2010年2月1日、鳩山由紀夫日本国総理大臣及びフェリーぺ・カルデロン・イノホサ・メキシコ大統領は、東京において首脳会談を行った。両首脳は、日墨戦略的パートナーシップの構築が着実に進展していることを確認した。
両首脳は、2009年から2010年にかけて祝賀している日本メキシコ交流400周年を通じて、二国間の友好関係及び戦略的パートナーシップ関係が更なる高みに引き上げられているとの認識で一致した。
両首脳は、昨年の国際的な経済危機が両国の経済に打撃を与え、二国間の投資と貿易にも影響を及ぼした点について認識を共有し、日・メキシコ経済連携協定(日墨EPA)を活用しつつ、投資・貿易の活性化を目指すことで一致した。
両首脳は、日墨両国が、民主主義、人権、自由かつ開放的な経済といった普遍的な価値並びに400年にわたる友好、信頼及び協力の歴史を共有しており、今日の両国の協力関係が、国連やG20、APEC、FEALAC、更にはOECD等の枠組みにも反映されていることを確認した。
両首脳は、国際社会の平和及び安全、経済問題、気候変動、核軍縮・不拡散、経済成長の推進等の地球規模の課題に対処するためには、グローバルな戦略的パートナーシップを確立することが必要であるとの認識で一致した。
両首脳は、このような認識の下、今後の二国間関係の方向性について以下1のとおり議論するとともに、以下II.のとおり、経済成長の促進に向け両国が共に尽力する確固たる決意を示し、以下III.のとおり、両国が地球規模の課題に共同して取り組む決意を反映した日墨戦略的グローバル・パートナーシップ行動計画を作成した。
I 二国間関係
1.政治対話の促進
両首脳は、両国国民の間に二国間関係を支える深い友情及び信頼が存在することを確認した。また、両首脳は、両国がこれまで実施してきた政策対話を深めるために、首脳、閣僚及び次官級会合を引き続き緊密に開催することが重要であるとの点で一致した。また、二国間及び多数国間の課題に関する両国外交当局間の政策協議の重要性を強調した。
2.日本メキシコ交流400周年
両首脳は、皇太子殿下及びカルデロン大統領が、それぞれの国において名誉総裁に就任されている日本メキシコ交流400周年事業において、2009年に両国で実施された芸術、文化、学術交流等に関する事業が成功裡に実施されたことを祝福した。また、2010年にも記念事業を継続することで一致した。
3.メキシコ独立200周年・メキシコ革命100周年
カルデロン大統領は、2010年に行われるメキシコ独立200周年及びメキシコ革命100周年の祝賀行事について日本のハイレベルの参加を招請し、鳩山総理は右招請に謝意を表明した。
4.科学技術交流
両首脳は、人類が直面する諸課題の解決において科学技術が果たす役割の重要性を確認した。両首脳は、最近、両国の研究者及び専門家が参加した科学技術分野のセミナ-の開催を通じて科学技術交流の潜在力を示したことを強調しつつ、カルデロン大統領訪日の際に科学技術振興機構(JST)と国家科学技術審議会(CONACYT)との間の協力に向けた覚書が署名されたことを祝福した。
5.科学技術に関する会議
両首脳は、両国の科学技術に係る協力や研究者等の交流を促進させるべく、研究機関が参加する科学技術に関する会議シンポジウム開催に向けたイニシアティブを歓迎した。
6. 新型インフルエンザへの対応
カルデロン大統領は、H1N1型インフルエンザ発生に起因する衛生上の緊急事態に際し、日本政府からの寛大で、かつ、時宜を得た支援によって、短期間で事態を収拾できた旨述べ、感謝の意を表明した。
II 経済成長を促進するための戦略的パートナーシップ
7.WTO
日墨両国は、保護主義を断固拒否するとともに、2010年中のドーハ・ラウンド交渉の野心的かつバランスのとれた妥結が世界的な経済危機への対処において重要な役割を果たすとの認識の下、この目標に向けて協力していく。
8.日・メキシコ経済連携協定
(1)両首脳は、双方向の貿易・投資拡大及び中小企業の進出、また二国間協力の強化について日墨EPAが大きく貢献している状況を評価した。
(2)両首脳は、メキシコが日本の中南米における輸出先として主要な地位を占めていること、また、日本がアジア太平洋地域における最大の対メキシコ投資国であること、メキシコにとっては第三位の貿易相手国であることを認識した。また、両国の競争力を向上させる上で大きな潜在力を発揮しうる日墨EPAについて、その戦略的重要性を確認した。
(3)両首脳は、両国間の貿易・投資の更なる強化により両国の利益を増進するために、日墨EPAの見直しの協議を進め、貿易を促進するための更なる措置を執ることを確認した。
9.航空分野の連携
両首脳は、両国の航空当局間の交渉の結果を踏まえ、日本-メキシコ間の直行便の増大を含む日墨間の航空網拡大を歓迎する意向を示した。
10.国際協力銀行(JBIC)の協力
両首脳は、メキシコ政府がJBICの保証を得て1,500億円のサムライ債を発行したことを歓迎した。
