の考慮等の例外を除き送還。 - 北朝鮮外交官が核・ミサイル関連活動含む決議禁止行為に寄与しないよう警戒を強化。
(4)モノ
- 禁輸対象品目の追加指定(核関連2品目,ミサイル関連5品目,化学兵器関連1品目)
(注)これまでは,既存の禁輸対象リストに加えて制裁委が指定したのは2品目のみ。 - 既存の禁輸対象リストの12か月以内の更新を制裁委に指示。
- 各国が,貨物が核・ミサイル開発に寄与し得ると判断する場合における,当該貨物の禁輸措置の要請・許容。本規制に係るガイドライン作成を制裁委に指示。
- 輸出禁止対象となる奢侈品に含まれるべき品目の特定 (注)これまでは各国が独自に指定。
(5)貨物検査
- 自国領域内の貨物検査
(注)禁制品運搬の疑いのある北朝鮮からの又は北朝鮮向けの貨物,北朝鮮が仲介する貨物を含む(これまでの「要請」を義務化)。 - 緊急の場合等を除き公海での貨物検査要請を拒否する船舶の自国への入港禁止。
(6)航空輸送の制限
- 緊急着陸の場合を除き,禁制品運搬の疑いのある航空機の離着陸・上空通過禁止を要請。
(7)決議の履行強化
- 加盟国による90日以内の決議実施報告要請。
- 制裁委員会の下に設置されている専門家パネルを7名から8名に拡大。
3.附属書
(1)個人(3名)(入国禁止/資産凍結)
- (ア)ヨン・チョンナム コリア・マイニング・デベロップメント・コーポレーション(KOMID)の代表
(注)KOMIDは,北朝鮮の主要な武器ディーラーであり,弾道ミサイル・通常兵器関連品目の主要な輸出者として制裁対象に指定済み。 - (イ)コ・チョルチェ KOMID副代表
- (ウ)ムン・チョンチョル 端川商業銀行(TCB)職員
(注)TCBは通常兵器,弾道ミサイル販売等に関与する金融団体として制裁対象に指定済み。
(2)団体(2団体)(資産凍結)
- (ア)セコンド・アカデミー・オブ・ナチュラル・サイエンス(第二自然科学院)
(注)ミサイル・核兵器を含む先進武器システムの研究・開発に関与。 - (イ)コリア・コンプレックス・エクイップメント・インポート・コーポレーション(朝鮮総合設備輸入会社)
(注)コリア・リョンボン・ジェネラル・コーポレーション(朝鮮連峰総会社。制裁対象として指定済み。)の子会社。
(3)品目(8品目)(禁輸)
- (ア)核関連(2品目)
- (イ)ミサイル関連(5品目)
- (ウ)化学兵器関連(1品目)
(4)奢侈品(2類型)(輸出禁止)
- (ア)宝石
- (イ)乗り物(ヨット,豪華な乗用車,レーシングカー)