11.国家インフラ計画
両首脳は、メキシコ政府が策定した国家インフラ計画を構成する各種プロジェクトにおけるインフラ分野(道路、鉄道、港湾、空港、上下水道、発電、灌漑、治水、石油精製、ガス、石油化学等)が日本企業に対する投資機会を提供するものであることを強調した。また、両首脳は、より多くの日本企業が同プログラム関連の入札に積極的な参加を果たすように、同プログラムの広報活動の強化の必要性を認識した。
12.エネルギー分野の協力
(1)両首脳は、日本政府による省エネルギー政策に携わる政府関係者等の研修生受入れ、日本の石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)とメキシコ国営石油公社(PEMEX)との間の技術協力及び人材協力、JBIC及び日本貿易保険(NEXI)によるPEMEX及びメキシコ連邦電力委員会(CFE)に対する融資及び貿易保険の付保、メキシコ政府によるセミナ-開催等エネルギ-分野における二国間の協力関係の強化に向けた努力を評価した。
(2)両首脳は、エネルギ-分野における両国間の協力深化に向けて、エネルギ-安全保障及びCO2排出削減の重要性にかんがみ、省エネルギー及び再生可能エネルギ-分野における管理制度整備面等に関する協力並びにビジネス・ミッションの両国への相互派遣を通じたビジネス交流の深化を図る必要性で一致した。
13.裾野産業支援
両首脳は、メキシコにおける裾野産業の育成に向けた国際協力機構(JICA)、日本貿易振興機構(JETRO)、メキシコ政府系技術機関が支援する日本及びメキシコ企業が連携するプロジェクトの進展を歓迎した。
14.新たな分野に向けた投資機会
両首脳は、クリーンエネルギ-、省エネ、航空宇宙産業、インフラなどの新たな分野への投資機会を強調した。
15.社会保障に関する協議
両首脳は、社会保障費の二重払いの問題について、両国政府で検討を行い、二国間の協議を開催することとした。
16.日本メキシコ経済協議会
両首脳は、カルデロン大統領の訪日の機会に第28回日本メキシコ経済協議会が開催され、両国企業間の貿易・投資拡大に向けた努力が行われることを歓迎した。
III 日墨戦略的グローバル・パートナーシップ行動計画
両首脳は、日墨両国が地球規模の課題に一層連携して取り組むべく、以下の日墨戦略的グローバル・パートナーシップ行動計画を発表し、この計画を通じて、強固で永続的なパートナーシップを構築する意思を改めて確認した。
17.世界経済
世界中を襲った金融・経済危機の影響を抑えるため、日墨両国は、柔軟かつ健全な経済を構築するため有効な施策を講ずることが重要であるとの認識の下、G20における二国間及び多数国間協力を深め、かつ、拡大し、国際社会による世界金融・経済危機克服のための努力を継続しつつ、さらに世界経済の持続的かつ均衡ある成長を実現するために協力する。
18.気候変動
(1)日墨両国は、2010年にメキシコで開催予定の国連気候変動枠組条約第16回締約国会議(COP16)の成功に向け引き続き協力していく。日本は、メキシコが推進するCOP16の準備プロセスに協力し、その努力を支援する。
(2)日墨両国は、コペンハーゲン合意への支持を繰り返し、それぞれの緩和の目標を含む、同合意への明白な賛同を再確認する。日墨両国は、同合意に基づく排出目標又は緩和のための行動の提出、先進国による資金の供与等も含め、コペンハーゲン合意への支持を表明するよう各国に働きかけるとともに、同合意の迅速な実施に向けて協力するよう働きかける。
(3)日墨両国は、気候変動に対し特に脆弱な国々、とりわけ後発開発途上国、小島嶼開発途上国及びアフリカの懸念に対処する必要性につき認識を共有する。日墨両国は、産業化以前の水準からの世界全体の平均気温の上昇を摂氏2度以下にとどめ、地球温暖化を食い止めるために、全ての国、とりわけ主要排出国に対して、これまで以上に積極的な行動、及び建設的な交渉姿勢を示すことを促す。同様に、バリ行動計画の下での努力を継続しつつ、条約の究極的な目的を実現するために、幅広い野心的な一つの合意を導く包括的で透明性のある交渉の開催を支持する。
19.軍縮・不拡散
日墨両国は、2010年のNPT運用検討会議の開催を前に、この会議が核兵器のない世界という共通目標を達成するべく積極的な協力を推進する機会であるとの認識の下、今後、軍縮会議等において、軍縮・不拡散分野での両国の対話を緊密にする。
20.朝鮮半島
日墨両国は、朝鮮半島において、平和、安全、検証可能な非核化、核不拡散及び拉致問題への対応を含む人権の完全な尊重に向けて協働する意志を確認する。この観点から、日墨両国は、六者会合の早期再開を通じて2005年9月の共同声明を完全に実施することの重要性を認識するとともに、国連安保理決議が完全に尊重され着実に実施されるべきことを認識する。
21.国連における協力
日墨両国は、現在、共に国連安全保障理事会の非常任理事国であり、その立場から、国際の平和及び安全の維持に貢献すべく二国間協力を継続する。本年1月に実施された多国間問題に関する第3回日・メキシコ協議を踏まえ、日墨両国は、戦略的パートナーシップにふさわしい両国のイニシアティブを実現すべく協力を強化する。
この観点から、国連安保理がハイチの状況を注視し、特に、ハイチ安定化ミッションの役割に関する責任を果たすことを確保すべく、両国で協力していく。
22.国連改革
日墨両国は、安保理の代表性、効率性及び透明性をより向上させるため、その実効性及び安保理の決定の実施を強化するため、また、安保理改革を早期に実現するための政府間交渉を通じ、密接な協力を二国間で維持する。
日墨両国は、開発、安全、人権等のバランスをとりつつ、多国間の諸課題に取り組むべく、また、国連システムの一貫性を高めるために必要な国連改革を推進する。
23.人間の安全保障
日墨両国は、人間の安全保障フレンズ会合の枠組みにおいて「人間の安全保障」という同概念を推進するパートナーであり、特に、中南米・カリブ地域を始め国際社会における人間の安全保障の実現・理解促進に向け両国間や国連における枠組み・地域的枠組みにおいて引き続き協力していく。
24.日墨パートナーシップ・プログラム
日墨両国は、日墨パートナーシップ・プログラム(JMPP)にもとづく第三国向け協力プロジェクトが成果を上げ、三角協力の優れた成功事例として各種フォーラム(国際会議)で高い評価を得ていること、とりわけ、環境、自然災害、公衆衛生、技術教育、農業畜産開発の分野では、メキシコ人専門家の派遣やメキシコにおいて実施される中南米諸国を対象とした国際講座を手段として、ラテンアメリカ・カリブ地域諸国の能力開発で実績を上げていることを踏まえ、今後も日墨パートナーシップ・プログラムを継続する。
25.ハイチにおける大地震の被害に対する支援
日墨両国は、ハイチ共和国国民及び政府に対して、1月12日の地震によってもたらされた人命、負傷、物的損害などの惨事につき、連帯と心からの哀悼の意を表するとともに、日墨両国は、ハイチの復興。発展に向けた支援を、国際社会と協力しつつ継続する。今般の地震による被害踏まえ、両国は、JMPPを通じて地震対策といった防災分野において同国に対する三角協力の可能性を検討する。
26.メソアメリカ計画
日墨両国は、日墨パートナーシップ・プロジェクトを通じて、メソアメリカ地域に存在する協力プログラムの強化を目的として、引き続きメソアメリカ計画の推進に貢献していく。
27.メキシコ国際協力庁への支援
日本政府は、メキシコ国際開発協力庁の設立に向けて、専門家の派遣を通じて積極的に支援する。
28.日墨戦略的グローバル・パートナーシップ研修計画
日墨両国は、これまでの日墨交流計画の成果を踏まえ、同計画に両国の現在のニーズに反映させつつ、戦略グローバル・パートナーシップを強化する方向へと発展させる。
29.治安分野の協力
鳩山総理は、メキシコ政府が法治体制の強化、国民の安全確保及び国際組織犯罪の撲滅のために国家の総力を挙げて取り組んでいることを評価した。また、この分野における人材研修を通じて治安分野の改善に協力する用意がある旨表明し、カルデロン大統領はこれを歓迎した。両首脳は、右努力が在墨日系企業の活動推進にも貢献するとの認識で一致するとともに、両国の安全及び福祉を脅かす国際組織犯罪に対する取組み重要であるとの認識で一致した。
30.青少年世界会議
日本は、2010年8月、メキシコシティで開催される青少年世界会議が青少年に関するテーマについての重要な検討・議論の場を提供するとのメキシコ政府の説明を歓迎した。
31.知的財産権
日墨両国は、模倣品及び海賊版の拡散防止を含む知的財産権の実効的な保護が、イノベーションが牽引する世界経済の成長のために必要不可欠であることを強調し、模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)交渉の早期妥結及び知財に関連する多国間協議の進展のために引き続き協力していく。
32.APEC
日墨両国は、日本が議長となる2010年のAPEC各種会合の成功に向けて協力を継続する。
33.アジア中南米協力フォーラム(FEALAC)
メキシコは、1月16日及び17日に東京で開催された「FEALAC(アジア中南米協力フォーラム)」第4回外相会合の成功を祝福した。日墨両国は、アジア中南米地域の交流促進に向け今後とも協力していく。
最後に、カルデロン大統領は、今次訪日の一行が日本政府から受けた歓待に謝意を表明した。両首脳は、グローバルな視点から二国間の戦略的パートナーシップを進展させることで一致し、これにより、国際の平和及び安全、両国国民の安寧並びに科学の発展のための二国間のパートナーシップの将来について方向性が与えられた。
東京、2010年2月1日
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